契約の基礎知識

電子契約とは?企業に導入するメリットと注意点、導入事例を紹介

最終更新日:2022/10/11

監修 森川 弘太郎 弁護士:第二東京弁護士会

電子契約とは?企業に導入するメリットと注意点、導入事例を紹介

テレワークの広まりや書類のペーパーレス化が進められていることを背景に、紙の契約書を作成する代わりに、電子化された契約書によって契約を結ぶ、「電子契約」を導入する企業が増えています。

ただ、「電子契約を使いこなすのは難しそう」「仕組みがよくわからない」といった理由から、導入を迷っているケースも少なくありません。

本記事では、電子契約とはどのようなものであるか、書面契約との違いや法的効力について解説します。また、クラウド上で運用できるシステムである電子契約サービスを導入するメリットのほか、導入の際の注意点と導入手順についてもまとめました。

目次

電子契約とは

電子契約とは、紙による契約書を作成する代わりに、契約内容を電子データによって保存・管理するものです。

契約の内容を書面にした場合、通常は契約当事者の双方が署名・押印することで契約締結の証とします。しかし、電子データの場合、紙による契約書のように、直筆での署名や押印をすることはできません。

そこで、電子契約は同意や承認、本人証明の代わりに、電子サインを利用します。電子サインとは、電子文書につける電子的なしるしのことです。電子契約においては、その電子データが本人の意思に基づいて作られたことを担保し、内容に改ざんがないことを保証するという仕組みになっています。

電子契約に使われる電子サインと電子署名

電子契約に使われる電子サインは、大きく「電子署名」と「電子署名以外の方法による電子サイン」の2種類があります。電子署名以外の方法による電子サインには固定の呼び名がないため、便宜的に「一般的な電子サイン」として説明します。

一般的な電子サインと電子署名の2つがあるのは、紙の契約書における承認や確認の意味として使う認印と、市町村役場に印鑑登録して公的に認められた実印があるのと同じです。紙の契約書になぞらえると「認印」にあたるのが一般的な電子サイン、「実印」にあたるのが電子署名です。

電子署名は「公開鍵暗号」「公開鍵基盤(PKI)」「ハッシュ関数」といった 3つの技術を使って厳格に本人性・非改ざん性を担保する方法で、特に重要な契約を交わす場合はこちらが多く使われます。

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書面契約と電子契約の違い

従来の紙の契約書を作る方法(書面契約)と電子契約の違いをいくつかの項目ごとにまとめました。

書面契約と電子契約の違い

書面契約電子契約
形式紙の書面PDFデータ
本人性の担保署名・捺印・実印・印鑑証明電子サイン・電子署名
改ざん防止契印・割印タイムスタンプ
送付方法郵送や持ち込みメールなどの通信
保管方法と場所ファイルにして書庫に保存
スキャナ保存(条件あり)
データとして自社サーバーに保存
クラウドサーバーに保存
印紙必要不要

形式

紙による書面契約に対し、電子契約では主にPDFデータが使われます。

本人性の担保

契約書が本人の意思で作られたことを担保するために、書面契約の場合は一般的な契約は認印、重要な契約では実印と印鑑証明を準備するという使い分けをします。

電子契約も同様で、一般的な契約は認印にあたる電子サインを、重要な契約では実印と印鑑証明に代わる電子署名と電子証明書を使うのが一般的です。

改ざん防止

契約書には、作成後に文書の内容が改ざんされるのを防ぐ仕組みがあります。書面契約では契印・割印といって、2枚以上の契約書が1つの連続した文書、もしくは関連があることを証明するために、両面にまたがって印章を押します。

一方、電子契約の場合は電子データの存在を日時によって証明するタイムスタンプを用います。タイムスタンプを電子データにつけることで、その時点でデータが存在していたことと、以後にデータが改ざんされていないことの2つを担保します。

送付方法

書面契約の場合は、郵送や直接相手へ持っていく方法が一般的ですが、電子契約では、データはメールなどでやりとりするため、郵送の費用や手間が抑えられます。

保管方法と場所

書面契約の場合、原本を保管しておく必要があります。

電子契約では、契約データはデータのまま、自社サーバーやクラウドサーバーでの保管が可能です。保管のための物理的なスペースが不要なことと、契約書を探す場合の検索もスピーディーに行えるため、業務効率のアップにつながります。

