勘定科目の基礎知識

看板の勘定科目は? 形状別に仕訳方法や法定耐用年数を解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

看板の勘定科目は? 形状別に仕訳方法や法定耐用年数を解説

看板を設置したときの勘定科目や仕訳方法は、金額や看板の形状によって異なります。本記事では、看板を設置したときの勘定科目仕訳例を解説します。

勘定科目によって減価償却する際の法定耐用年数も変わるため、正しく理解しましょう。

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目次

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看板の取得金額は経費に計上できる?

事業で使用するための看板を設置した場合、取得金額は経費に計上できます。

金額が10万円未満の場合は、看板の形状にかかわらず支出時に一括で経費に計上することが可能です。

ただし、10万円以上の場合は設置した年に一括で経費にできず、減価償却を行う必要があります。

減価償却とは、減価償却資産(時の経過によって価値が下がっていく資産)の取得にかかった費用を、使用可能期間にわたり分割して費用化する会計処理です。

「使用可能期間」は、「法定耐用年数」として財務省令の別表で定められています。

【関連記事】
減価償却とは?確定申告前に知っておくべき減価償却資産の計算方法について解説

看板に用いる勘定科目

看板の設置費用に用いる勘定科目は、金額や看板の形状によって異なります。

勘定科目によって減価償却する際の耐用年数も変わってくるため、正しく理解することが大切です。

看板に用いる勘定科目

  • 10万円以上で建物と一体の看板を設置した場合は【建物附属設備】
  • 10万円以上で自由に移動できない看板を屋外に設置した場合は【構築物】
  • 10万円以上の独立した立て看板を設置した場合は【器具及び備品】
  • 10万円未満の看板を設置した場合は【消耗品費】

【建物附属設備】

金額が10万円以上で、看板が建物と一体になっている場合は、「建物附属設備」で資産計上し、決算時に減価償却の処理を行います。

「建物附属設備」とは、建物に固着してその建物の使用価値を増加させる設備のことです。建物の壁面や柱から道路へ突き出すように設置されている「袖看板(突き出し看板)」などが該当します。

「建物附属設備」に該当する場合の法定耐用年数は、以下の通りです。


区分法定耐用年数
金属製18年
その他10年
出典:東京都主税局「減価償却資産の耐用年数表」

【構築物】

金額が10万円以上、かつ自由に移動できない屋外の看板は、「構築物」を用いて資産へ計上し、決算時に償却処理を行います。

「構築物」に該当するのは、「野立て看板」や「塔屋看板」の場合です。「野立て看板」は路上や田畑などに設置されている看板型広告、「塔屋看板」は建物の屋上に設置される看板のことで、広告塔とも呼ばれます。

