
販売管理システムとは、販売にかかわる業務を一元管理して、業務効率化を促進するシステムのことです。複数の部門にまたがる業務が多い販売管理では、システムの導入による効率化が欠かせません。
業務効率向上に貢献する販売管理システムには、クラウド型とオンプレミス型という2つの種類があり、それぞれ異なる特徴があります。
本記事では、販売管理システムの概要を説明し、主にクラウド型の販売管理システムのメリットや導入の際の注意点、選び方について解説します。
目次
- 販売管理システムとは
- 販売管理に関する機能
- 在庫管理に関する機能
- 購買管理に関する機能
- 販売管理システムとERPの違い
- 販売管理システムの種類
- クラウド型販売管理システム
- オンプレミス型販売管理システム
- 販売管理システムを導入するメリット
- 業務効率化につながる
- 情報を一元管理できる
- 作業の自動化・標準化ができる
- 管理コストを削減できる
- 部門間の連携がスムーズになる
- 法改正にスムーズに対応できる
- クラウド型販売管理システムを導入するメリット
- 導入までの時間が短い
- BCP対策になる
- 運用コストを抑えられる
- 法改正へ自動で対応してくれる
- 販売管理システムを導入するときの注意点
- 目的を明確化したうえで導入する
- 複数の販売管理システムを比較する
- 現場の意見を反映させる
- 導入後の運用体制を整える
- 販売管理システムの選び方
- システムの仕様(パッケージとオーダーメイド)
- システムの種類(クラウド型とオンプレミス型)
- 業種・業態に適しているか
- 既存の会計ソフトとの自動連携は可能か
- 会社規模に適しているか
- まとめ
- よくある質問
販売管理システムとは
販売管理システムとは、販売にかかわる業務を一元管理して、業務効率化を促進するシステムのことです。
販売にかかわる主な業務には、次の3つが挙げられます。
- 販売管理
- 在庫管理
- 購買管理
企業の販売活動には多くの工程があるため、それぞれの工程をシステムで一元管理できると円滑に業務を進められるのがポイントです。
ここでは、販売管理システムにおける販売にかかわる各業務に関する機能について紹介します。
販売管理に関する機能
販売管理システムにおける販売管理に関する機能は、見積もり・受注・売上・請求の一連の流れに関する機能です。各プロセスのデータをもとに、見積書や受注伝票、請求書、納品書といった書類を自動で作成できます。
販売管理機能では顧客情報や売上の履歴がデータで残るため、検索機能を活用すれば売上分析の効率化が可能です。
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在庫管理に関する機能
販売管理システムにおける在庫管理に関する機能は、商品の仕入れ・販売に伴う在庫数の増減の把握や、検品状況を適切に管理する機能です。在庫数を正確に把握できれば、在庫不足による機会損失や在庫過多による管理コスト増を防ぐことができます。
販売管理システムの在庫管理機能は、人の手では管理の難しい大量の在庫管理や複数の種類の在庫管理にも対応しています。
また、販売管理システム上のデータ管理によって、複数部門のデータを個別で確認する手間がなくなり、生産・物流・販売それぞれの担当者の負担軽減が可能です。
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在庫管理とは?必要性や管理方法、在庫管理システムを導入するメリットを解説
購買管理に関する機能
販売管理システムにおける購買管理に関する機能は、商品の仕入れに関わる業務を担う機能です。仕入れが発生した際、発注伝票を自動で作成し、伝票内容をもとに在庫データにも数字が反映されます。
仕入れに対する支払い残高や支払い期限などもデータで管理できるため、人の手でひとつずつ支払い処理を行う必要がありません。
販売管理システムとERPの違い
販売管理システムと混同されやすいシステムに、「ERP(Enterprise Resource Planning)」があります。
販売管理システムは主に販売活動に特化した機能を持ちますが、ERPは企業全体の資源を一元管理するシステムです。そのため、ERPは販売だけでなく財務や人事、製造などの幅広い業務を統合的に管理します。
つまり、販売管理システムは特定の業務に焦点を当てているのに対し、ERPは企業全体の業務プロセスを最適化することを目的としているという違いがあります。
ERPについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
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販売管理システムの種類
販売管理システムの種類は、大きくクラウド型とオンプレミス型の2つに大きく分けられます。
クラウド型販売管理システム
クラウド型販売管理システムでは、インターネットを通じて事業者が提供するシステムやサービスを利用します。
インターネットに接続できる環境であれば、どこからでもアクセスできるのが特長です。出社しなくても使用できるため、担当者のリモートワーク促進にもつながります。
オンプレミス型販売管理システム
オンプレミス型販売管理システムは、自社のサーバーにシステムをインストールして使用します。自社の業務内容に合わせてカスタマイズしやすく、運用が社内で完結するため機密性が高いというメリットがあります。しかし、基本的には社内からでなければアクセスできません。
ほかにも、クラウド型とオンプレミス型では、導入コストや運用コストといった費用の違いがあります。自社の業務の特徴から、費用対効果に見合うものを選びましょう。
販売管理システムを導入するメリット
販売管理システムを導入することで得られる、主なメリットについて解説します。
業務効率化につながる
販売管理システムの導入によって業務プロセスが自動化され、手作業によるミスが減少し、業務の負担が軽減されます。
販売管理に関する業務は多岐にわたるうえ、煩雑になりがちなので、販売管理システムを導入することで業務効率化や人件費削減につながる可能性があります。具体的には、システム上で伝票計算を簡潔に行えるほか、データ入力が不要になることなどが挙げられます。
情報を一元管理できる
販売管理システムの導入で情報を統合的に管理できるようになると、複数の部署にまたがる業務であっても、情報の共有漏れといった連携ミスが起こりづらくなります。
受注状況などの情報を継続的に蓄積することで、ユーザーニーズの把握に役立ち、経営判断の材料としても活用できます。
作業の自動化・標準化ができる
手作業による販売管理では入力ミスが発生しやすく、さらに関数やマクロを含んだExcelによる情報管理では、担当者しかデータを理解できないケースも少なくありません。
システムの導入によって販売管理の業務を自動化・標準化できると、ヒューマンエラーや属人化リスクを防止できます。担当者の不在時でも、柔軟に対応できるようになります。
管理コストを削減できる
紙の帳票を使用している場合には紙代や印刷代、保管料などがかかりますが、システム化によってこれらのコストを削減できます。
ペーパーレス化も同時に実現でき、適切なシステムを選択すればリモートワークなどの従業員の多様な働き方の実現にもつながります。
部門間の連携がスムーズになる
販売管理システムのデータは、基本的にリアルタイムで更新されます。これによって、営業部署や在庫管理部門など異なる部署・部門間で同一のデータを共有できるようになります。これにより、スムーズな連携や正確な意思の疎通が可能になります。
重複発注や納品漏れといった他部署との情報共有不足によるミスも抑制でき、正確な販売業務を実施できます。
法改正にスムーズに対応できる
インボイス制度や電子帳簿保存法など、企業の帳票管理に関する法律改正への対応は大きな課題です。Excelでの手作業では要件を満たすのが容易ではありません。
販売管理システムのうち、とくにクラウド型なら、法改正に合わせてベンダーが自動で無料アップデートしてくれます。システムを利用するだけで法令に準拠できるため、手間なく安心して運用できます。
クラウド型販売管理システムを導入するメリット
販売管理システムを導入するメリットについて、とくにクラウド型販売管理システムに焦点をあてて紹介します。
導入までの時間が短い
クラウド型販売管理システムは、オンプレミス型よりも短期間での導入が可能です。
オンプレミス型を導入する場合、自社のサーバーにインストールする必要があるほか、カスタマイズのための開発期間が発生します。そのため、契約してもすぐに使えるわけではありません。
クラウド型はインターネット環境以外に特別な準備を必要としないため、導入後すぐに使用できるのもメリットのひとつです。
BCP対策になる
クラウド型の販売管理システムの導入は、BCP対策としても効果的です。
BCP(Business Continuity Plan)とは事業継続計画のことで、企業が災害などの緊急事態に遭遇した場合に、被害を最小限にとどめつつ事業を継続するための計画です。
