契約の基礎知識

売買契約書の種類と記載すべき事項とは?印紙税についても解説

監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

売買契約書の種類と記載すべき事項とは?印紙税についても解説

売買契約書は、商品やサービスなどの売買取引をする際に、売主と買主とのあいだで取り交わす契約文書です。

売買契約書は売買の対象によっていくつかの種類があります。取引にあたって双方が合意した内容を記載することで、トラブルを予防したり、トラブルが生じた場合のリスクを最小限にとどめたりする役割があります。

本記事では、売買契約書の概要と種類、記載すべき事項のほか、売買契約書に収入印紙が必要となるケースについて解説します。

目次

売買契約書とは

売買契約書とは、売主と買主のあいだで商品やサービスなどの売買取引を行う際に作成する契約文書のことです。

民法では、売買契約にあたって契約書の作成は義務づけられておらず、「売りたい」「買いたい」という売主と買主の意思の合致があれば、売買契約は口頭での約束でも成立します。しかし、口頭での約束だけでは、万が一トラブルが発生した場合に契約内容を証明する手段がありません。

そのため、売買契約書には、契約内容を事前に明らかにしてトラブルを未然に防ぐ、またはトラブルが発生したときのリスクを最小限に抑えるという役割があります。特に、取引金額が高額である場合や企業間の取引では、売買契約書を必ず作成するのが一般的です。

主な売買契約書の種類

売買契約書は、取引の内容によってさまざまな種類があります。代表的な売買契約書の種類をご紹介します。

物品売買契約書

物品売買契約書は、物品(商品)の売買を行う際に作成する契約書です。企業間だけではなく、対個人の取引でも多く作成されます。

物品の売買契約は、原則として当事者が自由に契約内容を決定することができます。そのため、売主と買主の合意内容が民法や商法の規定と異なるような場合は、その内容を契約書に記載しておく必要があるでしょう。

また、当事者間で認識が一致するように、対象となる物品(商品)の名称や製造番号、仕様などの詳細を契約書に記載し、売買契約の目的物を明確にすることも重要です。

不動産売買契約書・動産売買契約書

土地や建物をはじめとする不動産の売買を行う際は、法律上、不動産売買契約書の作成が義務付けられているわけではありませんが、高額な取引となるため、不動産売買契約書を作成することが望ましいです。

不動産売買契約書は仲介する不動産会社が作成することがほとんどですが、不動産会社が介入せず個人間で不動産の売買を行う場合は、売主と買主が話し合い、不動産売買契約書を作成することになります。

また、自動車や機械といった動産の売買でも高額な取引になるケースが多いため、売買契約書を作成するのが一般的です。

【関連記事】
不動産売買契約書の必要性と作成ポイントについて解説

債権や株式の譲渡契約書

譲渡とは財産や権利などを他人に譲り渡すことで、有償と無償に分類されます。譲渡する(される)財産の対価として金銭を受け取る(支払う)場合は有償の譲渡となり、これが売買にあたります。

債権譲渡契約や株式譲渡契約は名称に「譲渡」とありますが、実態として債権や株式という目的物を有償で譲り渡す場合には、基本的には民法上の売買契約に該当すると考えられています。

債権や株式は、原則として第三者に自由に譲渡できるものです。その際に作成するのが、債権譲渡契約書や株式譲渡契約書です。このうち株式譲渡契約書は、会社の株式を売主から買主に譲渡する内容が記載され、主に会社の株主から後継者に株式を譲渡する場合などに作成します。

知的財産権の譲渡に関する契約書

知的財産権とは、目に見える物ではなく、財産的価値を有する情報を指します。

<知的財産権の一例>

  • ・特許権
  • ・実用新案権
  • ・育成者権
  • ・意匠権
  • ・著作権
  • ・商標権

知的財産権の譲渡にあたっては、表面上それが正しく譲渡されたかどうかがわかりにくいため、契約書によって内容を明確化するのが一般的です。なお、知的財産権の譲渡に関する契約も、民法上は売買契約に該当します。

売買契約書の作成方法

売買契約にあたっては、売買契約書1通だけを作成する場合と、売買契約書のほかに売買基本契約書を作成する2つの方法があります。

売買契約書1通のみで対応する方法

1度きりの売買契約の場合は、売買契約書1通のみで対応することが一般的です。契約書には、対象となる売買契約の成立の時期や納品時の対応、代金の支払方法、トラブルが起こった場合の対処法などをまとめて記載します。

売買契約書と売買基本契約書の2通で対応する方法

企業間の取引では、売買が複数回または継続的に行われることも少なくありません。そのような場合、取引のたびに詳細な売買契約書を作成していると手間がかかります。

そのため、複数回継続される売買については、共通する項目を売買基本契約書にまとめ、個別の売買によって変わる部分を売買契約書にまとめます。

売買基本契約書に記載される内容は、商品の検査方法や不具合があったときの責任など、複数回の売買取引が行われる場合に共通して適用されるルールです。売買契約書では商品の値段や数量、納期、納入場所といった、個別の取引ごとに変更になる部分のみを記載するのが一般的です。

売買契約書に記載しておくべき主な事項

売買契約書に記載する主な事項について解説します。

1. 当事者の表示

どちらが売主でどちらが買主なのか、また、これが売買契約であることを明確にします。

2. 売買の対象

売買の対象となる商品の名称や数量を記載し、目的物を明確にします。万が一代金の不払いなどのトラブルが起こった場合に備えて、型番や製造番号など個別の商品を特定できる情報を記載しておくといいでしょう。