「構築物」に該当する場合の法定耐用年数は、以下の通りです。


区分法定耐用年数
金属製20年
その他10年
出典:東京都主税局「減価償却資産の耐用年数表」

【器具及び備品】

金額が10万円以上で、簡単に移動できる独立した立て看板は、「器具及び備品」の勘定科目を用いて処理し、決算時に償却処理を行います。

たとえば、「スタンド看板」(置き型の看板)や「電飾看板」(蛍光灯やLEDを使用した看板)が該当します。法定耐用年数は3年(マネキン人形、模型は2年)です。

【消耗品費】

10万円未満の看板を設置した場合は、看板の形状にかかわらず「消耗品費」の勘定科目で処理します。支出時に一括で経費に計上でき、減価償却の必要はありません。

なお、「消耗品費」とは、取得価額10万円未満、または耐用年数が1年未満の物品を購入したときに用いる勘定科目です。

【関連記事】
消耗品費とは?具体例や雑費との違い、仕訳方法について解説

【事例で解説】看板の仕訳例

事業で看板を設置したときの仕訳例をいくつか紹介します。

看板の仕訳例

  • 自社ビルに30万円の突き出し看板を設置した場合
  • 店舗の敷地に野立て看板を設置した場合
  • 店舗前に5万円のスタンド看板を設置した場合

自社ビルに30万円の突き出し看板を設置した場合

自社ビルの壁面に金属製ではない突き出し看板を設置し、30万円を普通預金から支払ったときは、「建物附属設備」を用いて次のように仕訳します。


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建物附属設備30万円普通預金30万円

金属製ではないため、法定耐用年数10年で減価償却を行います。

建物附属設備は定額法で減価償却を行うため、取得価額に耐用年数10年の償却率を乗じて減価償却費を求めましょう。

減価償却費:30万円 × 0.1(償却率) = 3万円

決算時に、減価償却費として3万円を計上します。


借方貸方
減価償却費3万円建物附属設備3万円

店舗の敷地に野立て看板を設置した場合

店舗の道路沿いの敷地に金属製の看板型広告を設置し、40万円を普通預金から支払った場合は、「構築物」に計上します。


借方貸方
構築物40万円普通預金40万円

金属製の野立て看板の場合、法定耐用年数は20年です。構築物は定額法で減価償却を行うため、取得価額に耐用年数20年の償却率を乗じて減価償却費を求めましょう。

40万円 × 0.05(償却率) = 2万円

決算時に、減価償却費として2万円を計上します。


借方貸方
減価償却費2万円構築物2万円

店舗前に5万円のスタンド看板を設置した場合

店舗の前に簡易的なスタンド看板を設置し、5万円を普通預金から支払った場合の仕訳は、次の通りです。


借方貸方
消耗品費5万円普通預金5万円

金額が10万円未満であるため、支出時に一括で経費に計上できます。

看板の取得金額を会計処理する際のポイント・注意点

看板の取得金額を処理する際におさえておきたいポイント・注意点を解説します。

看板の取得費用を会計処理する際のポイント・注意点

  • 看板の種類によって耐用年数が異なる
  • 一定の中小企業者は少額減価償却資産を適用できる
  • 看板の利用料は「賃借料」や「広告宣伝費」で仕訳する
  • 看板を修理したときは「修繕費」で仕訳する
  • 広告用のポスターは「広告宣伝費」で仕訳する

看板の種類によって耐用年数が異なる

減価償却を行う際の法定耐用年数は、看板の種類によって異なります。


項目具体例法定耐用年数
建物附属設備袖看板(突き出し看板)金属製:18年
その他:10年
構築物野立て看板、棟屋看板(広告塔)金属製:20年
その他:10年
器具および備品スタンド看板、飾看板3年

どの勘定科目に該当するかによって償却期間が変わってくるため、正しく処理を行いましょう。

一定の中小企業者は少額減価償却資産の特例を適用できる

一定の中小企業者等は、看板の取得価額が30万円未満であれば、年間300万円(少額減価償却資産の取得価額の合計額)を限度に一括で経費に計上できます。

対象となるのは、青色申告法人のうち、常時使用する従業員の数が500人以下の中小企業者または農業協同組合等です。

また、看板の取得価額が10万円以上20万円未満の場合は、3年間で均等に償却する「一括償却資産」も選択できます。

看板の利用料は「賃借料」や「広告宣伝費」で仕訳する

屋上看板などの利用料を支払う場合は、「賃借料」や「広告宣伝費」の勘定科目で経費に計上するのが一般的です。

ただし、翌期以降の利用料に相当する部分は当期の経費にはできないため、「前払費用」に計上し、翌期になってから「賃借料」などに振り替えます。

看板を修理したときは「修繕費」で仕訳する

通常の維持管理や原状回復のために看板の修理や塗り直しを行ったときは、「修繕費」の勘定科目で経費に計上できます。

ただし、耐用年数を延ばすまたは価値を増加させる「資本的支出」に該当する場合は、支出時に全額を経費にできず、固定資産として計上しなければなりません。

たとえば、電飾を付け加えた場合や、デザインを変更した場合は、資本的支出に該当する可能性があります。

広告用のポスターは「広告宣伝費」で仕訳する

ポスターや垂れ幕などの広告用の費用は、「広告宣伝費」として経費に計上できます。

なお、「広告宣伝費」は、不特定多数の人に製品・サービスを広く知ってもらうための宣伝にかかる費用を支出したときに使う勘定科目です。

まとめ

看板を設置したときの勘定科目は、金額や形状によって異なります。

10万円未満の看板は、形状にかかわらず「消耗品費」を用いて一括で経費計上が可能です。

一方、10万円以上の看板は、突き出し看板や野立て看板などの種類に応じて「建物附属設備」や「構築物」、「器具及び備品」で資産計上し、法定耐用年数で減価償却を行います。

どの勘定科目に該当するかで償却期間が変わってくるため、正しく理解して仕訳を行いましょう。

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よくある質問

看板に用いる勘定科目は?

看板の取得金額を処理する際の勘定科目は、金額や形状によって異なります。

10万円未満の場合は「消耗品費」、10万円以上の場合は「建物附属設備」や「構築物」、「器具及び備品」などを使用します。

看板に用いる勘定科目を詳しく知りたい方は「看板に用いる勘定科目」をご覧ください。

看板を減価償却する際の法定耐用年数は?

法定耐用年数は、看板の種類によって異なります。

たとえば、「建物附属設備」に該当する突き出し看板の場合、法定耐用年数は18年(金属製でない場合は10年)です。

看板の法定耐用年数を詳しく知りたい方は「看板の種類によって耐用年数が異なる」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