会社員などの給与所得者は、勤め先の会社で年末調整を受けられるため原則として確定申告が不要です。しかし、副業の所得が20万円を超える場合は、個人で確定申告をしなければなりません。
また、副業の所得が20万円以下の場合でも、医療費控除や住宅ローン控除などを受けるときや税金の還付を受けるときには、確定申告が必要になります。また、確定申告をしなかった場合でも、住民税の申告は別途する必要があります。
本記事では、副業所得が20万円以下でも確定申告が必要になるケースや、副業の所得の種類・特徴について解説します。
目次
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副業所得20万円以下は確定申告しなくていい?
副業所得が20万円以下の場合は原則として確定申告をする必要はありません。
所得とは、「収入」から「必要経費」を差し引いた金額のことです。所得を得るためにかかった費用は経費として収入額から差し引くことができます。
具体的には、事業で販売する商品の仕入れ代金などが必要経費に該当します。このほか、取引先との接待費や交通費など、収入を得るために間接的に要した費用も経費とすることが可能です。
たとえば、副業で行っているブログ運営による広告収入が年間25万円だった場合、何も経費がかかっていなければ所得は25万円になるため、確定申告が必要です。
しかし、サーバー費用や参考書籍の代金・画像編集ソフトの購入費・セミナー参加費など、ブログを運営するために必要な経費の合計が6万円だった場合、所得は19万円(25万円 - 6万円)で20万円以下となるため、確定申告の必要はありません。
なお、所得は税法上10種類に分類されますが、必要経費が認められるのは事業所得・雑所得・不動産所得です。副業でパートやアルバイトをしている場合、収入は給与所得となるため経費は認められません。
出典:国税庁「やさしい必要経費の知識」
家賃や水道光熱費は経費として認められる?
自宅を仕事場にしている場合、家賃や水道光熱費などの「家事関連費」は仕事として利用している分について経費として計上できます。家事関連費を仕事用とプライベート用で区分することを「家事按分」といいます。
家事按分は、家賃であれば床面積、水道光熱費であれば使用時間など、合理的な基準で按分する必要があります。
副業所得が20万円以下でも確定申告が必要な場合
副業の所得が20万円以下でも、確定申告が必要となる場合があります。たとえば、本業の年収が2,000万円を超える場合は、会社員であっても年末調整の対象とならないので、個人で確定申告をしなければなりません。
このほかにも、どのようなケースで確定申告を行う必要があるのかを解説します。
医療費控除や住宅ローン控除などを受けるとき
医療費控除や住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)などの年末調整の対象とならない所得控除を受ける場合は、個人で確定申告をする必要があります。
所得控除は以下の15種類です。
所得控除一覧
控除の種類 | 概要 | 控除額 |
雑損控除 | 災害や盗難、横領によって損害を受けた時に適用される | 以下のいずれか多い方 ・(差引損失額)-(総所得金額等)×10% ・(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円 |
医療費控除 | 一定額以上の医療費を支払った場合に適用される ※生計を同じくする配偶者やその他の親族も含まれる | (支払った医療費-保険金などで補填される金額)-10万円 ※その年の所得金額が200万円未満の人は所得金額×5% |
社会保険料控除 | 健康保険料や国民年金保険料などの社会保険料を支払った場合に適用される ※生計を同じくする配偶者やその他の親族も含まれる | 支払った保険料の合計 |
小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済の掛金を支払った場合に適用される | 支払った掛金の合計額 |
生命保険料控除 | 生命保険や介護医療保険、 個人年金保険で、支払った保険料がある場合に適用される | 一定の方法で計算した金額 (最大12万円) |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った場合に適用される | 一定の方法で計算した金額 (最大5万円) |
寄附金控除 | ふるさと納税や認定NPO法人等に対して寄附をした場合に適用される | 「寄附金支出合計額」と 「所得 ×40%」 のいずれか少ない方-2,000円 |
