案件管理とは、取引先や営業進捗の情報を可視化し、記録・管理することです。
最近では、取引先の情報や案件の進捗状況・受注確度などを一元で管理から分析を行う「案件管理システム」を活用し、業務効率化を図る企業も増えています。案件管理システムは、別名「販売管理システム」とも呼ばれています。
本記事では、案件管理の基礎知識から案件管理ツールの種類、案件管理システムのメリットや導入するポイントについて解説します。
目次
案件管理とは
案件管理とは、取引先の情報や営業の進捗状況を管理し、可視化する取り組みのことです。案件管理は、企業の営業活動やプロジェクトを効果的に進行するうえで欠かせません。
具体的には、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(だれが)」「What(なにを)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」という5W1Hの情報に加えて、受注の見込度合いや受注予定日、売上見込額などを管理します。
案件管理の具体的な項目
案件管理では、主に以下の項目を管理します。
項目 | 記載内容 |
---|---|
案件名 | 一目でわかるように案件名を具体的に記載 |
商材 / 商談経緯 | 受注した商材と、受注までの経緯 |
担当者名 | 案件の担当者・連絡先 |
顧客の基本情報 | 会社名・事業所名・窓口担当の部署・担当者名など |
受注確度 | 重要度をすぐ判断できるように、受注確度の高い順にA・B・Cなどと記載 |
ヒアリングメモ | 事前ヒアリングで得られた顧客の悩みや要望 |
受注予定金額 / 日程 | 受注予定の金額や日程(業績予測のため) |
上記の内容を正しく管理することで、営業活動を効率的に行うことができます。担当者全員で共有する必要があるため、管理項目や入力規則などは統一するのがよいでしょう。
案件管理の目的・必要性
案件管理を行う主な目的は以下のとおりです。
案件管理の目的・必要性
- 受注確度を高める
- 属人化を回避する
- 業務改善の分析
- 意思決定の根拠となる
案件管理は顧客の要望や課題の把握だけでなく、顧客ごとに適切な提案を行うことができます。また、案件の進捗をリアルタイムで把握できるため、迅速な対応につながり、受注機会を逃しにくくなります。
また、案件管理は属人化を回避するためにも重要です。担当者の異動や退職があっても、これまでの情報が保存・共有されるため、担当が変わっても業務の継続性が保てるでしょう。
ほかにも案件ごとのデータ分析が可能で、成功・失敗要因の特定から業務改善にも役立ちます。
上述したように、案件管理は企業の営業活動の効率化と成果最大化に不可欠な要素といえるでしょう。
案件管理と商談管理の違い
案件管理と商談管理の違いは管理する情報の領域です。
案件管理は案件名や顧客の基本情報、営業の進捗状況などを幅広く管理するのに対し、商談管理は商談自体のプロセスに重点を置いています。
たとえば、商談の進捗・商談の履歴・次のアクション・場面ごとのノウハウなど、より詳細な商談の内容を管理します。
商談管理を徹底しておけば、受注精度の高いセールストークを社員全員に共有しやすく、結果売上の向上につながるでしょう、
案件管理システムを使うメリット
案件管理システムを利用する代表的なメリットは主に以下の3つです。
案件管理システムを使うメリット
- 業務状況を可視化できる
- 顧客情報を紐づけられる
- 簡単に分析できる
業務状況を可視化できる
案件管理システムを利用すれば、「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「なぜ」「どのように」処理したかをリアルタイムで把握が可能です。
予定より遅れている案件や、未対応の案件を担当者に通知するアラート機能を搭載しているシステムもあるので、遅延にいち早く気付くことができます。
また、「案件が特定の営業担当者に偏っていないか」「フォローが必要な案件はないか」など、案件ごとの状況を可視化できるため、円滑に営業活動を進められるでしょう。
顧客情報を紐づけられる
エクセルやGoogleスプレッドシートで案件管理を行う場合、顧客の名前や住所、連絡先などの顧客情報を確認するためには、別シートやファイルを参照しなければなりません。
クラウド型の案件管理システムであれば、これらの取引情報がすべて紐づけられるため、一度入力しておけば関連するすべての情報の確認が容易になります。
