契約の基礎知識

印鑑登録証明書とは?押印廃止の対象でも必要なケースや発行方法について解説

監修 関口 勇太 弁護士:第二東京弁護士会

印鑑登録証明書とは?押印廃止の対象でも必要なケースや発行方法について解説

印鑑登録証明書は、その印鑑が個人のものとして登録されたことを公証するものです。具体的には、車の購入や家の購入などの高額な商品の取引・契約時に必要になることが多い書類です。

なお、2020年11月に行政手続きの簡素化や市民の利便性の向上を図るため、行政手続きにおける押印の見直しが進められましたが、印鑑登録証明書が必要な手続きでは引き続き押印が必要です。

本記事では、印鑑登録証明書の基礎知識や行政手続きで求められる押印見直しの影響について解説します。

目次

印鑑登録と印鑑登録証明書とは

印鑑登録とは、印影を役所に登録し「自分の印章」であることを証明できる制度です。個人の場合は基本的に住民登録をしている市町村役場で申請できます。

届出をしておくと、市町村役場に登録した印章(実印)が自分のものであることを証明する「印鑑登録証明書」を役場や行政サービスセンターなどで発行してもらうことができます。

登録した印鑑は「実印」と呼ばれ、一般的に15歳以上などの条件を満たす者は誰でも1人につき1つの印鑑の登録が可能です。実印に対して、登録していない印鑑を「認印」といいます。

印鑑登録証と印鑑登録証明書の違い

印鑑登録証明書と類似したもので「印鑑登録証」がありますが、この2つは別物です。

印鑑登録証とは、印鑑登録の手続きを行うと発行されるものです。カード型になっており、市町村役場などで印鑑登録証明書の発行を受ける際に必要となります。

印鑑登録証明書は、書類上に表示された印影が登録されたものであることを公証する書類です。書類上には、登録印の印影・登録者の氏名・生年月日・性別・住所・発行年月日・市町村の長の氏名が印字され、「この印影は、印鑑登録原票に登録されている印影の写しであることを証明する」等の文言が付されています。印鑑登録証明書は、省略して「印鑑証明」や「印鑑証明書」と呼ばれることもあります。

法人の場合は法務局で印鑑登録をする必要がある

法人の印鑑登録は、役所ではなく印鑑届書を本店の所在地にある法務局に提出します。この印鑑届書には、商号や印鑑提出者の氏名のほか、代表者個人の印鑑登録済みの印鑑が必要です。

法人の登録する印鑑の種類については、下記のように定められています。
・印影に法人名の「商号」が書かれていること(商業登記規則第9条第2項) ・辺の長さが1cmの正方形に収まるものまたは辺の長さが3cmの正方形に収まるもの(商業登記規則第9条第3項) ・印鑑は照合(記録されている印影と同じで確認する作業)に適するものであること(同規則第9条第4項)

出典:法務省「商業・法人登記 Q&A」

印鑑登録できる印鑑には条件がある

上述したように、印鑑登録できる印影は1人につき1つです。また、同一世帯で同じ印影を登録することはできません。

また、以下の条件に該当する場合は印鑑登録ができないため、事前に確認しておきましょう。

印鑑登録できない印鑑の条件

  • 住民基本台帳に登録されている氏名、氏もしくは名で表されていないもの
  • 氏名もしくは通称の一部を組み合わせで表されていないもの
  • 職業、資格など氏名以外の事項を表しているもの
    ※「〜印」、「〜之印」、「〜之章」などを除く
  • ゴム印など、その形態が変化しやすいものや、印影が鮮明でないもの
  • 印影の大きさが8ミリ四方の正方形に収まるもの、または25ミリ四方の正方形からはみだすもの
  • 外枠の大きく欠けているもの

申請時に登録しようとする印章とあわせて、公共機関が発行した顔写真付きの身分証明証(運転免許証・パスポート・マイナンバーカード・顔写真付きの住民基本台帳カードなど)を持って行けば、通常は窓口手続きにて即日登録が可能です。

本人による印鑑登録が難しい場合は代理人による申請が可能です。この場合は委任状や代理人の本人確認書類が必要となり、即日登録はできません。申請の際は、本人の住所・氏名・生年月日を正確に書けるようにしておきましょう。

