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EDIとは?種類やメリット、導入にあたっての注意点についてわかりやすく解説

EDIとは?種類やメリット、導入にあたっての注意点についてわかりやすく解説

EDIとは「Electronic Data Interchange」の頭文字をとった略称で、日本語では「電子データ交換」という意味です。

EDI取引は、電話回線や専用回線を利用した企業間の商取引を自動化した仕組みを指します。EDI取引によって、従来の電話やFAXでの商取引に比べて、業務の効率化やペーパーレス化を進めることができます。EDI取引には定義があり、一般的な電子メールを使用したやり取りなどとも異なります。

本記事では、EDIの基本情報や種類、導入メリット、注意点に関してわかりやすく解説します。

目次

EDIとは

EDIの仕組み

EDI(Electronic Data Interchange)とは、日本語で「電子データ交換」という意味です。EDI取引は、専用回線やインターネットを利用し、企業間の取引で作成する発注書や受注書などの書類のやり取りを電子的に行うことを指します。

従来の取引では、発注書や見積書などの書類を作成する際、一つひとつ手書きや入力作業を行い、メールやFAX、郵送を用いて送るという流れが一般的でした。しかし、このやり方では入力作業に時間がかかったり、入力ミスなどのヒューマンエラーが発生したりなど、さまざまな課題がありました。

EDIでは、取引で生じるやりとりをシステム上で一貫して完結します。さらに、取引で発生する書類もデータをもとに作成するため、正確かつ効率的に作成・管理が可能となります。

EDIの定義

EDIは、平成元年に行なわれた、通商産業省(現:経済産業省)の電子機械相互運用環境整備委員会で以下のように定義されています。

「異なる組織間で、取引きのためのメッセージを、通信回線を介して標準的な規約(可能な限り広く合意された各種規約)を用いて、コンピュータ(端末を含む)間で交換すること」

EDI取引は、コンピュータ間で直接接続し、人手を介さずに、標準化された方式でデータを自動処理し、自動で業務が連携されることをいいます。

たとえば、冒頭でも触れた電子メールのやり取りがEDI取引に該当しないのは、メールでのやり取りは人が送受信する必要があり、「コンピュータ(端末を含む)間で交換すること」にあてはまらないからです。

EDI取引の必要性

EDIを用いた電子データによる取引は近年急激に増加しており、EDIを導入する企業も増えてきています。

ここでは、EDIが普及する理由や必要性について解説します。

EDI取引の需要増加

EDIの需要が高まっている要因として、売り手側と買い手側双方の負担やコストを軽減できること、企業間の商取引の効率化につながることが挙げられます。

国内のBtoB電子商取引の市場規模は大きく、EC化率(電子商取引化率)も2021年から規模が拡大しています。このECの定義にはEDIも含まれており、EDIを導入する企業が増加しているとも解釈できます。

特に取引規模の大きい企業は、すべての処理をデータ化・自動化することによって、流通の最適化をはかることができるため、EDIは必要不可欠なシステムと言えるでしょう。


出典:経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」

電子帳簿保存法の改正

電子帳簿保存法の改正に伴い、EDIの導入を検討する企業も増えています。

電子帳簿保存法とは、請求書や注文書などの書類を電子化して保存するための法律です。EDI取引は、電子帳簿保存法の中では「電子取引」に該当します。

従来の法律では、電子取引上の書類を電磁記録(データ)保存もしくは内容を印刷した紙で保存することが義務づけられていました。しかし2022年1月の法改正によって、電子取引における帳簿保存において、紙での保存は認められなくなりました。

これにより、紙で帳簿保存をしている企業は、電子データでの保存が完全義務化となる2024年1月までに、帳簿保存の方法を整備するなどの対応が求められます。

改正後の電子帳簿保存法に対応しているEDIシステムを利用すれば、新たな保存方法の体制整備にかかる手間を省くことができます。

【関連記事】
電子帳簿保存法とは?対象となる書類や保存要件・方法について解説

EDIを導入するメリット

EDI取引はすべての取引を電子データで行うため、管理がしやすいというメリットがあります。また、FAXやメールなどの誤送信による情報漏洩も起こりにくく、セキュリティの強化にもつながります。