印紙

書面契約は印紙税法の規定により、金額に合わせて収入印紙の貼付対象となる契約書もあります。しかし電子契約の場合、課税文書として取り扱われないことから印紙は不要となり、印紙代分のコスト削減が可能です。

電子契約の法的効力

たとえば物を売買する場合、口頭で「✕✕を◯◯円で売ります」「買います」とのやりとりがあれば、契約書を作らなくても法的に売買契約は成立するわけです。

しかし、口約束では「◯◯円ではなく△△円と言った」「買いますとは言っていない」など、のちにトラブルに発展してしまう可能性も少なくありません。そのため、対価価値が大きいなど重要な取引に関しては契約の内容を書面化し、当事者双方が署名・押印した契約書を作るのが一般的です。

電子契約は法的にも有効であり、電子契約サービスが提供する電子サインを利用して署名された電子文書は、民事裁判において紙の契約書と同程度の証拠力をもっています。

民事裁判での電子契約の扱い

万が一、契約を巡って相手方と争いになった場合、最終的には民事裁判で決着をつけることになります。

民事裁判のルールでは、紙の契約書に本人の印章による署名・押印があれば「この契約書はその契約者の意思に基づいて作成されたものだ」と推定され、裁判の際に契約内容を示す証拠として提出できます。

一方、電子契約書は電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)に規定があり、この中の本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等とは、本人の印章による署名・押印のある紙による契約文書と同じように、本人の意思に基づき作成されたものと推定されるとしています。

なお、「本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等」とは、署名が本人の意思で行われ、かつ暗号化などの措置を行うための符号について、他人が容易に同一のものを作成することができないと認められることが求められます。

現在のところ、適切な基準を満たす電子契約サービス事業者が提供する電子サインを使って結んだ契約は、これらの要件を満たし、「本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書等」に該当するものは、紙の契約書と同じ効力とされています。

実際に、裁判で電子契約が本人の意思で結ばれたといえるかが争点となったケースも存在しますが、契約の成立を認める判決も出ています。とはいえ、今後さらに電子契約が普及することで、本人による一定の要件を満たす電子署名が行われたかどうかの判定要件が、厳しくなる可能性もあるので、電子契約による契約トラブルを回避するには、法律や裁判所の判断の変化に柔軟に対応した電子契約サービスを利用することが重要といえます。

出典:e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律

電子契約の保存方法・保存期間

事業の取引などに関わる契約書は、法人税法上では7年間、会社法では10年間の保管が義務づけられています。これは電子契約でも変わりません。

契約書は、紙での保管が原則とされていますが、電子帳簿保存法で認められている保存方法として、電子データや電子計算機出力マイクロフィルムでの電磁的記録などによる保存と、スキャン文書による保存があります。

「真実性の確保」「可視性の確保」を保持した一定の要件を満たすものについては、電磁的記録などによる保管が可能です。スキャナ保存が認められている書類には、取引先からの紙で作成された国税関係書類を重要書類と一般書類に分け、それぞれ一定の要件を満たしたものと定められています。

参考:国税庁「電子帳簿保存法上の電子データの保存要件

電子契約のメリット

書面契約から電子契約に切り替えるメリットは、大きく分けて3つあります。

業務の効率化

書面による契約は、印刷・製本に始まり、印紙を貼る、相手方に郵送(持って行く)など、契約締結までに手間や工数がかかります。

また、手続きがどの段階にあるのかもわかりにくく、契約締結後も契約書の原本はわかりやすいように保管し、更新時期についてもそれぞれ管理するなど、さまざまな作業が必要です。

電子契約は、印刷から郵送(持って行く)までの作業はなくなり、契約締結までのスピードが格段にアップします。また、契約締結後の管理もサーバーに保管しておけば必要なときに探しやすく、契約更新の確認漏れもチェックできます。

コストの削減

電子契約に移行することで、印刷や製本、郵送といった作業が不要になり、その分、契約書に関わる作業時間も減るため、印刷代などの費用と人件費のコストを削減できます。また、印紙代もかかりません。

保存・管理の手間が省ける

電子契約書は自社サーバーやクラウドサーバーに保管できるので、書面契約のように保管場所を用意する必要がありません。ファイリングの手間もなくなり、検索機能が使えることで「どこに何があるかわからない」といったこともなくなります。

