勘定科目の基礎知識

人件費の勘定科目は? 種類と具体的な仕訳例を紹介

監修 西村真衣 西村税理士事務所

人件費の勘定科目は? 種類と具体的な仕訳例を紹介

人件費は、従業員を雇って会社を経営していくうえで欠かせない費用です。人件費には給与だけでなく、賞与や退職金、福利厚生費なども含まれます。

本記事では、人件費に使う勘定科目の種類や具体的な仕訳例を紹介します。人件費に使う勘定科目は種類が多いため、それぞれの違いや使う場面を確認して正確に仕訳を行いましょう。

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目次

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人件費とは

人件費とは、企業が従業員に対して負担する経費です。従業員に支払う給与以外に、賞与・残業手当・退職金などが該当し、さまざまな費用が人件費に含まれます。

会社を経営していくうえで人件費は欠かせない費用であるため、適切に把握することが大切です。

人件費に使う勘定科目の種類

人件費に使う勘定科目は次の8つです。

人件費に使う勘定科目の種類

  • 従業員に給与を支払った場合は【給与手当】
  • 家族に対して専従者給与を支払った場合は【専従者給与】
  • 従業員に夏季・冬季賞与などを支払った場合は【賞与】
  • 役員に報酬を支払った場合は【役員報酬】
  • 従業員の出張や移動にかかった費用は【旅費交通費】
  • 企業に義務付けられている保険料を負担した場合は【法定福利費】
  • 結婚祝い・出産祝い・香典などを負担した場合は【福利厚生費】
  • 従業員や役員に退職金を支払った場合は【退職金】

勘定科目ごとの違いを理解して適切に仕訳を行いましょう。

【給与手当】

従業員に給与を支払った際は「給与手当」を使って仕訳します。給与手当には、従業員の労働の対価として支払う基本給に加えて、残業手当や家族手当なども含まれます。

正社員だけでなく、パートやアルバイトに給与を支払った際に使う勘定科目も「給与手当」です。

なお、アルバイトに支払う給与など金額が少額の場合は、雑給与など、通常の給与手当と区別して処理する場合もあります。

【専従者給与】

家族に対して専従者給与を支払った場合は「専従者給与」を使って仕訳します。専従者給与とは、生計を一にする家族の従業員に支払う給与です。

事業を営む青色申告者の配偶者や親族のうち、青色事業専従者の要件を満たし、税務署に届け出をして青色事業専従者と認められている家族に支払う給与は、人件費として経費にできます。

なお、青色事業専従者と認められていない家族が事業を手伝ったときに支払った給与は、経費に含まれないので注意しましょう。

ただし、経費にできない代わりに一定金額での控除ができる事業専従者控除があり、青色申告でない場合にも、親族に給与を出すことができます。

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専従者給与とは?青色事業専従者や控除を受ける条件についても解説

【賞与】

従業員に夏季・冬季賞与などを支払った場合は「賞与」を使って仕訳します。賞与は、毎月支払われる給与とは別に、ボーナスなどの臨時で支払われる給与です。

【役員報酬】

役員に報酬を支払った場合は「役員報酬」を使い、従業員に支払う給与や賞与と分けて計上します。

役員報酬とは、取締役や監査役など会社の経営や管理を行う役員に支払われる報酬です。役員報酬のうち、定期同額給与・事前確定届け出給与・利益連動給与のいずれかに当てはまるものは損金に算入できます。

損金とは、法人税の課税対象となる所得を算出するために使われる項目であり、収益から損金を差し引いて法人税の課税所得を算出します。不相当に高額な部分の金額や、いずれにも当てはまらない報酬は損金に算入できないので注意しましょう。

【旅費交通費】

従業員の出張や移動にかかった費用は「旅費交通費」を使って仕訳します。旅費交通費は、業務のための移動や出張時の宿泊費を処理するときの勘定科目です。

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【法定福利費】

企業の負担が法律で義務付けられている保険料は「法定福利費」を使って仕訳します。

法定福利費には、健康保険や厚生年金保険といった社会保険料、雇用保険などの保険料のうち企業が負担しなければならない費用が該当します。

【福利厚生費】

結婚祝い・出産祝い・香典などは「福利厚生費」を使って仕訳します。

福利厚生費とは、給与以外で従業員のために支払う費用です。社内旅行やレクリエーション費も福利厚生費に該当します。

【退職金】

従業員や役員が退職するときに支払う退職金には「退職金」の勘定科目を使います。退職金には、退職時に一括支払いされる「退職一時金」と、年金として支払われる「退職年金」が該当します。

退職金は損金として算入できるものの、従業員と役員では損金に算入する時期が異なるので注意しましょう。

【事例で解説】人件費の仕訳例

人件費の具体的な仕訳例をケースごとに解説します。

従業員に給与を支払った場合

従業員に残業手当や家族手当を含む給与を支給した場合は、勘定科目として「給与手当」を使って仕訳します。給与とあわせて出張時の交通費などを支給した場合は、借方に「旅費交通費」として記載します。