ここでは、EDIを導入し電子取引を行うメリットを紹介します。

業務効率化と人的なミスの軽減

EDIは帳票をすべて電子データでやり取りするため、帳票印刷や発送の手間がなくなります。手作業が減ることで入力ミスやデータ重複などの人為的なミスが軽減され、より正確なデータを作成・管理できます。経理業務でも紙の伝票を探す手間がなくなり、業務効率化につながります。

コストの削減

EDIを導入すると、企業間取引で発生する請求書や見積書などの書類を電子データ上でやり取りすることができ、印刷・発送にかかるコストが削減できます。

紙での書類作成がなくなることで、書類の分類・整理作業や保管場所の確保、保管期限の過ぎた書類の処分などの保管にまつわる業務も不要になります。さらに書類の紛失や破損の心配もありません。

企業競争力の強化

EDIの導入によって、2社間の需要の予測から生産・販売計画・在庫管理まで、すべての工程で最適化を実現することが可能です。

さらに、EDI上で企業間の情報を共有できるため、需要を素早く察知できます。

業務時間の短縮

EDIはリードタイムの短縮にも非常に有効です。

EDIでは、発注側が入力したデータは、相手のパソコンに受注データとして登録されます。そのため、発注側の発注書の作成と送付作業、受注側の受注確認連絡、データ入力作業などにかかる時間の短縮につながります。

また、作成したデータは納品書や請求書の作成にも流用することが可能です。このように、EDIの導入により、工数や作業コストを大きく削減し、これら一連の業務に関するリードタイムを短縮できます。

EDIを導入するデメリット

取引先もEDIを導入しているのが前提

EDI取引を行うには、取引先の企業もEDIを導入している必要があります。

EDIを未導入の取引先が多い場合や、商取引をあまり行うことがない企業は、EDIを導入するメリットよりも導入におけるコストの方が多くかかり、費用対効果が見合わない場合があるため、状況をよく見て必要性を判断する必要があります。

また、EDIの規格が取引先によって異なる場合もあるため、自社の環境に合うツールを選ぶことが大切です。

コストがかかる

オンプレミス型やクラウド型などは、導入するシステム形態にもよりますが、一定のコストがかかります。

たとえば、オンプレミス型は自社でサーバーを用意してシステムを買い取る必要があるため、初期費用が高額になりやすい傾向にあります。

一方クラウド型は初期費用はほとんどかかりませんが、月額の維持費用などが発生します。

レガシーEDIとインターネットEDI

EDIは通信手段の種類によって、大き2つに分けることができます。

レガシーEDI

固定電話回線を使用してやり取りする従来型のEDIです。通信プロトコルとして使用されるのは、JCA手順や全銀協標準通信プロトコル(ベーシック・TCP/IP手順)などです。

後ほど詳しく説明しますが、NTT東西が固定電話網をIP化するため、2024年1月にISDNのサービス提供を終了します。

そのため、レガシーEDIを使用している企業は、インターネットEDIへの切替が必要となります。

インターネットEDI

現在、世界で主流になっているのがインターネットEDIです。インターネット回線を使って通信を行います。電話回線に比べて高速でやり取りできるのがメリットとされています。通信プロトコルとして使用されるのは、JX手順やebXML MSなどです。

また、インターネットEDIと同様にインターネット回線を使用するものに、Web EDIがあります。こちらは、インターネット回線を使用し、ブラウザを通じて取引を行うというものです。通信プロトコルとして使用されるのは、EDIINT AS2やOFTP2などです。

日本で主流となっているWeb EDIとは

近年、日本ではEDIを用いた取引において「Web EDI」というシステムが多く利用されています。

従来のEDIは専用回線を利用し、専用のシステムを設定して利用することが多かったのに対し、Web EDIはインターネット回線とWebブラウザを通じて商取引を行います。

