会計の基礎知識

決算とは?決算をする目的や流れ、必要な書類について解説

最終更新日:2023/09/29

監修 前田 昂平 前田昂平公認会計士・税理士事務所

決算とは?決算をする目的や流れ、必要な書類について解説

会社経営をするうえで、必要不可欠となるのが決算業務です。とはいえ、「決算とはどのようなことをするのか」を理解していなければ、適切な処理はできないでしょう。

そこで本記事では、決算の概要や流れ、必要な書類や効率的に進めるポイントなど、決算に関する事柄を網羅的にまとめました。あわせて、決算処理を外部に依頼するケースのメリット・デメリットも解説します。

目次

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決算の概要と理由・目的

決算とは、「会社の1年間の収益」と「事業にかかった費用」を集計し、決算書にまとめる一連の業務を指します。会社(法人)の運営で発生した収益や費用は、基本的には毎月の経理業務で帳簿に記録していきますが、決算で毎月の帳簿内容をまとめるイメージです。

企業規模にかかわらず、決算は1年に1度、必ず行わなければなりません。会計や税務などに関する計算結果をまとめた決算書の作成も必須です。株式会社であれば、会社法435条第2項・438条のなかで、計算書類(決算書)を作成し株主へ報告、定時株主総会で承認を得ることが義務付けられています。


出典:会社法435条第2項


出典:会社法438条


企業が1年間の収支を決算書にまとめて報告し、自ら税額を計算した申告書を作成することは、正しい額の税金を納めることにもつながります。

ただし、決算を行う目的は「正確な納税額の算定」だけではありません。決算書を作成する過程で会社の経営状況を可視化できることから、経営面の課題や改善点を洗い出すことも重要な目的といえます。

また、企業には決算公告の義務があり、株主や債権者などの外部利害関係者に自社の経営状況を開示しなければなりません。その際にも決算書が役立ちます。

企業が決算をするタイミング

厳密には、決算は「年度末にだけ行うもの」ではありません。決算を実施するタイミングは年内にいくつかあり、それぞれに行う内容や目的が決まっています。

決算は、主に「月次決算」「四半期決算」「中間決算(半期決算)」「本決算(年次決算)」の4つに分類されます。


決算のタイミング

各決算の概要と詳細は以下の通りです。


行うタイミング任意か必須か実施する目的(メリット)
月次決算1ヶ月に1回任意・業務負担の分担
・融資が受けやすくなる
四半期決算3ヶ月に1回上場企業は必須
(ただし、2024年で廃止される可能性あり)
・投資家が投資判断の材料にする
・法的な義務
中間決算(半期決算)6ヶ月に1回上場企業は必須・四半期決算内容と判断材料にする
・法的な義務
本決算(年次決算)1年に1回必須・納税額を確定する
・法的な義務

月次決算

月次決算とは、1ヶ月単位で行う決算のことです。毎月の会計を締める際に年次決算とほぼ同じ決算処理を行う企業もあれば、決算整理仕訳を省略する(簡素化する)形で行っている企業もあります。

「年次決算での業務負担を分散できる」「財務状況の把握や経営判断をすばやく行える」など、月次決算にはさまざまなメリットがあります。さらに、精度の高い帳簿をすばやく提示できることから、金融機関からの融資を受けやすくなる点もメリットです。

ただし、月次決算の実施はあくまでも「任意」であり、法的に義務付けられているわけではないため、行っていない会社もあります。

四半期決算

四半期決算は、3ヶ月に一度(年4回)行う決算のことです。上場企業に対しては、「四半期報告制度」により、四半期決算の実施とその報告書の開示が法的に義務付けられています。四半期決算の結果は投資家にとって重要な投資判断材料であり、内容によって株価に影響が出るケースもあるほどです。

なお、四半期は1年を四等分した期間であることから、英語で「1/4」を意味する「Quarter」の頭文字をとって「Q」と表記されるケースが一般的です。例えば、3月決算の会社であれば、第1四半期の「Q1」は4〜6月、第2四半期の「Q2」は7〜9月となります。

ただし四半期報告制度については、2024年4月1日より廃止される予定で法改正が進められています。法改正が成立すれば、四半期報告書が廃止・四半期決算短信(企業の決算内容を四半期報告書より簡潔にまとめた別の書類)に一本化され、四半期報告書の代わりに半期報告書の提出が義務付けられることになるため、今度の動向を注視する必要があるでしょう。

