副業の基礎知識

副業から起業はできる? 会社員から起業するメリットや事業内容のアイデアおよび注意点を解説

監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

副業から起業はできる? 会社員から起業するメリットや事業内容のアイデアおよび注意点を解説

近年、働き方改革の一環で、副業を解禁している企業が増加中です。副業には、収入の確保やスキルアップなどさまざまなメリットがあり、事業規模が順調に拡大すれば、将来的に独立・起業できる場合もあります。

一方で、年間所得が一定額を超えた場合に確定申告の義務が発生するなど、注意しなければいけない点もあります。

本記事では、副業から起業する利点や、起業につながる副業アイデア、注意点などを紹介します。

目次

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サラリーマン(会社員など)にとって副業のメリットとは

副業は収入増加だけでなく、スキルアップやキャリア形成など、サラリーマン(会社員など)にとってさまざまなメリットがあります。起業に向けて経験を積むことが可能なため、副業のメリットをひとつずつ確認してみてください。

本業以外の収入源を確保できる

副業をすることで、本業以外に収入源ができ、生活の安定につながります。終身雇用を前提として右肩上がりに収入が上昇していた時代とは異なり、「給与が上がらない」「むしろ以前より下がった」という声も聞かれる時代になりました。

副業では、ご自身のスキルを活かして収入を得られます。優れたスキルやアイデアがある場合は、副業の収入が本業の収入を上回ることもあります。少額でも、本業以外に収入源を確保できれば安心感につながるでしょう。

スキルアップや学びの機会として有用

収入面だけでなく、スキルアップや学びの機会を得られることも副業のメリットです。副業は個人の視野を広げ、本業だけでは気付かなかった多くの可能性や、自分自身のスキルを拡張するチャンスとなります。

多くの場合、人々が普段の仕事で得られる知識や経験は限られており、新しいことを学ぶ機会も限定的です。

しかし、副業を通じて、全く新しい分野の知識や技術を学ぶことができます。ご自身が希望する分野・領域の副業を選んで、スキルがない状態からチャレンジすることが可能です。

人脈の形成に役立つ

会社員でも人脈を構築することは可能ですが、異業種の人材と出会う機会は少ないでしょう。

たとえば、本業で経理業務に従事している人は、税理士や会計士とは容易に出会えますが、イラストレーターなど、異業種で活躍している人材と出会うことは困難です。副業でイラストを描いて販売すれば、業界関係者と出会えるかもしれません。

今後起業を検討している人は、あらかじめ人脈をつくっておくことで、起業が楽になることも考えられます。

経営感覚が身につく

副業を行っていると、会社員生活だけでは身につかなかった経営スキルを身につけられます。

会社員は、決まった業務をこなすことで一定の給与を得られ、経理業務などは勤め先が行ってくれます。しかし、副業の場合、案件の獲得や請求書の発行から、経理処理などの事務作業に至るまでをご自身で遂行しなければいけません。

事業を進めていれば、契約先からの入金が遅れたり、別の事業者に発注したりする可能性もあります。そのような問題に対処していくうちに、会社員では身につけられない経営感覚が身につくでしょう。

いきなり起業する前に、そのような経営感覚を身につけられるのは大きなメリットでしょう。

会社を辞めずに起業のアイデアを試せる

起業で成功するかどうかは、挑戦しないとわからない部分もあります。このため、見通しが立たない状態で会社を辞めると、起業が失敗した際に取り返しがつきません。会社員を続けながら副業として事業を営めば、最悪失敗した際のリスクを抑えられます。

思い切って会社を辞めて自分を追い込むことで成功する人もいますが、慎重に行動したい場合は、まず副業で試すほうがよいでしょう。

副業が軌道に乗らなくても、本業を続けていれば一定の収入を確保できます。一定期間経過後、資金を確保できてから再び、本業とは異なる事業を副業として行い、起業を目指すことも可能です。