障害者控除 | 納税者や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合に適用される | 一人につき、 ・障害者27万円 ・特別障害者40万円 ・同居特別障害者75万円 |
寡婦控除 | その年の12月31日時点で「ひとり親」に該当しない寡婦に適用される ※寡夫控除は、2020年度分より、ひとり親控除に変更 | 27万円 |
ひとり親控除 | 納税者がひとり親であるときに適用される ※ひとり親控除は2020年分の所得税から適用 | 35万円 |
勤労学生控除 | 学校に行きながら働いている場合に適用される ※ただし、合計所得金額が75万円以下 | 27万円 |
配偶者控除 | 配偶者の合計所得が48万円以下の場合に適用される (給与のみの場合は給与収入が103万円以下) | ・一般控除対象配偶者は最大38万円 ・老人控除対象配偶者は最大48万円 (控除対象配偶者のうち年齢が70歳以上) |
配偶者特別控除 | 納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円超133万円以下である場合に適用される | 配偶者の所得金額によって 最大48万円 ※令和2019年分以前は38万円 |
扶養控除 | 16歳以上の子どもや両親などを扶養している場合に適用される | ・一般控除対象扶養親族は38万円 ・特定扶養親族は63万円 (扶養親族が19歳以上23歳未満) ・老人扶養親族は最大58万円 |
基礎控除 | 全ての人に適用される | 所得金額によって最大48万円 |
出典:国税庁『No.1100 所得控除のあらまし』
なお、会社員であれば住宅ローン控除は1年目のみ確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で手続きが可能になります。
確定申告で税金の還付を受けるとき
副業の収入が源泉徴収の対象となっているときは、確定申告をすることで税金が還付される場合があります。
所得税は1年間の所得に対して課されるものであり、1年分の給与の合計額が確定するまでは、正確な金額はわかりません。源泉徴収は所得が確定する前に支払っているため、確定申告で正しい所得税を申告することで納めすぎた税金が還付されます。
また、会社員で副業にパートやアルバイトとして給与収入がある場合でも年末調整できるのは1企業のみです。
年末調整が行われなかった勤務先の給与については、個人で確定申告をすることで税金の還付を受けられる可能性があります。
確定申告の必要がなくても住民税は申告が必要
副業で得た収入が20万円以下で確定申告の必要がなくても、住民税の申告は必要です。
確定申告を行えば、申告した内容が税務署から市区町村に通知され住民税額が決定しますが、確定申告をしなかった場合は各市区町村の役所で住民税の手続きを行わなければなりません。
なお、住民税は一律で所得の10%となります。
副業所得にかかる住民税の申告をしないとどうなる?
住民税の申告を忘れると、住民税額に加えて延滞税が科せられるおそれがあります。住民税の延滞税率は、延滞している日数によって異なり、最大で年14.6%の税率がかかります。
延滞日数が伸びれば伸びるほど、納めるべき住民税の額は増えていきますので、住民税の申告を忘れていることに気づいた際には速やかに役所に連絡を行い、申告の手続きを進めるようにしましょう。
出典:豊島区公式ホームページ「住民税の申告」
副業の種類と確定申告の方法
副業収入について確定申告を行う際には、申告する所得の種類や経費について理解しておくことが大切です。
ここでは、副業収入に該当する代表的な所得の種類を解説していきます。
事業所得
事業所得とは、農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業・その他の事業から生じる所得のことです。
不動産の貸付や山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として「不動産所得」や「山林所得」になります。
事業所得は不動産所得や譲渡所得・山林所得と同様に赤字の所得を黒字の所得から差し引く「損益通算」が可能です。
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類がありますが、事業所得の場合、青色申告を選択できます。青色申告であれば損益通算以外にもさまざまな節税メリットを受けることができます。
出典:国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」
給与所得
パート・アルバイトで得た収入は給与所得に該当します。
給与所得を算出する際、経費の代わりに「給与所得控除」が適用されます。給与所得控除の額を差し引いた額が20万円以下であれば確定申告は不要です。