進捗が滞っている案件を発見した場合にも、顧客情報や担当者が過去に行ったアプローチなどをすぐに確認し、次のアクションにつなげられるでしょう。
エクセルでの管理に比べ、案件管理システムなら、情報管理に費やさなければならない時間や労力を大幅に削減できます。
簡単に分析できる
案件管理システムを使用すれば、期間ごとの売上予測や実績のデータを出したり、それらをグラフで表示したりすることも簡単です。
また、営業フェーズごとの移行率を比較することで、営業活動のボトルネックや成果の出ていない施策を可視化し、分析することもできます。
これにより、マネージャーやリーダーは適切なフォローアップや改善策を立案することができるでしょう。
案件管理ツールの種類
案件管理の代表的なツールとして、以下の5つがあります。
案件管理の代表的なツール
- エクセル
- Googleスプレッドシート
- タスク管理ツール
- SFA(営業支援システム・ツール)
- CRM(顧客管理システム・ツール)
1.エクセル(Excel)
エクセルは多くのパソコンに初期搭載されており、導入コストがかかりません。また、表計算だけでなく、さまざまな用途に使われるツールなので、フォーマットを自由に編集できる点がメリットです。
しかし、アナログ管理になるためリアルタイムの更新ができません。また記入する人全員で記載ルールを統一しなければ、情報を正確に管理できないなどのデメリットがあります。
メリット
- 無料で利用できる
- フォーマットなどを自由に編集できる
デメリット
- アナログ管理になるためリアルタイムの更新ができない
- 記載ルールの全社共有が必要
2.Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートで管理する場合も、エクセルと同様に導入コストはかかりません。必要なのは、Googleのアカウントのみです。
無料で利用でき、フォーマットなども自由に編集できます。しかし、エクセル同様に記載ルールの全社共有が必要です。
メリット
- 無料で利用できる
- フォーマットなどを自由に編集できる
- リアルタイムに更新可能
デメリット
- 記載ルールの全社共有が必要
3.タスク管理ツール
タスク管理ツールは、各担当者が行うべきタスクを一覧表として可視化するツールです。
主にプロジェクトの進捗管理を目的に開発されているため、ガントチャートなど進捗を管理する機能がデフォルトで実装されているツールも多く、「タスクの管理」に最適化されています。
また、イベントや展示会など、営業担当者が通常の営業活動以外で行う業務の管理にも活用できます。
ただし、タスク管理ツールはあくまでタスクを管理するためのものであり、案件管理に特化したものではありません。エ
クセルやGoogleスプレッドシートと同じように、案件管理で使用するには、カスタマイズや入力ルールの作成が必要になることに注意が必要です。
メリット
- 進捗を管理するガントチャートなどの充実した機能を活用できる
デメリット
- 利用料がかかることがある
- 記載ルールの全社共有が必要
4.SFA(営業支援システム・ツール)
SFA(Sales Force Automation)とは、営業活動の効率化を図り、営業プロセスを一元管理できるツールです。
営業担当者の訪問履歴や提案内容の記録、進捗状況のリアルタイム管理などが行えます。これにより、営業活動の透明性が高まり、上司やチームメンバーが迅速に支援や指示を行えます。
しかしその反面、導入には費用がかかり、既存の業務フローに合わせたカスタマイズが必要になるため、初期設定や運用には多大な労力が必要でしょう。
メリット
- 営業活動の効率化を図れる
- 営業プロセスを一元管理できる
デメリット
- 導入コストが高い
- カスタマイズや運用に時間がかかることがある
- すべての営業プロセスに対応できない場合がある
5.CRM(顧客管理システム・ツール)
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客情報を一元管理し、顧客との関係を長期的に管理・強化するためのツールです。
顧客の購買履歴や問い合わせ履歴の詳細な管理、ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンの実施などが可能です。
CRMを活用することで、営業活動に必要な情報を部門間で共有でき、顧客満足度の向上や長期的な顧客関係の維持につながります。