電子契約の注意点

電子契約には大きなメリットがある一方で、導入するにあたっていくつか注意したい点もあります。

電子化できない契約もある

多くの契約は、電子契約への移行が可能ですが、「書面の作成が契約の成立要件となっている」「特別な理由から書面交付義務が課されている」といった理由で、電子契約に移行できないものもあります。

2022年8月現在で電子契約が認められていない契約には、下記のようなものがあります。

電子契約が認められていない契約の一部

任意後見契約公正証書の作成が必要とされているため
企業担保権の設定または変更を目的とする契約公正証書の作成が必要とされているため
定期借地権設定契約公正証書の作成が必要とされているため
特定商取引にあたる契約
(訪問販売電話勧誘販売、連鎖販売取引など)
消費者保護のため

なお、「特定商取引にあたる契約」については、電子化によって消費者保護機能が低下することのないようにすべきとの意見が出されており、「特定商取引法等の契約書面等の電子化に関する検討会」が開催されています。ルールづくりが進められ、2023年6月頃までには電子契約が可能になる見込みです。

現在は紙での契約書作成が必要とされている契約も、その大部分が将来的には電子契約が可能になると考えられます。

取引先の合意が必要

契約は相手あってのことなので、契約書を書面から電子契約に切り替えるには相手の同意が必要です。しかし、文書の保管体制などの問題から、取引先から電子契約に難色を示されてしまうことも考えられます。

2022年1月施行の改正電子帳簿保存法では、電子データとして受け取った文書は紙に出力して保存することが認められなくなり、一定の要件を備えた上で電子データのまま保存することが義務づけられました。

完全施行までには2年間の猶予が設けられていますが、企業にとっては負担も大きく、電子契約への移行はスムーズにいかないというケースも考えられるため、電子契約を行う際は丁寧な説明が求められます。

システム導入コストと慣れるまでに時間がかかる

電子契約を行う際は、事業者が提供する電子契約サービスを利用するのが一般的ですが、サービスの利用には料金がかかります。プランにもよりますが月数千~数万円、サービスによっては10万円以上となる場合もあります。

また、電子契約に移行した直後は慣れるまでに時間がかかり、しばらくは多少業務効率が落ちるといったことも考えられるでしょう。自社に合ったサービスを選ぶことと、スムーズに移行できるよう、サポート体制が万全なサービスを選ぶことが大切です。

電子契約の導入フロー

電子契約の導入を検討している方はその手順や流れについても把握しておきましょう。一般的な導入までのフローを解説します。

1. 電子契約を導入する目的を明確化する

電子化したい契約件数が、年間・月間でどれくらいあるのか、また契約締結に費やす手間や人的コスト、経費などを把握します。そして、電子契約を導入することで、どのような効果や業務の効率化などを期待するのか、明確化しておきましょう。

2. 自社に合った電子契約サービスを選ぶ

数ある電子契約サービスの中から、自社に合ったものを探します。その際には、プランや操作性、セキュリティの堅牢さのほか、電子サイン・電子署名が両方使えるか、料金体系やサポート体制の充実度、既存システムとの連携は可能かどうか、それぞれ比較してみましょう。

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なお、これらをじっくり吟味するには、無料トライアル期間のあるサービスを活用するのもおすすめです。

3. 導入スケジュールの決定と業務フローの作成

電子契約サービスを選んだら、導入スケジュールを決定します。そして、今後締結する可能性のある契約ごとに、業務フローを作成しましょう。

4. 社内外向けのアナウンスを行う

導入前後で社内向けの講習会を開くなど、電子契約の使い方をレクチャーします。同時に、取引先にも電子契約システムを導入した旨を通知し、理解を得ることが大切です。

電子契約サービスの導入事例

実際に、契約業務をクラウド上で完結できる電子契約システム「freeeサイン」を導入した企業をご紹介します。

契約作業の手間とコストを大幅削減:株式会社シゴラボ

株式会社シゴラボは、20代を中心とした人材派遣・人材紹介サービスを提供しています。膨大な書類作成の事務作業の効率化を目指してfreeeサインを導入。在籍する130名の派遣社員の有期雇用契約締結および就業条件明示書に活用されています。(取材当時)

導入にあたり、労働条件書類の運用を契約書型から相手方の押印不要な通知型に切り替えたことで書類の回収漏れがなくなり、契約業務にかかっていたコストが大きく削減されたそうです。