半期決算(中間決算)

半期決算は6ヶ月に一度行う決算のことで、時期が1年の中間地点であることから中間決算とも呼ばれます。現状、上場会社は「半期決算」としてではなく、四半期決算制度の枠組みのなかで「第2四半期決算」として決算を行っています。そのため四半期決算と同様、上場企業は半期決算(第2四半期決算)の実施と報告書の開示をしなければなりません。

半期決算を行ってその結果を開示することで、会社は経営状況の健全性をアピールできます。さらに、半期決算書を作成する過程で、自社の経営状況の把握や経営戦略の見直しなどを年次ベースよりタイムリーに行えるのもメリットです。

また、半期決算の結果を見れば上半期と下半期の経営状況を判断できます。半期決算書は、投資家や株主といった多くの利害関係者が閲覧するものです。会社側にとっても、利害関係者にとっても、半期決算の結果は重要といえます。

年次決算(本決算)

年次決算は1年に一度行う決算です。会社法により、すべての株式会社が定時株主総会で計算書類を承認されることを義務付けられています。


出典:会社法 第四百三十五条第二項


出典:会社法 第四百三十八条


また、有価証券報告書提出会社以外の会社は、定時株主総会の終結後、貸借対照表(大会社は損益計算書も)を公告しなければなりません。有価証券報告書提出会社は、定時株主総会の終了後かつ事業年度末の経過後3ヶ月以内に、有価証券報告書を提出します。

正確な月次決算を行うことで、年間の経営状況を見通せるようになり、次年度に向けた的確かつ迅速な経営判断も可能となります。

また、法人税の申告・納付は原則として「事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内」に済ませなければなりません。たとえば、3月31日に決算を迎えた会社の場合は5月31日が申告と納税の期限になります。

経理担当者はその2ヶ月のうちに年次決算を行って決算書を作成し、税金の計算と納税まで完了させなければならないため、年間スケジュールのなかで一番の大仕事といえるでしょう。

なお、上場企業や会社法上の大会社などの場合は、会計監査人による監査を受けなければならないことから、定款に「定時株主総会を事業年度終了後3ヶ月以内に行う」と定めるケースが一般的です。この場合は、税務署へ「申告期限の延長の特例の申請書」を申請することにより、法人税の申告期限を1ヶ月延長することができます。


出典:国税庁「申告と納税」

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個人事業主の決算と法人の決算の違い

ひと口に「決算」といっても、個人事業主と法人では決算日と申告期間に違いがあります。具体的には、個人事業主は「決算日が12月31日、確定申告期間は翌年の2〜3月」とスケジュールが確定しているのに対して、法人は決算日を自由に決めることが可能です。

多くの法人は決算日を3月末としていますが、なかには9月末や12月末を決算日に設定しているところもあります。法人税の申告期間は「事業年度終了日(決算日)の翌日から2ヶ月」となっているため、決算日が違えば申告期間も会社によって異なります。

ここからは、法人の決算日を決めるタイミングと、決定した後に変えたい場合の対処について説明します。

決算日を決めるタイミング

決算日は、法務局に会社の設立登記をする際に決めなければなりません。株式会社の場合は、決めた決算日を定款(事業年度の項目)に記載し、認証を受ける必要があります。

「個人事業主の決算と法人の決算の違い」の項目で3月末を決算日とする企業が多いと述べましたが、その理由は「4月の新卒採用に備えるため」「国の年度終わりに合わせるため」など、日本の年度システムに合わせたものがほとんどです。

しかし近年では、3月に決算が集中していることを受け、税理士などが繁忙期となる時期を避けるために9月末を決算日としたり、海外の年度終わりに合わせるために12月末を決算日としたりする企業も増えています。

【関連記事】
会社設立時に必要な法人登記について

決算日を変えたい場合

日本企業の多くは3月に決算日を設定していますが、「繁忙期を避けて決算を行うために決算日を変えたい」といった意向を持った会社もあるでしょう。決算日の変更は可能ですが、その場合は以下の手順を踏む必要があります。


  • 臨時株主総会を開催する
  • 決算日変更についての決議を行い、議決権の2/3以上の賛成を得る
  • 所轄の税務署・都道府県税事務所・市区町村の役所に、「異動届出書」を提出する

