契約の基礎知識

借用書とは?法的効力や記載項目、必要な収入印紙代などを解説

監修 寺林 智栄 NTS総合弁護士法人札幌事務所

借用書とは?法的効力や記載項目、必要な収入印紙代などを解説

借用書とは、お金を借りた側(債務者)が、お金を貸した側(債権者)に対して、お金を借りた事実と、その返済義務があることを証明するために作成する文書のことです。金銭の貸し借りにおいて重要な役割をもつ文書といえます。

本記事では、借用書の基本知識や、法的効力、記載項目、収入印紙の取り扱いについて解説します。電子契約を用いる場合についても説明しますので参考にしてください。

目次

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借用書とは

借用書とは、お金を借りた側(債務者)が、お金を貸した側(債権者)に対して、お金を借りた事実と、その返済義務があることを証明するために作成する文書のことです。

借用書と金銭消費貸借契約書の違い

借用書と混同されやすいものに「金銭消費貸借契約書」があります。借用書と金銭消費貸借契約書は、いずれも「金銭貸借契約」に関する書面ですが、借用書は簡易的な形式で借主側の一方的な署名押印によることが多いといえます。

一方、金銭消費貸借契約書は、貸主と借主の双方が署名または署名押印を明示したものです。契約の内容を明確にし、万が一トラブルになった際の証拠力も高まるため、とくに高額な貸し借りの場合には金銭消費貸借契約書の方が望ましいとされています。

借用書の法的な効力

借用書の法的な効力は、作成方法によって異なります。私文書として作成する場合と、公正証書として作成する場合について解説します。

私文書の場合

一般的に、個人間で作成される借用書の多くは私文書に該当します。

私文書の借用書も、金銭の貸し借りの事実があったこと、返済の約束があることを示す有効な証拠となり、万が一、返済が滞った場合に、貸主が借主に対して返還請求訴訟を起こす際などに、証拠として提出でき、法的な効力がある文書とみなされます。

ただし、私文書の借用書だけでは、借主の財産を直ちに差し押さえるなどの債権回収の強制執行を行うことはできません。強制執行を行うためには、裁判を起こして勝訴判決を得るか、後述する公正証書を作成する必要があります。

また、私文書として作成した借用書に必要事項が漏れていた場合は、法的な効力が認められないことがあります。

公正証書の場合

公正証書とは、公証役場で公証人によって作成される公文書のことです。

公正証書の作成には公証人が関与するため、偽造や改ざんのリスクが低く、私文書と比較して強力な法的効力をもつと考えられます。公正証書で作成された借用書は、「金銭消費貸借契約公正証書」と呼ばれるのが一般的です。

また、金銭の支払いを怠った場合に、「執行受諾文言」という条項を記載しておくことで、裁判を起こすことなく直ちに強制執行を行うことが可能になります。債権回収を迅速かつ確実に行ううえで非常に有効です。

