最終更新日:2023/04/04

案件管理とは、取引先や営業進捗の情報を可視化し、記録・管理することです。
最近では、取引先の情報や案件の進捗状況・受注確度などを一元で管理から分析を行う「案件管理システム」を活用し、業務効率化を図る企業も増えています。案件管理システムは、別名「販売管理システム」とも呼ばれています。
本記事では、案件管理の基礎知識から案件管理ツールの種類、案件管理システムのメリットや導入するポイントなどを解説します。
目次
案件管理とは
案件管理とは、取引先の情報や営業の進捗状況を管理し、可視化する取り組みのことです。案件管理は、企業の営業活動やプロジェクトを効果的に進行するうえで欠かせません。
「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(だれが)」「What(なにを)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」という5W1Hの情報に加えて、受注の見込度合いや受注予定日、売上見込額などを記載します。
案件管理によって案件ごとの記録を残せるため、さまざまな点で組織の生産性が向上します。案件ごとの進捗も可視化できるので、進捗管理をスムーズに行えることもメリットです。
案件管理の必要性
案件管理の必要性として、主に以下の4つが挙げられます。
案件管理の必要性
- 受注確度を高める
- 属人化を回避する
- 案件分析による業務改善
- 意思決定の根拠となる
受注確度を高める
案件管理の最大の目的は、目の前の案件を受注につなげることです。
営業担当者は商談の過程で、取引先の要望や環境、抱えている問題点などさまざまな情報を入手しますが、これらの情報を自分で処理しようとすると負担が大きくなります。
マネージャーやリーダーが各案件の状況や情報を把握し、的確な指示を出すことで、営業担当者は常に適切なアドバイスを受けながら顧客対応にあたることができます。
また、同一の顧客に対して複数人の担当者がいる場合、案件を適切に管理することによって、情報や認識の齟齬を防ぐことができるでしょう。
たとえば、インサイドセールス部門でテレアポ担当者が行った事前ヒアリングの内容が営業担当者に正しく伝わっていないと、顧客訪問時に事前ヒアリングと同じ質問を繰り返したり、要望に合わない別のサービスを紹介したりすることになりかねません。
ホットリードに対して適切な営業活動を展開するためには、案件管理を行い、情報を共有することが重要です。
案件管理を行い組織的に対応することで、受注確度をより高めた営業活動につながるのです。
属人化を回避する
営業担当者の属人化を回避するためにも、案件管理が必要です。各案件の営業活動のすべてを営業担当者個人に任せてしまうと、以下のようなリスクが発生する可能性があります。
- 人事異動や退職による売上減少
- 組織としての営業実績が個人の意欲やスキルに依存
- 営業担当者不在時に受けた問い合わせへの迅速な対応が困難
営業担当者以外は案件情報を知らないという状況を避け、部署内や部門内で各案件の情報や商談の進捗状況を共有することで、営業活動の属人化を防ぐことができます。
案件分析による業務改善
適切な案件管理を行うことで、営業活動のボトルネックを把握し、業務改善が期待できます。
たとえば、受注や失注の原因を分析することで「アポイント獲得から訪問までの日数が一定以上あると受注率が下がる」「特定の業界では受注率が高い」などの発見ができ、営業フローの改善やプロダクトの強化につながります。
また、案件の対応記録は、営業担当者が新規案件に対応する際の参考情報や、新人への教育資料としても活用可能です。
意思決定の根拠となる
日々の案件管理は経営に直結しており、案件管理で情報を残すことは経営の観点からも大きなメリットがあります。
売上予測などを正確に把握することで、経営層が自社の次の一手を迅速に検討することができたり、アクションを起こすための意思決定の根拠になったりします。
案件管理ツールの種類
案件管理に使用できるツールとして、エクセル・Googleスプレッドシート・タスク管理ツールの3つがあります。
それぞれの管理ツールのメリット・デメリットを解説します。
ツール | メリット | デメリット |
---|---|---|
エクセル |
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Googleスプレッドシート |
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タスク管理ツール |
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エクセル(Excel)