上記で決算日変更の手続きは完了です。社外の対応にも関わるため、あわせて主要取引先や金融機関にも決算期変更の旨を伝えておきましょう。

決算をしないとどうなるか

年次決算は、すべての株式会社で実施が義務付けられています。万が一、法人が決算をしなかった場合に生じる、特に大きなリスクについて解説します。

税務調査による追徴課税

決算をしないリスクの1点目は、税務調査が入って追徴課税を科せられることです。国税庁のデータベースでは法人の納税状況が管理されているため、無申告が続く会社は税務調査の対象になりやすくなります。

税務調査で無申告が発覚すると、本来支払うべき税金に加え、無申告加算税などの罰則的な税金も支払わなければなりません。これを追徴課税といい、場合によっては延滞税などが加算される場合もあります。

しかも、無申告の時効は5年(悪質性が高い場合は7年)であり、数年経過したほうが徴収額が上がる点から、税務調査が立ち入るのは「金額が膨れ上がった後」となるケースが多くなります。多額の追徴課税は、会社経営に大きな影響を与えるでしょう。

青色申告の取り消しによる次年度からの納税負担増

2事業年度続けて期限内に申告書を提出しなかった場合は、青色申告の承認が取り消されます。赤字決算だった場合は青色欠損金の利用により翌年度以降の黒字と相殺し、法人税の負担を軽減できますが、それができなくなることから次年度からの納税負担増につながるでしょう。

なお、一度青色申告が取り消されると、1年間は再申請ができません。最低でも1年間は白色申告をしなければならず、この期間中の欠損金を繰り越すことはできないので注意が必要です。

無申告による信用低下

無申告とは「納めるべき税金を納めていないこと」を意味するため、発覚した時点で社会的な信用は失墜します。

会社の信用低下は取引や売上などに悪影響を及ぼし、最悪の場合は経営が立ち行かなくなる可能性さえあるでしょう。

銀行からの融資を受けられない

銀行などの金融機関から融資を受けるには、会社の経営状況をまとめた決算書が必要です。また、税務署から交付される納税証明書の提出が求められる場合もあります。そのため、決算を行っていない会社は融資を受けることが難しくなります。

また、金融機関は返済の見込みがある信用のもとで融資するため、たとえ納税証明書の提出が不要でも「信頼できない会社」と見なされて融資が受けにくくなることは明白です。

税務処理負担の増加

無申告であることが発覚した場合、追徴課税を支払うため、過去に遡って無申告期間分の税務処理をしなければなりません。決算は1年分だけでも相当な業務量であるため、それが数年分ともなるとその負担は膨大です。

必要な書類を入手するために特別な手続きが必要になったり、通常業務に支障をきたしたりする可能性もあります。

年次決算の流れ

月次決算、四半期決算(半期決算)、年次決算のうち、最も重要なのは年次決算です。確実に年次決算を済ませられるように、基本的な流れを押さえておきましょう。


年次決算の流れ

(1)決算整理前残高試算表の作成

決算書の作成に取り掛かる前に、事業年度分の記帳(取引内容の帳簿付け)は済ませておく必要があります。記帳に漏れがないと確認できたら、試算表と明細表を作成します。

試算表とは、記帳した取引内容を勘定科目ごとに管理した「総勘定元帳」から借方・貸方の数字を転記し残高を示した書類で、明細表は取引内容の勘定科目の内訳を細かく記した書類です。この2つの書類を使って、取引内容の仕訳や計算などに誤りがないか確認します。

(2)棚卸

棚卸とは、決算段階で残っている商品や材料など在庫の数量をカウントし、在庫分の金額を算出する作業のことです。記帳されている事業費用の合計金額から在庫分の金額を引けば、事業で使った純粋な費用を算出できます。

棚卸とあわせて、決算整理も行います。決算整理は、事業期間中の未処理の取引(仮払金や立替金の未精算分、売掛金、買掛金、未払金など)を整理する処理のことです。

棚卸と決算整理の内容を帳簿に反映させたら、あらためて帳簿上の数字と実際の預金や現金の残高が一致しているかを確認します。このとき、固定資産の状況や金額についても、帳簿と照らし合わせることを忘れないようにしましょう。