管理がスムーズになり急ぎ案件への対応も可能に:全研本社株式会社

ウェブマーケティング・コンサルティングサービスを主軸としたIT事業と、語学事業を展開する全研本社株式会社。顧客から電子契約締結の打診が増えたことと、DX(デジタルトランスフォーメーション)化推進の必要性を受けて、freeeサインを導入しました。

導入により、契約書の発送から契約締結までの時間が大幅に削減され、従来3~4日かかっていたものが数時間で完了するように。急ぎの案件にも対応できるようになったほか、管理も楽になったそうです。

まとめ

2021年の労働者派遣(個別)契約、2022年の不動産売買契約・賃貸契約など、従来は書面の交付が必要であった契約も次々と電子契約が可能になっており、社会全体として電子契約への対応が進められています。

電子契約サービスを導入することで契約締結までにかかる時間の短縮だけでなく、契約書の管理コストも削減できます。ぜひサービス導入もご検討ください。

契約にまつわる業務を簡単にする方法

契約書の作成や押印、管理など、契約にまつわる作業は多岐に渡ります。リモートワークが普及した近年、コミュニケーションを取りづらくなってしまい、契約締結までに時間がかかってしまう場合や、押印のためだけに出社しなければいけない...なんてケースも少なくありません。

そんな契約まわりの業務を効率化させたい方には電子契約サービス「freeeサイン」がおすすめです。

freeeサインはインターネット環境さえあれば、PCやスマホで契約書作成から締結まで、契約にまつわる一連の業務を完結できます。さらに、過去の契約書類はクラウド上で保存できるので、紛失や破損の心配も解消します。

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freeeサインでできること

契約書を簡単に作成!

契約によって書式が異なるので、一から作成すると工数がかかってしまいます。 freeeサインでは、テンプレートを登録し、必要な項目を入力フォームへ入力するだけで簡単に契約書を作成できます。

社内の承認作業がリモートで完了!

freeeサインでは、契約書の作成依頼から承認にいたるまでのコミュニケーションもオンラインで管理・完結。ワークフロー機能は承認者の設定が可能なので、既存の承認フローをそのまま電子化することができます。

文書に応じて電子サイン・電子署名の使い分けが可能!

電子契約サービスの中には、どんな文書であっても1通送信する度に100~200円程度の従量課金が発生するものも少なくありません。freeeサインでは、従量課金のない「電子サイン」と従量課金のある「電子署名」のどちらを利用するかを、文書の送信時に選択できます。

重要な契約書や、後に争いが生じる可能性が高い文書には「電子署名」を利用して、より強固な証跡を残し、それ以外の多くの文書には「電子サイン」を利用するといった使い分けができるので、コスト削減につながります。

電子契約で契約書作成にかかる手間・コストを削減

電子契約にすると押印や郵送、契約管理台帳へのデータ入力の必要がなく、契約に関わる手間が大幅に削減されます。さらに、オンライン上での契約締結は印紙税法基本通達第44条の「課税文書の作成」に該当しないため、収入印紙も不要です。

電子契約で完結することで、郵送する切手代や紙代、インク代なども不要となり、コストカットにつながります。

過去の契約書もクラウド上で保存してペーパーレス化

紙ベースで契約書類を作成すると、紛失や破損の恐れがあります。また、管理するための物理的なスペースを確保しなくてはなりません。また、電子帳簿保存法の改正でPDFでの保管にも制約が発生します。

freeeサインでは、過去の契約書もPDF化してタイムスタンプ付きで保存ができるので、今まで紙やPDFで保存していた契約書も一緒にクラウド上で管理することができます。クラウド上で管理することで紛失や破損の恐れも解消され、社内間での共有も楽になります。

気になる方は、無料登録でも書類の作成や電子締結ができる「freeeサイン」をぜひお試しください。

監修 森川 弘太郎 弁護士(第二東京弁護士会)

東京弁護士法人  代表弁護士。
IT法務、エンターテインメント法務、フランチャイズに特化した企業法務専門の法律事務所にて勤務した後、東京都内に3拠点の法律事務所(新宿東口法律事務所、立川法律事務所、八王子法律事務所)を構える東京弁護士法人を設立。東京弁護士法人は弱点のない総合型法律事務所を目指し、各弁護士が個人向け業務・法人向け業務、民事事件・刑事事件問わず横断的に案件を扱いながら総合力を高めつつ、弁護士によって異なる得意分野を持つことで専門性もあわせ持つ法律事務所となっている。

監修者 森川弘太郎弁護士

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