契約の基礎知識

覚書とは?書き方や収入印紙の必要性、ほかの文書との違いを解説

最終更新日:2022/06/28

監修 森川 弘太郎 弁護士(第二東京弁護士会)

覚書とは?書き方や収入印紙の必要性、ほかの文書との違いを解説

企業間で契約を取り交わす際には、契約当事者同士の意思が合致していることを証明する書類である契約書のほかに、「覚書」や「念書」といった文書が作成されることがあります。

本記事では、覚書の持つ役割や具体的な書き方のほか、混同されやすい契約書や念書との違いについて解説していきます。

目次

覚書とは

覚書は、当事者の合意内容を書面化した書類で、法的には契約書の一種です。ただ、ビジネスシーンにおいては、契約書を補完する役割を持つ書類として用いられることが多いです。

この場合においては、主に契約書の内容を変更・補足するときに用いられ、同一内容の書面に当事者それぞれが署名・押印し、各自で一通ずつ保管します。

覚書が必要になるケースや役割、法的効力の有無についてもみていきましょう。

覚書が必要になるケース

一般的に覚書が使用されるケースとして下記の3つがあります。

契約前に当事者の合意事項を書面として残すとき

契約締結前に当事者双方の合意事項を書面にまとめ、覚書を作成することがあります。契約の前に基本合意を確認する意味をもちます。

契約締結後に契約条件を決めるとき

契約締結時には確定できない内容がある場合、契約書には「◯◯については別途協議のうえで定める」と記載しておくことで、後で定めた内容を覚書にまとめて取り交わすことが可能です。

契約締結後に契約書の内容を変更するとき

すでに締結した契約書に内容の変更や項目の追加が発生した際、その内容に当事者双方が合意した証明として覚書を作成します。たとえば、取引内容や取引条件の変更、報酬額の増減などの場合がこれにあたります。

覚書は契約書と同じように法的効力がある

覚書はその言葉のイメージから、「メモや備忘録のようなもの」、「確認のためにやりとりするだけで法的な効力はない」と思っている人がいるかもしれません。

しかし、そこに当事者間の合意事項が記され、双方の署名・押印があれば、契約書と同等の法的効力をもちます。覚書は契約書の補助的な役割ではありますが、契約書と同じほう的効力をもった重要な書類なのです。

覚書と混同しやすい文書との違い

覚書と混同しやすい文書に、契約書や念書があります。それぞれの役割と違いについても知っておきましょう。

覚書と契約書の違い

契約書とは、契約の内容を明確にし、当事者双方がそれに合意したことを証明する文書です。一方、覚書は一般的には契約書を補完する役割をもち、契約書に比べて簡潔な合意内容が記されていることが多いです。

【関連記事】
ビジネスでよく使う契約書9種類を解説 | 作成時の注意点とは?

覚書と念書の違い

念書は約束した内容を書面にして、当事者のどちらか一方が相手に対して差し出す書類です。1部作成し、提出する側のみが署名・押印を行うのが一般的です。そして、約束を履行される側が保管をします。

念書は覚書とは異なり、当事者双方の署名・押印がある書面ではないため、その書面自体から直ちに当事者間の合意内容を証明できるものではありません。

しかし、約束を履行する側(約束で負担を負う側)の署名・押印はあるため、約束を履行される側(約束の利益を受ける側)の署名・押印がなくとも、通常は、ほかの事実とあわせて契約書や覚書と同様に法的拘束力が認められることが多いです。

覚書を作成するメリット

覚書を取り交わす目的は、合意した内容を証拠として残すことです。ほかにも、覚書の作成には次のようなメリットがあります。

元の契約は維持しつつ、変更事項をひと目で把握できる

契約内容に変更や追加があったとき、契約書を一から作り直すには多大な労力がかかります。また、変更・追加した項目は一部だとしても、当事者は長い契約書の内容をあらためて確認し直さなければなりません。変更後の契約書に署名・押印すれば、全体の内容について法的な効力が発生するため、慎重になる必要があるのです。

しかし、覚書を作成することで、変更・追加の該当事項のみを抜粋して詳細を記載するだけで済みます。元の契約を維持しつつ、どこをどのように変更したのかがひと目でわかり、双方の負担が格段に軽減されます。