(3)決算整理仕訳

棚卸や決算整理が済んだら、決算整理仕訳を行います。決算整理仕訳とは、記帳時点と決算時点でのズレの最終修正を行うための仕訳のことです。

以下のように、棚卸や決算整理を済ませた後でしか仕訳できないものを計上し、決算書の作成に必要な数字を確定させていきます。

  • 期末棚卸高の確定、売上原価の計算
  • 貸倒引当金の設定
  • 固定資産の減価償却
  • 経過勘定(未払費用、前払費用など)の確定、計上
  • 税金計算、仕訳の計上

決算整理仕訳は、会社の業種や規模によって異なります。取引の数が多くて内容が煩雑になるほど多くの調整が必要になるため、仕訳にはかなりの時間がかかります。

(4)決算書の作成

ここまでの作業を反映させても試算表に問題が出なければ、決算書の作成に入ります。決算書とは会社の経営状況や財務状況を示す書類の総称で、作成が義務付けられている書類は会社の種類によって異なります。

一例として、株式会社であれば会社法に基づいて以下の書類を作成しなければなりません。

必要となる計算書類

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表

必要となるその他の書類

  • 事業報告
  • 計算書類の附属明細書
  • 事業報告の附属明細書

上場企業の場合は、上記の書類に加えて有価証券報告書も必要です。なお、ここで挙げた書類の詳細は、「決算に必要な書類」にて解説しますので参考にしてください。

(5)株主総会での承認

「(4)決算書の作成」で挙げた決算書のうち「計算書類」に分類されるものは、定時株主総会での承認を得なければなりません。

ただし会計監査人設置会社の場合は、取締役会で承認を受けた計算書類については取締役が株主総会で報告するのみでよく、株主総会での承認は不要です。

(6)法人税等の申告書作成・提出

決算書の作成と株主総会での承認が済んだら、税務申告(法人税・法人住民税・法人事業税・地方法人税・消費税)の手続きを進めます。

税金の申告書が完成したら、確定申告を行います。法人の申告期間は「事業年度終了日(決算日)の翌日から2ヶ月以内」であるため、各工程を迅速に進めていきましょう。

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年次決算前にやっておくべきこと

年次決算から申告・納税までをおよそ2ヶ月と短期間で行わなければならないため、期間内に済ませるには計画的な事前準備が不可欠です。

ここでは、年次決算を行う前にやっておくべき7つのことについて解説します。

1.実地棚卸の準備

年次決算での実地棚卸をスムーズに進められるよう、棚卸の対象となるもの(商品や原材料、貯蔵品)の単価・数量などを記入する棚卸表は、あらかじめ各部署に配布しておきましょう。

このとき、棚卸のやり方をまとめたマニュアルや、実施スケジュール・各部署の担当者などをまとめた計画表も併せて配布しておくと、よりスムーズに進みます。

なお、修理などが理由でメーカーなどに預けてある商品や、原材料なども実地棚卸の対象です。対象物がある場合は、早めに預け先から一覧表をもらっておきましょう。

2.現金の残高確認

会社の現金を管理する現金出納帳に記載されている残高と、実際の手許現金の残高が一致するかも確認しておきましょう。一致しない場合は、帳簿付けの漏れや計算ミスなどの原因を探して修正します。原因を見つけられなかった場合は、「現金過不足」という勘定科目で計上し、現金出納帳の残高を手許現金の残高に合わせます。

なお、「現金過不足」の勘定科目は事業期間中しか使えないため、年次決算までに原因がわからなかった場合は「雑損失」または「雑収入」として処理します。そのほか、仮払金や仮受金などの仮勘定は、できる限り月次決算でこまめに確定させておきましょう。

3.預金・借入金の残高確認

帳簿上の預金残高と、実際の銀行の預金残高が一致するか確認します。銀行の預金残高を示す資料には、金融機関が発行する預金の残高証明書を使います。このとき、残高の証明日を決算日としてください。

帳簿上の預金残高と残高証明書の数字が一致しない場合は、帳簿の取引内容を確認して原因を探ります。たとえば、預け入れ時点で金融機関が営業時間外であったり、仕入先に振り出した小切手を仕入先が銀行に持ち込んでいなかったりすると、預金残高が正確になっていない可能性があります。

