契約の基礎知識

不動産売買契約書の必要性とは?作成のポイントを解説

監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

不動産売買契約書の必要性とは?作成のポイントを解説

不動産の売買を行う際は、仲介する不動産会社が不動産売買契約書を作成するのが一般的です。

不動産会社を挟まず個人間で不動産の売買を行う場合は、売主と買主が話し合って不動産売買契約書を作成することになります。高額な取引が多い不動産の売買において、不動産売買契約書はトラブルを未然に防ぐためにも必ず作成するようにしましょう。

本記事では、不動産売買契約書の基礎知識やその役割について紹介します。また、不動産売買契約書を作成する際のポイント、2022年5月から不動産取引の電子契約が可能になったことで得られるメリットについてもまとめました。

目次

不動産売買契約書とは

不動産売買契約書とは、不動産売買の契約成立の証となる重要な文書です。

本来契約は、口約束でも「申し込み」と「承諾」の意思表示があれば成立します。しかし、口約束だけでは、後から「言った」「言わない」などトラブルになるおそれがあります。

特に不動産売買契約は、取引金額が高額かつ手続きが複雑であり、売主と買主のあいだで認識違いが起こりやすいので、トラブル防止のために契約の内容を書面化した不動産売買契約書を作成するのが一般的です。

不動産売買契約書には、対象となる不動産の住所や面積といった情報をはじめ、売買代金の支払いや所有権の移転といった契約成立時に売主と買主双方が実行しなければならないことを記載します。また、対象がマンションやビルの一室などの場合は、建物の一部=区分所有となるため、専有部分を明確にする必要があります。

土地売買契約書・建物売買契約書との違い

不動産売買契約書に似たもので「土地売買契約書」や「建物売買契約書」があります。これらの大きな違いは売買する不動産物の範囲です。

不動産売買契約書は、契約の対象が土地と建物の場合、土地のみの場合、建物のみの場合のどのパターンでも作成されます。

一方、土地売買契約書が作成されるのは、契約の対象が土地のみとなる場合に限られます。同様に、建物売買契約書は契約の対象が建物のみになる場合に作成されます。

契約の対象作成可能な契約書
土地と建物(マンションを含む)不動産売買契約書
土地のみ・不動産売買契約書
・土地売買契約書
建物のみ・不動産売買契約書
・建物売買契約書

不動産売買契約書に記載しておくべき事項

不動産売買契約書には、契約の対象となるものや契約の条件、トラブルが起こったときにどう対処するかといった取引のルールを記載します。トラブルの防止という目的を果たすためにも、ポイントとなる項目について解説します。

1. 契約の当事者

売主・買主の住所と氏名を記載し、誰と誰の契約であるのかを明示します。

2. 売買の目的物と売買の代金

契約の対象物件とその範囲を明記します。基本的には、(不動産の)登記簿謄本のとおりに記載します。

3. 手付金の金額

手付金とは、売買契約締結の際に買主から売主に支払われるもので、契約の証や契約が解除された場合の担保としての意味合いを持つものです。双方の債務が履行されれば、最終的には売買代金に充当されます。手付金は、売買代金の10%前後とするのが一般的です。

4. 手付解除

契約の当事者は、相手方が契約の履行に着手する前であれば、売主は手付金の倍額を支払うことで、買主は手付金を放棄することで契約を解除できます。

「契約の履行に着手」とは、売主なら所有権移転登記の準備を行って買主に通知すること、買主なら中間金や内金を支払うことなどを指します。

ただし、いつでも解除できると取引が不安定となりますので、両者の合意のうえで手付解除ができる期間を定め、契約書に記載しておくのが一般的です。

5. 売買代金の支払時期や方法

売買契約締結時に手付金を受け取り、物件の引き渡し時に残額を受け取るのが一般的です。不動産の場合は高額になるため、現金ではなく、指定口座への振り込みや預手(自己宛小切手)で支払われることになります。

