監修 北田 悠策 公認会計士・税理士

副業収入を現金手渡しでもらった場合、銀行口座に振り込まれないため記録は残りませんが、住民税の金額が上がったり、社会保険の手続きをしたりする際にばれることがあります。
本業の勤務先が副業を禁止している場合、副業をしていることがばれてしまうと、就業規則違反で懲戒処分を科される可能性があります。
また、副業は年間所得が20万円を超えると、自分で確定申告して納税しなければなりません。現金手渡しの場合、銀行口座への入金記録などが残らないため、誤った金額で申告しないよう受け取った金額を記録しておきましょう。
本記事では、副業収入が現金手渡しでも本業の勤務先にばれるケースや、ばれない方法など、副業収入に関して知っておきたいポイントを解説します。
目次
副業収入が現金手渡しでも会社にばれるケースとは
副業収入を現金手渡しで受け取れば、銀行口座に記録が残らないためばれないと考える人もいるかもしれませんが、次のようなケースで勤務先に副業がばれる可能性があります。
勤務先に副業がばれるケース
- 住民税の金額が上がってばれる
- 社会保険の手続きでばれる
- 同僚に話してばれる
それぞれのケースについて、以下で詳しく解説します。
住民税の金額が上がってばれる
副業の勤務先が「給与支払報告書」を市区町村に提出すると、本業と副業の所得が合算され住民税の額が決まります。
給与支払報告書とは、会社などが従業員に対して支払った1年間の給与や賞与、源泉徴収税額などの情報を記載し、原則として翌年の1月31日までに従業員の住民票のある市区町村へ提出する書類です。
住民税の納付書は本業の勤務先に届くので、住民税の金額が本業の給与額に対して不自然に高額な場合、副業がばれる可能性があります。
出典:東京都「個人住民税と特別徴収について」
出典:国税庁「令和6年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」
社会保険の手続きでばれる
複数の勤務先で社会保険の加入条件を満たしたタイミング以降は、いずれかひとつの勤務先で社会保険の手続きを行うことになるので、手続きを行う勤務先を選択して年金事務所に届け出ます。
社会保険の加入対象となるのは、フルタイム労働者や、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数がフルタイム労働者の4分の3以上の人です。
また、パートやアルバイトなどで所定労働日数が4分の3未満でも、以下の条件を満たす人は社会保険へ加入が必要です。
届出をすると、各事業所で受け取る給料(月額)を合算した金額によって社会保険料の金額(標準報酬月額)が決まります。標準報酬月額が決定された後は、各勤務先の給与額に応じて按分され、その金額が各勤務先に通知される仕組みです。
この通知書には、「複数の勤務先から給与を得ていること」や「各事業所の名称・保険料の金額」などが記載されています。そのため、届出をして年金事務所から勤務先に通知書が届くことで、他にも勤務先があることがばれるかもしれません。
出典:日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」
出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」
同僚に話してばれる
副業をしていることを何気なく同僚に話すと、職場内でその話が広まり、人事労務担当者の耳にも入って副業がばれる可能性があります。
なお、副業が就業規則で禁止されている場合は、話を聞いた同僚は就業規則違反の事実を知ってしまった以上、上司や人事部からヒアリングなどがあれば報告しなくてはいけません。
副業が会社にばれない方法はある?