また、会社に借入金がある場合は、借入金の残高証明書も必要です。こちらも預金残高と同様に帳簿上の残高と残高証明書の数字が一致するかを確認し、合致しなければその原因を確認します。

4.売掛金・買掛金の残高確認

まず、取引先別に売掛金と買掛金を管理する「取引先別売掛金管理表」「取引先別買掛金管理表」にある残高と、実際の売掛金・買掛金の残高が一致するか確認します。

一致しない場合、いったんは各管理表に記入漏れがないかを調査しましょう。管理表を調査しても不一致の原因がわからなければ、取引先に「売掛金残高確認書」を送り、必要事項の記入と返送を依頼してください。自社の管理表と取引先の「売掛金残高確認書」を照合すれば、ズレが発生している箇所を見つけられるはずです。

次に、「締後売上」と「締後仕入」の金額を取引先別にリストアップし、明細書に記入します。締後売上は「締め日から月末までの売上」のことで、締後仕入は「締め日から月末までの仕入れ」のことです。たとえば、毎月の締め日が15日だった場合、16日から月末までに発生した売上あるいは仕入れを、「締後売上」あるいは「締後仕入」として計上します。

最後に、回収が難しい(貸倒れになる)売掛金や貸付金、受取手形などをリストアップし、不良債権明細書に記入します。これは、貸倒損失や個別評価貸倒引当金の計上に必要な作業です。

5.受取手形・支払手形・割引手形の残高確認

各手形を管理する「受取手形記入帳」「支払手形記入帳」の残高と、帳簿の残高が一致するかを確認します。割引手形の場合は手元に現物がないため、銀行から割引手形の残高証明書を取り寄せておきましょう。

なお、手形の割引が発生している際は残高証明書を取り寄せるとともに、決算書に「注記事項」と記載するのを忘れないようにしましょう。この記載がないと、手形が貸倒れたときの備えとして「貸倒引当金」の設定ができません。

6.固定資産の残高確認

帳簿にある固定資産の金額と、固定資産台帳の合計金額が一致するか確認します。一致しない場合、事業期間中に取得・廃棄・売却した固定資産の記帳が漏れている可能性があります。特に、廃棄した固定資産は売却したものと違って資金の動きがないため、見落としがちなので注意しましょう。

7.仕掛品の確認

仕掛品とは、事業期間中に加工や製造を始めたものの、決算日までに完成しなかった製品のことです。未完成であるため売上に計上することはできませんが、加工や製造にかかった費用は棚卸資産として計上する必要があります。

株式会社の決算に必要な書類

年次決算を適切に行い、申告や納税までスムーズに済ませるためには、年次決算で提出が求められる書類を適切に把握しておく必要があります。また、決算に必要な書類は目的別に「計算書類」と「それ以外」に分けられているため、各書類が示す内容も理解しておくようにしましょう。

計算書類

貸借対照表会社の財政状態(資産や負債、純資産など)を示す書類
損益計算書会社の事業期間における経営業績(利益・損失)を示す書類
株主資本等変動計算書株主資本が増加(または減少)した原因を示す書類
個別注記表計算書類の注記を一覧してまとめた書類

その他書類

会社法に基づいて作成するもの


事業報事業年度ごとの会社の事業状況を記録した書類
計算書類の附属明細書計算書類の内容を補足するための事項をまとめた書類
事業報告の附属明細書事業報告の内容を補足するための事項をまとめた書類

金融商品取引法に基づいて作成するもの


有価証券報告書会社が企業情報や経営状況などを外部へ開示する書類

決算申告のみを依頼するメリット・デメリット

決算申告では正確かつ迅速な作業が求められるため、企業によっては社内の経理担当者だけで行うのが難しい場合があります。そのような場合に頼りになるのが、税務の専門家である税理士です。

税理士は、さまざまなパターンの依頼に対応してくれます。以下、税理士に決算申告のみを依頼する場合のメリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。

メリット

税務の専門家である税理士に決算申告のみを依頼すると、「料金が安い」「やり取りの手間がない」といったメリットを享受できます。

顧問契約より報酬が安い

税理士への依頼の契約形態には、「単発契約」「顧問契約」「コンサルティング契約」があります。このうち、決算申告で用いられる契約形態は単発契約か顧問契約です。単発契約は必要なときに限定してスポットで依頼する形態で、顧問契約は月額料金を支払って定期的なサポートをしてもらう形態です。

