
工数管理とは、プロジェクトや各種業務において想定される作業時間を計画し、実際の作業時間を記録・分析してさまざまな改善活動につなげる取り組みのことです。単位としては「人時(にんじ)」「人日(にんにち)」「人月(にんげつ)」などが使われます。
本記事では、工数管理のメリットや具体的な方法を解説します。取り入れやすいエクセル(Excel)を使った方法と、専用のツール・システムを用いた方法の2種類を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 工数管理とは
- 工数管理において発生する作業
- 工数管理を行うメリット
- 効率的なリソース配分
- プロジェクトの進捗管理とリスク低減
- 生産性の向上
- 利益率の改善
- 正確な工数管理が求められるケース
- 財務報告の信頼性確保とコンプライアンス
- IPO(株式公開)準備における必須要件
- ソフトウェア開発などにおける資産計上の要件
- 工数管理の基本的なフローと3つのステップ
- STEP1:管理対象とルールの明確化
- STEP2:工数の入力と進捗確認
- STEP3:データの集計・分析と改善
- 工数管理の具体的な方法
- エクセルを使った工数管理
- 専用ツールを使った工数管理
- エクセルを使った工数管理の方法
- 基本的なテンプレートの作成方法
- エクセルの機能を活用した工数管理のコツ
- エクセルを使用する際の注意点
- 工数管理ツールを使った工数管理の方法
- 工数管理ツール選定時のポイント
- 工数管理ツールの導入ステップ
- 工数管理ツールのメリットと注意点
- 工数管理におけるよくある課題と対策
- 必要なタスクが洗い出せていない
- 数値入力後の確認を怠っている
- コミュニケーションが不足している
- 自社に合った工数管理を実現するために
- まとめ
- よくある質問
工数管理とは
工数管理とは、プロジェクトや各種業務において想定される作業時間を計画し、実際にかかった作業時間を記録・分析してさまざまな改善活動につなげる取り組みのことです。単位としては「人時(にんじ)」「人日(にんにち)」「人月(にんげつ)」などを使うケースが多いといえます。
- 人時(にんじ):1人が1時間作業した場合の作業量
- 人日(にんにち):1人が1日作業した場合の作業量
- 人月(にんげつ):1人で作業した場合に1ヶ月かかる作業量
適切な工数管理を行うことで、プロジェクトの進捗状況を把握し、コスト管理やリソースの最適化が図れます。また、問題の早期発見と対策の実施も可能になります。
工数管理において発生する作業
工数管理において発生する主な作業は下表のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
工数の見積もり | プロジェクトやタスクを完了するために、どれくらいの作業時間が必要かを推定する作業 |
工数の計画 | 見積もり内容に基づいて、誰が、いつ、どの作業を行うかの計画やスケジュールを立てる作業 |
工数の実績収集 | 実際に各作業にどれくらいの時間がかかったかをタイムシートや管理表などで記録・収集する作業 |
工数の分析・評価 | 収集したデータから計画と実績を比較・分析し、進捗状況の把握、問題点の発見、生産性の評価などを行うこと |
改善活動 | 分析結果をもとに、業務プロセスや人員配置の改善、将来の工数見積もり精度の向上などにつなげること |
工数管理を行うメリット
適切な工数管理は、それぞれの業務にかかる時間や工数を可視化し、業務効率の向上・コスト削減に役立ちます。工数管理を行う主なメリットは以下の4つです。
工数管理のメリット
- 効率的なリソース配分
- プロジェクトの進捗管理
- 生産性の向上
- 利益率の改善
効率的なリソース配分
工数管理を行うことで、リソースの効率的な配分が可能になります。具体的には、各タスクに必要な時間と人員を正確に把握し、適切な人材を適切なタイミングで配置できるようになります。これにより過負荷やリソースの浪費を防ぎ、全体の作業効率を上げることが可能です。
リソース配分の例