3. 引き渡し

売主から買主に商品(サ―ビス)を引き渡す期日と、引き渡し方法を定めます。引き渡し場所までの運送費用や引き渡し期日までの保管費用などをどちらが負担するかについても、必要に応じて決めておきましょう。

4. 売買の代金と支払方法

代金の額や支払時期、支払方法について記載します。支払方法は、現金や手形、銀行振込など、具体的に定めておきます。

5. 所有権移転時期

商品の所有権が売主から買主に移る時期が所有権移転時期を記載します。一般的には、売主から買主に目的物を引き渡したとき(引き渡し時)か、買主から売主に代金を支払ったとき(代金支払時)のいずれかです。

6. 検査

買主が引き渡された商品を検査する方法や、検査期間などについて定めます。

7. 遅延損害金

もし買主から代金が期日までに支払われなかった場合、売主が請求できる遅延損害金の利率を定めておきます。

8. 契約不適合責任

契約不適合責任とは、納品された商品に品物違いや数量不足、品質不良などの不備があった場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。契約内容に対して商品に不適合があったとき、どのように対処するかを定めます。

なお、2020年4月の民法の一部の改正(債権法改正)により、それまでの「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」と呼ばれるようになりました。

9. 保証

商品の品質が重要な場合は、契約不適合責任とは別に、保証する品質の基準について記載します。また、商品が第三者の知的財産権を侵害していた場合の対処についても定めておくといいでしょう。

10. 契約の解除

売主と買主のいずれか一方が契約違反をしたり破産したりした場合は、契約が解除できる旨を記載します。契約違反などによる契約解除に備え、双方の合意のうえ違約金を設定することもあります。

11. 協議事項

契約書に記載されていない内容については、協議によって解決することを定めるのが一般的です。

12. 合意管轄

万が一トラブルが発生して裁判になった場合に、どこの地域の裁判所で審理をするかを定めます。

売買契約書に収入印紙は必要?

契約書の本文に記載する内容は、大きく分けて「各契約に特有の事項」と「一般条項」の2つがあります。

収入印紙が必要になるケース

収入印紙の貼付が必要になるのは、印紙税法で定められた文書(課税文書)です。課税文書は第1号文書から第20号文書まで、全部で20種類あります。

売買契約書のうち、不動産・鉱業権・無体財産権・船舶・航空機・営業・地上権・賃借権の譲渡に関する契約書は第1号文書に該当し、収入印紙が必要です。必要な印紙の額は、記載された契約金額によって異なります。また、取引期間が3ヶ月を超える売買基本契約書は第7号文書に該当し、4,000円の印紙税が必要です。

収入印紙が不要になるケース

課税文書に該当するかどうかは、その文書に記載されている内容に基づいて判断されます。しかし、中には内容が印紙税法上の課税文書に該当しても、収入印紙が必要ない場合があります。

収入印紙が不要になるのは、主に下記のようなケースです。

受取金額が5万円未満

レシートや領収書などは、第17号文書「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」に該当する課税文書です。ただし、記載された受取金額が5万円未満のものは非課税となり、収入印紙の貼付が不要になります。なお、受取金額には原則として消費税を含みません。

クレジットカードを利用して購入した領収書

受取金額が5万円以上の領収書でも、クレジットカードで購入したものは収入印紙が不要です。クレジットカード決済は信用取引によって商品を引き渡すものであり、金銭や有価証券のやりとりが発生しません。

そのため、表題が「領収書」となっていても第17号文書には該当せず、収入印紙は必要ないのです。ただし、クレジットカード利用である旨を領収書に記載しないと課税文書とみなされるため、収入印紙が必要になります。

電子契約で締結した場合

国税庁は、課税文書の要件のひとつを「当事者間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること」としています。電子契約では紙の文書が存在しないため「文書の作成」にはあたらず、収入印紙は不要とされています。

なお、電子契約書をプリントアウトしたものに署名・押印して契約した場合は、紙の文書とみなされ収入印紙が必要になることがあります。一方、電子契約書で契約締結後にプリントアウトした場合は、控えとして扱われるため収入印紙は不要です。

【関連記事】
収入印紙はコンビニで買える?電子契約では貼付不要となる理由も解説

まとめ

商品やサービスなどの売買取引を行うとき、民法上は口頭での約束があれば売買契約は成立します。しかし、口約束だけでは当事者間に食い違いがあったときに、言った・言わないといった、トラブルが起こる場合もあります。

後々のトラブルを未然に防ぎ、スムーズに取引を進めるためには、売買契約書を作成しておくことが重要です。

売買契約書は、記載された契約の種類や金額によっては印紙税がかかります。中でも不動産売買契約書などは、契約金額が大きくなるほど印紙税額も高額です。

しかし、電子契約の場合は課税文書に該当しないため、契約の種類にかかわらず収入印紙が不要となります。印紙税の負担軽減や契約業務の効率化のためにも、電子契約サービスを活用してみてはいかがでしょうか。

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監修 関口 勇太 弁護士(第二東京弁護士会)

立川法律事務所(東京弁護士法人本部) 事業部長 弁護士。
大学卒業後に大手テニススクールにてテニスコーチを務めながらテニス選手として活動し、その後、弁護士を志す。現在は、地元である東京都立川市に拠点を構える立川法律事務所(東京弁護士法人本部)にて、事業部長弁護士として、個人向け業務から法人向け業務まで、民事事件から刑事事件まで幅広い業務を担いながら、さまざまな分野・業種の企業法務を多く取り扱っている。

監修者 関口勇太弁護士

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