クラウド型の販売管理システムは、自社サーバーが破壊されたり災害時に交通インフラ機能が停止したりした場合でも、インターネットに接続できれば外部からでも業務を継続できます。
運用コストを抑えられる
クラウド型の販売管理システムは、オンプレミス型よりもコストを抑えられる傾向にあります。
オンプレミス型は買い切り型であることが多く、機能やカスタマイズの内容によっては初期費用が高額になるケースもあります。また、機能の変更やアップデートを行う場合は、別途支払いが必要になることが一般的です。
一方でクラウド型は、サブスクリプション型の費用形態によりコストを抑えやすいのがポイントです。システムの保守運用についてはサービス提供事業者が担ってくれるため、保守管理費用も発生しません。
法改正へ自動で対応してくれる
オンプレミス型の場合、法改正に伴うアップデートには追加費用がかかったり、法改正の情報を自社で把握したりする必要があります。
しかし、クラウド型であれば法改正を含めたアップデートが定期的に実施されるため、対応に人的リソースをとられません。常に最新の法令に沿ったシステムを利用できるのがポイントです。
販売管理システムを導入するときの注意点
業務改善や生産性向上が狙える販売管理システムですが、導入にあたって注意すべき点もあります。主な注意点を解説します。
目的を明確化したうえで導入する
販売管理システムを導入する際は目的を明確にし、必要な機能を洗い出すことが重要です。
販売管理システムの目的が明確化していない状態で選定・導入してしまうと、システムの恩恵を受けられず、かえって効率が悪くなるおそれがあります。
販売管理システムを導入すること自体が目的になっている場合は、注意が必要です。何のために販売管理システムを導入するのか、導入前に熟考しましょう。
導入目的を明確化するためには、業種や業態、業務の範囲、活用したいデータなどを考慮したうえで社内の業務フローを整理し、課題を洗い出しておきます。
複数の販売管理システムを比較する
販売管理システムの導入の目的が明確になったら、複数のシステムを比較して自社にマッチするか検討しましょう。
最初から1社に絞ってしまうと、自社に適したシステム選びの判断基準が曖昧になります。検討前に必要な操作性や機能性の基準を決めてから、複数システムを比較するのがおすすめです。
なお、本契約の前に無料トライアルを実施している販売管理システムもあります。実際に利用してみると導入後の実務のイメージが掴めるため、システム選びの失敗を回避しやすくなります。
現場の意見を反映させる
販売管理システムの導入前に現場の意見を収集し、ニーズに合うシステムを選定する必要があります。
システムを導入しても現場の担当者が使いづらいと感じたり、業務に馴染まないものであれば浸透していきません。
「どの業務を効率化したいか」「どのシステムならば課題解決できそうか」「実際の管理画面は使いやすそうか」など、決裁者と現場ですり合わせを行いましょう。
導入後の運用体制を整える
販売管理システムは、導入して終わりではありません。導入後の運用体制を整え、従業員への教育やマニュアル整備にも力をいれましょう。
導入後の運用体制が整っていないと、かえって業務効率が悪くなってしまったり、導入した販売管理システムが使われなかったりといった事態が生じます。
販売管理システムの選び方
販売管理システムを選ぶ際は、システムの種類や運用方法を考慮する必要があります。
主なシステムの種類、運用方法を例に挙げ、選定ポイントを解説します。
システムの仕様(パッケージとオーダーメイド)
オーダーメイドのシステムであれば、必要な機能をすべて盛り込み、完全に自社仕様にカスタマイズすることが可能です。ただし、システムを最初から構築する必要があるため、導入にかかるコストが高く、導入に至るまでの期間も長期化してしまうケースも少なくありません。
一方、販売管理に必要な機能をパッケージ化したシステムであれば、オーダーメイドのシステムを構築するよりもはるかに低コストで導入できます。また、すでに完成しているシステムなので短期間での導入も可能です。
ただし、パッケージシステムに機能追加などのカスタマイズをする場合は、オーダーメイドより高額になったり導入期間が長くなったりと、パッケージシステムのメリットを得られないこともあるため注意が必要です。
そのような事態を避けるためにも、導入前に必要な機能や使い勝手を確認しておきましょう。多くのシステムでトライアルやデモを設けているので、それらの機会を活用してみてください。