- 作業負荷の平準化:特定のメンバーへの業務集中を防ぎ、チーム全体でバランスの取れた負荷分散を実現する。また、リソースの無駄を特定し適切な業務へ人員を割り当てる
- スキルマッチング:各メンバーのスキルや得意分野に応じてタスクを割り当て、パフォーマンスの最大化を図る
- 適正な人員計画:過去のデータに基づいて将来のプロジェクトに必要な人員数やスキルセットを予測し、採用や育成計画に活かす
- 働きがい向上:適切な業務量と貢献度の可視化により、公平な評価や従業員の納得感醸成につなげる
プロジェクトの進捗管理とリスク低減
工数管理は、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握するのに有効な手段です。進行中のプロジェクトが予定通りに進んでいるか確認することで、必要な調整を行いやすくなります。
たとえば、遅延しているタスクの発見や原因の特定が早ければ早いほど、トラブルなどを回避できる可能性が高まります。それによって計画していたスケジュール通りに対応できれば、プロジェクト進行の安定性が高まります。
リアルタイムの進捗管理以外にも、予定工数と実績工数を比較・分析することでリスク低減を図ることが可能です。また、進捗状況の可視化にはチーム全体のモチベーションを維持する効果も期待できます。
進捗管理・リスク低減の例
- ボトルネックの早期発見・解消:遅延の原因となっている作業工程を特定し、改善策を講じる
- 計画と実績のギャップ分析:当初の計画と実際の工数のズレを定期的に比較し、遅延リスクや追加コスト発生を早期に検知する
- 即時の情報共有:チームメンバーやマネージャーが進捗状況を常に把握し、担当者間の認識齟齬を防ぐ
- リスクの予兆管理:工数の実績が予定を大幅に超え始めた段階で、潜在的な品質問題や仕様変更の影響などを察知し、先回りして対応する
生産性の向上
工数管理の実施により、業務の効率化と生産性の向上が期待できます。たとえば、タスク単位で所要時間を計測・分析することで、非効率な作業や無駄な工程、時間がかかっている作業などの特定が可能。ボトルネックとなっている作業の見直しにより、業務全体の生産性が上がります。工数データの蓄積・分析は、組織のナレッジ・ノウハウとしても残るため、業務の標準化や新人教育の質の向上、スムーズな引き継ぎにも有効です。
最終的な成果や全体に要した時間のみ計測していると、より作業効率を上げるべき箇所を発見できません。生産性を上げるには、多くの時間がかかっているタスクを発見し、そのタスクの手順を見直す必要があるでしょう。
これにより業務全体の生産性を向上できれば、企業としての価値を高められます。
生産性向上につながる取り組みの例
- 非効率タスクの特定と改善:時間がかかりすぎている作業を発見し、手順や使用ツールを見直す
- 無駄な作業の削減:付加価値を生まない作業や重複作業を発見し、廃止または割り振る人員を削減する
- 業務の標準化:効率的な作業手順を特定し、マニュアル化やテンプレート化を進めることで、組織全体の作業品質とスピードを底上げする
- ナレッジの蓄積・共有:過去の工数データや改善事例をもとに最適な進め方を検討し、組織のノウハウとして浸透させる
利益率の改善
正確な工数管理は、各プロジェクトやタスクにかかる時間だけでなく、コストの把握にもつながります。予算を適切に管理し、無駄なコストの発見や削減に役立てることで、利益率の改善が実現します。
利益率の改善は、経営リスク対策として非常に重要です。正確な工数管理によって「どんぶり勘定」での業務進行や赤字プロジェクトなど、経営リスクとなる問題を特定できます。たとえば、各工程で外部へ発注している場合は、タスクと予算を紐づけてチェックすることで予算オーバーの回避につながるでしょう。
利益率改善の例
- プロジェクト別・製品別原価の正確な把握:どんぶり勘定から脱却し、個別の採算性を可視化する
- 赤字プロジェクトの早期特定:損失を最小限に抑え、経営リスクを低減させる
- 予実管理の精度向上:予定コストと実績コストを比較分析し、コスト超過の原因を特定・改善する
- データに基づいた価格設定:正確な原価情報をもとに、適正な利益を確保できるようにプライシングする
