勘定科目の基礎知識

繰越利益剰余金はどんな勘定科目? 利益剰余金との違いや具体的な仕訳例も解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

繰越利益剰余金はどんな勘定科目? 利益剰余金との違いや具体的な仕訳例も解説

繰越利益剰余金は、企業が獲得した利益の累計を表す勘定科目です。本記事では、繰越利益剰余金の概要具体的な仕訳例を紹介します。

なお繰越利益剰余金は、任意積立金の積み立てや株主に対する配当の原資です。経営不振などの理由により、マイナス残高になるケースもあります。

名称が似ている「資本剰余金」「利益剰余金」「その他利益剰余金」との違いもあわせて解説します。混同しやすい人は、参考にしてください。

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目次

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繰越利益剰余金とは

繰越利益剰余金とは、企業が得た利益を繰り越して表示するための勘定科目です。貸借対照表上では、純資産の部に含まれます。

利益が累積される性質をもつため、1会計年度の決算の結果だけではなく、複数年にわたる企業の経営成績を把握できる数字です。

繰越利益剰余金の使途は限定されていません。定款での定めや株主総会の決議により、各種任意積立金や株主に対する配当金に振り替えられます。

また繰越利益剰余金は、プラスの残高ばかりが続くわけではありません。経営成績が悪く赤字が続いたなどの理由により、マイナスとなるケースもあります。

繰越利益剰余金は、「当期純利益」「繰越利益」「任意積立金の取り崩し額」の合計から、「期中の配当額」および「配当に伴う利益準備金積立額」を差し引いた金額です。

繰越利益剰余金 = 当期純利益 + 繰越利益 + 任意積立金の取り崩し額 − 期中の配当額 + 配当に伴う利益準備金積立額

また株主資本の項目に含まれるため、決算の際には決算書のひとつである「株主資本等変動計算書」に増減内容の記載が必要です。

貸借対照表での位置づけ

繰越利益剰余金は、貸借対照表のなかで純資産の部「株主資本」に分類されます。


純資産の部
株主資本xxx,xxx
 資本金xx,xxx
 資本剰余金xx,xxx
  資本準備金xxx,xxx
  その他資本準備金x,xxx
 利益剰余金xxx,xxx
  利益準備金xxx,xxx
  その他利益剰余金x,xxx
 自己株式xx,xxx

株主資本は「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」「自己株式」に区分され、繰越利益剰余金は「利益剰余金」のうちの「その他利益剰余金」に含まれます。

利益剰余金・その他利益剰余金・資本剰余金との違い

「利益剰余金」は、純資産の項目のひとつです。企業が獲得し、内部留保している利益の全体を指します。

「利益剰余金」は「利益準備金」と「その他利益剰余金」に分けられます。「その他利益剰余金」の内訳は「繰越利益剰余金」と「任意積立金」です。

「利益準備金」は、会社法によって義務付けられている積立金です。「資本準備金」との合計額が、資本金の額の4分の1に達するまで積み立てなければはなりません。また株主への配当を行う際には、配当金の額の10分の1以上の積み立てが必要です。

なお「資本剰余金」も純資産項目のうちのひとつです。株主から得た資金のうち、資本金に組み入れていないお金を指します。

「利益剰余金」「その他利益剰余金」「資本剰余金」は、「繰越利益剰余金」と名称は似ていますが、それぞれ性質は異なります。混同しないよう注意しましょう。

任意積立金とは

「その他利益剰余金」に含まれる「任意積立金」とは、企業が任意に積み立てるお金です。

任意積立金の種類として、以下のような積立金が挙げられます。

主な任意積立金

  • 別途積立金:特に使途を定めない積立金
  • 修繕積立金:自社で所有しているビルやオフィスの修繕に備えるための積立金
  • 圧縮積立金:固定資産などの圧縮記帳を行うための積立金
  • 退職手当積立金:従業員の退職手当の支払いに備えるための積立金
  • 配当平均積立金:一定の額の株主配当に備えるための積立金

