勘定科目の基礎知識

敷金の勘定科目とは? 経費にできるケースや仕訳の具体例を紹介

監修 税理士・CFP® 宮川真一 税理士法人みらいサクセスパートナーズ

敷金の勘定科目とは? 経費にできるケースや仕訳の具体例を紹介

敷金を仕訳するときは、一般的に「敷金」または「差入保証金」の勘定科目を使いますが、場合によっては違う勘定科目を使うこともあります。

事業を行う場合は、賃貸借契約の締結が必要になることもあるため、担当者は敷金に関する会計処理を理解しておくことが大切です。

また、経営者にとっては、敷金が経費として計上できるのかも気になるところでしょう。

本記事では、敷金に用いる勘定科目のほか、敷金を経費にできるケース仕訳の具体例などを解説します。

目次

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敷金とは

敷金とは、賃借人の金銭債務を担保するために差し入れる金銭のことで、民法では以下のように定義されています。

「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。」


出典:e-Govポータル「民法(明治二十九年法律第八十九号)」

要約すると、敷金は、入居時に賃借人が賃貸人に対して預けるお金です。

敷金は家賃を滞納してしまった際の未払い分に充てられたり、退去時の原状回復に必要な汚損の修繕費などに充てられたりします。

なお契約書によっては、敷金ではなく「保証金」と記載されている場合もありますが、法的には敷金として扱うので、覚えておきましょう。

敷金は原則、返還義務がある

敷金は預かり金であるため、返還の義務があり、民法でもそのように定められています。敷金の返還が生じるタイミングは、以下のとおりです。

一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。

出典:出典:e-Govポータル「民法(明治二十九年法律第八十九号)」

賃貸人は、家賃未払い時の充当や原状回復費用に充当後の差額を、物件の明け渡し後に返還しなければいけません。

ただし、敷金に関しては、契約時にあらかじめ取り決めた金額を差し引く旨が契約書に記載されていることがあります。

いわゆる敷引特約というもので、敷引特約がある場合は、敷金から契約書に記載の金額が差し引かれて返還されるので、覚えておきましょう。

敷金と礼金の違い

賃貸契約時、敷金と一緒に支払いが生じるケースが多い費用に、礼金があります。

礼金とは、賃借人が賃貸人に対して、家賃以外に支払う謝礼金のことです。敷金は入居時に預けるお金のため、退去時に返還されますが、礼金に関しては謝礼金のため、返還されません。

敷金の勘定科目は「敷金」または「差入保証金」

賃借人側が敷金の会計処理をする際の仕訳は、一般的に「敷金」または「差入保証金」を勘定科目として使い、資産の部に記載します。

一方、賃貸人側の勘定科目は、「預り金」になり、記載するのは負債の部です。

敷金の勘定科目

  • 賃借人側:「敷金(資産の部)」または「差入保証金(資産の部)」
  • 賃貸人側:「預り敷金(負債の部)」

なお、勘定科目は法的に規定があるわけではないため、上記以外の勘定科目を使用しても問題ありません。

ただし、原則一度決めたら変更はできないため、社内でルールを決めておくようにしましょう。

敷金は経費として計上できる?

敷金は、契約終了後に物件を明け渡すと返還される預かり金のため、経費ではなく資産に計上します。そのため、敷金が全額返還される場合は、経費として計上できません。

ただし、敷金の一部が返還される場合、返還されない部分に関しては経費として計上ができます。

敷金を経費として計上できる主なケースは以下です。

敷金を経費にできる主なケース

  • 原状回復費用に充当された場合
  • 契約上、あらかじめ償却額(返還されない額)が決まっている場合

原状回復費用に充当された場合は、「修繕費」として計上します。また、あらかじめ償却額が決まっている場合は、「支払手数料」として計上しましょう。

【事例で解説】敷金の仕訳例

敷金を仕訳する際の具体例として、敷金を支払ったとき、敷金が返還されたとき、敷金を受け取ったとき(賃貸人側)に分けて紹介します。

敷金を支払ったとき

敷金を支払ったときは、いくつかパターンがありますが、まずは基本的な仕訳の例を紹介します。たとえば、敷金として50万円を現金で支払ったときの仕訳は以下のとおりです。


借方貸方
敷金500,000円現金500,000円

契約時にあらかじめ償却額が決まっていない場合は、原状回復にかかる費用がわからないため、いったん全額を資産とする会計処理を行います。

敷金が返還されたとき

敷金が返還されたときの仕訳を紹介します。たとえば、現金50万円で支払った敷金が、原状回復費用で使われることなく、全額返還された場合の仕訳は以下です。


借方貸方
現金500,000円敷金500,000円

敷金が全額返還された場合は、支払ったときに計上した資産を減らす仕訳を行います。

また、敷金が原状回復費用として使われ、一部が返還される場合もあります。たとえば、現金で支払った50万円のうち、10万円が原状回復費用として使われた場合の仕訳は以下です。