両者を比較すると、業務範囲が限られる単発のほうが、税理士に支払う報酬を安く抑えられます。

定期的なやり取りが不要

前述のように、「決算申告のみ」を単発契約で依頼した場合、決算に関すること以外のやり取りが発生しません。税務全般に関するアドバイスが頻繁に必要な場合は顧問契約がおすすめですが、決算に限るのであれば余計なやり取りが不要となる単発契約のほうが適しています。

税理士の署名で信用度が増す

税理士に決算申告を依頼すると、決算書に税理士の署名が入ります。税理士の署名が入ることで、決算書を確認する側からの信用を得やすくなります。

デメリット

税理士に決算申告を単発で依頼することには、デメリットもあります。デメリットは主に、定期的な付き合いがないことから起こり得るものです。

効果的な節税対策がしにくい

税理士は税金についても豊富な知識を持っているため、自社に適した節税対策を提示することが可能です。しかし、節税対策のアドバイスをもらうには定期的な関わりが不可欠となるため、決算申告のみの依頼で節税対策まで仰ぐのは難しいでしょう。

経営に関するアドバイスを聞くことができない

税理士からは、資金調達の支援や事業計画のチェックなど、会社経営に関するアドバイスを受けることもできます。しかし節税対策と同様に、経営に関するアドバイスを受けるには定期的な関わりが必要になるため、決算申告のみの依頼に限定している状態で経営のアドバイスを受けるのは現実的ではありません。

顧問契約もあわせて依頼するメリット・デメリット

顧問契約を結んで自社の顧問税理士になってもらうことにも、メリット・デメリットがそれぞれあります。単発契約で依頼するメリット・デメリットとあわせて確認し、自社にとってベターなのはどちらか検討しておきましょう。

メリット

顧問契約を結ぶメリットには、常に税務の専門家からのアドバイスを受けられるようになり節税対策が進めやすくなる点や、融資を受けやすくなる点が挙げられます。

節税対策や経営相談ができる

顧問契約を結ぶと、毎月固定料金を支払う代わりに幅広いサポートを受けられます。月次決算をはじめとする定期的な付き合いを重ね、税理士に会社の経営状況を把握してもらえば、節税対策や現状の経営課題に対する改善策などについて、より踏み込んだプランを提示してもらえるでしょう。

税理士のアドバイスを受けることで、より効率的かつ速やかな経営判断を下せるようになります。

融資対策で有利になる

金融機関からの資金調達支援を行っている税理士と顧問契約を結べば、融資を受けやすくなる決算書や事業計画の作成方法など、より具体的なアドバイスを受けられます。

金融機関が書類のどこを重視して確認するかを熟知しているため、アドバイスに従って書類作成をすれば融資を受けられる可能性も高まるでしょう。

デメリット

税理士と顧問契約を結ぶうえで最大のネックとなるのは、費用負担の大きさです

費用負担が大きい

単発の依頼に比べ、顧問契約は税理士に支払う報酬が高額です。

「定期的に相談したい」「幅広い税務業務のサポートを受けたい」と考えている会社であれば、顧問契約の固定料金を支払っても費用対効果は高いでしょう。しかし、ピンポイントの業務サポートでいいなら単発の依頼で事足りるはずです。

ちなみに、顧問契約の費用をできる限り抑えたい場合は、税理士の訪問回数を減らしたり、契約に含める業務範囲を絞ったりするのが有効な手段といえます。

決算を効率化するためのポイント

年次決算は1年間の収益と費用を総ざらいするものであるため、やることが膨大かつ煩雑です。しかし決算申告と納税までをおよそ2ヶ月という短期間で済ませなければなりません。

申告期限に間に合わせるには、各工程を効率化させる必要があります。ここでは、特に有効な効率化の手段を4つ紹介します。

決算業務の流れを把握しておく(早期着手)

決算業務の流れを把握すると、決算が本格始動する前でもさまざまな準備ができることに気づきます。具体的には、記事内の「年次決算の流れ」で紹介したような準備物や計上する内容を把握し、必要な書類やデータをあらかじめ準備・収集しておきましょう。

日々の業務で利用するデータを整理し優先順位を付けておく

年次決算に記載される情報は、日々の取引内容の積み重ねです。そのため、できるだけ取引が発生した時点でデータを入力しておくと抜け漏れが起きにくく、その後の決算業務が楽になります。

