販売管理の基礎知識

原価計算とは?計算方法や種類、基本知識を解説

原価計算とは?計算方法や種類、基本知識を解説

販売する製品に適正な価格を設定し、十分な利益を確保するためには原価計算が欠かせません。しかし、原価計算のやり方は非常に複雑で、正確な原価を算出するのが難しく感じることも多いでしょう。

本記事では、原価計算の目的や種類、計算方法について解説します。

目次

面倒な原価管理・原価計算をラクにする方法

freee原価管理セットなら案件・プロジェクトごとの原価計算が自動で行うことができます。ほかにも販売管理に必要な機能を搭載!リアルタイムで正確な情報を共有・管理が可能です。

面倒な原価管理・原価計算をラクにする方法

面倒な原価管理・原価計算をラクにする方法

原価計算とは

原価計算とは、製品を作るうえでかかった費用を計算することです。材料費・加工費・減価償却費・労務費など、かかった費用はすべてまとめて原価として計上します。

製造業においては、工業簿記(損益計算書)と連動する形で原価を計算しますが、サービス業などでは損益計算書に関連させずに原価計算することもあります。

原価計算の目的

1962年に策定された原価計算基準では、原価計算には下記の5つの目的があるとされています。

さらに5つの目的を大別すると、利害関係者に財政状態を知らせる「財務会計目的」と、自社が利益を確保するための「管理会計目的」の2つが原価計算の目的となります。


大目的小目的概要
財務会計目的財務諸表目的企業の出資者・債権者・経営者等に向けて、財務諸表に財政状態を記載し報告するため
管理会計目的価格計算目的適切な価格算出のため
原価管理目的経営管理者の各階層に対して原価資料を提供するため
予算編成目的企業の営業目標となる予算編成のため
経営計画目的経営の基本計画を設定するため
出典:JStage「「原価計算基準」の再解釈とこれから」

原価の内訳

原価は、大きく「材料費」「労務費」「経費」の3つの費目に分けられます。この3つを原価の3要素といい、原価計算の基本の費目となります。また、3つの費目はそれぞれ「直接費」と「間接費」に分けて計上されます。

原価の3要素

材料費

材料費とは、その製品を制作するにあたって必要となった材料を購入した費用です。材料を加工する際に発生する光熱費や、工具なども含まれます。

材料費の費目例

  • 主要材料費:製品の主要な材料
  • 買入部品費:ボタンやノブなど、外部から購入したものを製品に組み込むもの
  • 補助材料費:接着剤や塗料など、製品に対して補助的に使用される消耗品
  • 工場消耗品:機械油など、工場の設備などに対して使用される消耗品
  • 消耗工具備品費:金づちなど、固定資産として扱わない10万円以下の工具・備品

労務費

製品を製造するにあたってかかった従業員の賃金は、労務費として原価に計上します。給与以外にも、社会保険料、福利厚生費、各種手当なども含まれます。

経費

経費とは、材料費と労務費以外にかかった費用です。外注費や、減価償却が必要な設備費などがこれにあたります。

直接費と間接費

直接費

直接費は、製造にあたってその製品にのみかかった費用のことです。メインとなる材料費や、その部門のみに携わる人件費などが直接費にあたります。

間接費

間接費は、複数の種類の製品にまたがってかかる費用のことです。ほかの製品にも使う主原料以外の材料や、間接的にかかわる部門の人件費などは間接費となります。

原価の内訳を表に表すと、下記のようになります。


原価の内訳
製造原価材料費直接材料費
間接材料費
労務費直接労務費
間接労務費
経費直接経費
間接経費

料費の内訳を例にすると、主要材料費と買入部品費は直接材料費、ほかの製品でも使用できる補助材料費・工場消耗品・消耗工具備品費は間接材料費で計上します。

原価計算の種類

原価計算の種類


原価計算は目的に応じてさまざまな種類の計算方法があります。ここでは、代表的な原価計算方法を5つ紹介します。

標準原価計算

標準原価計算は、目標とする原価を算出することです。どの程度の価格で生産するべきか、自社の過去実績や、市場調査などを行い、各費目の目標額を決定します。

まだ作っていない製品の原価をあらかじめ定めておくことで、予算策定に役立てられるだけでなく、実際にかかった原価と比較し問題のある費目を可視化できます。

実際原価計算(全部原価計算)

