契約の基礎知識

契約書管理の必要性とは?スムーズに管理するポイントを解説

監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

契約書管理の必要性とは?スムーズに管理するポイントを解説

企業の結ぶ契約の数は、事業年数を重ねるほど増えていくものです。契約書をきちんと保管・管理できていないと、トラブルが起きたときの対応が遅れたり、契約の更新がうまくいかなかったり業務に支障をきたすだけでなく、取引先にも迷惑がかかるおそれがあります。

本記事では、企業にとって契約書管理が必要である理由や契約書を管理する際のポイント、管理体制の整え方について解説します。

目次

契約書管理とは

契約書管理とは、企業が結んだ契約の内容や契約に関する書類を総合的に管理するもので、重要な業務のひとつです。

保険業や金融業、人材派遣業のように、顧客や派遣社員と個別契約を結ぶ業態の会社はもちろん、BtoBビジネスを行う会社でも多くの契約が日々締結されています。

<企業が結ぶ主な契約>

  • ・得意先との商取引に関するもの
  • ・協業に関するもの
  • ・秘密保持に関するもの
  • ・知的財産権に関するもの
  • ・不動産に関するもの

事業を円滑に進めるためにも、契約の内容と付帯する契約書を、きちんと保管・管理することが必要です。また、企業間のさまざまなやりとりが電子化している中、かさばる紙の契約書ではなく、ツールやクラウドを利用する電子管理に移行しつつあります。

契約書管理が必要な理由

商取引の基準となる契約書を正しく管理することで、契約違反による損害賠償や訴訟、それに伴う社会的信用の低下などのリスクを未然に防ぐことができます。

企業にとって契約書管理が重要とされる、代表的な理由についてまとめました。

リスクマネジメントするため

契約書には契約当事者双方の権利や義務、義務を果たさなかったときのペナルティなど、取引のルールが記載されています。

契約を交わした当事者は、契約内容に違反しないように行動する必要があり、契約違反があった場合は契約内容に基づいて、損害賠償や契約解除などの対応措置をとることになります。

契約書の管理が不十分だと、相手側が契約違反をしている場合でもすぐに契約内容を確認できず、自社が損害を受けてしまうおそれがあります。ほかにも、契約更新時期を見落としてしまったり、契約内容が外部に漏れてしまったりとさまざまなリスクにつながります。

契約書管理を徹底することでリスクを軽減できるだけでなく、社内間での共有もスムーズにできます。

業務効率化のため

日常業務を行っていく中で、取引先との契約内容を確認したい場面は数多く存在します。

契約書管理が不十分だと、目的の契約書を探す工数や、契約内容がアップデートされているか確認する手間がかかります。契約書管理が適切に行われていれば、契約内容をすぐに確認することができ、スムーズに業務を進めることができるでしょう。

アクセス権限を適切に管理するため

本来アクセス権のない人が重要な契約書を見ることができてしまうと、不正利用や情報漏えいのおそれがあります。

また、業務上アクセス権が必要な人に権限が与えられていないと業務の停滞につながるため、各契約書へのアクセス権も適切に管理することが重要です。

契約書管理のポイント

契約書管理はただ行えばいいのではなく、適切に管理することが重要です。ポイントとなるのは、次の4点です。

  • すべての契約書を一元管理できているか
  • 確認が必要になった場合にすぐ内容を見られる状態になっているか
  • 情報漏えいのリスクに備えているか
  • 電子データで保存・管理して効率化を図る
それぞれについて詳しくみていきましょう。

すべての契約書を一元管理できているか

部署や個人で契約書を管理していると、契約内容の確認に手間がかかるだけでなく、情報漏えいや紛失といったリスクが高くなります。

社内の関係者間で契約書情報を共有できるようにしたうえで、情報漏えいや紛失のリスクを下げるためにも、契約書は一元管理するのが基本です。

確認が必要になった場合にすぐ内容を見られる状態になっているか

社内のすべての契約書を一元管理していても、必要なときにすぐ見つけられなくては意味がありません。

契約情報を一覧化して、検索・閲覧を容易にし、必要な情報が部署の垣根を越えて共有されていることが求められます。

情報漏えいのリスクに備えているか

必要な部門・部署間で情報を共有することは大切ですが、上述したように、契約情報を誰でも閲覧できる状態では本来権限のない人まで自由にアクセスできてしまい、情報漏えいにつながりかねません。

契約書の内容に合わせてアクセス権限の設定を行い、「契約書を確認する必要がある人」だけが、確認したいとき即座にアクセスできる状態にしておくことが大切です。

電子データで保存・管理して効率化を図っているか

紙の契約書だと、個人のアクセス権限の設定や管理が難しいだけでなく、保管スペースの確保が必要になったり、契約書を探す手間がかかったりデメリットが多いです。

契約書を電子データ化して保存・管理することで、検索性の向上をはじめ、個人のアクセス制限設定も容易になります。また、保管スペースも不要となり、紛失・破損の心配もありません。電子データであればオフィスにいなくても内容を確認することができるので、テレワークをしている人とのやりとりもスムーズです。