高額な貸し借りや、返済の確実性を重視したい場合には、公正証書での借用書作成を検討すべきでしょう。

借用書を作成する目的

借用書を作成すると、金銭の貸し借りに関するトラブルを未然に防ぎ、万が一トラブルが発生した場合にスムーズな解決を図れます。

借用書を作成する具体的な目的には次のようなものがあります。

貸し借りの事実を明確にする

「いつ」「誰が・誰に」「いくら貸したのか」という金銭の貸し借りの事実を明確にし、後から「借りていない」「金額が違う」といった争いが起こるのを防ぐ目的があります。

返済の条件を明確にする

返済期日、返済方法(一括払いか分割払いか)、利息の有無、遅延損害金など、返済に関する具体的な条件を明確にすることで、返済の認識のズレを防ぐことができます。

証拠として残す

借用書は、万が一返済が滞ったり、借主が返済を拒否したりした場合に、貸主が債権を回収するための法的な証拠になります。

とくに公正証書として作成すれば、裁判手続きなしに強制執行が可能となるため、債権回収の実効性を高めることができます。

信頼関係を維持する

たとえ親しい間柄であっても金銭の貸し借りはトラブルのもとになりやすいため、書面を交わすことで、双方の認識を一致させ、誠実な取引であることを示すことができます。

これにより、金銭問題が原因で人間関係が悪化する事態を避けることにもつながります。

借用書に記載すべき主な項目

借用書に法的効力を持たせ、トラブルを未然に防ぐためには、以下の項目を網羅的に記載することが重要です。


借用書

項目記載内容
①タイトル「借用書」または「金銭借用書」など、一目で内容がわかるように記載
②作成年月日借用書を作成した日付を記載
③貸主の情報貸主の氏名、必要であれば住所、電話番号、連絡先などを記載
④借入金額数字と漢数字の両方で正確に記載。たとえば「金100万円也(金壱百万円也)」のように記載することで、改ざんを防ぐ効果がある
⑤返済期日「令和〇年〇月〇日限り」のように具体的な日付を記載。分割払いの場合は、各回の返済期日と返済額を明記する
⑥利息利息を定める場合は、その利率(年〇%)と、利息の計算方法、支払い時期を明記。利息制限法の上限(年15~20%)を超えないように要注意。利息を取らない場合は、利息は発生しない旨を明記する
⑦遅延損害金返済期日までに返済がなかった場合の遅延損害金の利率を明記。これも利息制限法の上限を超えないように注意が必要
⑧返済方法銀行振込、現金手渡しなど、具体的な返済方法を記載。振込の場合は、振込先口座情報も記載するとよい
⑨借主の情報借主の氏名、住所、電話番号、生年月日、必要であれば勤務先などを記載
⑩連帯保証人の情報連帯保証人を立てる場合は、連帯保証人の氏名、住所、電話番号、生年月日を記載し、連帯保証人本人にも署名・押印してもらう必要がある
⑪署名・押印借主の署名と実印での押印が必要。貸主の署名・押印は必須ではないが、双方で保管する際に記載するとより明確になる

借用書には収入印紙が必要

借用書は「消費貸借に関する契約書」にあたる文書であり、一般的に印紙税法上の「課税文書」に該当するため、収入印紙の貼付が必要になります。

印紙税は、契約書などの経済取引に関する特定の文書に課される税金であり、借用書もその対象です。収入印紙を貼付し、消印をすることで、印紙税を納めたことになります。

【関連記事】
収入印紙とは?購入方法や正しい貼り方、注意点などを解説
契約書に収入印紙は必要?貼付する金額や貼り忘れた際の対処法を解説

双方の消印は必須ではない

原則として、文書に収入印紙を貼付する際は消印が必要となりますが、この消印は契約の当事者双方で押す必要はなく、どちらか一方の当事者が、収入印紙と文書の用紙にまたがるように押印すれば問題ありません。

消印の目的は、収入印紙の再利用を防ぐことです。そのため、印鑑の代わりに署名やサインでも有効とされています。

借用書に貼付する収入印紙の金額

借用書に貼付する収入印紙の金額は、記載されている借入金額(契約金額)によって異なります。

借入金額ごとの印紙税額は下表のとおりです。


借入金額(契約金額)印紙税額
1万円未満非課税
1万円以上10万円以下200円
10万円を超え50万円以下400円
50万円を超え100万円以下1,000円
100万円を超え200万円以下2,000円
200万円を超え300万円以下4,000円
300万円を超え500万円以下6,000円
500万円を超え1,000万円以下10,000円
1,000万円を超え5,000万円以下20,000円
5,000万円を超え1億円以下60,000円
1億円を超え5億円以下100,000円
5億円を超え10億円以下200,000円
10億円を超え50億円以下400,000円
50億円を超えるもの600,000円
出典:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」

収入印紙を貼り忘れた場合の罰則

借用書に収入印紙を貼り忘れた場合、または貼った収入印紙を消印しなかった場合、印紙税法によって過怠税が課される可能性があるため注意が必要です。

過怠税の金額は、本来納めるべき印紙税額の2倍に相当する金額を加算した額です。つまり、本来の印紙税額と合わせて3倍の印紙税を支払うことになります。

まとめ

借用書は、金銭貸し借りの事実を明確に残し、トラブルを防ぐための重要な文書です。法的な効力をもつ借用書にするためには、内容を適切に記載すること、収入印紙など必要な手続きを行うことが欠かせません。

電子契約では収入印紙の貼付が不要のため、スピーディーかつコストを抑えて借用書を作成したい場合は電子契約の活用も検討するとよいでしょう。

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よくある質問

借用書とは?

借用書とは、お金を借りた側(債務者)が、お金を貸した側(債権者)に対して、お金を借りた事実と、その返済義務があることを証明するために作成する文書のことです。

詳しくは記事内「借用書とは」をご覧ください。

借用書に法的効力はある?

借用書は、大きく私文書と公正証書にわけられますが、いずれの場合も法的な効力をもちます。

ただし、作成方法によって法的効力の強さが異なるほか、項目・内容に漏れがあった場合は、法的効力が認められないこともあります。

詳しくは記事内「借用書の法的な効力」をご覧ください。

100万円の借用書にかかる収入印紙代はいくら?

100万円の借用書にかかる収入印紙代は1,000円です。

詳しくは記事内「借用書に貼付する収入印紙の金額」をご覧ください。

監修 寺林 智栄(てらばやし ともえ)

2007年弁護士登録。2013年頃より、数々のWebサイトで法律記事を作成。ヤフートピックス1位獲得複数回。離婚をはじめとする家族問題、労務問題が得意。

寺林 智栄

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