なお、一度鑑登録を済ませていれば、本人の印鑑登録証を代理人が持って行き、申請書に登録者本人の氏名・住所・生年月日などの必要事項を記入すれば印鑑登録証明書を受け取ることも可能です。


出典:新宿区役所「印鑑登録・印鑑登録証明書:新宿区」
出典:大阪市役所「大阪市:大阪市:印鑑登録に関すること (くらし>戸籍・住民票・印鑑登録)」
出典:あま市役所「印鑑登録できない印鑑はどんな印鑑ですか? よくある質問」

現行の印鑑証明制度とは、行政機関によって客観的に誰の印鑑であるのか真正性が保証されているものです。

いったん、印鑑登録を済ませておけば、印鑑登録証明書という書面を発行してもらい、必要な手続きの際に利用できます。

印鑑登録証明書が必要なケース

印鑑登録証明書は、個人の社会生活の中で法的手続きなど特に重要な場面で用いられることが多いです。

<印鑑登録証明書が必要となるケース>

  • 会社設立
  • 賃貸借契約
  • 家屋を購入・売却
  • 住宅ローン
  • 抵当権設定
  • 土地の売買
  • 保険金受け取りや放棄
  • 自動車の購入・売却・廃車
高額な商品の取引などの重要な契約時には、役所に登録した印鑑でなければいけない場合がほとんどです。また、その印鑑が本人のものであることを証明するために印鑑登録証明書が必要になります。

印鑑登録証明書の発行方法

印鑑登録証明書は、プラスチック製のマイナンバーカードを持っていれば、身近なコンビニ各社店頭に設置されているマルチコピー機でも発行できる市区町村が多くなっています。

わざわざ市区町村の役所や行政サービスセンターに足を運び、時間をかけて並ばなくても、スピーディーに発行できるので便利です。

その際、マイナンバーカードに紐付けた暗証番号の入力を求められますので、自分の暗証番号は忘れないようにしておきましょう。

市区町村役場・行政サービスセンターとコンビニエンスストア、それぞれの場合における印鑑登録証明書の発行手順は次のとおりです。

市町村役場で発行する場合

印鑑登録証明書の発行は印鑑登録をしてある市町村役場やサービスセンターの窓口で手続きをします。

役所に申請書が用意されているので記載し、窓口で申し込みます。受付時間は窓口が開いている平日8時30分~17時などとするところが多いですが、申請を行う市区町村によって異なり、夜間や日曜日も開いている自治体もあります。発行手数料は1通200〜300円程度です。

印鑑登録証がない場合は、たとえ登録印そのものを持っていても、印鑑登録証明書は発行されないので注意してください。また、個人の印鑑登録証明書は郵送による申請はできません。

なお、印鑑登録証明書の発行は代理人による申請も可能です。委任状は不要ですが、申請書上に証明が必要な人の住所・氏名・生年月日を記載する必要があります。

印鑑登録証明書を発行する際に必要なもの

  • 印鑑登録証(代理人の場合、証明が必要な人の印鑑登録証)
  • 本人確認ができる書類(官公署発行の顔写真付きのものなら1点、それ以外なら2点)
    • 代理人の場合は、代理人本人の確認ができる上記書類
  • 手数料(市町村によって異なる)

コンビニエンスストアで発行する場合

下記の2つの条件を満たしていれば、コンビニエンスストアに設置されたマルチコピー機で、印鑑登録証明書の発行が可能です。

居住している市町村がコンビニ交付サービスを提供していること

多くの市町村が登録証明書のコンビニ交付に対応していますが、一部対応していない場合もあります。サービスの利用が可能かどうかは、地方公共団体情報システム機構のウェブサイトで確認できます。

出典:地方公共団体情報システム機構「コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付【コンビニ交付】 | ホーム」