エクセルは多くのパソコンに初期搭載されているため、導入コストがかかりません。また、エクセルを使ったことがないビジネスマンは少数派です。
表計算だけでなく、さまざまな用途に使われるツールなので、案件管理で使用する際も使い慣れたソフトで行うことができます。
エクセルの条件付き書式や入力規則を活用することで、案件の確度や顧客情報、状況、問題点などについて自由なフォーマットで入力できます。
一方、エクセルで管理するデメリットとして、フォーマットや入力規則を作成する必要があることが挙げられます。
また、複数人が同時に情報を更新できないため、案件情報を更新するために誰かが営業担当者から情報を集める必要があり、情報を共有するまでに時間がかかります。共有するファイルのバージョンが異なる場合には、正確に表示されない可能性も考えられます。
どうしてもエクセルで管理したい場合は、セキュリティ対策を施したDropboxやGoogle Driveを利用して、進捗状況をリアルタイムに可視化できるようにしましょう。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートで管理する場合も、エクセルと同様に導入コストはかかりません。必要なのは、Googleのアカウントのみです。
Googleスプレッドシートは、不特定多数の人が同時に更新できるように設計されています。更新した情報はリアルタイムに反映されるため、その場で部署内や部門内への共有が可能です。
なお、修正履歴も確認できるので更新箇所がすぐに把握でき、更新内容を間違えた場合でも簡単に更新前の状態に戻すことができます。
Googleスプレッドシートで管理するデメリットは、エクセルと同様にフォーマットや入力規則の作成が必要なことです。
また、企業ごとにGoogleアカウントを設定する必要がある点でも手間がかかります。セキュリティ面の観点からも、企業での導入にはシステムやリーガル上の障壁、有料プランへの移行によるコスト増加も考えられるでしょう。
タスク管理ツール
タスク管理ツールは、各担当者が行うべきタスクを一覧表として可視化するツールです。
主にプロジェクトの進捗管理を目的に開発されているため、ガントチャートなど進捗を管理する機能がデフォルトで実装されているツールも多く、「タスクの管理」に最適化されています。イベントや展示会など、営業担当者が通常の営業活動以外で行う業務の管理にも活用できます。
ただし、タスク管理ツールはあくまでタスクを管理するためのものであり、案件管理に特化したものではありません。エクセルやGoogleスプレッドシートと同じように、案件管理で使用するには、カスタマイズや入力ルールの作成が必要になることに注意が必要です。
案件管理システムを使うメリット
案件管理では、基本的な情報に加えて、受注確度を高めるために詳細情報を記載する必要があります。代表的な記載項目は以下のとおりです。
案件管理に記載すべき項目
- 取引先名称
- 営業担当者
- 商材
- 商談経緯
- 商談日
- 商談内容
- 案件の進捗状況
- 受注の確度
- 受注予定日
- 売上予金額
- 営業担当者の行動履歴
しかし、これらの情報をエクセルなどですべて管理するのは、大変な手間と時間がかかることになります。
取引先とのやり取りやアポイントが月に数十件以上ある企業なら、案件管理システムの活用がおすすめです。
案件管理システムを利用する代表的なメリットは主に以下の3つです。
- 状況を可視化できる
- 情報が紐付いている
- 簡単に分析ができる
状況を可視化できる
案件管理システムを利用すれば、「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「なぜ」「どのように」処理したかをリアルタイムで確認できます。
予定より遅れている案件や、未対応の案件を担当者に通知するアラート機能を搭載しているシステムもあります。
案件の状況を可視化することで、案件が特定の営業担当者に偏っていないか、フォローが必要な案件はないかなど、円滑に営業活動を進めることができるでしょう。
情報が紐付いている
エクセルで管理している場合、取引先の会社名や住所、担当者の部署、連絡先などの取引情報を確認するためには、別シートやファイルを参照しなければなりません。
一方でクラウド型の案件管理システムであれば、これらの取引情報がすべて紐付けられているので、一度入力しておくと関連するすべての情報の確認が容易になります。
進捗が滞っている案件を発見した場合にも、顧客情報や担当者が過去に行ったアプローチなどをすぐに確認し、次のアクションにつなげることができるでしょう。
エクセルでの管理に比べ、案件管理システムなら、情報管理に費やさなければならない時間や労力が大幅に削減されます。