- 見積もり精度の向上:過去の工数実績データを活用してより妥当性の高い見積もりを作成することで、受注時のリスク要因を潰す
正確な工数管理が求められるケース
正確な工数管理は、財務報告における信頼性の確保やIPO準備、ソフトウェア開発における資産計上のルールなどに基づいて義務付けられている場合があります。
財務報告の信頼性確保とコンプライアンス
信頼性の高い財務諸表を作成するには正しい原価計算が必須であり、棚卸資産の評価や売上原価の算定においては工数に基づいた労務費の配賦(はいふ)が重要です。こうした作業の
正確性を期すには、工数を正しく管理しなければなりません。
また、上場企業には金融商品取引法や会社法、各種会計基準に基づき、適正な財務報告が求められます。これにより企業は透明性を保ち、投資家やステークホルダーの信頼を得ることができるためです。当然、監査法人による監査においても、原価計算の妥当性、特に労務費の配賦プロセスが厳しくチェックされます。
IPO(株式公開)準備における必須要件
IPOを目指す企業には、厳格な内部統制の構築と運用が求められます。工数管理も労務費の適切な管理・計上プロセスを示す内部統制の一環と見なされるため、例外ではありません。また、証券取引所や監査法人からの審査においては、プロジェクト別・製品別の原価計算が適切に行われているか、その根拠となる工数データが客観的かつ正確に管理されているかが問われます。
上記のように、IPOを目指す企業は内部統制の機能性・正確性が外部機関から厳しくチェックされるため、工数管理体制に不備があるとIPO準備における重大な障害となり得ます。
ソフトウェア開発などにおける資産計上の要件
「自社利用目的のソフトウェア開発」などの特定の条件下において、開発にかかった労務費は「費用」として即時処理するのではなく「無形固定資産」として資産計上することが会計基準では求められます。
その際、資産計上すべき労務費を正確に特定・集計するためには、開発プロジェクトにおける精緻な工数管理が不可欠です。
工数管理の基本的なフローと3つのステップ
工数管理には、さまざまな作業があります。具体的にどのようなフローやステップで実施していくのかを確認しておきましょう。
STEP1:管理対象とルールの明確化
まずは、工数管理の対象とルールを明確にします。具体的には、次のような項目があります。
項目 | 内容 |
---|---|
目的の明確化 | 目的によって管理方法の詳細や重視すべきポイントが異なるため、工数管理を行う理由をはっきりさせる |
対象の選定 | どのプロジェクト、部署、業務を工数管理の対象とするかを決める |
タスクの分解 | 管理対象のプロジェクトや業務を、工数を入力できる具体的な作業項目に分解する |
工数の見積もり | 各タスクにかかる工数(時間)を見積もる |
ルールの設定 | 誰が、いつ、どのように工数を入力・報告するか、承認プロセスも含めて決定する |
STEP2:工数の入力と進捗確認
STEP1で管理対象とルールを明確にし、実際に工数管理を実行する段階になったら、以下のように工数入力と進捗確認を行います。
項目 | 内容 |
---|---|
作業の割り当て | それぞれのタスクを担当者に割り当てる |
工数の記録 | 担当者は定められたルールに従い、どのタスクにどれだけの時間を費やしたかを日次、週次、月次など決めたルールに基づいて入力する |
モニタリング | 入力された工数実績と当初の見積もりを比較し、プロジェクトやタスクで遅延や問題が発生していないかを確認する |
STEP3:データの集計・分析と改善
工数管理によって得られたデータを集計・分析し、改善につなげます。工数の記載とデータの集計・分析、そして改善のアクションプランは継続的に実行しなければなりません。
項目 | 内容 |
---|---|
データの集計 | 収集した工数データを集計し、プロジェクト別、タスク別、担当者別に可視化する |
分析 | 予定工数と実績工数を比較し、差異の原因を分析する |
評価と改善策の立案 | ボトルネックとなっている作業や見積もり精度、個人の生産性を評価し、業務プロセスの見直しやリソース配分の調整、ツールの導入検討など、具体的な改善策を立てる |
