監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所
借入利息は、金融機関などからの借入金に対して発生する利息のことです。事業資金の借入金に生じる利息は「支払利息」の勘定科目で処理します。
また、会計上、借入金と利息は個別に考える必要があるため、借入金と利息の両方の仕訳を理解しておくことが大切です。
本記事では借入利息の意味や勘定科目のほか、借入金と利息の仕訳例や仕訳時の注意点も紹介します。
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目次
- 借入利息は借入金に対して生じる利息のこと
- 借入金や利息は経費にできる?
- 借入金の利息を仕訳する際に使う勘定科目
- 【支払利息】
- 【支払利息割引料】
- 借入金や利息の仕訳に関する注意点
- 借入金は経費にならないものの仕訳が必要
- 支払利息を前払いするときは「前払費用」の勘定科目で処理する
- 自宅兼事務所の住宅ローンを返済する際は支払利息の按分が必要
- 【事例で解説】借入利息の仕訳例
- 返済期限3年の借入金のうち当月分の返済として元金と利息を事業用口座から支払った場合
- 返済期限(半年)を迎えたため元金と利息5万円を事業用口座から支払った場合
- 来期以降の事業資金として借り入れ、支払利息を当期に前払いした場合
- まとめ
- 経理を自動化し、日々の業務をもっとラクにする方法
- よくある質問
借入利息は借入金に対して生じる利息のこと
事業の継続や成長のために、金融機関などから資金を借り入れることはよくあります。借入利息とは、この借入金に対して発生する利息のことです。
借入金や利息は経費にできる?
事業に関係する借入金の返済分(元金)に関しては経費にできませんが、借入金に対して発生する利息を支払った場合は、利息分のみ経費にできます。
ただし、一見事業に関係ありそうな場合でも、利息が経費として認められないケースもあるため、注意が必要です。
たとえば、個人事業主が株式を取得するために借り入れた場合の利息は、事業所得の経費として認められません(ただし、配当所得から差し引くことは可能)。
借入金の利息が経費として認められるかどうかは、ケースバイケースのため、悩んだ場合は専門家に相談しましょう。
借入金の利息を仕訳する際に使う勘定科目
利息の仕訳で使われる勘定科目には、主に以下の2つが挙げられます。
借入利息の勘定科目
- 借入金を返済する際に利息を支払った場合は【支払利息】
- 支払利息と手形割引を利用したときの利息をまとめる場合は【支払利息割引料】
それぞれ解説します。
【支払利息】
支払利息とは、借入金を返済する場合に利息を支払ったときに使う勘定科目です。一般的に、借入金の利息を仕訳する際は「支払利息」の勘定科目を用います。
また、支払利息の勘定科目は、借入金の利息のほかに、以下のような費用の仕訳でも使うことが可能です。
支払利息として処理できる費用
- 税金の延納が認められたときの利子税
- ファクタリングをしたときの手数料
【支払利息割引料】
支払利息割引料は、金融機関からの借入金に対する利息や、手形割引を利用したときの利息(割引料)をひとつにまとめた勘定科目です。
借入金の利息は、支払利息割引料の勘定科目を用いて処理しても問題ありません。ただし、近年は支払利息割引料を用いずに、支払利息と手形売却損に分けて、個別に計上することが一般的です。
借入金や利息の仕訳に関する注意点
金融機関や自治体などから、事業に関係する融資を受けた場合は、会計上の仕訳をしなければいけません。
借入金や利息を仕訳する際はいくつか注意点があるため、確認しておきましょう。
借入金は経費にならないものの仕訳が必要
金融機関などから借り入れをすると、銀行口座に借入金が振り込まれます。
つまり、貸借対照表上では、資産科目である「普通預金」などの勘定科目と、負債科目である「借入金」の残高が増加するということです。
そのため、借入金は経費になりませんが、仕訳が必要になる点に注意しましょう。
借入金の仕訳は、返済する期間によって「短期借入金」と「長期借入金」の勘定科目で記帳します。
借入金の勘定科目
- 短期借入金:決算日の翌日を起算日として、1年以内に返済期限が到来する場合
- 長期借入金:決算日の翌日を起算日として、返済期限が1年を超える場合
なお、借入金は「借入金を受け取ったとき」「借入金を返済したとき」「決算時」のそれぞれで、状況にあわせて仕訳をしなければいけません。
支払利息を前払いするときは「前払費用」の勘定科目で処理する
前払費用は、家賃や保険料、支払利息など期間を対象に計算して支払う費用の、未経過期間に対する分を処理する勘定科目です。
企業会計では、収益や損失が発生した時点で会計処理をする「発生主義」を採用しています。
