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出精値引きの意味とは?見積書への記載方法と注意点も解説

出精値引きの意味とは?見積書への記載方法と注意点も解説

出精値引き(しゅっせいねびき)とは、企業が取引先との関係性などを考慮し、見積もり上で値引きを行うことです。見積書を出す際には、出精値引きしたことが分かるように表記しなければならず、その表記の仕方にはいくつかポイントがあります。

本記事では、出精値引きの意味や見積書に表記する際の注意点について解説します。

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目次

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出精値引きとは

出精値引きとは、見積もりを出した企業側から、企業努力によって値引きを提示することをいいます。「出精」という言葉は「精を出す」「力を尽くす」といった意味合いを持ち、その言葉どおり、これ以上の努力や工夫はできないという姿勢を示す最終的な価格調整として用いられます。

具体的には、見積もり全体から端数を丸めて切りのよい金額にするケースや、原価に関係なく一部利益をサービスするケースなどがあります。


出精値引きが用いられるケース
  • 大口顧客との取引を確実に成立させたいとき
  • 既存の優良顧客との取引を継続させたいとき
  • 見積もりや請求の総額が切りが悪かったり、高額になったりしたとき
  • トラブル発生時に顧客に対して誠意ある対応を見せたいとき

出精値引きは、あくまでも取引先に対して発注を後押しするために行われるものであり、良識的な範囲で値引きを行うことが一般的です。原価を下回るほどの大幅な値引きはサービス品質の低下を招くリスクがあり、取引先にとっても不信感につながりかねないため、値引き額は慎重に検討する必要があります。

出精値引きがもたらすメリット

出精値引きは、商品やサービスを売る側の利益を一時的に減少させる行為ですが、中長期的に見ると、以下のような大きなメリットをもたらす戦略的な手段となり得ます。

取引成立・機会損失の防止

もっとも直接的なメリットは、取引を確実に成立させることです。

他社との競合において、最終的な価格でわずかな差をつけることが、受注の決定打となるケースは少なくありません。出精値引きは、「これ以上は無理」という誠意を示すことで顧客に納得感を与え、他社への流出を防ぎます。

また、価格交渉が長引きすぎると営業コストが増大し、他の案件に取り組む機会も失われます。出精値引きを提示することで、交渉を早期に決着させ、機会損失を防ぐことができます。

顧客満足度とロイヤリティの向上

出精値引きは、単なる価格の低下以上の心理的な効果を持ちます。「精一杯の努力」という言葉は、顧客に「自分たちは特別に扱われている」という感覚を与えるでしょう。これにより顧客は企業への愛着(ロイヤリティ)を高め、「この会社から買いたい」という気持ちが強くなります。

さらに価格交渉において、売る側が一方的に利益を追求する姿勢ではなく、顧客の要望に応えようと努力する姿勢を示すことで、相互理解に基づく強固な信頼関係が築かれます。これは今後の継続的な取引や、新たなビジネスチャンスの紹介につながる重要な土台となります。

継続的な取引の促進

出精値引きは、その場限りの取引で終わらせないための「先行投資」と見なすこともできます。一度、誠意ある値引きを受けた顧客は、次回以降もその企業を優先的に検討する傾向が高まるでしょう。

また、最初の取引で利益を多少削ってでも関係を築くことで、将来的により利益率の高い商品やサービスを販売(アップセルやクロスセル)する機会も得やすくなります。

出精値引きを見積書に記載する方法と注意点

見積書に出精値引きを反映するには、次のように記載をします。


見積書

見積書の項目に値引きを含める

出精値引きをした際には、必ず見積書の1項目として、値引き額を記載しましょう。値引き後の金額のみを記載してしまうと、値引きがしたことが記録として残らず、取引の当事者以外が誤った解釈をする可能性があります。

出精値引きの記載方法に決まったルールはありませんが、必ず値引きをしたことがわかるように明記しましょう。

値引きの理由を明記する

値引きの金額だけでなく、理由も明記することで認識の齟齬をなくすことができます。「キャンペーンによって値引きした」や「希望納期に応えられないため値引きした」など、値引きの理由を記載しましょう。

普段からお世話になっているため取引先に値引きをするなら、「貴社特別割引価格」と記載する方法もあります。

「▲」もしくは「−」の記号を使用する

値引きの金額は「▲」もしくは「−」で示すことが一般的です。会社によってはほかの記載方法で伝わることもありますが、認識の齟齬が起こるリスクを避けるためにも「▲」もしくは「−」の使用しましょう。

記載例:1,000円の出精値引きをする場合は「−1,000円」「▲1,000円」

無理な値引き要求は法律違反のリスクがある

出精値引きは、あくまでも企業側が取引先と継続的な関係を築くうえで、自発的に値引きを提示する場合にのみ成り立つ行為です。取引先から意図的な値引き交渉があり、企業側がそれに応じた場合は出精値引きには当たりません。

取引先が過度に値引きを要求し、非合理的な金額の値引きが行われた場合は、独占禁止法や下請法に違反する可能性もあります。公正取引委員会からの勧告を受けるケースもあるため、値引きする側、される側ともに注意が必要です。

独占禁止法における「優越的地位の濫用」

優越的地位の濫用は、独占禁止法で禁じられている不公正な取引方法の一つです。取引上の地位が相手方に優越している企業が、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引相手に対して不利益を与える行為を指します。

たとえば、大手企業が中小企業に対して「取引を打ち切る」「発注量を減らす」といった報復措置を示唆したり、「これが業界の慣習だ」として合理的な理由なく、赤字になるような大幅な出精値引きを一方的に要求したりする行為が当てはまります。

下請法における不当な減額

とくに下請取引(親事業者と下請事業者の関係)においては下請法が適用され、より厳格な規制が設けられています。下請法とは、親事業者がその取引上の地位を利用して、下請事業者に対して不当な取扱いをすることを防ぎ、下請事業者の利益を保護するための法律です。

下請法第4条第1項第3号は、親事業者が下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた下請代金を減額することを禁止しています。

具体的には、親事業者が契約成立後に「出精しろ」「特別値引きをしろ」といった要求を一方的に行い、従わないと取引継続が困難になるような状況があった場合、不当な減額として下請法違反となります。

たとえ、リベートや協力金といった名目であっても、それが実質的に下請代金の減額に当たる場合や合理的な根拠がない場合は、下請法違反と見なされます。

【関連記事】
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まとめ

出精値引きは、取引先との関係性を良好にするためのコミュニケーションともいえます。出精値引きをする際は、見積書に値引き金額や理由を明記して、取引の当事者ではない人が混乱しないように十分な配慮をしましょう。

よくある質問

出精値引きが行われるのはなぜ?

出精値引きは、見積もりを提示する企業側が、顧客との関係維持を目的として行うケースが一般的です。また、時には「これ以上の値引きは難しい」という意味合いを込めて行う場合もあります。

詳しくは記事内「出精値引きとは」をご覧ください。

出精値引きとほかの値引きはどう違う?

一般的な値引きは特別キャンペーン、品質劣化や納期遅延などを理由に行われます。一方の出精値引きは、実質的な理由がなく、あくまでも取引先への誠意を示すものとして値引きが行われます。

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