情報の共有・報告 | 分析結果や改善策を関係者に共有し、蓄積したデータを見積もり精度向上や以降のプロジェクト計画に活用する |
工数管理の具体的な方法
工数管理を効果的に行うためには、適切なツールや方法を選択し、実際に入力・更新していかなくなりません。工数管理の代表的なツールには、エクセル(Excel)や専用ツールがあります。
以下ではエクセルと専用ツール、それぞれの工数管理方法について解説します。
エクセルを使った工数管理
エクセルは、工数管理のツールとして広く利用されています。エクセルを使った工数管理には、以下のような利点があります。
エクセルを使った工数管理のメリット
- 簡単かつ無料で始められる
- 柔軟なカスタマイズが可能
- グラフやピボットテーブルを利用した視覚的な管理・分析が可能
ただし、エクセルの場合は手入力になるため記入ミスに注意が必要になるほか、入力規則を全社で統一する必要があります。また、エクセルで大量のデータを扱うのには限界があり、大規模なプロジェクトでの工数管理には不向きといえるでしょう。
専用ツールを使った工数管理
工数管理専用のツールやシステムを使えば、エクセルより高度で効率的な工数管理が可能です。具体的には、以下のような利点があります。
専用ツールを使った工数管理のメリット
- データ入力や集計が自動化できる
- リアルタイムでデータ共有・更新が可能
- 詳細な分析機能やレポート作成機能がある
導入コストがかかったり、操作の周知に時間がかかったりする点はデメリットです。また、性能はツール・システムの機能に依存するため、自社に適した選択肢を採用することが大切になります。
freee工数管理は、シンプルな入力画面で実際に入力する現場担当者がストレスなく使える仕様になっています。また、管理者側が行う「入力漏れのリマインド」や「入力状況」も自動化されているので効率的です。
エクセルを使った工数管理の方法
エクセル(Excel)を使った工数管理は手軽に始められる方法であり、実際に多くの企業や組織で利用されています。
以下では、エクセルの機能を活用した基本的なテンプレートの作成方法、工数管理のコツ、使用する際の注意点などを解説します。
基本的なテンプレートの作成方法
エクセルでの工数管理は、簡単に始められるため、多くの企業で採用されています。基本的なテンプレートの作成方法は以下の通りです。
1. 新規スプレッドシートを作成
エクセルを開き、新しいシートを作成します。
2. 必要な項目の列を設定
以下の項目を列として設定します。ガントチャートやWBS(作業構造分解図)など、管理しやすいフォーマットに合わせましょう。
- タスク名
- 担当者
- 開始日
- 終了日
- 予定工数
- 実績工数
- ステータス
3. データ入力のフォーマットを整える
データを入力しやすくするために、セルのフォーマットを整えましょう。セル幅を整えたり、日付形式や時間形式に設定したりなど、視覚的にわかりやすいデザインにします。
- 工数の計算
開始のタイミングと終了のタイミングの差から工数を算出します。エクセルの計算式を用いて「工数」列に「=終了日- 開始日」のように入力し、自動計算させます。 - スケジュールの設定
開始日と終了日を基に、ガントチャート形式などで進捗を可視化するスケジュール機能を追加すると、より管理がはかどります。条件付き書式を利用するなどして、進捗状況を色分けすると効果的です。
エクセルの機能を活用した工数管理のコツ
エクセルには、工数管理を効率化するための多くの機能が備わっています。これらの機能を活用することで、より効果的に工数管理が進められます。
ピボットテーブル
ピポットテーブルを使えば簡単にデータをドラッグ&ドロップで操作でき、視覚的なレポートを作成できます。集計したデータから、進捗やリソースの使用状況を分析するときに役立ちます。
条件付き書式
条件付き書式を利用すれば、特定の条件に該当するセルを自動で強調表示できます。たとえば、工数が一定以上のタスクを赤く表示させることで、異常値をひと目で確認できるようになります。関数を使えばさまざまな条件で発動できるため、より効率的な管理も可能です。