借方貸方
現金400,000円敷金500,000円
修繕費100,000円

敷金を受け取ったとき

賃貸人側が敷金を受け取ったときは、勘定科目の「預り敷金」を使います。たとえば、50万円の敷金を現金で受け取った場合の仕訳は以下のとおりです。


借方貸方
現金500,000円預り敷金500,000円

また、敷金の一部を原状回復に充てて、返還した場合は、原状回復にかかった部分を「売上」として計上します。

たとえば、50万円の敷金のうち、原状回復費用として10万円差し引いた金額を返還した場合の仕訳は、以下のとおりです。


借方貸方
預り敷金500,000円売上100,000円
現金400,000円

なお、全額返還した場合は、売上をなくして、現金部分を50万円と記載します。

敷金を仕訳する際の注意点

敷金を仕訳するときは、いくつか注意点があります。特に覚えておきたい注意点を紹介するので、確認しておきましょう。

償却額が20万円以上の場合は「長期前払費用」の勘定科目を使う

賃貸契約時に敷引特約があるときは、償却額が20万円未満の場合と、償却額が20万円以上の場合で仕訳の方法が異なるため、注意しましょう。

償却額が20万円未満の場合は、「支払手数料」として一括で仕訳が可能です。たとえば、敷金50万円のうち、10万円の返還がないことが契約時にわかっている場合は、以下のように仕訳をします。


借方貸方
敷金400,000円現金500,000円
支払手数料100,000円

一方、償却額が20万円以上の場合は繰延資産となり、勘定科目は「長期前払費用」を使います。

契約期間が5年未満の場合はその年数で均等割、5年以上の場合は5年で均等割して、支払手数料として償却しましょう。また、期中に支出した場合は、月割り計算が必要です。

たとえば、3年契約で敷金100万円のうち、30万円の返還がないことが契約時にわかっている場合は、以下のように仕訳をします。

【契約時】

借方貸方
敷金700,000円現金1,000,000円
長期前払費用300,000円

【期末】

借方貸方
支払手数料100,000円長期前払費用100,000円

上記のように、毎年度の期末に10万円(償却額30万円÷償却年数3年)を償却します。

敷金は消費税の対象になる場合がある

敷金は預り金のため、原則消費税の対象外です。ただし、事務所など事業用として賃貸借契約を締結し、かつあらかじめ償却がわかっている場合は、返還されない部分が消費税の対象になるので、注意しましょう。

なお、居住物件として賃貸借契約を行う場合は、返還されない部分に関しても非課税です。たとえば、借り上げ住宅や社員寮として契約する場合は、消費税の対象にはなりません。

借方と貸方で差額が発生しないように注意する

敷金の仕訳に限ったことではありませんが、仕訳する際は借方と貸方に差額が発生しないよう注意が必要です。借方と貸方が一致していない場合は、仕訳ミスがあるため、しっかりと確認しましょう。

特に敷金の仕訳は、借方に2つの勘定科目を記載する場合もあるため、気をつけてください。

まとめ

敷金は、入居時に賃借人が賃貸人に預けるお金のことです。仕訳をするときの勘定科目は、一般的に「敷金」または「差入保証金」を使います。

敷金は、物件の明け渡し時に返還されるため、基本的に経費として計上できませんが、原状回復費用として差し引かれた場合や、契約時にあらかじめ償却額が決まっている場合は、返還されない部分を経費として計上できます。

敷金の仕訳方法は、償却額や契約期間によって異なりますが、ある程度パターンが決まっているので、適切な仕訳ができるように把握しておきましょう。

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よくある質問

敷金の仕訳に使う勘定科目は?

敷金の勘定科目は、一般的に「敷金」または「差入保証金」を使います。

敷金の勘定科目を詳しく知りたい方は「敷金の勘定科目は「敷金」または「差入保証金」」をご覧ください。

敷金は経費にならない?

敷金の返還されない部分に関しては経費として計上できます。償却額があらかじめ決まっている場合や、原状回復費用として充当された場合など、ケースによって使用する勘定科目が変わるため、注意が必要です。

敷金と経費の関係を詳しく知りたい方は「敷金は経費として計上できる?」をご覧ください。

監修 宮川 真一

岐阜県大垣市出身。1996年一橋大学商学部卒業、1997年から税理士業務に従事し、税理士としてのキャリアは25年以上に及ぶ。現在は、税理士法人みらいサクセスパートナーズの代表としてコンサルティング、税務対応を担当。また、事業会社の財務経理を担当し、複数企業の取締役・監査役にも従事。

税理士・CFP® 宮川真一