契約書が堅苦しい場において、抵抗感をやわらげる効果もある

契約書という言葉の響きには、やや堅苦しいイメージがあります。場合によっては、署名・押印を求められる側が身構えてしまうこともあるかもしれません。そのようなとき、文書のタイトルを「覚書」とすることによって、抵抗感をやわらげることができます。

そのため、双方の関係性や契約内容によって、あえて「契約書」ではなく「覚書」という形で文書を取り交わすケースもあります。

覚書の書き方

覚書には決まったフォーマットはありませんが、記載すべき事項が漏れていると、本来の効力を発揮できません。覚書を作成する前に、基本的な書き方を押さえておきましょう。

<覚書の基本構成>

  • ・表題
  • ・前文
  • ・本文
  • ・後文
  • ・作成日
  • ・署名または押印

それぞれの項目ごとに詳しく解説します。

表題

表題は「覚書」だけでも構いませんが、「◯◯に関する覚書」など、内容がわかるような表題をつけることが一般的です。また、「変更契約書」「変更合意書」「変更確認書」といった名称が用いられることもあります。

前文

締結済みの契約書や関連する書類がある場合は、それを明確にする必要があります。前文には「令和◯年◯月◯日締結『◯◯契約書』」というように、正確に記載しましょう。

契約書の一部条項だけを変更する場合は、「第◯条」と具体的に記し、甲乙についても前文に記載します。

本文

本文には、当事者双方が合意した具体的な変更内容を記載します。ある条項について内容をすべて変更するのか、一部分だけに関わるのかなど、誰が読んでも間違いなく理解できるように明記しなければなりません。

また、必要があれば効力が発生する日付を記載します。日付の記載がない場合は、一般的に署名・押印をした時点から効力が発生します。

後文

後文には、作成した覚書の部数と保管者を記載します。

作成日

作成日は、覚書を作成した日付を記載します。

署名または押印

覚書が契約書と同様の法的効力を発揮するには、各当事者の署名・押印が必要不可欠です。

覚書を作成する際の注意点

覚書を作成する場合、いくつか気をつけておきたいポイントがあります。主な注意点について解説します。

覚書の修正方法

契約内容を変更して覚書を作成しても、その後さらに、追加の修正や変更が生じてしまうケースもあります。その場合は、締結した覚書をもとに「覚書を修正・変更する覚書」を作成します。

このとき記載する項目は、はじめに覚書を作成するときと同様です。ただし、覚書の内容を詳細に書く必要はなく、原則として修正・変更する内容の記載だけで構いません。当然のことながら、修正・変更にあたっては双方の合意が必要です。

覚書を紙で作成する場合は収入印紙が必要

覚書を紙で作成し契約書の重要事項を変更する場合、内容によっては収入印紙の貼付が必要です。収入印紙を貼らなければならないのは、その覚書が印紙税法による「課税文書」に該当する場合です。

収入印紙とは、国に対して印紙税を納付するために課税文書に貼付する証票です。納付者が納付金額分の収入印紙を購入して文書に貼付することで、印紙税などの税金や手数料などの納付が完了する仕組みになっています。

課税文書には20種類の文書があり、それぞれの詳細は国税庁のホームページで確認できます。たとえば覚書の内容が不動産売買に関する契約なら「第1号文書」、請負契約であれば「第2号文書」にあたります。

出典:国税庁
No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで


印紙税が発生するのは紙で作成された文書であるため、電子契約の場合は基本的に不要とされています。ただし、電子文書をプリントアウトして印章を押す場合は、収入印紙が必要になることがあるため注意が必要です。

【関連記事】
電子契約に収入印紙は不要?国の見解と印紙コストの削減方法を解説

収入印紙の金額

収入印紙の金額(税額)は、覚書に記載されている記載内容によって異なります。

覚書の内容が「課税文書」に該当しても、記載されている契約金額が1万円未満の場合は基本的には非課税となり、収入印紙の貼付は不要です。

また、念書は、当事者の一方のみが作成した文書で当事者の一部の署名を欠く文書ではありますが、それによって契約の成立が証明できる場合には印紙税法上の契約書に該当します。そのため、念書であっても収入印紙が必要になる場合もある点には注意が必要です。

覚書や念書に収入印紙を貼付する際の注意点

上述したように覚書や念書は内容によっては収入印紙が必要です。覚書や念書に収入印紙を貼付する際に、知っておきたいポイントについてもみていきましょう。

覚書に収入印紙が必要な場合、費用はどちらが負担する?