システムの種類(クラウド型とオンプレミス型)
販売管理システムの種類としては前述のとおり、クラウド型とオンプレミス型の2種類があります。どちらの種類を選ぶかについても、システム選びの重要なポイントです。
クラウド型の場合は、導入コストや保守費用を抑えられます。また、インターネットに接続できる環境であればいつでも利用でき、リモートワークにも対応可能です。
ただし、カスタマイズ性はオンプレミス型より低くなる点に注意しなければなりません。
業種・業態に適しているか
販売管理システムに求める機能は業界や業態によって異なるため、業界や業態に適したシステムを選定することが重要です。
業種特有の商習慣やモノの流れが考慮されていないシステムでは、販売・購買情報を一元管理できなかったり、使い勝手が悪かったりする可能性があります。
業種にマッチしたパッケージシステムがない場合は、カスタマイズやオーダーメイドできるシステムの導入を検討することが必要です。結果として、コスト削減や導入後の運用効率化が期待できます。
既存の会計ソフトとの自動連携は可能か
販売管理システムを選定する際は、自社ですでに導入している会計ソフトと連携できるかどうかも見極めのポイントです。
ほかのシステムと連携すれば販売状況や資金繰りなどの情報を統制でき、情報を正確に把握できるため経営の精度の向上につながります。
販売管理業務においてはさまざまなところから財務情報や帳票情報などを集めなければなりません。さらに、販売管理システムと既存の会計ソフトの情報を自動連携できないと、同期にも手間がかかってしまいます。freee販売なら会計データとつなげた自動集計が可能になり、迅速な情報集計・正確な数値計算の実現が可能です。
会社規模に適しているか
販売管理システムにエラーが発生したり、システム自体が停止して使えなくなったりする事態の発生もあり得ます。緊急事態において、いかに早くシステムを復旧させられるかが、ビジネスにおいて非常に重要なポイントです。
システムのベンダーがサポートを行っている場合は、問い合わせへの対応体制やエラー発生時のサポート体制が整ったものを選んでください。また、OSのバージョンが新しくなった場合は、システムが自動的にアップデートされるかどうかも重要なポイントです。
自社でオーダーメイドシステムを運用する場合、社内の運用保守担当者がいつでもシステムの復旧にあたれるような体制を整備することが必要となります。
まとめ
複数の部門にまたがった業務が発生する販売管理業務は、システムを導入して業務を一元管理すると効率化できます。クラウド型の販売管理システムであればコストを抑えながら運用でき、法改正などにも自動で対応してくれるメリットがあります。
しかし、システムを導入しても現場に浸透しなければ意味がありません。システム導入の目的を明確にし、現場の使いやすさも考慮したうえで、適切な販売管理システムを選定しましょう。
よくある質問
販売管理システムでは何ができる?
販売管理システムを使えば、販売活動の一連の流れを一元管理できます。代表的な販売管理システムの搭載機能を、以下の表にまとめました。
機能 | 具体的な業務内容 |
---|---|
見積管理 |
・見積登録 ・見積書作成 |
受注管理 |
・商品の受注データの登録 ・商品の受注・発注 |
売上管理 |
・リアルタイムの売上把握 ・売上伝票や売上明細の出力 ・顧客データの収集 |
クラウド請求管理 | ・請求書の発行 |
入金管理 |
・入金データの自動照会 ・入金消込・入金伝票の自動化 |
システムによっては、在庫管理や購買管理機能を搭載しているものもあります。企業の事業内容によっては販売管理といっても、具体的な内容は違います。販売管理をする際に自社では、どの項目が必要なのかについて検討しましょう。
販売システムの機能について、詳しくは「販売管理システムとは」をご覧ください。
クラウド型販売管理システムを導入するメリットは?
クラウド型販売管理システムを導入する主なメリットは、次の4つです。
- 導入までの時間が短い
- BCP対策になる
- 運用コストを抑えられる
- 法改正へ自動で対応してくれる
詳しくは記事内「クラウド型販売管理システムを導入するメリット」をご覧ください。
販売管理システムとERPの違いは何ですか?
販売管理システムは、主に販売活動に特化した機能を持ちます。これに対して、ERPは企業全体の資源を一元管理するシステムです。ERPは販売だけでなく財務や人事、製造などの業務も幅広く統合的に管理します。
詳しくは、記事内の「販売管理システムとERPの違い」で解説しています。