前述した「副業がばれる3つのケース」を踏まえ、会社に知られず副業を続けるための対処法を考えてみましょう。主な方法は以下の通りです。
対処法 | 副業がバレる原因 |
---|---|
住民税の金額が上がってばれる場合 |
給与所得に該当する副業をしない 住民税の納付方法を普通徴収に切り替える |
社会保険の手続きでばれる場合 | 副業の勤務先で社会保険の加入条件に該当しないようにする |
同僚に話してばれる場合 | 本業の勤務先で副業の話をしない |
一般的にパートやアルバイトとして働く際、「勤務時間週20時間以上」「月額賃金8.8万円以上」などの要件を満たすと社会保険への加入手続きが必要です。副業の勤務先の勤務時間や給料が要件の基準を下回れば社会保険の手続きは発生せず、本業の勤務先にばれずに済みます。
住民税に関しては、金額が上がったことを本業の勤務先に知られたくないのであれば、納付方法を普通徴収に切り替える方法が考えられます。ただし、切り替えには手続きが必要です。以下では、住民税の普通徴収について解説します。
出典:厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト」
住民税の納付方法を普通徴収に切り替える
住民税の納付方法には特別徴収と普通徴収の2種類あります。特別徴収は勤務先が給与から住民税を天引きして納付する方法で、普通徴収は納税者本人が納付書を使って納付する方法です。
副業収入にかかる住民税を普通徴収にして自分で納付すれば、本業の勤務先には副業収入分の住民税額は通知されず、住民税の金額が上がってばれる心配はなくなります。
副業収入の住民税を普通徴収によって納付する場合は、確定申告の際、確定申告書第二表「住民税・事業税に関する事項」の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で「自分で納付」を選択してください。
ただし、給与所得に関しては、特別徴収によって納付することが全国の自治体で推進されています。そのため、副業収入が給与所得の場合は勤務先に普通徴収を申請しても切り替えられないことがほとんどです。
副業が会社にばれるとどうなる?
「本業に専念してほしい」といった理由やセキュリティの観点から、副業を禁止している会社も少なくありません。勤務先の就業規則で副業が禁止されているにもかかわらず副業を行うと、就業規則違反で懲戒処分を科される可能性があります。
一方、従業員のスキルアップを目的として会社が副業を推進しているケースなど、本業の勤務先で副業が禁止されていない場合は、副業がばれても特に問題はありません。
ただし、副業が認められている場合でも、副業に時間を取られすぎて本業に支障が出た場合、注意や処分を受ける可能性はあります。
就業規則では「労働者は誠実に職務を遂行すること」と記載して誠実労働義務を労働者に課していることがあり、副業が原因で本業の業務に支障が出れば就業規則違反になる恐れがあります。
副業を行う際は、就業規則を確認するとともに、本業に影響が出ないようバランスを保つことが重要です。
副業禁止でもできることはある?
副業とは「本業以外で収入を得る仕事・業務」を指しますが、勤務先で副業が禁止されている場合でも、本業以外で収入を得ること全てが禁止されるわけではありません。
たとえば次の2つは、副業禁止の会社でも禁止ではない可能性があります。
副業禁止でもできること
- 株式投資やFXなどの投資
- フリマアプリなどでの物販
以下ではそれぞれ詳しく解説します。
株式投資やFXなどの投資
株式投資やFXなどの投資は、副業ではなく資産運用として扱われることが一般的です。また、公務員は国家公務員法・地方公務員法によって原則として副業が禁止されていますが、一般的に投資は副業にあたらないとされています。
不動産投資についても資産運用として扱い、副業とみなさない場合もありますが、物件数が多いなど事業として行っているといえるケースでは、副業とみなされる可能性が高いです。不動産投資を検討している場合は、副業に該当するか勤務先に確認しておきましょう。
なお、公務員の不動産投資が副業とみなされるのは、人事院規則14-8で規定されている基準に該当する場合です。規模が5棟10室未満や年間収入500万円未満であれば副業にはあたらず、公務員でも所属への申請不要で不動産投資を行えます。
出典:人事院「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」 出典:e-Gov法令検索「国家公務員法 第百三条・第百四条」 出典:e-Gov法令検索「地方公務員法 第三十五条・第三十八条」 出典:人事院「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」
フリマアプリなどでの物販
自宅にある不用品を売却して金銭を得たとしても、必要のない物品を処分しただけなので副業にはあたりません。
また、家具や衣服など生活に通常必要なものの譲渡による所得は、所得税・住民税の課税対象外です。不用品の売却による収入があっても課税所得には含まれないので、住民税が高くなって勤務先に副業を疑われる心配はありません。