ただし、CRMはSFA同様、導入・運用にはコストがかかります。またCRMは導入後すぐに効果が得られるわけではないため、長期目線での運用が前提となるので注意しましょう。
メリット
- 顧客情報を一元管理できる
- 顧客との関係を長期的に管理・強化できる
デメリット
- システムの導入と維持にコストがかかる
- 効果を実感するまでに時間がかかる
案件管理システム導入時の選び方
案件管理システムを導入したら、まず各営業担当者が管理するすべての取引情報を登録する必要があります。 さらに効率的な案件管理を行うには、その情報を随時更新していかなければなりません。
つまり、登録・更新作業をする現場の担当者が使いやすい仕様であることが重要です。
案件管理システム導入のポイントとして、具体的には以下が重要となります。
案件管理システム導入時の選び方
- 既存のシステム・ツールと連携できるか
- スマホやタブレットに対応しているか
- 使いやすい画面設計であるか
既存のシステム・ツールと連携できるか
担当者が案件情報を登録・更新する負担が大きいと、案件システム管理が現場で根付かず、適切な運用につながりません。この負担を解消するのがツール連携機能です。
名刺管理ツールやMicrosoft 365、Google Workspaceなどのツールと案件管理システムを連携させることで、情報入力の手間を削減できます。
また、マーケティングオートメーションなどのツールも多くの企業で導入が進んでいます。マーケティングオートメーションは、リードの獲得・育成から商談までのプロセスを支援し、Web上での見込み顧客の行動分析が可能です。
さまざまなツールと連携することで、案件情報の入力をする手間を省くだけでなく、案件管理から顧客育成までを一気通貫で行うことができるようになります。
スマホやタブレットに対応しているか
案件管理システムがスマホやタブレットに対応していない場合、案件情報の入力や確認のたびにパソコンを立ち上げる必要があり、外出先での利用はハードルが高くなります。
しかし、これらに対応している案件管理システムであれば、商談終了後すぐに案件の進捗状況を更新できたり、次の商談までの短い時間でも簡単に案件情報を確認したりできます。
使いやすい画面設計(UI/UX)であるか
案件管理システムのUIが使いやすいか、データの入力がしやすいかなども重要です。どんなに性能が優れたシステムでも、入力が簡単でなければ日常的に利用するのは難しいです。
無料のトライアル期間などをうまく利用し、営業担当者に実際に入力してもらった上で導入を判断するとよいでしょう。
まとめ
案件管理は営業活動だけでなく、取引先や企業そのものをサポートするためのものです。
案件管理システムを導入すると、案件をどのように処理したかリアルタイムで確認したり、期間ごとの売上予測や実績のデータを出して分析したりすることができます。
ほかにも、案件ごとの課題や改善点を検討するときの判断材料としても有効なので、会社の利益向上にもつながります。
案件管理システムの導入を検討する際は金額だけでなく、実際に入力する現場の担当者が使いやすい仕様になっているかなども視野に入れておきましょう。
よくある質問
案件管理とは?
案件管理とは、取引先や営業進捗の情報を記録・管理して、可視化させることです。企業の営業活動やプロジェクトを効果的に進行するうえで欠かせない作業となります。
詳しくは記事内「案件管理とは」をご覧ください。
案件管理はなぜ必要?
案件管理は、以下の目的を果たすために必要となります。
- 受注確度を高める
- 属人化を回避する
- 案件分析による業務改善
- 意思決定の根拠となる
詳しくは記事内「案件管理の目的・必要性」をご覧ください。
案件管理システムを利用するとどんなメリットがある?
案件管理システムを利用するメリットは、案件の進捗を可視化できることや案件に関する情報がひと目でわかること、案件について簡単に分析ができることが挙げられます。
詳しくは記事内「案件管理システムを使うメリット」をご覧ください。
案件管理システムを導入するときのポイントは?
案件管理システムの価格や機能だけではなく、「現場の営業担当者に定着するか」という視点で選ぶことがポイントです。
- 既存のシステム・ツールと連携できるか
- スマホやタブレットに対応しているか
- 使いやすい画面設計であるか
詳しくは記事内「案件管理システム導入時の選び方」をご覧ください。