勘定科目の基礎知識

保険料に用いる勘定科目は? 保険の種類や法人・個人事業主別に仕訳例も解説

監修 安田 亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

保険料に用いる勘定科目は? 保険の種類や法人・個人事業主別に仕訳例も解説

生命保険や損害保険の保険料を支払ったときの勘定科目は、保険の種類や保険金受取人によって異なります。

また、法人と個人事業主でも会計処理方法が異なるため、正しく理解しましょう。

本記事では、保険料を支払ったとき保険金を受け取ったときに用いる勘定科目を解説します。

保険の種類や法人・個人事業主に分けて具体的な仕訳例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

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保険料とは?

保険料とは、保険契約にもとづいて契約者が保険会社に支払うものです。

保険料を支払ったときの勘定科目や仕訳方法を知るため、最初に保険の種類や仕組みを理解しておきましょう。

保険には、大きく「生命保険」と「損害保険」があります。

「生命保険」と「損害保険」

  • 生命保険:人の生死等に関して保険金が支払われる保険
  • 損害保険:偶然の自己によって発生した損害額を補償する保険

「生命保険」には終身保険・定期保険・養老保険、「損害保険」には火災保険・自動車保険・賠償責任保険などがあります。

保険料を支払ったときに用いる勘定科目

保険料を支払ったときの勘定科目や仕訳方法は、保険の種類や内容によって異なります。

保険料を支払ったときに用いる勘定科目は、以下の通りです。

保険料に関する勘定科目

  • 法人が役員や従業員を被保険者とする保険契約の保険料を支払った場合【保険料・保険積立金】車検代行手数料は【支払手数料】
  • 個人の保険料を事業資金から支払った場合【事業主貸】

保険料を仕訳する際、すべて「保険料」で処理するわけではありません。

保険料を支払ったときに用いる勘定科目について、以下で詳しく解説します。

【保険料・保険積立金】

法人が役員や従業員を被保険者とする保険契約の保険料を支払ったときは、「保険料」や「保険積立金」の勘定科目を用います。


区分概要
保険料掛け捨てで支払う生命保険や損害保険の保険料を支払ったときに用いる勘定科目
保険積立金生命保険や損害保険の保険料のうち、貯蓄部分を処理するときに用いる勘定科目

【事業主貸】

個人事業主が私的に加入した保険の保険料は、経費に計上できません。個人の保険料を事業資金から支払ったときは、「事業主貸」の勘定科目を用いて処理します。

なお事業主貸とは、プライベートの支払いを事業資金から支払った場合などに用いる勘定科目です。

ただし、個人事業主が店舗や事務所の火災保険料や、事業で使用する自動車の自動車保険料を払った場合は、経費に計上できます。また、従業員を被保険者とする保険料を支払った場合も経費計上が可能です。

保険金を受け取ったときに用いる勘定科目

保険金を受け取ったときに用いる勘定科目は「雑収入」です。ただし、法人と個人事業主で処理方法が異なります。

【雑収入】

法人が保険金を受け取ったときは、「雑収入」の勘定科目を用いて処理します。

雑収入とは、営業外収益のうち、ほかの勘定科目に当てはまらないものを処理する際に用いる勘定科目です。

保険積立金がある場合は、保険積立金に計上した金額を取り崩し、差額を「雑収入」で処理しましょう。また、保険金の額が保険積立金より少ない場合は、差額を「雑損失」で処理します。

個人事業主が保険金を受け取ったときの会計処理は不要

個人事業主が私的に加入した保険契約の保険金がプライベートの口座に入金された場合、事業との関係はないため会計処理は不要です。

保険金が事業用口座に入金された場合は、「事業主借」の勘定科目を用いて処理しましょう。なお事業主借とは、プライベートの資金からお金を借りたときに用いる勘定科目です。

【事例で解説】保険料を支払ったとき・受け取ったときの仕訳例

生命保険料や損害保険料を支払ったとき、または保険金を受け取ったときの具体的な仕訳例を、いくつかのケースに分けて解説します。

保険料を支払ったとき・保険金を受け取ったときの仕訳例

  • 生命保険料(定期保険)を支払った場合の仕訳例
  • 生命保険料(終身保険)を支払った場合の仕訳例
  • 生命保険料(養老保険)を支払った場合の仕訳例
  • 損害保険料(火災保険)を支払った場合の仕訳例
  • 個人事業主が本人の保険料を支払った場合の仕訳例死亡保険金を受け取った場合の仕訳例

生命保険料(定期保険)を支払った場合の仕訳例

法人が役員や従業員を被保険者とする定期保険(全損)の保険料を支払ったときは、「保険料」の勘定科目を用いて全額を経費に計上します。

なお、定期保険は、生命保険のうち一定期間を保障する保険です。掛け捨て型保険とも言われます。

従業員の定期保険の保険料50万円を支払ったときは、次のように仕訳しましょう。


借方貸方
保険料500,000円普通預金500,000円

役員や特定の人のみを被保険者にする場合は、保険料に計上せず「給与」として扱います。

生命保険料(終身保険)を支払った場合の仕訳例

法人が保険金受取人となっている終身保険の保険料を支払ったときは、「保険積立金」の勘定科目を用いて資産に計上します。なお、終身保険は、生命保険のうち保障が一生涯続く保険です。