終業後や土・日・祝日に副業をするのは負担かもしれませんが、収入減のリスクを抑えつつ、事業を育てられる点が副業のメリットです。

起業のための資金を貯められる

起業するためには開業資金や軌道に乗るまでの生活費など、さまざまな費用が必要です。そのため本業と合わせて副業でも貯蓄を増やしていければ、その分起業するまでの期間を縮められます。

開業にかかる経費は、小売業であれば、商品の仕入れ代金、お店や事務所を借りるための保証金や家賃などが必要です。また、個人事業主の場合、開業届を提出する際に費用がかかりませんが、法人の場合は設立登記などの費用に30万円程度かかります。

多くて困ることはないため、起業のためのスキルを磨きながらお金を貯めていきましょう。

【関連記事】
開業資金に助成金活用!ポイントを徹底解説【2023年最新】個人事業主が開業する際に活用できる助成金・補助金・支援金について解説

副業が注目されている理由・背景

近年、副業が注目されている理由・背景には、国(厚生労働省など)が「働き方改革」の一環で副業・兼業を推進していることがあります。

厚生労働省公式サイトで「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が策定・公開され、企業が副業・兼業を容認する雰囲気が醸成されたこともあり、近年、副業を開始する人が増加中です。

また、物価が上がっていく中で、収入を上げ実質的な手取りを増やそうとする動きも活発で、収入は少なくても自分が好きなことでお金を稼ぎたいと考える人も多くいます。

これらの理由から、現在副業が注目されています。


出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
出典:厚生労働省「副業・兼業」

「副業で起業する」とはどういうことか?

副業が軌道に乗ってきたら、起業するのもひとつの方法です。具体的に「副業で起業する」とはどういうことなのでしょう。会社に勤めたまま起業できるのか、どういった手順で起業するのかなどを解説します。

起業する前に就業規則を確認しよう

基本的に、本業終業後の時間帯や土・日・祝日など、プライベートの時間をどう使うかは、個人の裁量に委ねられます。しかし、会社の就業規則で副業が禁止されているにもかかわらず副業を行っていた場合は、就業規則違反を理由として懲戒処分を受けるリスクもあります。

副業で起業する前に、社内ルールを確認しましょう。なお、就業規則に「原則禁止」と書かれていても、上司に相談すれば容認されるケースもあります。

所得が20万円を超えたら確定申告する

副業の年間所得(1月1日から12月31日までに得た所得)が20万円を超えた場合、確定申告しなければいけません。納めるべき税金が発生しているにもかかわらず、確定申告および納税の義務を怠った場合、追徴課税などのペナルティを受ける可能性があります。

なお、1年目から青色申告で確定申告する場合は、「開業届」や「青色申告承認申請書」を税務署に提出しておきましょう。

副業で確定申告が必要になりそうな人は、下記の記事もあわせて読んでおきましょう。

【関連記事】
会社員の副業はいくらから確定申告が必要?副業の開始前に知るべき手続きや注意点について解説
開業届とは? 個人事業主が知っておくべき基礎知識や提出するメリット・注意点について解説
青色申告承認申請書とは?書き方やいつまでに提出すべきか詳しく解説します

個人事業主として起業する

副業で起業する際、一番費用も手間もかからない方法は、個人事業主として開業(起業)することです。個人事業主となるためには、税務署に開業届を提出する必要があります。

開業届は、開業の1ヶ月以内に出すことが原則ですが、開業届を出さなくても罰則はありません。

開業届を出したからといって会社を辞める必要はなく、売上の規模が小さくても開業届の提出は可能です。

開業届の用紙は税務署でもらえるほか、国税庁のホームページからダウンロードも可能です。所轄の税務署は「国税局・税務署を調べる」から検索できます。

書き方がわからない場合は、freee開業を活用しましょう。開業に関する知識がなくても、ステップに沿って入力していくだけで開業届を作成できます。


出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」

法人として起業する

会社に勤めながら、法人の代表として活動する人もいます。しかし、法人として起業する場合、経理などの事務作業に割かなければいけない時間が増えるため、本業は辞めるケースが多いです。