また、ただデータを入力するのではなく、時系列や取引先別などの項目別に整理したり、決算書の作成に必要なデータに印を付けて優先順位を示したりしておくと、必要な情報を抽出しやすくなるでしょう。

そうした小さな工夫の一つひとつが、業務効率化につながっていきます。

決算書の基となる各種帳票を電子化する(ワークフローの見直し、システムの導入)

決算書を作る際は、「現金出納帳」「取引先別売掛金管理表」「取引先別買掛金管理表」などの各種帳票のデータを基にしています。これらをアナログで記録している場合は転記でミスが起こりやすく、確認にも時間がかかります。

そうした事態を防ぐため、会計ソフトを導入するなどして金銭の管理をできる限り電子化することが望ましいといえます。

税務業務全体を電子化することが難しい場合は、一部でも電子化できればワークフローの無駄は減るでしょう。会計ソフトによっては、日々の経理処理をするだけで決算に必要なデータが蓄積されていくものもあるため、予算が許す範囲でソフトやシステムの導入を検討しましょう。

アウトソーシングサービスを利用する

年次決算に必要な業務の一部をアウトソーシングする方法があります。

たとえば、社内の経理部門で取引内容の仕訳データ入力までを行い、それ以降のデータチェックや決算書作成をアウトソーシングすれば、会社が年次決算で行うのは完成した書類の確認と株主総会での承認、申告のみになります。社内は事業に関する業務に集中できるようにもなるため、アウトソーシングは業務効率を上げるのにも有効な選択肢です。

まとめ

会社の1年間の利益と費用を集計してまとめる決算は、やることが膨大で煩雑な業務です。すべての株式会社に義務付けられているうえ、無申告にはさまざまなリスクがあることから、会社経営において避けて通れない重要なプロセスといえるでしょう。

あらかじめ決算の流れを把握しておけば、早期着手や事前準備の効率化により負担の軽減が図れます。税務の専門家である税理士に依頼すれば、さらに確実に、そして効率よく決算業務を進められるでしょう。

税理士への依頼にはメリット・デメリットがあるためすべての会社に適しているというわけではありませんが、予算が許す限り積極的な活用をおすすめします。

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さらに「自動で経理」という機能を使うと、テンプレートを呼び出す手間もかかりません。明細を読み込んだ時点で仕訳が登録され、帳簿付けを完全自動化できます。

あとは「決算書を作成」ボタンを押すだけ

データ入力さえ完了すれば、あとはfreee会計が決算書の様式に合わせた形で出力してくれます。全ての入力が終わればあとはボタンを押すだけで表紙、貸借対照表、損益計算書、販売費および一般管理費明細書、株主資本変動計算書、個別注記表など必要な書類が出来上がりです。

決算報告書

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よくある質問

「決算する」とはどういう意味?

決算とは、「会社の1年間の収益」と「事業にかかった費用」を集計し、決算書にまとめる一連の業務を指します。

詳しくは、記事内の「決算の概要と理由・目的」をご覧ください。

年次決算の流れは?

基本的には、「決算整理前残高試算表の作成」「棚卸」「決算整理仕訳」「決算書の作成」「株主総会での承認」「法人税等の申告書の提出」というステップで年次決算業務は進んでいきます。

詳しくは、記事内の「年次決算の流れ」をご覧ください。

決算をしないとどうなる?

年次決算は、すべての株式会社に実施および公告が義務付けられています。そのため、法人が決算をしないままでいると、「税務調査による追徴課税」「青色申告の取り消しによる次年度からの納税負担増」など、さまざまなリスクが生じます。

詳しくは、記事内の「決算をしないとどうなるか」をご覧ください。

決算の際に提出を求められる書類は?

決算に必要な書類は目的別に「計算書類」と「それ以外」に分けられており、それぞれ役割が異なります。

詳しくは、記事内の「決算に必要な書類」をご覧ください。

監修 前田 昂平

2013年公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人に入所し、法定監査やIPO支援業務に従事。 2018年より会計事務所で法人・個人への税務顧問業務に従事。2020年9月より非営利法人専門の監査法人で公益法人・一般法人の会計監査、コンサルティング業務に従事。 2022年9月に独立開業し現在に至る。

前田 昂平

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