働き方改革の浸透に合わせて電子契約のニーズが高まる可能性も高いので、電子データとしての保管・管理を進めていくのがおすすめです。

契約書管理の導入方法

新しく契約書管理を導入するためには、まず社内の管理体制を構築する必要があります。以下の手順を参考に必要事項を決定していきましょう。

1. 管理者の設定

契約書管理体制を構築し、集中管理を行う部署と責任者を選定します。専門的な部署を立ち上げるか、既存の法務部門や総務部門が担当するのがよいかは、企業の規模やフェーズによって変わります。

担当部署や責任者には、契約書管理の重要性や自社が目指すゴールを共有しておくことが大切です。

2. 管理ルールの策定

契約書を扱うすべての従業員が守るべきルールを作ります。発生、伝達、保管、保存、廃棄といった流れに沿って、フェーズごとに作成していきましょう。

<策定すべき契約書管理のルール>

  • 発生:件名のつけ方、書式、文体、契約書を受け取ったときのファイル名のルール、保管場所等
  • 伝達:契約書の承認フロー、承認済みの契約書の処理方法、社外へ送付する際の方法等
  • 保管:保管場所、情報漏えい防止対策、コピーの扱い、閲覧制限等
  • 保存:法令に基づく各文書の保存期間、電子文書のファイルの種類、保存場所等
  • 廃棄:紙の文書のシュレッダー利用、電子データの廃棄手順等

3. 契約書管理台帳のフォーマット作成

契約書ごとに、契約相手や契約日、電子データファイルの状態などを記載する台帳を用意します。Excel等の表計算ソフトで作成するか、契約書管理ソフトを利用するのが一般的です。テンプレートを利用せず、自作する場合は下記のような項目を設けます。

<契約書管理台帳に含める項目>

  • ・契約番号
  • ・契約名
  • ・契約書種類
  • ・締結先名
  • ・担当者
  • ・契約締結日
  • ・自動更新の有無
  • ・契約開始日/終了日
  • ・契約解除通告期限
  • ・原本保管場所
  • ・電子データファイルの状態

4. 契約書の収集

契約書管理導入前に、社内の契約書を収集します。個人や部署で保管されている契約書が数多くある場合は回収漏れがないように注意しましょう。

5. 契約書の棚卸、データ入力

契約書の内容をひとつずつチェックし、ツールやクラウド上に作成した台帳に入力していきます。原本が紙の契約書の場合は並行して保管作業を進めます。

なお、紙の契約書のファイリングを行う際は、契約相手ごとにボックスを用意し、その中に契約書を入れたクリアファイルを入れるなど、検索性を高める工夫をしましょう。

6. 契約書の電子保存

既存の契約書の量によっては難しいですが、紙の契約書をスキャナで取り込み、PDFデータ化して保存すれば、文書の検索性は大幅に向上します。また、保管スペースが不要になる、オフィス外から契約書を確認できるといったメリットもあります。

ただし、紙の契約書(原本)を保管しない場合は、電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の条件を満たす必要がある点には注意が必要です。

具体的には、スキャナの解像度が規定以上であり、スキャナ保存を行う際のタイムスタンプの付与、データの修正や削除を行った履歴の保存等が求められます。

契約書管理をスムーズに行うには?

契約書管理体制の構築をスムーズに進めるには、中心となって業務を進める管理部門の強化と、クラウドタイプの契約書管理サービスの活用が重要です。

契約書を集中管理する部署や責任者を決め、責任と権限を明確にしておくことは、会社として契約書の管理ルール・体制づくりを進める土台となります。

また、紙の契約書が中心で契約書の量が少ないうちは、Excelで作成した契約書管理台帳とスキャナ保存でも対応できますが、既存の契約書の量が多いとスキャナ保存するだけでも大変です。このような場合は、契約書管理サービスのスキャナ取り込みサービス等を利用することで、スムーズに電子データを活用する契約書管理体制に移行できます。

書面契約ではなく電子契約の活用も視野に入れているのであれば、文書管理機能を備えた電子契約サービスを導入するのもおすすめです。

電子契約を導入するメリット

電子契約とは、従来のように紙の文書に署名・押印するのではなく、電子文書に電子サインをすることで締結する契約方式です。テレワークの普及や働き方改革の進展、社会全体で脱ハンコ化・ペーパーレス化が進んだことでニーズが高まっており、導入する企業は急速に増えています。

電子契約を導入する主なメリットは、下記の5つが挙げられます。

スピーディーに契約締結まで行うことができる

電子契約では、印刷や製本、郵送といった作業が不要で、契約書の作成から相手方への送付、社内での承認、契約締結まで、すべてオンラインで完結します。このため、タイムロスなく契約を締結することが可能です。

検索や閲覧がしやすい

電子契約は、紙の契約書よりも検索性に優れています。タイトルや日付で目当ての契約書をすぐに見つけられ、オンラインで閲覧できる点もポイントです。契約書の検索・閲覧がしやすくなることで、業務効率も大幅に向上するでしょう。