実際原価計算は、実際にかかった原価を計算することをいいます。後述する部分原価計算に対して、全部原価計算とも呼ばれます。

実際原価計算では、製品を制作する際に発生した売上原価だけでなく、製品を売るための宣伝広告費や間接部門の人件費などの販管費も含んで計算します。

実際原価計算で算出した原価を、標準原価計算で算出した目標原価と比較して、達成できているかどうかの確認に用いることが多いです。

直接原価計算(部分原価計算)

直接原価計算とは、変動費(≒直接費)のみを原価として扱い原価計算を行うことです。

固定費は原価として計上せず、別の費目として計上します。このように、部分的に費用を取り出して原価を計算することから、部分原価計算とも呼ばれます。

変動費のみで原価計算を行うことによって、固定費を発生日基準で費用に計上でき、利益や予算の計算が簡単になります。

上記の理由により、直接原価計算では、損益分岐点を計算しやすくなります。

損益分岐点とは

損益分岐点とは、利益がマイナスから転じてプラスになる水準の売上高を指します。

たとえば固定費60万円・販売価格が1,000円・直接原価400円の製品を売る場合、ひとつ600円の利益が出ますが、固定費の60万円と製品原価を回収するまでは、全体の利益はマイナスになってしまいます。

これをいくつ売れば(いくら売上高が上がれば)全体の利益がプラスになるのか、その売上高のことを損益分岐点といいます。

損益分岐点とは


直接原価計算において、損益分岐点の計算式は以下のとおりです。

  • 損益分岐点 = 固定費 ÷{1-(変動費÷売上高)}
    • ※{1-(変動費÷売上高)}は粗利率を表します
  • 損益分岐点比率 =(損益分岐点÷売上高)× 100

上記の例を計算式に当てはめると以下のようになります。

損益分岐点売上高 = 固定費60万円 ÷{1-粗利率(変動費400円 ÷ 売上高1,000円)}= 100万円

上記の例であれば、100万円の売上でマイナスがなくなり、100万円以降の売上は利益となります。

ちなみに、直接原価計算は企業が利益計画を立てるための計算方法で、そのまま外部に公表する損益計算書に反映させることは認められていません。

外部に公表するためには、直接原価計算で出した原価から期首・期末の仕掛品にかかった固定費を反映し、最終的に実際原価計算で出す場合の原価・利益と同じになるようにして、損益計算書に組み入れます。

総合原価計算

総合原価計算は実際原価計算のひとつで、製品を大量かつ長期間制作し続ける製造業などで用いられます。

月次など、一定期間内の総製造原価をその期間の総生産量で割り、製品1個あたりの平均製造原価を算出する方法です。原価の計算方法が簡単なのがメリットです。

個別原価計算

個別原価計算も実際原価計算のひとつで、顧客からの注文ごとに原価を計算する方法のことを指します。

建設業やソフトウェア開発、コンサルタント、広告代理店など、プロジェクト単位で受注する企業が個別原価計算方法を採ることが多いです。

原価計算の流れ

原価計算は主に以下の流れで進みます。

  1. 費目別原価計算
  2. 部門別原価計算
  3. 製品別原価計算

(1)費目別原価計算

まずは、「材料費」「労務費」「経費」それぞれを直接費・間接費に分けて集計します。これを費目別原価計算と呼びます。

ポイントは一つひとつの費用を細かく分類し過ぎないことです。あまりにも細分化してしまうと、集計に手間や時間がかかり過ぎてしまいます。

それぞれの費目に何があたるかは、自社の経営に合った品目を設定し、計算がなるべくしやすい形で集計するのがベターです。

以下は仕訳例です。


借方金額貸方金額摘要
材料費400,000現金400,000材料購入
直接労務費450,000現金450,000労務費支払
直接経費300,000現金300,000製造経費支払
製造間接費200,000現金200,000間接費支払

(2)部門別原価計算

次に、費目別原価計算で算出した間接費を各部門に割り振ります。これを部門別原価計算と呼びます。

どの部門がいくら間接費を使用しているかを計算し、コストを配賦(はいふ)するのが部門別原価計算の目的です。

配賦の仕方は、材料であれば使用量、光熱費であればそれぞれの部門の専有面積から按分するなど、費目ごとに柔軟なやり方で配賦します。こちらも自社に合った配賦の仕方を模索する必要があります。