6. 契約違反による解除、違約金

売主・買主のいずれかに重大な契約違反があった場合、相手方は契約の解除ができる旨を明記します。また、その際の違約金の支払いについても記載します。

7. 融資利用の特約

買主が住宅ローンを利用して物件を購入する場合、ローン審査に通らないときは、買主は契約を解除できるという特約をつけるのが一般的です。

8. 敷地権が賃借権の場合の特約

敷地権が賃借権である場合、賃借権を買主に譲渡するには土地の賃貸人の承諾が必要になります。承諾が得られないときは、売主は契約を解除できるとの特約をつけるのが一般的です。

9. 抵当権等の抹消

買主に所有権を移転するときまでに、売主は所有権移転を妨げないよう、抵当権等をすべて除去・抹消する旨を記載します。

10. 所有権の移転の時期

売主が買主から代金を受け取ったタイミングで、対象物件の所有権が移転することを明記します。

11. 所有権移転登記等

売主が買主への所有権移転登記申請を行うタイミングや登記費用の負担について記載します。売買代金を受領したタイミングで申請するものとし、費用は買主の負担とするのが一般的です。

12. 引き渡しの時期

対象物件の引き渡し日を明記します。

13. 引き渡し完了前の滅失・毀損

対象物件の引き渡し前に、天災や放火など、売主・買主双方に責任がない事由で不動産が滅失・毀損して修復が困難な場合は、売買契約の解除が可能であることを表記します。

14. 物件状況等報告書

物件状況等報告書は、対象物件の契約締結時の状況について、売主が買主に説明するための書類です。売主は買主に対して、物件の現況をしっかりと伝える義務を負います。

15. 設備の引き渡し、修復

対象物件に付帯する設備の状態と、どのような状態で買主に引き渡すのかを記載します。

16. 売買対象面積、測量、代金精算

登記簿謄本に記載されている面積で契約するのか、実際に測量して面積を確定してから精算するのかを記載します。一般的にマンション売買では前者、土地を含む売買では後者が選ばれます。

17. 境界の明示

売主は代金を受け取る日までに、買主に対して、対象物件について境界標を設置して土地の境界線を明確にする旨を表記します。

18. 公租公課等の分担

固定資産税や都市計画税、ガス代、水道代、電気代、管理費、修繕積立金等の負担を、売主・買主がどのように分担するか定めます。物件の引き渡し日を基準に、それ以前を売主、以降を買主の負担とするのが一般的です。

19. 契約不適合責任の免責特約

対象物件に雨漏りなどの瑕疵がある場合、買主に説明して了承を得ていないか、契約書中に記載がないまま物件を売却すると、売主は契約不適合責任を問われる可能性があります。

それを避けるため、既に瑕疵が生じており、買主も現状での引き渡しを了承しているものについては、物件状況等報告書に記載したうえで契約不適合責任が免責される旨を明記しておきます。

なお、売主が契約不適合責任を負う期間も記載しておくのが一般的で、3ヶ月とされることが多いです。

不動産売買契約締結までの流れ

不動産売買契約の手続きは、契約書を作成した仲介業者(不動産業者)の事務所で行われることがほとんどです。なお、仲介業者である宅地建物取引士が重要事項の説明義務を負うのは買主に対してだけですが、認識のずれによるトラブルを防ぐ意味において、売主も同席したほうがいいでしょう。

その後、物件の引き渡しや移転登記、売買代金の支払い等を経て、不動産の売買が完了します。一連の手続きの流れと、必要になる書類などは下記のとおりです。

不動産売買契約手続きの流れ(契約当日)

  1. 売主・買主の顔合わせ
  2. 宅地建物取引士の有資格者から、重要事項説明書に沿って重要事項の説明を受ける
  3. 売主・買主双方が売買契約書の内容を確認する
  4. 売主・買主双方が売買契約書に署名・捺印し、収入印紙を貼付する
  5. 買主から手付金を受け取る(銀行振り込み、預金小切手など)
  6. 不動産会社へ仲介手数料の半金を支払う

不動産売買契約手続きの流れ(引き渡し日)

  1. 引き渡し日までに抵当権の抹消等を行い、期日に物件を引き渡す
  2. 所有権の移転登記手続きを行う
  3. 買主から売買代金の残金を受け取り、固定資産税等の精算を行う
  4. 不動産会社へ仲介手数料の半金を支払う