そのため、来季以降の事業資金の借り入れを行い支払利息を前払いした場合は、決算時点で支払利息を「前払費用」や「前払利息」に振り替える必要があるので、注意しましょう。
自宅兼事務所の住宅ローンを返済する際は支払利息の按分が必要
個人事業主の場合は、自宅兼事務所のように、事業で自宅の一部を使用していることもあるでしょう。このようなケースでは、自宅の住宅ローンに関しても、利息部分を経費として計上できます。
ただし、利息のすべてを経費にできるわけではありません。プライベートと事業が混在しているものに関しては按分をしなければいけないため、住宅ローンの利息も、事務所部分の面積で按分が必要です。
なお当然ですが、居住のみを目的として住宅ローンを組んだ場合は、利息を経費にすることはできません。ただし、税額控除である住宅ローン控除の適用を受けられる可能性はあります。
【家事按分】家事按分とは?個人事業主が知っておくべき経費計上の仕方や計算方法についてわかりやすく解説
【事例で解説】借入利息の仕訳例
利息の支払いが生じる主なケースは、借入金の返済時となるため、仕訳は長期借入金や短期借入金と支払利息の勘定科目がセットで用いられることが多いです。
以下、借入金と利息の仕訳の具体例を紹介します。
返済期限3年の借入金のうち当月分の返済として元金と利息を事業用口座から支払った場
返済期限が1年を超える場合は、長期借入金と支払利息の勘定科目を用いて仕訳をします。
たとえば、銀行に返済期間3年で100万円の借り入れを行い、当月分として元金5万円と利息5千円を事業用口座から支払った場合の仕訳は以下です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
長期借入金 | 50,000円 | 普通預金 | 55,000円 |
支払利息 | 5,000円 |
なお、決算時点で長期借入金の返済期限が1年以内になった場合は、長期借入金から短期借入金へ振り替える仕訳が必要です。
返済期限(半年)を迎えたため元金と利息5万円を事業用口座から支払った場合
返済期限が1年以内の場合は短期借入金と支払利息の勘定科目を用いて仕訳をします。
たとえば、銀行から半年を期限として50万円を借り入れ、返済期限を迎えたため、元金と利息5万円を事業用口座から支払った場合の仕訳は以下です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
短期借入金 | 500,000円 | 普通預金 | 550,000円 |
支払利息 | 50,000円 |
来期以降の事業資金として借り入れ、支払利息を当期に前払いした場合
来季以降の事業資金の借り入れをして、利息を前払いした場合は、決算時点で支払利息を「前払費用」に振り替える必要があります。また、決済時に振り替えた前払費用を会計年度の開始日に再度、振り替えします。
たとえば、来期の事業資金として利息10万円を前払いした場合、決算時に以下の仕訳が必要です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
前払費用 | 100,000円 | 支払利息 | 100,000円 |
会計年度の開始日には以下の仕訳をしましょう。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払利息 | 100,000円 | 前払費用 | 100,000円 |
まとめ
借入利息は借入金に対して生じる利息のことで、事業に関係する借入金の利息に関しては、経費にできます。借入金の利息を仕訳する際は、一般的に「支払利息」の勘定科目を用いるケースが多いです。
また、借入金に関しては経費にできないものの、仕訳が必要になり、返済期限に応じて「長期借入金」や「短期借入金」の勘定科目を使います。
借入金や利息の仕訳時はいくつか注意点があるため、内容を把握して適切に仕訳をしましょう。
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よくある質問
借入金の利息は経費にできる?
事業に必要な機材の購入など事業資金としての借入金に関しては、その利息分のみ経費にできます。
借入金の利息を経費にできるか詳しく知りたい方は「借入利息は借入金に対して生じる利息のこと」をご覧ください。
借入金の利息を支払った際の仕訳に使う勘定科目は?
借入金の利息は、一般的に「支払利息」の勘定科目を用いて仕訳をします。
利息の勘定科目を詳しく知りたい方は「借入金の利息を仕訳する際に使う勘定科目」をご覧ください。
監修 安田 亮(やすだ りょう)
1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。