出典:国税庁「No.1410 給与所得控除」
【関連記事】
給与所得控除とは? 給与所得控除の意義と計算方法を解説
雑所得
雑所得とは、利子所得・配当所得・事業所得・不動産所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得のいずれでもない所得のことです。
たとえば、ブログの広告収入・原稿料・インターネット販売での収入などで、本業とは別の継続的ではない所得を指します。ほかにも、公的年金や個人的にお金を貸す非営業用貸金での利子なども雑所得に該当します。
なお、雑所得は確定申告で青色申告ができず、純損失の繰越控除や欠損金の繰戻し還付などを受けられません。ただし、FX(外国為替証拠金取引)で得た利益は、そのほかの先物取引で得た利益と損益通算することが可能です。
出典:国税庁「No.1500 雑所得」
帳簿の保存がなければ雑所得に分類される
国税庁は2022年8月1日に「副業収入300万円以下は事業所得ではなく雑所得にする」とのパブリックコメントを提出しましたが、これに対して約7,000件もの意見が集まり、国税庁は10月7日に大幅な修正案を発表しました。
修正案では「副業収入において、帳簿や請求書などを保存している場合は原則『事業所得』とする」とあり、帳簿や請求書などの保存をしていれば収入額にかかわらず、事業所得として認められるという内容です。
つまり、副業収入が300万円以下であっても帳簿書類を保存していれば、これまで通り「事業所得」として扱われます。しかし、逆に帳簿保存がなければ、副業収入が300万円以下の場合、雑所得として分類されることになります。
詳しくは、『「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募の結果について』をご覧ください。
確定申告で副業していることがバレる?
確定申告を行うと、副業も含む前年の所得の合計額をもとに決定された住民税額が、市区町村から会社に通知されます。そして、住民税の金額が多いことから、副業していることが会社側にバレる可能性があります。
しかし、副業がバレたくないからといって確定申告をしないわけにはいきません。会社にバレるリスクを減らすためには以下の対策をしておきましょう。
住民税の納税方法を普通徴収にする
住民税の納付方法には、市区町村から送付される納税通知書(納付書)から自分で納める「普通徴収」と、勤務先が特別徴収義務者となり毎月の給与から住民税を天引きし年12回で納める「特別徴収」の2種類があります。
普通徴収を選択すれば会社側に通知が行かないので、副業がバレるリスクを抑えることができます。住民税の納税方法は確定申告をする際に、確定申告書の「住民税に関する事項」の徴収方法を「自分で納付」を選択すれば完了です。
ただし、徴収方法として自分で納付を選択できるのは、原則として「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税」であり、アルバイトで得た給与所得は対象となりません。
しかし、自治体によっては、申し出ることで普通徴収(自分で納付)に対応してくれるところもあるので、副業がアルバイトに人は住民税を自分で納付できないか、一度役所で相談してみるといいでしょう。
よくある質問
Q1:副業で確定申告が必要になる収入額は?
副業による所得が20万円を超えた場合は確定申告が必要です。なお、副業の所得が20万円以下であっても、住民税の申告は必要です。
Q2:副業でも経費は認められる?
副業でも収入を得るために必要となった費用であれば、経費にすることが可能です。どのような支出が必要経費にあたるかは、副業の種類によって異なります。
Q3:副業が本業の会社にバレないようにするには?
副業していることを会社に知られたくないという方は、住民税を自分で納めるようにしましょう。ただし、副業で得られる所得がパートやアルバイトによる給与所得の場合、原則として、自分で住民税を納めることができません。
まとめ
副業所得が20万円以下の場合は、原則として確定申告をする必要はありません。ただし、住民税の申告は必要です。住民税の申告を忘れると延滞税が科せられるおそれがありますので、忘れずに申告しましょう。
また、副業所得が20万円以下の場合でも、医療費控除や住宅ローン控除などの所得控除を受けるときや還付申告する場合には個人で確定申告をしなければいけません。これらの申告をしないと税金を払いすぎたままになってしまうので、きちんと自身の納税額を把握した上で確定申告をするか検討しましょう。
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