不動産売買契約の手続き時に必要となるもの

不動産売買契約では、契約書以外にも下記の書類などが必要になります。スムーズに契約締結まで進めるためにも、事前に準備しておきましょう。

<不動産売買契約手続きに必要なもの>

  • ・登記識別情報または土地・建物登記済証(権利証)
  • ・実印と印鑑証明書
  • ・本人確認書類
  • ・固定資産税・都市計画税納税通知書
  • ・管理規約・管理組合総会議事録など(マンションの場合)
  • ・建築確認通知書、検査済証
  • ・測量図、建物図面
  • ・収入印紙 など

不動産売買契約書の原本には印紙税法の規定により、取引金額に応じた印紙の貼付が必要になります。印紙の代金は売主・買主が平等に負担するのが原則です。

<不動産売買契約書に貼付が必要な印紙類>

契約金額本則税率軽減税率
10万円超 50万円以下400円200円
50万円超 100万円以下1,000円500円
100万円超 500万円以下2,000円1,000円
500万円超 1,000円以下1万円5,000円
1,000万円超 5,000万円以下20,000円10,000円
5,000万円超 1億円以下60,000円30,000円
1億円超 5億円以下100,000円60,000円
5億円超 10億円以下200,000円160,000円
10億円超 50億円以下400,000円320,000円
50億円超600,000円480,000円

※2014年4月1日~2024年3月31日に作成される不動産売買契約書には軽減税率が適用されます。

出典:

e-Gov法令検索:「租税特別措置法 第九十一条」

不動産売買契約は電子契約でも可能に

不動産取引を仲介する不動産業者が守るべきルールとして、「宅地建物取引業法(宅建業法)」があります。

この宅地建物取引業法の規定により、仲介業者は買主に対し、宅地建物取引士による対面での重要事項説明を行う義務や紙による書面を交付する義務があったため、これまで不動産事業者が仲介する取引は電子化することができませんでした。

しかし、2021年5月に成立したデジタル改革関連法のひとつとして、宅地建物取引業法が改正されました。改正宅地建物取引業法では、仲介業者が交付義務を負う重要事項説明書や不動産売買契約書(37条書面)等の書類についての押印が不要となり、紙ではなく電磁的方法による交付も認められるようになったため、多くの不動産取引において電子契約が可能となります。

2022年5月の改正宅地建物取引業法施行により、一気に不動産契約の電子化が進むと予測されています。

不動産売買を電子契約化するメリット

不動産売買を電子契約化する主なメリットは、下記の3点が挙げられます。

契約がスピーディーに進む

契約のために売主・買主が日程を合わせて不動産会社に出向く必要がなくなるため、スピーディーに契約を締結できます。

契約書の保管場所に困らない

電子データなので保管場所を取らず、保管方法も迷う必要がありません。

印紙代がかからない

電子契約方式では収入印紙を貼付する必要がないため、印紙代がかかりません。

電子契約の概要や導入方法について詳しく知りたい方は以下の記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】
電子契約とは?企業に導入するメリットと注意点、導入事例を紹介

まとめ

不動産売買契約書は、売買の条件や不動産の状態、設備に不具合があった場合はどのようにするかなど、契約の内容を取りまとめた大事な文書です。

もし、契約をめぐってトラブルが起きた場合は、契約書の内容に沿って対応することになりますので、不動産会社(仲介者)任せにせず、しっかり内容を確認しておきましょう。

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監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

立川法律事務所(東京弁護士法人本部)事業部長弁護士 。
大学卒業後に大手テニススクールにてテニスコーチを務めながらテニス選手として活動し、その後、弁護士を志す。現在は、地元である東京都立川市に拠点を構える立川法律事務所(東京弁護士法人本部)にて、事業部長弁護士として、個人向け業務から法人向け業務まで、民事事件から刑事事件まで幅広い業務を担いながら、さまざまな分野・業種の企業法務を多く取り扱っている。

監修者 関口勇太弁護士

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