青色申告の基礎知識

不動産所得の事業的規模を活用して節税する方法を解説!

不動産所得の事業的規模を活用して節税する方法を解説!

不動産所得では事業的規模としてみとめられ、青色申告で65万円の特別控除などを受けられる基準が決まっています。不動産所得の事業規模とはどういったものか、また、事業規模と認められた場合の特典などについて解説していきます。

2024年提出(令和5年分)の確定申告アップデート情報

所得税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年3月15日(金)
消費税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年4月1日(月)
※ 贈与税の申告・納税期間:2024年3月15日(金)まで

<2024年(令和5年分)の確定申告のポイント>

  1. 「源泉徴収票・国民年金基金掛金・iDeCo・小規模企業共済掛金」が追加されるなど、マイナポータル連携をすることで自動入力できる対象が増えます。
  2. 国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、消費税の申告書を作成できるようになる予定です。今回、インボイス登録によって課税事業者になり、消費税の納付が必要になった方はチェックしましょう!

詳しくは国税庁ホームページ「令和5年分 確定申告特集」をご参照ください。

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事業的規模の判別方法

不動産所得は事業所得と異なり、事業的規模と認められる基準が定められています。

〇不動産所得の事業的規模の基本

不動産所得

不動産の賃貸経営による不動産所得では、事業的規模と認められると、税務上の扱いが異なり、特典を活用できます。事業的規模には基準が設けられ、アパートやマンションでは10室以上、貸家では5棟以上です。駐車場の場合は明確な基準はありませんが、駐車場は5台分でアパート1室とされていますので、50台以上ということになります。

つまり、マンションを投資用に一室購入して、不動産投資を始めたようなケースでは、事業的規模とはいえないのです。

〇こんなケースはどう判断する?
アパートなどを共有名義で所有している場合には、持ち分の規模による判断ではなく、共有物件全体の規模での判断になります。また、10室のアパートを一括で不動産会社に貸している場合には、1室という判断にはなりません。いわゆる一括借り上げでも、10室であれば、原則として10室分と認められますので事業的規模に該当します。また、アパート4室、貸家2軒、駐車場10台分といった混在する形でも、事業的規模として認められます。

ただし、「アパートで10室、貸家で5軒」という基準以下であっても、賃料の収入の規模が大きい場合などは、税務署で事業的規模と認められるケースもありますので、相談してみましょう。

事業としての不動産貸付けとの区分|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm

不動産所得が事業的規模の4つのメリット

不動産所得が事業的規模と認められると、確定申告で主に次に挙げる4つのメリットを活用することが可能です。

〇青色申告特別控除65万円が利用可能
不動産所得が事業規模と認められる場合には、65万円の青色申告特別控除を受けることが可能です。青色申告の届け出をし、複式簿記による記帳などを行うことが必要ですが、必要経費を引いた不動産所得から、さらに65万円を差し引くことができるものです。事業的規模と認められない場合には、青色申告でも10万円の特別控除しか利用することができません。

〇家族への給与を経費にできる
事業的規模と認められる場合、青色申告では配偶者や子供などの家族への給与を「青色事業専従者給与」として、経費として控除できます。給与には上限が定められていませんが、勤務実態や担当する仕事内容から、妥当性のある金額までとなります。

白色申告の事業専従者控除も、事業的規模と認められる場合のみ適用が可能です。原則として、配偶者86万円、配偶者以外の家族は50万円が控除されます。

ただし、青色事業専従者給与も白色申告の事業専従者控除も、15歳以上で、生計同一、6カ月以上専従者として従事していることが条件です。独立して暮らし、会社勤めをしている子供は対象外です。また、配偶者控除の最大38万円の控除や扶養控除の38万円~63万円の控除は受けられなくなります。そのため、青色事業専従者給与控除の活用は、配偶者控除や扶養控除を上回る額の支払いが節税の前提となります。

〇回収不能の賃料を必要経費として算入できる
回収不能となった賃料等がある場合、事業的規模の場合には、回収不能となった年に必要経費としての算入が可能です。一方、事業的規模ではない場合には、賃料を計上していた年の所得から差し引いて、所得の計算をやり直すことになります。

〇取り壊しなどによる損失を全額経費に計上可能
事業的規模の場合は、取り壊しなどによる損失を全額経費に計上し、当該年度の所得から引ききれない場合には、3年間の繰り越しが可能です。事業的規模ではない場合には繰り越せないため、当該年度の不動産所得が限度となります。

青色申告制度|国税庁: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2070.htm
事業としての不動産貸付けとの区分|国税庁: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm
青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm
扶養控除|国税庁: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm

不動産所得の事業的規模のデメリット

〇個人事業税の支払いが生じる
不動産所得が事業的規模を満たしている場合には、個人事業税の支払いが発生します。ただし、都道府県によっては個人事業税の対象となる不動産所得の規模に違いがありますが、事業的規模とみなされている場合は、ほぼ対象となります。

個人事業税の計算では、65万円や10万円の青色申告特別控除の適用前の金額から、290万円を控除した額の5%が税額です。都道府県から通知が届いたら、8月と11月の2回に分け支払います。

〇複式簿記での記帳が煩雑
65万円の青色申告特別控除の特典を受けるためには、複式簿記で記帳を行ったうえで、貸借対照表と損益計算書の作成が必要です。ただし、事業的規模ではなく、白色申告を行う場合でも、2014年からは簡易簿記による記帳は義務付けられています。事業的規模ではない場合にも10万円の青色申告特別控除を目指す方が得策といえます。

事業的規模への変更手続きの方法

所有する不動産が増えるなどして、事業的規模になった場合、青色申告をするためには、その年の3月15日までに管轄の税務署へ「青色申告承認申請書」を提出します。また、青色専従者給与の適用を受けるためにも事前に届け出が必要です。

確定申告を簡単に終わらせる方法

確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。どちらを選択するにしても、期限までに正確な内容の書類を作成し申告しなければいけません。

確定申告書を作成する方法は手書きのほかにも、国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用するなどさまざまですが、会計知識がないと記入内容に悩む場面も出てくるでしょう。

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まとめ

不動産所得は事業的規模の基準が、事業所得と比べて比較的明確です。不動産経営を始めたばかりの頃は、事業的規模に該当しない場合であっても、運用する物件を増やしていく中で、事業的規模と認められるケースもあります。該当しそうになったら青色承認申請書や青色事業専従者給与の届け出の提出期限にご注意下さい。

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