また、法人として起業する場合、登記のためにある程度の費用がかかります。費用面での負担が大きい点を踏まえて、十分な資金を蓄えたうえで、法人を設立しましょう。

会社設立の流れは下記を参考にしてください。

【関連記事】
会社設立の流れを徹底解説!株式会社を設立するメリットや注意点について

フランチャイズ契約の締結も選択肢のひとつ

フランチャイズ契約を締結し、フランチャイズチェーン本部からサポートを受けながら起業するのも1つの選択肢です。フランチャイズであれば、商品の供給を受けられるほか、経営ノウハウも提供してもらえます。

ただし、デメリットとしてはロイヤリティを支払わなければいけません。また、独自性を出せず、画一的な運営を余儀なくされる場合があり、昨今の多様化した消費者ニーズに対応しにくい点にもご注意ください。

副業で起業するためのアイデアとは

副業は単に収入を増やす手段ではなく、自己のスキルセットを充実させ、職業的な幅を広げる機会を提供します。

起業するアイデアには、スマホを使って簡単にできるものから、専門的なスキル・経験を活かせるものまで、さまざまあります。

以下は、起業を目指す人に適した副業アイデアの具体例です。

起業を目指す人に適した副業アイデアの具体例

  • 空き時間にダブルワークで稼ぐ
  • 自宅にいながらフリマアプリやオークションサイトに出品して稼ぐ
  • オークションサイトなどで慣れたらネット通販で稼ぐ
  • アンケートサイトならスマートフォン1台で移動中でも稼げる
  • 空いた部屋を活用して民泊で稼ぐ
  • 外国人を対象に旅行体験を提供して稼ぐ
  • 得意分野を活かして講師として稼ぐ
  • 株・FX(外国為替証拠金取引)などの投資で稼ぐ
  • アフィリエイト広告やSNSで稼ぐ
  • 得意な分野・プロのスキルを活かして稼ぐ

未経験で始める場合は、まずは簡単な副業から挑戦しましょう。たとえば、オークションサイトでの不用品販売を経験すれば、物販の流れを理解できます。

商品の見せ方を考えて写真を撮影したり、説明文やキャッチコピーを考えたりすることで、マーケティングの基本も身につけられるでしょう。

元手がかからないため、赤字が出る可能性を気にせずに済む点もメリットです。

副業からの起業を成功させるコツ

本業がありながら副業での起業を成功させるには、PDCAサイクルを回して、施策の効果を検証し、改善し続けましょう。PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の プロセスを繰り返して、業務の改善や効率化を図る手法です。

また、上司からの指示・命令にしたがうのではなく、ご自身で判断・決断しなければいけない場面が多いため、経営に関する悩みを相談できる人を探すことも大切です。

身近に相談できる人がいない場合は、「よろず支援拠点」の活用もご検討ください。よろず支援拠点とは、中小企業・小規模事業者・創業予定者などのために国が設置した経営相談機関です。無料かつ回数制限なく、専門家(弁護士・税理士・中小企業診断士など)に相談できます。


出典:よろず支援拠点全国本部(独立行政法人中小企業基盤整備機構)「よろず支援拠点とは」

まとめ

サラリーマン(会社員など)が副業を開始すれば、副業による収入を本業の収入に上乗せできます。また、スキルアップや学びの機会として有用で、人脈の形成にも役立つでしょう。

そのほか、経営感覚が身につくことや、会社を辞めずに起業のアイデアを試せること、起業に必要な資金を貯められることも利点です。

近年、働き方改革の一環で国が副業を推進していることもあり、副業を容認する企業が増加しました。起業を検討している人は、まずは会社で働きながら副業にチャレンジし、事業が軌道に乗った段階で本格的な起業へと進みましょう。