利用者がマイナンバーカード(または住民基本台帳カード)を取得していること

コンビニエンスストアでの証明書発行には、マイナンバーカードと交付時に設定した暗証番号が必要です。マイナンバーカードの登録者本人が手続きします。

必要な持ち物と具体的な手続きの流れは、下記のとおりです。

<持ち物>

  • マイナンバーカード(または住民基本台帳カード)
  • 手数料
<手順>
  1. マルチコピー機のスタート画面で「行政サービス」を選択し、「証明書交付サービス」を選ぶ
  2. マイナンバーカードの読み取り画面になるので、マルチコピー機のカード置き場にマイナンバーカードをセットし、証明書を交付する市区町村を選択する
  3. マイナンバーカード交付時に設定した暗証番号を入力し、本人確認を行う(マルチコピー機の機種によっては、先に証明書の種別選択を行う)
  4. マイナンバーカードを取り外す
  5. 証明書の種別から「印鑑登録証明書」を選ぶ
  6. 部数を設定
  7. 発行内容を確認し、マルチコピー機のお金の投入口に手数料を入れる
  8. 証明書が印刷、領収書が発行される
居住地の市町村がコンビニ交付サービスを提供していれば、全国どこのコンビニエンスストアでも証明書の取得が可能です。対応時間は毎日6時30分〜23時となっています。

法人の印鑑証明書はコンビニエンスストアでは発行できない

法人の印鑑証明書はコンビニエンスストアで発行できません。法務局の窓口で申請、郵送で申請、オンラインで申請のいずれかの方法になります。

法人の印鑑登録証明書の発行方法を知りたい方は、別記事「法人の印鑑証明書発行に必要な印鑑カードとは?」をあわせてご確認ください。

印鑑証明書発行後の有効期限

印鑑登録証明書には有効期限はありません。ただし、用途によっては「発行から3ヶ月以内のもの」などの指定を受ける場合があるので、注意が必要です。

たとえば、不動産登記申請で印鑑登録証明書を提出する場合は、作成後3ヶ月以内のものと指定されているケースもあります。ただし2020年に公布・施行された「不動産登記規則等の一部を改正する省令」により、法人は会社法人等番号を提供した場合は、印鑑証明書の添付そのものが不要とされています。

遺産分割協議書に基づいて、自動車の移転登録や預貯金の解約、払い戻し、名義変更などを行う際なども、印鑑登録証明書の添付が求められます。

自動車の移転登録については、発行から3ヶ月以内の印鑑登録証明書が必要です。預貯金については、金融機関によって発行後3ヶ月以内または6ヶ月以内などの指定がある場合もあります。

行政手続きにて99%の押印が廃止になる

2020年11月、行政手続きにおける押印廃止が発表されました。ただし、対象となるのは住民や事業所が行う行政手続きなどにおいて、法人登記や不動産登記などの実印等が必要な83件の手続きを除いたものです。

<押印廃止となる手続きの具体例>

  • 住民票の写しの交付請求
  • 婚姻届や離婚届
  • 年末調整
  • 確定申告
書面の押印が不要となれば、その手続きはオンラインで完結できるようになります。そのため今後は、書面からオンラインへの移行が本格化します。

なお、各省庁が「押印を存続することが相当」と判断した手続きについては、その理由とともに「押印を存続する行政手続き」としてまとめられています。たとえば、政党交付金の交付を受ける政党の届出や自動車の新規登録などは、こちらに分類されています。

出典:内閣府「書面規制、押印、対面規制の見直し・電子署名の活用促進について」

なお、各省庁が「押印を存続することが相当」と判断した手続きについては、その理由とともに「押印を存続する行政手続き」としてまとめられています。たとえば、政党交付金の交付を受ける政党の届出や自動車の新規登録などは、こちらに分類されています。

個人や企業が結ぶ重要な契約は、「契約書」という紙の書面にするのが一般的でしたが、近年は電子契約も多くなりました。各社が提供する電子契約サービスを活用した電子契約には、書類作成の手間が減る、契約締結までの時間が短くなる、保管・管理が効率良くできるなど、 さまざまなメリットがあります。