収入印紙の費用は、当事者双方で負担するケースが一般的です。印紙税法第3条第2項において、課税文書に対して、連帯して印紙税を納める義務があると定められています。

ただし、国や地方公共団体が作成した場合、その文書は非課税ですが、民間企業などが作成した文書は課税対象となり、その負担は民間企業側が負います。

覚書や念書に印紙を貼り忘れた場合はどうなる?

覚書や念書の内容が課税文書に該当しているにもかかわらず収入印紙を貼付しなかった場合は、脱税とみなされてしまうので注意が必要です。

税務調査を受けたときにそのことが発覚した場合には、納付すべき印紙税の額の3倍に相当する過怠税が徴収される可能性があります。ただし、納付漏れを予知していなかった場合や、税務調査を受ける前に自主的に不納付を申し出た場合は、1.1倍に軽減が認められることもあります。

また、収入印紙に消印を押さなかった場合も、消印のない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されますのでご注意ください。

収入印紙の金額を間違ってしまった場合の対処法は?

本来の課税金額よりも大きい金額の収入印紙を貼った場合は、税務署で「印紙税過誤納確認申請書」を作成し、収入印紙を貼った文書とともに提出しましょう。過誤納だった事実が確認されれば、後日申請書に記載した金融機関に還付金が振り込まれます。

貼付した収入印紙の金額が不足していたときは、過怠税が徴収される罰則を受ける対象となります。

覚書は電子契約でも可能

電子契約とは、契約書を紙で作成する代わりに、契約内容を電子データによって保存・管理するものです。電子契約サービスを導入して電子サインを利用することで、覚書も電子契約が可能です。

ここでは、覚書を電子契約にした場合のメリットについて紹介します。

印刷や郵送などの手間やコストの削減

覚書を電子化すれば、紙の書類のような印刷や郵送などの手間がかかりません。

さらに、オンラインでの契約締結は、印紙税における「課税文書の作成」に該当しないと考えられているため収入印紙も不要となり、コスト削減にもつながります。作成した覚書は相手先へメールで素早く送信でき、即日締結が可能なうえ、システム上で先方の進捗状況を確認することもできます。

ペーパーレス化で管理の手間や収納スペースも不要

覚書は、もとになった契約書とセットで保管する必要があるため、管理が煩雑になりがちです。書類が多くなればなるほど紛失や破損のリスクも高まってしまうでしょう。

しかし、電子契約サービスを活用することで過去のデータもすべて一括管理できるため、ファイリングの手間や収納スペースも必要ありません。

電子契約の基礎知識や導入方法について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】
電子契約とは?企業に導入するメリットと注意点、導入事例を紹介

まとめ

覚書とは、ビジネスシーンにおいては、契約書を補完する役割をもつで利用されることが多い重要な書類です。覚書には当事者双方の合意と署名・押印が必要であり、契約書と同等の法的効力があります。

覚書を使用すれば締結した契約に変更や追加が生じた場合も、契約書を一から作り直したり、内容を確認したりする手間を省くことができます。覚書の内容が課税文書の対象となる場合は収入印紙が必要になるので、忘れずに準備しましょう。

覚書は電子契約でも法的効力は変わりません。電子契約サービスを利用すれば覚書だけでなく、さまざまな契約書の作成や締結までにかかる手間を大幅に削減できるのでおすすめです。

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監修 森川 弘太郎 弁護士(第二東京弁護士会)

東京弁護士法人  代表弁護士。
IT法務、エンターテインメント法務、フランチャイズに特化した企業法務専門の法律事務所にて勤務した後、東京都内に3拠点の法律事務所(新宿東口法律事務所、立川法律事務所、八王子法律事務所)を構える東京弁護士法人を設立。東京弁護士法人は弱点のない総合型法律事務所を目指し、各弁護士が個人向け業務・法人向け業務、民事事件・刑事事件問わず横断的に案件を扱いながら総合力を高めつつ、弁護士によって異なる得意分野を持つことで専門性もあわせ持つ法律事務所となっている。

監修者 森川弘太郎弁護士

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