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個人事業を始める際には「開業届」を、青色申告をする際にはさらに「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。 記入項目はそれほど多くはありませんが、どうやって記入したらいいのかわからないという方も多いと思います。

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freee開業で作成可能な5つの届出

1. 個人事業の開業・廃業等届出書
開業届のことです。

2. 所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は事業開始日から2ヶ月以内、もしくは1月1日から3月15日までに提出する必要があります。期限を過ぎた場合、青色申告できるのは翌年からになるため注意が必要です。

3. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
家族や従業員に給与を支払うための申請書です。

4. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
原則毎月支払う源泉所得税を年2回にまとめて納付するための手続です。毎月支払うのは手間ですので、ぜひ提出しましょう。

5. 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告をする場合に、家族に支払う給与を経費にするための手続です。青色申告をして家族に給与を支払う場合は必ず提出しましょう。

freee開業の使い方を徹底解説

freee開業を使った開業届の書き方は、準備→作成→提出の3ステップに沿って必要事項を記入していくだけです。

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Step1:準備編

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準備編では事業の基本情報を入力します。迷いやすい職業欄も多彩な選択肢のなかから選ぶだけ。


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事業の開始年月日、想定月収、仕事をする場所を記入します。
想定月収を記入すると青色申告、白色申告のどちらが、いくらお得かも自動で計算されます。

Step2:作成編

次に、作成編です。


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申請者の情報を入力します。
名前、住所、電話番号、生年月日を記入しましょう。


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給与を支払う人がいる場合は、上記のように入力をします。
今回は準備編で「家族」を選択しましたので、妻を例に記入を行いました。


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さらに、見込み納税金額のシミュレーションも可能。
※なお、売上の3割を経費とした場合の見込み額を表示しています。経費額やその他の控除によって実際の納税額は変化します。

今回は、青色申告65万円控除が一番おすすめの結果となりました。

Step3:提出編

最後のステップでは、開業に必要な書類をすべてプリントアウトし、税務署に提出します。


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入力した住所をもとに、提出候補の地区がプルダウンで出てきます。地区を選ぶと、提出先の税務署が表示されますので、そちらに開業届けを提出しましょう。


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届け出に関する説明とそれぞれの控えを含め、11枚のPDFが出来上がりました。印刷し、必要箇所に押印とマイナンバー(個人番号)の記載をしましょう。

郵送で提出したい方のために、宛先も1ページ目に記載されています。切り取って封筒に貼りつければ完了です。

いかがでしょう。
事業をスタートする際や、青色申告にしたい場合、切り替えたい場合など、届出の作成は意外と煩雑なものです。

しかし、freee開業を活用すれば、無料ですぐに届け出の作成が完了。

また、確定申告書の作成もfreee会計を使えば、ステップに沿ってすぐに完了します。
freee開業freee会計を使って、効率良く届出を作成しましょう。

よくある質問

サラリーマン(会社員など)が副業するメリットは?

サラリーマンが副業を開始すれば、本業以外の収入源を確保でき、所得を上乗せできます。スキルアップや学びの機会としても有用で、人脈形成に役立ち、経営感覚も磨けるでしょう。起業のアイデアを試せることや資金を蓄えられることも利点です。

サラリーマン(会社員など)が副業するメリットを詳しく知りたい場合は、記事内「サラリーマン(会社員など)にとって副業のメリットとは」をご確認ください。

副業からの起業を成功させるために必要なことは?

副業からの起業を成功させるためには、PDCAサイクルを回して、施策の検証・改善を続けることが欠かせません。また、経営に関する悩みを相談できる人を探すことも大切です。身近に悩みを相談できる人がいない場合は、よろず支援拠点の活用を検討しましょう。

副業からの起業を成功させるために必要なことを詳しく知りたい場合は、記事内「副業からの起業を成功させるコツ」をご確認ください。

監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)

神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。

北田 悠策

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