借方金額貸方金額摘要
加工部門費
(製造部門A)
1,500,000円製造間接費2,000,000円間接材料費を投入量に基づき配分、加工部門Aと組立部門Bに割り当て
組立部門費
(製造部門B)
500,000円
加工部門費
(製造部門A)
2,000,000円製造間接費3,000,000円間接労務費を月間の総労働時間に基づき配分、加工部門Aと組立部門Bに割り当て
組立部門費
(共通部門)
1,000,000円

(3)製品別原価計算

(1)費目別原価計算で算出した直接費と、(2)部門別に配賦済の間接費を合わせて合計原価とし、それを1製品あたりの使用料をもとに割り振ることで、製品にかかった原価を計算します。

1製品あたりの使用料は、各製品の仕様と数量を鑑みて製品の種類ごとに原価を按分する必要があります。


借方金額貸方金額
製品A5,000,000円仕掛品15,000,000円
製品B6,000,000円
製品C4,000,000円

費目別原価計算、部門別原価計算、製品別原価計算という工程を経ることで、各製品にどれだけの原価がかかっているか、さらに各部門でどの程度コストがかかっているかを可視化できます。

面倒な原価管理・原価計算をラクにする方法

freee原価管理セットなら案件・プロジェクトごとの原価計算が自動で行うことができます。ほかにも販売管理に必要な機能を搭載!リアルタイムで正確な情報を共有・管理が可能です。

面倒な原価管理・原価計算をラクにする方法

面倒な原価管理・原価計算をラクにする方法

原価率とは

原価率とは、売上高に対して原価がいくらかかっているかの比率のことです。原価率は以下の計算式で求めることができます。

<減価率の計算式>
原価率 = 製造原価 ÷ 売上高 × 100

<原価率の計算例>
売上高1,000万円、製造原価800万円の原価率
800万円 ÷ 1,000万円 × 100 = 80(%)

産業別の原価率の平均値

経済産業省の資料によると、2022年の原価率の実績は、製造業が81.1%、卸売業が87.2%、小売業が71.7%となっています。

しかし、産業や企業規模によって利益率の実態は大きく異なり、目指すべき原価率も異なってくるため、一概にこれらの数字を目指せばよいというものではありません。

たとえば飲食店では、2022年の平均原価率が37.5%と上記に比べて約半分です。なるべく自社の業態や規模と近い企業と比較分析し、適切な原価率を設定するとよいでしょう。

出典:経済産業省「2023年企業活動基本調査速報ー2022年度実績ー」

まとめ

商品やサービスを販売する際に適正な価格設定をすることは、利益を確保することに直結します。原価計算は非常に複雑な内容になっていますが、正確な原価計算の方法を理解し、利益に繋がるようしっかりと準備を行うようにしましょう。

よくある質問

原価計算の仕訳のコツは?

原価計算の仕訳は、製品ごとに直接費と間接費を正確に分類するのがコツです。特に製造業では、製造間接費を一度「仕掛品」にまとめ、最終的に製品に分配する方法が一般的です。

詳しい原価計算の仕訳方法は、「原価計算の流れ」をご覧ください。

仕入原価の計算方法は?

仕入原価の計算は、単純に仕入れにかかった費用を引くことで計算できます。

仕入原価 = 購入価格 + 付随費用

たとえば、商品を仕入れるのに製品価格7,000円、輸送費が3,000円かかった場合、仕入原価は1万円です。ただメーカーの場合は、商品の製造にかかる人件費や光熱費などの諸経費も含みます。

「原価計算表」とは?

原価計算表とは、原価計算票を1枚の表にまとめたものです。

製品指図書のナンバーや製造費用、月末での完成状況などの項目をまとめます。原価計算を作成しておくことで、各製品にかかる原価がひと目で把握でき、経営判断やコスト管理に役立てられます。

案件管理から請求書発行まで「freee販売」ひとつで完結

\無形商材に特化した管理サービス/
freee販売は案件・プロジェクトごとに管理や原価計算が可能!リアルタイムで正確な情報を入力・共有が可能です。

案件管理から請求書発行まで「freee販売」ひとつで完結

freee販売で案件ごとの管理が可能に