個人事業主が経費計上できるのは、原則として事業にかかわる費用のみです。そのため、国民年金保険料は経費計上できません。

国民年金保険料を事業用のお金から支払った場合には仕訳をしなければならず、「事業主賃」の勘定科目を使用します。

本記事では、個人事業主が国民年金保険料を支払った際の仕訳方法について詳しく解説します。

• 国民年金の勘定科目は何になる？
• 国民年金基金や付加年金の取り扱い
• 【事例で解説】国民年金の仕訳
• 国民年金保険料を現金で支払った場合
• 国民年金保険料をクレジットカードで支払った場合
• 国民年金保険料を口座振替で支払った場合
• 厚生年金保険料は法定福利費で計上する
• 厚生年金の仕訳例
• 国民年金を支払う上で知っておきたいポイント
• 国民年金保険料は社会保険料控除の対象になる
• 前納すれば割引を受けられる
• クレジットカードで支払いできる
• よくある質問
• 確定申告をかんたんに終わらせる方法
• まとめ

個人事業主が国民年金保険料を支払った場合、その勘定科目は「事業主賃」になります。

そもそも国民年金保険料は経費計上できない費用のため、プライベート用の口座から納付した場合には、基本的に仕訳の必要はありません。

ただし、事業用の現金や銀行、クレジットカードなどの口座から国民年金保険料を納めた場合には、上記の勘定科目で仕訳をします。

事業主貸とは、事業用の資金を使用して、事業以外の支払いをしたことを記録するための勘定科目です。事業に関係がない支出なので経費にはなりませんが、資金の移動を記帳しておかなければなりません。

【関連記事】
事業主貸とは？事業主借との違いや仕訳方法、具体例を解説

国民年金と同様、国民年金基金や付加年金も「事業主貸」の勘定科目で処理します。

国民年金基金とは、個人事業主が国民年金に上乗せして納められる年金のことで、将来的に受給できる年金を増額できる制度です。納付額そのものを経費にはできませんが、事業用口座から振替などで帳簿をつける場合は、国民年金と同様に勘定科目は「事業主貸」にしましょう。

付加年金とは、国民年金に一律400円を上乗せすることで年金の受給額を増やせる仕組みです。任意加入被保険者か、国民年金第1号被保険者が対象になります。付加年金も、帳簿付をする場合に「事業主貸」の勘定科目で処理します。

個人事業主が、国民年金保険料を納めた場合の以下の仕訳例を紹介します。

いずれも事業用の資金やカードで支出したケースです。

個人事業主が国民年金保険料を事業用の銀行口座から納めた際、次のように仕訳します。

【例】国民年金保険料（16,520円）を事業用口座から支払った場合

なお、保険料の過払いによる還付がある場合は、過払い金額のみ仕訳を取り消します。

国民年金保険料を事業用クレジットカードで支払った場合の仕訳は、以下のとおりです。

【例】国民年金保険料（16,520円）を事業用クレジットカードで支払った場合

納付時の仕訳は以下のとおりです。

引き落とし時の仕訳は以下のとおりです。

なお個人用のクレジットカードで納付する場合は、記帳する必要はありません。

国民年金保険料を口座振替で支払った場合の勘定科目は、以下のとおりです。

【例】国民年金保険料（16,520円）を事業用口座から支払った場合

上記はあくまで事業で使用している口座で支払った場合の仕訳例です。プライベート用の口座では、そもそも仕訳の必要がないことを覚えておきましょう。

事業主が従業員の厚生年金保険証を支払った場合の勘定科目は「法定福利費」です。

また、厚生年金は従業員と事業主で折半して支払うもので、従業員の給与から差し引いた厚生年金保険料は「預り金」または「法定福利費」で計上します。

経費として計上するのは、あくまで事業主が支出した分のみです。そのため、従業員の給与から差し引いた厚生年金保険料を法定福利費として仕訳している場合は間違えないように備考欄などに「従業員負担分」などコメントを入れておきましょう。

法人が支払った従業員の厚生年金保険料が400,000円であった場合は「法定福利費」を使って仕訳します。発生主義の場合は、以下のように翌月支払う予定の健康保険料を未払費用として計上しましょう。

発生主義は実際に支払ったタイミングではなく、取引が発生したタイミングで費用と収益を計上することをいいます。

厚生年金保険料を含めた健康保険料の仕訳例について詳しく知りたい方は別記事「健康保険料の勘定科目は？ 種類と仕訳例を紹介」をご覧ください。

国民年金保険料を納める際に知っておきたいポイントに関して、次の3点を解説します。

上述したように、国民年金保険料は経費計上できません。ただし、所得控除の「社会保険料控除」の対象になります。

社会保険料控除とは、1年間で支払った年金保険料や健康保険料などの社会保険料を所得から控除する制度です。原則、社会保険料控除はその年に支払った社会保険料全額が所得額から控除されます。

個人事業主の場合は、確定申告で社会保険料控除が適用されます。毎年10〜11月ごろ日本年金機構より郵送される「社会保険料（国民年金保険料）控除証明書」を、確定申告書に添付し、申告書に必要事項を記入します。

確定申告で社会保険料控除を受けることで、所得税・住民税の納税にかかる負担を軽減できるでしょう。

なお、国民年金基金と付加年金も社会保険料控除の対象となります。

出典：国税庁「No.1130 社会保険料控除」

国民年金には、保険料の前払い制度があります。下表の通り、まとめて支払うと割引が適用され、納める期間が長いほど保険料を抑えられます。

また口座振替で納めた場合、納付書払いやクレジットカードで納付するより、割引額が大きくなります。

国民年金保険料の支払方法として、クレジットカード会社による立替納付があります。

クレジットカード払いは、納付漏れを防ぎ、金融機関の窓口やコンビニなどに出向く手間を省ける点がメリットです。また、クレジットカードによっては、ポイントがためられる場合があります。

国民年金や国民健康保険の保険料は、経費にできません。経費にはできないものの、確定申告時に所得控除の対象になります。

詳しくは記事内「国民年金を支払う上で知っておきたいポイント」をご覧ください。

個人事業主の場合、事業に関する口座で支払いが発生した際「事業主貸」で仕訳します。ただし、プライベート用の口座から納付した場合、仕訳の必要はありません。

詳しくは記事内「国民年金の勘定科目は何になる？」をご覧ください。

国民年金基金は国民年金と同様、経費にはできません。ただし、所得控除の対象にはなります。

詳しくは記事内「国民年金基金や付加年金の取り扱い」をご覧ください。

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個人事業主が支払う国民年金保険料は、事業に直接関係のない個人の支出であるため、経費として計上はできません。そのため、事業用の資金から国民年金保険料を支払った場合、会計上は「事業主貸」として処理するのが基本となります。

現金・クレジットカード・口座振替といった支払方法によっても仕訳が異なるため、帳簿処理のミスを防ぐためにもそれぞれのパターンを理解しておきましょう。

一方、国民年金保険料は社会保険料控除の対象に含まれるため、確定申告時に正しく申告することで、所得税や住民税の減税につながります。

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