【関連記事】
電子契約とは?企業に導入するメリットと注意点、導入事例を紹介

まとめ

2020年11月に行政手続きにおける押印全廃が発表されましたが、印鑑登録証明書が必要となる取引や契約には、引き続き押印が必要なので注意しましょう。

新しい証明手段として、活用の普及が進んでいるのは電子契約です。印鑑の代わりとして法的効力を十分に持ち、オンラインで押印を完結できるため注目されています。

法人登記の際には、印鑑届出を行うことが現在も必須です。しかし、これを任意として代わりに電子証明書を利用したオンライン申請もできるようにする検討が行われています。

一方で会社設立時の登録印を必須ではなく、電子証明書を利用したオンライン申請もできるようにする、といった主旨の検討が行われています。

契約にまつわる業務を簡単にする方法

契約書の作成や押印、管理など、契約にまつわる作業は多岐に渡ります。リモートワークが普及した近年、コミュニケーションを取りづらくなってしまい、契約締結までに時間がかかってしまう場合や、押印のためだけに出社しなければいけない...なんてケースも少なくありません。

そんな契約まわりの業務を効率化させたい方には電子契約サービス「freeeサイン」がおすすめです。

freeeサインはインターネット環境さえあれば、PCやスマホで契約書作成から締結まで、契約にまつわる一連の業務を完結できます。さらに、過去の契約書類はクラウド上で保存できるので、紛失や破損の心配も解消します。

契約周りのさまざまな業務をクラウド上で完結!

freeeサインでできること

契約書を簡単に作成!

契約によって書式が異なるので、一から作成すると工数がかかってしまいます。 freeeサインでは、テンプレートを登録し、必要な項目を入力フォームへ入力するだけで簡単に契約書を作成できます。

社内の承認作業がリモートで完了!

freeeサインでは、契約書の作成依頼から承認にいたるまでのコミュニケーションもオンラインで管理・完結。ワークフロー機能は承認者の設定が可能なので、既存の承認フローをそのまま電子化することができます。

文書に応じて電子サイン・電子署名の使い分けが可能!

電子契約サービスの中には、どんな文書であっても1通送信する度に100~200円程度の従量課金が発生するものも少なくありません。freeeサインでは、従量課金のない「電子サイン」と従量課金のある「電子署名」のどちらを利用するかを、文書の送信時に選択できます。

重要な契約書や、後に争いが生じる可能性が高い文書には「電子署名」を利用して、より強固な証跡を残し、それ以外の多くの文書には「電子サイン」を利用するといった使い分けができるので、コスト削減につながります。

電子契約で契約書作成にかかる手間・コストを削減

電子契約にすると押印や郵送、契約管理台帳へのデータ入力の必要がなく、契約に関わる手間が大幅に削減されます。さらに、オンライン上での契約締結は印紙税法基本通達第44条の「課税文書の作成」に該当しないため、収入印紙も不要です。

電子契約で完結することで、郵送する切手代や紙代、インク代なども不要となり、コストカットにつながります。

過去の契約書もクラウド上で保存してペーパーレス化

紙ベースで契約書類を作成すると、紛失や破損の恐れがあります。また、管理するための物理的なスペースを確保しなくてはなりません。また、電子帳簿保存法の改正でPDFでの保管にも制約が発生します。

freeeサインでは、過去の契約書もPDF化してタイムスタンプ付きで保存ができるので、今まで紙やPDFで保存していた契約書も一緒にクラウド上で管理することができます。クラウド上で管理することで紛失や破損の恐れも解消され、社内間での共有も楽になります。

気になる方は、無料登録でも書類の作成や電子締結ができる「freeeサイン」をぜひお試しください。

監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

立川法律事務所(東京弁護士法人本部) 事業部長 弁護士
大学卒業後に大手テニススクールにてテニスコーチを務めながらテニス選手として活動し、その後、弁護士を志す。現在は、地元である東京都立川市に拠点を構える立川法律事務所(東京弁護士法人本部)にて、事業部長弁護士として、個人向け業務から法人向け業務まで、民事事件から刑事事件まで幅広い業務を担いながら、さまざまな分野・業種の企業法務を多く取り扱っている。

freeeサインで契約業務をカンタンに

freeeサインは契約に関する一連の業務・書類の保存までクラウド上で完結!契約書作成から締結までにかかる手間やコストを大幅に削減できます。