簡単に分析ができる
案件管理システムを使用すれば、期間ごとの売上予測や実績のデータを出したり、それらをグラフで表示したりすることも簡単です。
また、営業フェーズごとの移行率を比較することで、営業活動のボトルネックや成果の出ていない施策を可視化し、分析することが可能です。
これにより、マネージャーやリーダーは適切なフォローアップや改善策を立案することができるでしょう。
案件管理システム導入時のポイント
案件管理システムを活用するためには、最初に各営業担当者が管理するすべての取引情報を案件管理システムに入力する必要があります。 さらに効率的な案件管理を行うためには、その情報を随時更新していかなければなりません。
以上のような工数を経て、案件情報をもとにした適切な管理・分析が可能になるのです。
しかし、これらの作業は容易でないため、案件管理システム導入に対する満足度が低いと言われています。
案件管理システムを導入する際には、価格や機能だけでなく、「現場の営業担当者に定着するかどうか」という視点でシステムを選ぶことが重要です。
具体的には、以下のポイントが重要となります。
- ツール連携ができるか
- モバイルやタブレットに対応しているか
- 使いやすい画面設計であるか
ツール連携ができるか
前述のとおり、案件管理システムが現場に根付かない最大の理由は、担当者が情報を入力する負担が大きいことです。この負担を解消するのがツール連携機能です。
名刺管理ツールやMicrosoft 365、Google Workspaceなどのツールと案件管理システムを連携させることで、情報入力の手間を削減できます。
また、マーケティングオートメーションやSFA(営業支援ツール)も多くの企業で導入が進んでいます。マーケティングオートメーションは、リードの獲得・育成から商談までのプロセスを支援し、Web上での見込み顧客の行動分析が可能です。
一方、SFAは商談の進捗状況や結果などの情報を蓄積・管理し、効率的に売上へつなげるためのツールです。
さまざまなツールと連携することで、案件情報の入力をする手間を省くだけでなく、案件管理から顧客育成までを一気通貫で行うことができるようになります。
モバイルやタブレットに対応しているか
使用している案件管理システムがモバイルやタブレットに対応していない場合、案件情報の入力や確認のたびにパソコンを立ち上げる必要があり、外出先での利用はハードルが高くなります。
しかし、これらに対応している案件管理システムなら、商談が終わったらすぐにスマートフォンやタブレットで案件の進捗状況を更新したり、次の商談までの短い時間で簡単に案件情報を確認したりできます。
使いやすい画面設計であるか
システムのUIが使いやすいかどうか、データの入力がしやすいかどうかなどにも注目しましょう。どんなに性能が優れたシステムでも、入力が簡単でなければ日常的に利用することは難しくなります。
無料のトライアル期間などをうまく利用し、営業担当者に実際に入力してもらった上で導入を判断するとよいでしょう。
まとめ
案件管理は営業活動だけでなく、取引先や企業そのものをサポートするためのものです。上手に活用し、企業の利益に結びつけましょう。
案件管理システムを導入すると、案件をどのように処理したかリアルタイムで確認したり、期間ごとの売上予測や実績のデータを出して分析したりすることも可能です。改善策を検討する際にも有効となります。
また、クラウド型の案件管理システムでは、取引情報がすべて紐付けられているので、一度入力すれば簡単に関連情報を確認できます。
案件管理システムを導入する際には、ツール連携の可否やモバイルやタブレットに対応しているか、使いやすい画面設計であるかなどを確認するとよいでしょう。
よくある質問
案件管理とは?
案件管理とは、取引先や営業進捗の情報を記録・管理して、可視化させることです。企業の営業活動やプロジェクトを効果的に進行するうえで欠かせない作業となります。詳しくは記事内「案件管理とは」をご覧ください。
案件管理はなぜ必要?
案件管理システムを利用するメリット
案件管理システムを利用するメリットとしては、案件の進捗を可視化できることや案件に関する情報が紐付いていること、案件について簡単に分析ができることが挙げられます。詳しくは記事内「案件管理システムを使うメリット」をご覧ください。
案件管理システムを導入するときのポイントは?
案件管理システムの価格や機能だけではなく、「現場の営業担当者に定着するかどうか」という視点で選ぶことがポイントです。
- ・ツール連携ができるか
- ・モバイルやタブレットに対応しているか
- ・使いやすい画面設計であるか
詳しくは記事内「案件管理システム導入時のポイント」をご覧ください。