コスト削減になる

電子契約では、印刷代や郵送費、製本代などがかからないので、その分の費用を節約可能です。また、紙の契約書の場合、売買契約書や請負契約書など、印紙税法の対象となるものもあります。これらは、取引金額に応じた印紙の貼付が必要ですが、電子契約であれば印紙は不要です。

コンプライアンス強化につながる

電子契約では、契約を締結するまでのプロセスが見える化されるため、契約期限の管理も容易で、契約期限切れや締結漏れの発生防止につながります。また、アクセス権も細かく設定できるので、コンプライアンス強化にも役立ちます。

契約書の一元管理が可能

過去の契約書をPDF化して管理できるタイプのサービスを導入すれば、紙・電子を問わず、すべての契約書を一元管理することが可能です。

まとめ

契約書管理は、企業の利益を支える非常に大切な業務のひとつです。契約書の管理が適切でなければ、取引先に契約違反があっても素早い対応ができませんし、業務効率が落ちるリスクもあります。自社の契約書管理体制については、定期的に見直す必要があるでしょう。

なお、新たな管理体制の構築やルールを作成するときは、契約書の集中管理を行う部署と責任者を決めて一元管理を行うこと、確認が必要なときにすぐ確認できる状態にすることが重要になります。

また、文書管理機能を備えた電子契約サービスを利用すれば、既存の契約書をPDF化、紙・電子を問わず契約書の一元管理が可能になります。

すべてをオンラインで完結できるfreeeサインは、契約書管理の見直しを図る際にぜひ検討したいサービスのひとつです。特に、紙の契約書を多く保管している企業が電子化を進めるとメリットが大きいので、前向きにご検討ください。

契約にまつわる業務を簡単にする方法

契約書の作成や押印、管理など、契約にまつわる作業は多岐に渡ります。リモートワークが普及した近年、コミュニケーションを取りづらくなってしまい、契約締結までに時間がかかってしまう場合や、押印のためだけに出社しなければいけない...なんてケースも少なくありません。

そんな契約まわりの業務を効率化させたい方には電子契約サービス「freeeサイン」がおすすめです。

freeeサインはインターネット環境さえあれば、PCやスマホで契約書作成から締結まで、契約にまつわる一連の業務を完結できます。さらに、過去の契約書類はクラウド上で保存できるので、紛失や破損の心配も解消します。

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freeeサインでできること

契約書を簡単に作成!

契約によって書式が異なるので、一から作成すると工数がかかってしまいます。 freeeサインでは、テンプレートを登録し、必要な項目を入力フォームへ入力するだけで簡単に契約書を作成できます。

社内の承認作業がリモートで完了!

freeeサインでは、契約書の作成依頼から承認にいたるまでのコミュニケーションもオンラインで管理・完結。ワークフロー機能は承認者の設定が可能なので、既存の承認フローをそのまま電子化することができます。

文書に応じて電子サイン・電子署名の使い分けが可能!

電子契約サービスの中には、どんな文書であっても1通送信する度に100~200円程度の従量課金が発生するものも少なくありません。freeeサインでは、従量課金のない「電子サイン」と従量課金のある「電子署名」のどちらを利用するかを、文書の送信時に選択できます。

重要な契約書や、後に争いが生じる可能性が高い文書には「電子署名」を利用して、より強固な証跡を残し、それ以外の多くの文書には「電子サイン」を利用するといった使い分けができるので、コスト削減につながります。

電子契約で契約書作成にかかる手間・コストを削減

電子契約にすると押印や郵送、契約管理台帳へのデータ入力の必要がなく、契約に関わる手間が大幅に削減されます。さらに、オンライン上での契約締結は印紙税法基本通達第44条の「課税文書の作成」に該当しないため、収入印紙も不要です。

電子契約で完結することで、郵送する切手代や紙代、インク代なども不要となり、コストカットにつながります。

過去の契約書もクラウド上で保存してペーパーレス化

紙ベースで契約書類を作成すると、紛失や破損の恐れがあります。また、管理するための物理的なスペースを確保しなくてはなりません。また、電子帳簿保存法の改正でPDFでの保管にも制約が発生します。

freeeサインでは、過去の契約書もPDF化してタイムスタンプ付きで保存ができるので、今まで紙やPDFで保存していた契約書も一緒にクラウド上で管理することができます。クラウド上で管理することで紛失や破損の恐れも解消され、社内間での共有も楽になります。

気になる方は、無料登録でも書類の作成や電子締結ができる「freeeサイン」をぜひお試しください。

監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

立川法律事務所(東京弁護士法人本部) 事業部長 弁護士
大学卒業後に大手テニススクールにてテニスコーチを務めながらテニス選手として活動し、その後、弁護士を志す。現在は、地元である東京都立川市に拠点を構える立川法律事務所(東京弁護士法人本部)にて、事業部長弁護士として、個人向け業務から法人向け業務まで、民事事件から刑事事件まで幅広い業務を担いながら、さまざまな分野・業種の企業法務を多く取り扱っている。

監修者 関口勇太弁護士

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