VLOOKUP関数
VLOOKUP関数は担当者別の工数をまとめたり、特定のタスクの詳細情報を簡単に参照したりできる関数です。これにより、大量のデータから必要な情報を迅速に引き出せます。
エクセルを使用する際の注意点
工数管理をエクセルで行う場合、機能によっては扱いづらい可能性があります。具体的には、以下の2点に注意しましょう。
共同編集機能がない
エクセルには共同編集機能がないため、複数のユーザーで同時に編集を行うことができません。同じタイミングで編集してしまうと、どちらか一方のみの内容が更新され、もう一方の内容は反映されないなどの不具合が起きる可能性があります。
複数の部署が関わる案件の工数管理の場合には、事前にエクセルの更新のタイミングなどを擦り合わせておく必要があります。
データ容量が増えるとパフォーマンスが下がる
エクセルはデータの容量が増えると、更新に時間がかかったり、操作が重たくなってしまったりしてしまいます。大規模なデータを管理するのには向いていないため、案件ごとにエクセルのシートを変えるなどの対策が必要です。
工数管理ツールを使った工数管理の方法
工数管理専用のツール・システムを使えば、エクセルを使用するよりも正確かつ簡単に管理できます。ここからは専用ツールを使った工数管理方法を紹介します。
工数管理ツール選定時のポイント
工数管理ツールを選定する際は、以下のポイントを確認しましょう。
工数入力のハードルが低いか
ツール自体が使いにくいと、どれだけ優れた機能があっても使いこなせず、正確なデータが得られません。入力画面がわかりやすく、操作しやすい仕様なら社内に浸透・定着させやすくなるでしょう。
ほかのツールとの連携ができるか
GoogleカレンダーやOutlookカレンダーと連携して自動入力ができると、登録の手間を省くことができます。また、パソコンだけでなく、スマホやタブレットなどのデバイスからでも手軽に入力できたりすれば、リアルタイムの更新・共有でより適切な工数管理につながります。
複数プロジェクトの一元管理が可能か
複数のプロジェクトを同時に一元管理できることも大切です。ガントチャートなどを用いて視覚的に進捗を確認できるツールなら、スケジュールの遅延を減らすのに役立つでしょう。各プロジェクトの進捗や工数を一目で把握できれば、迅速に対応策を講じられます。
freee工数管理は、シンプルな入力画面で実際に入力する現場担当者がストレスなく使える仕様となっています。また、管理者側が行う「入力漏れのリマインド」や「入力状況」も自動化されているので便利です。
工数管理ツールの導入ステップ

工数管理専用のツール・システムを導入する基本的なステップは以下の通りです。
1. 要件定義
自社の業務フローや必要な機能を明確にし、ツールに求める要件を定義します。これにより、選定時の基準が明確になります。
2. ツールの選定
前述のポイントを基に、複数のツールを比較検討し、自社に最適なツールを選びます。デモ版や無料トライアルを利用して、実際の操作感を確認するとよいでしょう。
3. 導入計画の策定
導入スケジュールを立て、関係者への説明を行います。ツールの導入に伴う業務フローの変更点も整理しておきます。
4. 試験導入
一部のプロジェクトや部門で試験導入を行い、実際の運用状況や問題点を把握します。この段階でフィードバックを収集し、必要な調整を行います。
5. 全社導入
試験導入の結果を基に、全社的にツールを導入します。関係者へのトレーニングを実施し、円滑な運用をサポートします。
工数管理ツールのメリットと注意点
工数管理ツールを活用すると、データの正確な収集・分析が可能になります。また、工数入力が自動化されることで入力の手間が省け、入力漏れなどのミスも軽減できます。
さらに、プロジェクトごとの進捗やリソースの使用状況をリアルタイムで把握できる点も大きなメリットです。セキュリティ対策やデータのバックアップにも個別に対応できるため、安全性も高いといえるでしょう。
ただし、自社の業務フローや文化に合ったツール・システムを選定しないと、逆に使い勝手が悪くなる可能性があります。選定する際には必ず自社の業務に合っているかを確認し、従業員への十分な説明とトレーニングを行いましょう。
