販売管理の基礎知識

販売価格(売値)とは? 商品価格の決め方や計算方法について解説!

販売価格(売値)とは? 商品価格の決め方や計算方法について解説!

販売価格(売値)とは、商品を販売する時の価格のことです。販売価格を決める方法は複数あり、競合商品の価格動向や自社の経営戦略など、さまざまな視点から検討した上で価格を設定することが大切です。

本記事では、販売価格の基本情報や計算方法、販売価格を検討する際の戦略や種類を解説します。

目次

販売価格(売値)とは

販売価格(売値)とは、商品を販売する価格のことです。競合商品の価格動向や自社の経営戦略などさまざまな視点から検討して販売価格を設定することが大切です。

販売価格の関連用語

販売価格を決めるためには、「原価率」や「利益率」などの関連する用語について理解する必要があります。

原価・原価率

原価とは、商品やサービスを提供するためにかかるコストのことです。具体的には、材料費・労務費・製造費などを指します。

販売価格は原価より高く設定するのが基本です。販売価格を原価より低く設定すると利益が出ないので、販売価格を決める際には注意しましょう。

原価率とは、商品やサービスを提供するためにかかるコスト(原価)の割合のことです。原価率は次の計算式で求められます。

原価率(%)=売上原価(製造原価・仕入原価) ÷ 売上高 × 100

原価率が低ければ、1つの商品を販売した時に得られる利益は多くなりますが、製品やサービスの品質は低下する可能性もあります。

原価率はやみくもに下げればいいというものではなく、バランスを見ながら検討することが大切です。

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利益・利益率

利益とは、売上高から費用を差し引いた額です。売上高は「いくら売れたのか」が分かりますが、利益は売上高からコストを差し引くので「いくら儲かったのか」が分かります。

利益率とは、売上高に対して利益が占める割合のことです。利益率は次の計算式で求められます。

利益率(%)=売上総利益÷売上高×100

たとえば、原価70円の小物を100円で販売すると売上総利益は30円です。計算式にあてはめると「30÷100×100」で、利益率は30%です。

利益率を算出することで、売上に対して、どれくらいの利益が出るのかを確認できます。

販売価格を決めるための基本的な考え方と計算方法

販売価格を決定するには色々な方法がありますが、押さえておきたい基本となる3つの考え方と計算方法を説明します。

原価(コスト)から考えて販売価格を決める

商品における原価の割合で販売価格を決める方法で、次の計算式で算出します。

販売価格=原価(仕入価格)÷原価率

原価率の平均は業種によって異なるので、自社業界の平均原価率を確認するとよいでしょう。経済産業省によると、2020年主要産業の原価率の平均は80.5%、製造業80.8%、卸売業87.6%、小売業71.2%となっています。

たとえば、原価(仕入価格)100円の商品を原価率80%で販売する場合は「100÷0.8」で、販売価格は125円です。原価率の割合を上げると販売価格は安くなり、下げると販売価格は高くなります。

原価率をベースにした考え方は計算式に当てはめるだけなので、価格設定は簡単です。

一方で買い手の感覚や市場感を度外視しているため、市場価格とかけ離れたり、競合に価格競争で負けてしまう可能性があります。

原価から考えて販売価格を決める方法のメリット・デメリット

メリット

  • 価格設定が簡単

デメリット

  • 競合に価格競争で負ける可能性がある
  • 市場価格と乖離する可能性がある
  • 買い手の感覚と乖離する可能性がある

利益率から考えて販売価格を決める

商品を販売した際にどれくらい利益を出したいかを基準に販売価格を決める方法で、次の計算式で算出します。

販売価格=原価(仕入価格)÷(1−利益率)

たとえば、5,000円で仕入れた商品があるとします。ここから20%の利益率を出したい場合は「5,000÷(1−0.2)」となり、販売価格は6,250円に決まります。利益率を高くすると、販売価格も高くなります。

利益率を基準にして販売価格を決める方法も算出は簡単ですが、買い手の感覚や市場感が反映されていないため、売り手の都合によっては市場価格からかけ離れてしまう可能性があります。

利益率から考えて販売価格を決める方法のメリット・デメリット

メリット

  • 価格設定が簡単

デメリット

  • 競合に価格競争で負ける可能性がある
  • 市場価格と乖離する可能性がある
  • 買い手の感覚と乖離する可能性がある

市場ニーズや競合と比較して販売価格を決める

市場ニーズや競合と比較して販売価格を決定する方法です。販売したい商品は、市場でどのくらい需要があるかを調査・検討します。需要に対して供給の少ない商品は、販売価格が上がる傾向にあります。

また、競合がいくらで販売しているかを確認し、商品の価格相場も把握します。性能や品質に差がない商品の場合は、販売価格が安い方が買い手に選ばれやすいです。

市場や競合の動向を調査すると、商品が売れる金額の予測がしやすくなります。原価率や利益率をベースに単純な計算式で販売価格を決める方法では不足している、マーケティング戦略の視点が含まれた販売価格の決め方です。

市場ニーズや競合と比較して販売価格を決める方法のメリット・デメリット

メリット

  • 市場価格と乖離しにくい
  • 競合に価格競争で勝ちやすい・売れ安い販売価格の予測がしやすい

デメリット

  • 原価率や利益率をベースに算出するより、価格設定が大変
  • マーケティング戦略の視点が必要

販売価格の決定方法と戦略

販売価格は上記で確認した3つの考え方をもとに、さまざまなマーケティング戦略の視点を持って検討します。販売価格の設定には複数の方法がありますが、ここでは代表的な9つの方法を説明します。

コストプラス法(原価加算法)