任意積立金は任意であり、積み立ては義務付けられていませんが、積み立てるには定款もしくは株主総会の決議が必要です。

繰越利益剰余金がマイナスとなる場合

当期純損失(赤字)が発生した場合は、繰越利益剰余金の残高が減少します。当期純損失の金額が繰越利益剰余金に反映されるためです。

つまり赤字経営が継続すれば、繰越利益剰余金の残高がマイナスとなるケースもあり得ます。

また任意積立金への振り替えや、株主に対する配当を行った際も、繰越利益剰余金の残高は減少します。

繰越利益剰余金がプラスとなる場合

当期純利益(黒字)が発生した場合、繰越利益剰余金の残高が増加します。当期純利益の金額が繰越利益剰余金に反映されるためです。

また赤字の欠損を補填するため、利益準備金・資本剰余金などほかの科目から繰越利益剰余金に振り替えた場合も、残高としては増加します。

【事例で解説】繰越利益剰余金の仕訳例

繰越利益剰余金の具体的な仕訳例を解説します。

当期純利益・当期純損失を繰越利益剰余金に振り替える場合

当期純利益や当期純損失を繰越利益剰余金に振り替える際の仕訳例を紹介します。

例:当期純利益50万円を繰越利益剰余金に振り替える

借方貸方
当期純利益500,000円繰越利益剰余金500,000円

例:当期純損失10万円を繰越利益剰余金に振り替える

借方貸方
繰越利益剰余金100,000円当期純損失100,000円

繰越利益剰余金から配当金を支払う場合

繰越利益剰余金から配当金の支払を実施する際の仕訳例を紹介します。なお、配当金の額の10分の1を利益準備金に積み立てるケースを想定しています。

例:株主総会で100万円の配当が決議された

借方貸方
繰越利益剰余金1,100,000円未払配当金
利益準備金
1,000,000円
100,000円

配当金の支払時

借方貸方
預金1,000,000円預金1,000,000円

繰越利益剰余金から任意積立金に振り替える場合

繰越利益剰余金から任意積立金に振り替える際の仕訳例を紹介します。なお、積立金の勘定科目は自社の内容にあわせて適宜選択してください。

例:繰越利益剰余金から、使途を定めない別途積立金として10万円を積み立てる

借方貸方
繰越利益剰余金100,000円別途積立金100,000円

例:繰越利益剰余金から、退職手当積立金として30万円を積み立てる

借方貸方
繰越利益剰余金300,000円退職手当積立金300,000円

退職手当積立金から退職手当50万円を支払う場合

借方貸方
退職手当積立金500,000円預金(または現金など)500,000円

繰越利益剰余金の欠損を補填する場合

繰越利益剰余金の欠損(マイナス)を補填する際の仕訳例を紹介します。

例:繰越利益剰余金の欠損20万円を資本準備金から補填する

借方貸方
資本準備金200,000円繰越利益剰余金200,000円

まとめ

繰越利益剰余金は、純資産の部「利益剰余金」の一部に含まれる勘定科目で、企業が得た利益を繰り越して表示します。

1会計年度の損益計算書では把握しづらい複数年の利益の蓄積状態を把握できます。

繰越利益剰余金の使途は、法による定めはありません。定款での定めや株主総会での決議により、各種任意積立金や株主配当金へ振り替えられます。

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よくある質問

繰越利益剰余金とは?

繰越利益剰余金は、企業が獲得した利益を繰り越して表示する勘定科目で、貸借対照表上の純資産の一部です。

繰越利益剰余金の残高は利益の累積であるため、複数年の企業の経営成績を把握できます。

使途は限定されておらず、各種任意積立金や株主へ配当を行う際の原資とされます。

繰越利益剰余金を詳しく知りたい方は、「繰越利益剰余金とは」をご覧ください。

資本剰余金・利益剰余金・その他利益剰余金との違いは?

「その他利益剰余金」は「繰越利益剰余金」と「任意積立金」で構成され、「利益剰余金」は「その他利益剰余金」と「利益準備金」で構成されます。

繰越利益剰余金は、その他利益剰余金を構成する一部であり、利益剰余金の一部でもあります。

資本剰余金は株主から得たお金のうち、資本金に組み入れられていないお金のことで、利益剰余金とは性質が異なるものです。

資本剰余金・利益剰余金・その他利益剰余金を詳しく知りたい方は、「資本剰余金・利益剰余金・その他利益剰余金」をご覧ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策