給与から差し引いた源泉所得税や社会保険料は「預り金」として、従業員が負担すべき親睦会などの費用を会社が代わりに支払っている場合は「立替金」として貸方に記載しましょう。

従業員20人に給与を800万円、旅費交通費を40万円支給し、従業員から給与天引きした社会保険料などの合計額が175万円、親睦会費として会社が代わりに支払っている金額が5万円の場合、記帳の仕方は以下の通りです。


借方貸方
給与手当8,000,000円普通預金6,600,000円
旅費交通費400,000円預り金1,750,000円
立替金50,000円

なお、口座振込で振込手数料が発生した場合は、借方に「支払手数料」を記載します。

従業員にボーナスを支払った場合

従業員に夏季賞与を支給した場合は、勘定科目として「賞与」を使って仕訳します。賞与総額から天引きした源泉所得税や社会保険料などの金額は「預り金」として貸方に記載しましょう。

従業員に支給した賞与の総額が600万円、賞与総額から天引きした源泉所得税や社会保険料などの合計額が140万円の場合、記帳の仕方は以下の通りです。


借方貸方
賞与6,000,000円普通預金4,600,000円
預り金1,400,000円

従業員に退職金を支払った場合

従業員が退職する際に退職金を支払った場合は、勘定科目として「退職金」を使って仕訳します。ただし、退職金制度を導入していて引当金を設定しているときは、借方に「退職給付引当金」と記載しましょう。

20年間勤務した従業員が退職する際に700万円の退職金を支払った場合、記帳の仕方は以下の通りです。


借方貸方
退職給付引当金7,000,000円普通預金7,000,000円

なお、退職金の金額や勤続年数などにより、退職所得控除額を計算して源泉徴収が必要な場合は、貸方に「預り金」と記載して仕訳します。

従業員である妻に給与を支払った場合

個人事業主が専従者として雇っている妻に給与を支払った場合は、勘定科目として「専従者給与」を使って仕訳します。

従業員である妻に20万円の給与を現金で支払った場合、記帳の仕方は以下の通りです。


借方貸方
専従者給与200,000円現金200,000円

なお、専従者給与として税務署に届け出た給与の金額を超える部分は、必要経費と見なされないので注意しましょう。また、給与を増額する場合は「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を税務署に提出する必要があります。

社会保険や労働保険などの法定福利費を支払った場合

社会保険や雇用保険は労使折半となるため、従業員の負担分は給与支払いの際に天引きして「預り金」として仕訳します。

天引きした保険料を翌月末に支払った際には、会社負担分の法定福利費3万円と、従業員の給与から天引きした預り金3万円を借方に記載し、以下のように記帳します。


借方貸方
法定福利費30,000円普通預金60,000円
預り金30,000円

役員に役員報酬として50万円を支払った場合

役員に役員報酬を支払った場合は、勘定科目として「役員報酬」を使って仕訳します。通常の従業員に支払う給与と同様に、社会保険などの天引きをして預り金として仕訳しましょう。

役員に役員報酬として50万円を支払い、社会保険として12万円を天引きした場合、記帳の仕方は以下の通りです。


借方貸方
役員報酬500,000円普通預金380,000円
預り金120,000円

なお、役員は雇用関係が明らかでない限り雇用保険に加入できないため、雇用保険料の徴収の有無に注意しましょう。

まとめ

人件費は、従業員を雇って会社を経営していくうえで欠かせず、毎月発生する費用であるため、適切に把握して管理することが大切です。人件費には給与だけでなく、賞与や旅費交通費、福利厚生費なども含まれます。

人件費の勘定科目は複数あるため、適切に分類しましょう。

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よくある質問

人件費は経費にできる?

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人件費に関して詳しく知りたい方は「人件費とは」をご覧ください。

人件費の仕訳に使う勘定科目は?

人件費の仕訳に使う勘定科目には、給与手当・賞与・旅費交通費・退職金などがあります。

人件費の仕訳に使う勘定科目を詳しく知りたい方は「人件費に使う勘定科目の種類」をご覧ください。

監修 西村真衣(にしむら まい)

父も祖父も税理士という家系に長女として生まれる。実家は60年続く税理士事務所。学生結婚し、子供を授かるも、母、妻、娘の役割以外に、自分の人生も生きていきたいと2人の子供を育てながら税理士試験に合格する。自身も経営者の立場を経験しない事には、お客様の気持ちに真に寄り添うことはできないと感じ、実家の税理士事務所とは別に2021年に西村税理士事務所を開業。現在は、女性起業支援を中心に活動している。

西村真衣