たとえば、法人が保険金受取人となっている終身保険の保険料50万円を支払った場合、次のように仕訳します。


借方貸方
保険積立金500,000円普通預金500,000円

役員や従業員の遺族が保険金受取人の場合は「給与」として扱います。

生命保険料(養老保険)を支払った場合の仕訳例

法人が養老保険の保険料を支払ったときの仕訳は、保険金受取人によって異なるため、正しく理解しておきましょう。

法人が死亡保険金・生存保険金の受取人となっている養老保険の保険料を支払ったときは、「保険積立金」で全額を資産に計上します。

一方、死亡保険金の受取人が役員・従業員の遺族、生存保険金の受取人が法人の場合は、1/2を資産、1/2を経費に計上します。

たとえば、法人が養老保険の保険料50万円を支払った場合の仕訳例は、以下の通りです。死亡保険金受取人は役員・従業員の遺族、生存保険金受取人は法人とします。


借方貸方
保険積立金250,000円普通預金500,00円
保険料250,000円

なお、死亡保険金の受取人が役員・従業員の遺族、生存給付金の受取人が役員・従業員の場合は、「給与」として扱います。

損害保険料(火災保険)を支払った場合の仕訳例

法人が火災保険の保険料を支払ったときは、「保険料」を用いて全額を経費に計上します。法人が火災保険(契約期間1年)の保険料5万円を支払ったときの仕訳例は、次の通りです。


借方貸方
保険料50,000円普通預金50,000円

また、契約期間が2年以上の場合は期間按分し、翌期以降分を「前払費用」として振り替えます。たとえば、法人が火災保険料(契約期間2年)の保険料7万円を支払ったときは、次のような仕訳を行います。

仕訳時の仕訳

借方貸方
保険料70,000円普通預金70,000円

決算時の仕訳

借方貸方
前払費用35,000円保険料35,000円

翌期に経費として計上する仕訳

借方貸方
保険料35,000円前払費用35,000円

個人事業主が本人の保険料を支払った場合の仕訳例

個人事業主が個人的に加入した生命保険の保険料1万円を事業用口座から支払ったときは、「事業主貸」を用いて次のように仕訳します。


借方貸方
事業主貸10,000円普通預金10,000円

なお、事業とプライベートの両方に使用している場合は、家事按分して事業部分を経費に計上できます。事業(50%)とプライベート(50%)の両方に使っている自動車の自動車保険料3万円を支払ったときの仕訳例は、以下の通りです。


借方貸方
事業主貸15,000円普通預金30,000円
保険料15,000円

死亡保険金を受け取った場合の仕訳例

法人が生命保険や損害保険の保険金を受け取ったときは、「雑収入」を用いて仕訳します。定期保険の死亡保険金2,000万円を受け取ったときの仕訳例は、以下の通りです。


借方貸方
普通預金20,000,000円雑収入20,000,000円

保険積立金がある場合は、その金額を取り崩し、差額を「雑収入」または「雑損失」で次のように処理します。


借方貸方
普通預金20,000,000円保険積立金10,000,000円
雑収入10,000,000円

保険料を計上する際のポイント・注意点

保険料を処理する際、以下のポイント・注意点をおさえておきましょう。

保険料を計上する際のポイント・注意点

  • 解約返戻金を受け取ったときは「雑収入」で仕訳する
  • 従業員の社会保険料は「法定福利費」で経費に計上する

解約返戻金を受け取ったときは「雑収入」で仕訳する

保険料支払時に、支払った保険料を全額経費に計上した場合、受け取った解約返戻金は全額「雑収入」で処理します。

たとえば、従業員の定期保険を解約し、解約返戻金300万円を受け取ったときの仕訳例は以下の通りです。


借方貸方
普通預金3,000,000円雑収入3,000,000円

保険積立金がある場合はその金額を取り崩し、差額を「雑収入」または「雑損失」で処理します。

従業員の社会保険料は「法定福利費」で経費に計上する

法人が負担した従業員の社会保険料は、「法定福利費」の勘定科目を用いて経費に計上できます。

法定福利費とは、企業が従業員に提供する福利厚生の中で、法律で義務付けられているもの(社会保険や労働保険)にかかる費用を処理する勘定科目です。

なお、社会保険料のうち従業員負担分は、「預り金」を用いて処理します。

まとめ

生命保険料や損害保険料を支払ったときに用いる勘定科目は「保険料」や「保険積立金」、保険金を受け取ったときに用いる勘定科目は「雑収入」です。

ただし、保険の種類や保険金受取人によって、勘定科目や仕訳方法が異なります。

また、個人事業主本人が契約している保険の保険料は、経費に計上できません。ただし、事業とプライベートの両方に使用している場合は、家事按分できます。

生命保険や損害保険に用いる勘定科目を正しく理解し、正確に会計処理しましょう。

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よくある質問

保険料とは?

保険料とは、保険契約にもとづいて契約者が保険会社に支払うものです。保険には生命保険と損害保険があり、保険の種類によって保険料を支払ったときの会計処理が異なります。

保険料の概要を詳しく知りたい方は「保険料とは?」をご覧ください。

保険料はどのような勘定科目に計上すべき?

保険料を支払ったときは「保険料」や「保険積立金」を用いて処理します。ただし、個人事業主が個人的に加入した保険の保険料は、経費に計上できません。

保険料や保険金に用いる勘定科目を詳しく知りたい方は「保険料を支払ったときに用いる勘定科目」をご覧ください。

監修 安田 亮

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

安田亮