一定の利益率や利益額を商品の製造コストに加えて、販売価格を決定する方法です。コストプラス法では、次の計算式で算出します。

販売価格=原価(直接費+間接費)+利益

販売価格はコストに利益を加えたものなので、不当に安くも高くもない適正価格に設定することができます。相場価格と乖離する場合は、なぜその価格になっているのかをきちんと説明して買い手に納得してもらうことが大切です。

マークアップ法

卸売業者や小売店が販売価格を決定する方法です。製造原価をもとにするコストプラス法の変形で、仕入れ原価をもとに次の計算式で算出します。

販売価格=仕入れ原価+利益

市場価格追随法

すでに市場に出回っている商品の価格を基準にして販売価格を決定する方法です。ほかの商品と差異化できる場合は、競合商品以上の価格設定にすることができます。

一方、差異化できる部分がない場合は、競合商品より価格を低く設定するか検討が必要です。

プライスリーダー追随法

業界に大きな影響力をもつリーダー企業の販売価格を基準にして、販売価格を決定する方法です。最初に販売する商品の業界を調べ、業界に大きな影響力を持っているリーダー企業の存在の有無と、その影響力の度合いを確認します。

プライスリーダーの見極めを誤ると、自社の販売価格の設定においても間違った判断をしてしまうので、慎重に行うようにしましょう。

プライスリーダーは買い手の信頼を得ているケースが多いので、明確な差異化ができない限り、販売価格で大きく差をつけることは難しいといえます。

慣習価格法

長期にわたり慣習的に決められてきた価格に従い、販売価格を決定する方法です。

たとえば、自動販売機の飲み物(缶120円、ペットボトル150円)や、飴1袋150円前後などが一例として挙げられます。

慣習価格は買い手にとって絶対的な固定観念となっているケースが多いため、それより高い値段に設定すると売れにくく、反対に安く設定してみても買い手は離れてしまう傾向があります。

そのため、販売価格を検討する際には売りたい商品に慣習価格が存在するか、確認するとよいでしょう。

名声(威光)価格

品質やブランド、希少性などの付加価値を加えたプレミアム価格にして、ほかの商品よりあえて高い販売価格にする方法です。

買い手には安い商品ばかりを買うのではなく、質のよい希少な商品を手に入れたいという気持ちがあります。一般的にブランド物の靴やアクセサリーは名声価格で販売されます。

ほかにも、通常の商品より品質のよい材料を使用した飲み物や食べ物は、販売価格が高めに設定される傾向があります。

端数価格

3,000円を2,980円にしたり、4,000円を3,980円したり、キリのよい価格からわずかに値下げした販売価格にする方法です。多くの店で取り入れているやり方で、キリのよい価格で販売するより、お得に見える効果があります。

段階価格

段階的に価格が異なる複数のラインナップで販売する方法です。実際に売りたい商品より、高い商品と安い商品を一緒に販売します。

たとえば、松竹梅のコースなど3段階になっていると、真ん中の価格を選びやすいという消費者心理に基づいています。

抱き合わせ価格

商品を組み合わせることで割引きした販売価格にすることです。

販売価格を割り引くことで、1商品あたりの販売価格は下がりますが、消費者1人が1回の買い物で購入する金額(客単価)は上がるため、結果として売上が上がります。

販売価格を決める際の注意点

商品の売れ行きは、販売価格によって大きく左右されます。そのため、販売価格を決める際には慎重に検討することが大切です。

消費者目線で検討しているか

たとえば利益率をベースにして販売価格を検討する場合、売り手の希望が強く反映された価格になってしまい、消費者が購入したいという価格設定からかけ離れてしまうケースがあります。

このような事態を防ぐためには、利益率をベースにしながら、市場ニーズや相場価格も考慮して販売価格を決定しましょう。買い手の気持ちをよく考えたうえで価格設定をすることが大切です。

市場価格とかけ離れていないか

販売価格は高すぎても低すぎても売れにくいという特徴があります。

販売価格が高すぎると、希少性などの付加価値や差異化できるポイントがない限り、通常は競合との価格競争に負けてしまうことが多いです。

一方で販売価格を低くすれば売れると考えがちですが、実際には販売価格が低すぎると買い手に品質を疑われたり、不信感を抱かれたりすることもあります。販売価格を設定する際には、適正な市場価格を確認しましょう。

最初に設定する価格を安くしすぎない

売りたい気持ちが先行するあまり、最初から無理に販売価格を安く設定すると、後から値上げせざるを得ない状況になります。

その結果、消費者に「値上げした」というネガティブな印象を与えかねません。中長期的に考えて、無理のない価格設定をすることが大切です。

まとめ

販売価格を決めるには、利益率や消費者ニーズ、市場状況などのさまざまな角度から検討する必要があります。原価率や利益率の基本的な価格設定の考え方を踏まえつつ、複合的に検証し、自社の商品にとって適切な価格設定を心がけましょう。

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よくある質問

販売価格とは?

販売価格(売値)とは、競合商品の価格動向や自社の経営戦略などから設定される、商品を販売する際の価格のことです。販売価格の計算方法は記事内「販売価格(売値)とは」をご覧ください。

販売価格の決め方は?

原価率や利益率をベースに算出する方法があります。実際には、これらの情報に加えてマーケティング戦略(消費者ニーズや競合商品など)の視点を踏まえて、販売価格を決定します。詳しくは記事内「販売価格の決定方法と戦略」をご覧ください。

販売価格の計算方法は?

基本的な計算方法は、原価率や利益率をベースに算出します。具体的な計算式は記事内「販売価格を決めるための基本的な考え方と計算方法」をご覧ください。

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