なお、生活に通常必要なもの以外のものを譲渡したことによる所得は、事業所得または雑所得として確定申告が必要です。転売目的など、フリマアプリでの物販を日常的に事業として行っていると事業所得として申告が必要になり、勤務先から副業とみなされる可能性があります。
出典:国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
出典:国税庁「令和6年分 確定申告特集」
副業収入で所得税の確定申告が必要になる条件とは
会社員などの給与所得者は一般的に確定申告をする必要はありませんが、副業による稼ぎがあって以下に該当する場合は確定申告が必要です。
確定申告が必要な場合 | 条件 |
---|---|
給与を1ヶ所から受けている人 | 給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合 |
給与を2ヶ所以上から受けている人 | 年末調整をされなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合 |
たとえば、本業の勤務先から受け取る給料以外に副業の雑所得がある人は、20万円を超えると確定申告をしなければいけません。
確定申告の期間は翌年の2月16日から3月15日です。開始日・最終日が土日にあたる場合は、翌営業日が開始日・最終日になります。副業先から報酬を手渡しで受け取っていても要件に該当すれば確定申告が必要なので、申告期限までに忘れずに手続きをしてください。
現金手渡しの場合は、銀行口座への入金記録などが残らないため、確定申告時に金額が分からなくなると正しく申告ができません。確定申告の時期になって慌てることがないように、手渡された金額をメモしておくなど記録として残すようにしましょう。
出典:国税庁「確定申告が必要な方」
出典:国税庁「No.2020 確定申告」
所得税の確定申告が不要な場合でも住民税の申告は必要
副業による所得など、会社員が給与所得以外の所得を得ても20万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。
住民税の申告書は市区町村役場などで入手でき、申告期限は3月15日です。ただし、所得税の確定申告書を提出した場合は、住民税の申告も行ったことになるので、別途住民税の申告手続きをする必要はありません。
出典:総務省「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」
まとめ
副業による報酬を手渡しで受け取っていても、本業の勤務先に副業がばれる可能性はあります。副業への対応は会社ごとに異なります。副業を始める際は、副業が認められているのか就業規則などを事前に確認するようにしてください。
副業をしている場合、一定の要件に該当すれば所得税の確定申告や住民税の申告が必要です。税金の申告は、勤務先に副業がばれる・ばれないに関係なく、法定の要件に該当すれば行わなければいけません。申告が必要な場合は期限までに忘れずに手続きをするようにしてください。
副業の確定申告をカンタンに終わらせる方法
年末調整をしている会社員でも副業をしていて、その副業の所得が20万円を超える場合には個人で確定申告が必要です。
確定申告には青色申告と白色申告の2種類がありますが、副業所得が「雑所得」に該当する場合は白色申告のみで青色申告は受けられません。
一方、副業所得が「事業所得」「不動産所得」に該当する場合は、青色申告が可能です。青色申告では、さまざまな節税メリットを受けることができる反面、事前の手続きや複式簿記での記帳が必要になり、白色申告に比べて申告準備に手間がかかります。
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よくある質問
副業収入が手渡しなら会社にばれない?
副業収入が手渡しなら会社にばれないということはありません。たとえば住民税の金額が本業の給与額に対して不自然に高額な場合、副業がばれる可能性があります。
副業収入が手渡しでもばれる可能性があるケースについて、詳しくは「副業収入が現金手渡しでも会社にばれるケースとは」をご覧ください。
副業が会社にばれない方法はある?
副業をしていることを会社に知られたくない場合、住民税の納付方法を普通徴収にすれば会社にばれない可能性があります。
副業先での給与所得が特別徴収だと、本業の給与と副業の給与が合算されるため、本業の会社に通知される住民税の金額が高くなり、副業が疑われる原因になることがあります。
副業が会社にばれない方法について、詳しくは「副業が会社にばれない方法はある?」をご覧ください。
監修 北田 悠策(きただ ゆうさく)
神戸大学経営学部卒業。2015年より有限責任監査法人トーマツ大阪事務所にて、製造業を中心に10数社の会社法監査及び金融商品取引法監査に従事する傍ら、スタートアップ向けの財務アドバイザリー業務に従事。その後、上場準備会社にて経理責任者として決算を推進。大企業からスタートアップまで様々なフェーズの企業に携わってきた経験を活かし、株式会社ARDOR/ARDOR税理士事務所を創業。