工数管理におけるよくある課題と対策
工数管理はプロジェクトの効率化や生産性向上に欠かせない要素ですが、適切に行われないとさまざまなリスクが生じます。以下のような課題がある場合は適切に対処し、工数管理の正確性を高めるようにしてください。
工数管理におけるよくある課題
- 必要なタスクが洗い出せていない
- 数値入力後の確認を怠っている
- コミュニケーションが不足している
必要なタスクが洗い出せていない
工数管理を行う際には、まずプロジェクトの全体像を明確にし、細かいタスクに分解するプロセスが重要です。必要なタスクをすべて洗い出せていないと、計画と実行の間に大きな乖離が生じてしまいます。
プロジェクトに関わる関係者全員でブレインストーミングなどを行い、漏れなくタスクを洗い出しましょう。また、業務を行っていくうえで適宜調整できるようにしておくことも大切です。
数値入力後の確認を怠っている
数値入力後の確認を怠ると、入力ミスが発生したり、従業員がいい加減な作業をしても問題ないと受け取られてしまう恐れがあります。そうすると工数データの信頼性が低下し、工数管理の意味がなくなってしまうので改善が必要です。
工数管理を形骸化させないためにも、入力規則を設定してデータ入力後は必ずダブルチェックを行う習慣をつけるようにしましょう。また入力を自動化できるツールやタイムトラッキングソフトウェアを導入することで、手動入力によるミスや記入漏れなどを減らせます。
コミュニケーションが不足している
工数管理を自動化していても、従業員同士でコミュニケーションが不足していると予想外の事態に対応できません。定期的にミーティングを実施したり、チャットツールを用いたりしてスムーズな情報共有が行えるようにしましょう。
工数管理ツールのダッシュボード機能を使用し、プロジェクト全体の進捗状況を可視化するといったアプローチも有効です。
自社に合った工数管理を実現するために
自社に最適な工数管理を実現するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
自社に合った工数管理を実現する方法
- 現状の把握
- ニーズの洗い出し
- 従業員の教育
- 継続的な改善
はじめに、現在の工数管理の方法や課題を明確にします。何が問題で、どこを改善すべきかを把握することで、自社の業務フローやプロジェクト管理のニーズに合わせて、必要な機能やツールを洗い出せます。
また、新しいツールや方法を導入する際は従業員への教育やトレーニングが不可欠です。誰でも利用しやすい機能なのか、サポート体制は整っているかなども確認しておきましょう。
工数管理導入後も、定期的に運用状況を見直し、改善を続けることで、より正確で効果的な工数管理を実現できます。
まとめ
工数管理は、プロジェクトや業務において想定される作業時間を計画したり、実際の作業時間を記録・分析してさまざまな改善活動につなげたりする管理手法です。プロジェクトの効率化と成功に欠かせない重要な取り組みであり、正確な工数管理を行うことでコストやリソースの最適化が図れ、問題の早期発見と対策が可能になります。
適切なツール・システムや方法を選び、継続的に改善活動を行うなかで、プロジェクト全体の生産性を高め、効率的な業務運営を実現しましょう。
よくある質問
工数管理はどのように始めればよい?
工数管理を始めるには、まず自社の業務フローを見直し、必要な機能を定義します。
次に、エクセルや工数管理ツールを選定し、試験導入を行います。その後、全社導入を進め、定期的なデータ確認とトレーニングを実施します。
具体的な手順は「工数管理の具体的な方法」をご覧ください。
エクセルで工数管理を行う際のメリットとデメリットは?
エクセルを使った工数管理のメリットには、「簡単に始められる・柔軟なカスタマイズが可能・視覚的な管理がしやすい」などが挙げられます。
一方で、「データの一貫性や正確性の確保が難しい・データサイズが大きいとパフォーマンスが低下する・バックアップが難しい」などがデメリットです。
エクセルで工数管理を行う具体的な方法は「エクセルを使った工数管理の方法」をご覧ください。