手軽に使用できるのが特徴ですが、取引は自動化されていないため、人的作業が発生します。そのため、「異なる組織間で、取引きのためのメッセージを、通信回線を介して標準的な規約(可能な限り広く合意された各種規約)を用いて、コンピュータ(端末を含む)間で交換すること」というEDIの定義には、該当しません。

それでも、Web EDIが日本で重宝されるようになった理由としては、コスト面と手軽さがあります。

従来のEDIで取引を行う場合は、通信設備などの導入コストが発生します。その点、Web EDIはパソコンとインターネット回線があれば導入が可能なため、導入コストが低いことが特徴です。さらに、インターネット環境が整っていれば場所を選ばずに接続・利用が可能です。

しかし、Web EDIは標準化されておらず、処理が煩雑になるというデメリットがあります。また、操作にはある程度の習熟が必要になるため、業務が属人化してしまう可能性も考えられます。

導入コストが低く、利用のしやすさがあるWeb EDIですが、導入する前に取引先とのデータの互換性があるか、使用の了承を得られるかなど事前に確認することが大切です。

EDIの用途別の種類と特徴

EDIを用いた電子取引を行う際には、取引を行う企業間でルールの取り決めが必要です。この取引におけるルールは、以下の種類に分けられます。

個別EDI

通信方法や識別コード、フォーマットなど、取引先ごとに個別で細かいルールの取り決めを自由に行うことが可能です。ルールは発注者が主導で決定する場合が多く、汎用性が低いため、取引先が少ない場合に利用することが推奨されます。

標準EDI

取引規約やフォーマットなどの基本的なルールが標準化されているため、同じ規格であれば複数の取引先とやり取りが可能です。発注者主導の個別EDIと比べ個別の設定が必要ない分、受注者の負担が軽減されます。

業界VAN

標準EDIの中でも小売業や卸売業、製造業や金融業などの特定の業界に特化しています。業界共通の商品コードや取引先コードも設定されており、汎用性が高いため、同じ業界の企業との取引は円滑に進みます。しかし、その反面、利用できる取引先は限られます。

ISDN(INSネットのデジタル通信モード)終了とEDIへの影響

固定電話のIP網への移行後のサービス及び移行スケジュールについて

出典:『固定電話のIP網への移行後のサービス及び移行スケジュールについて』NTT東西

NTT東西は、固定電話網のIP化に伴い、2024年1月にISDNサービス提供を終了することを発表しました。いわゆる「2024年問題」と呼ばれるものです。

これにより、ISDN回線を利用したEDIは使えなくなります。補完策として、メタルIP電話上のデータ通信が行なわれますが、こちらも2027年頃には終了する予定です。

これらの理由から、現在、電話回線を利用するレガシーEDIを使用している企業は、インターネットEDIへの切替が必要となります。実際、この機会にインターネットEDIやWeb EDIへ移行する企業が増えています。

まとめ

EDIは業務効率化やコストの削減など大きな改革が期待できるツールですが、立場や状況によっては導入コストの方が多くなってしまう可能性があります。

これから導入を考えている方や、2024年問題を受けてインターネット EDIやWeb EDIへの移行を検討している方は、費用対効果を考え、取引先の業種ややり取りするデータの量などを踏まえて、自社に最適なEDIツールを慎重に見極めることが重要です。

よくある質問

EDIとは

EDIとは「Electronic Data Interchange」の頭文字をとった略称で、日本語では「電子データ交換」です。電話回線や専用回線、インターネット回線を利用した企業間の商取引を自動化した仕組みのことです。

詳しくは記事内「EDIとは」をご覧ください。

EDIの2024年問題とは?

NTT東西は2024年1月にISDNのサービス提供を終了します。そのため、ISDNを利用するレガシーEDIを使っている企業は、使用することができなくなります。

これを受け、現在、インターネット回線を利用したEDIへ移行する企業が増えています。

詳しくは記事内「ISDN(INSネットのデジタル通信モード)終了とEDIへの影響」をご覧ください。

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