販売管理の基礎知識

バーチャート工程表とは?特徴やメリット・デメリット、書き方を解説

バーチャート工程表とは?特徴やメリット・デメリット、書き方を解説

バーチャート工程表は、プロジェクト管理に欠かせないツールの一つです。各作業の期間を横棒で視覚的に表現するシンプルな図表で、誰にとっても直感的に理解しやすいのが特徴といえます。建設業や製造業をはじめとしたさまざまな業界で活用されており、プロジェクトの全体像を把握し、スムーズな進行を支えるうえで有効なツールです。

本記事では、バーチャート工程表の基本から、混同されがちなガントチャートやネットワーク工程表との違い、さらには活用するうえでのメリット・デメリット、書き方まで、包括的に解説します。

なお、金融・証券分野においても、相場の値動きをバー形式で表す図のことをバーチャートと呼びますが、本記事では取り扱いません。

目次

バーチャート工程表とは

バーチャート工程表は、プロジェクトの各作業を横長の棒(バー)で表現し、期間と進捗を視覚的に管理するための図表です。縦軸に作業項目、横軸に時間軸(日、週、月など)をとり、各作業の開始から終了までの期間を棒の長さで示します。

バーチャート工程表は、建設業界や製造業界をはじめ、多くのプロジェクト管理において広く利用されています。直感的でわかりやすいため、専門知識がない人でもプロジェクト全体の流れを把握しやすいのが大きな特徴です。

ガントチャート工程表との違い

バーチャート工程表と混同されがちなのが、ガントチャート工程表です。両者は見た目が似ていますが、大きな違いは作業の関連性を表現できるかどうかです。

バーチャート工程表の場合、各作業の期間や進捗を個別に示しますが、たとえば作業Aが終わらなければ作業Bが始められないといったような、作業間の前後関係や依存関係は表現できません。

一方のガントチャート工程表は各作業を棒で表す点は同じであるものの、さらに「先行タスク」や「後続タスク」といった作業間の関連性を結びつけることが可能です。これによってプロジェクト全体のクリティカルパス(最短でプロジェクトを完了させるために絶対に遅延させてはいけない一連の作業)を把握しやすくなります。

ガントチャート工程表はより詳細な管理に適していますが、バーチャート工程表はシンプルさを重視し、大まかなスケジュールを関係者間で共有するのに適しているといえます。

ネットワーク工程表との違い

ネットワーク工程表もまた、バーチャート工程表とは異なる特徴を持つ工程表です。

バーチャート工程表は時間軸が明確に設定されており、各作業の期間が一目でわかります。一方のネットワーク工程表では、「〇(イベント)」と「→(アクティビティ)」を使って作業の関連性や依存関係を表現します。

時間軸は明示されず、作業の順序や所要日数を中心に組み立てられます。複数の作業が同時に進行する並行作業や、遅延が全体に及ぼす影響を分析するのに優れています。

ネットワーク工程表は、複雑なプロジェクトの論理的な流れを把握するのに役立ちますが、バーチャートのように直感的なスケジュールの把握には向きません。

バーチャート工程表の活用メリット

バーチャート工程表をプロジェクト管理に活用することで、以下の3つの大きなメリットが得られます。

誰でも簡単に作成・理解できる

バーチャート工程表の作成には特別なソフトウェアや専門知識は不要で、ExcelやGoogleスプレッドシートといった誰もが使い慣れたツールで手軽に作成が可能です。

縦軸に作業項目、横軸に期間を並べるだけの単純な構造は、プロジェクト管理に不慣れなメンバーでも直感的に理解できます。新入社員や異動してきたばかりのメンバーでも、プロジェクトの全体像や自身の役割を迅速に把握でき、スムーズに業務に参加できるでしょう。

バーチャート工程表の可視性の高さは、全員が同じ情報を共有し、一体感を持ってプロジェクトを進めるうえで欠かせない要素です。

進捗状況を視覚的に把握できる

バーチャート工程表では、各作業のバーの長さを変えたり、色分けしたりすることで、計画に対する実際の進捗度合いを一目で確認できます。

たとえば、完了した作業のバーを青色に、遅延している作業を赤色にするなど、視覚的なシグナルを用いることで、問題の兆候を早期に発見できます。これによって、問題が深刻化する前に、担当者と協力して対策を講じることが可能になります。

また、定期的な進捗会議でバーチャート工程表を共有することで、進捗報告が簡潔になり、議論を本質的な課題に集中させることもできます。口頭での説明や文字だけの報告書よりも、はるかに効率的で説得力のあるコミュニケーションが実現するでしょう。

大まかなスケジュール共有に最適

クライアントに詳細な作業内容を知らせる必要がない場合や、複数の部署が関わる大規模プロジェクトを行う場合などにも、バーチャート工程表は有効です。

プロジェクト全体のタイムラインや各マイルストーンを明確に示すことで、関係者は自身の業務が全体のどの部分に位置し、いつまでに完了させるべきかという大まかな流れを把握できます。そのため、関係者間の期待値を調整し、協力をスムーズに引き出しやすくなります。

たとえば、クライアントに「このフェーズは今月末までに完了します」と伝えるだけでなく、バーチャートを見せることで、より具体的に進捗状況を共有し、信頼関係を築くことができるでしょう。シンプルゆえに、情報を絞って伝えることができるため、相手に過度な情報を与えることなく、要点を的確に伝えることができるのです。

バーチャート工程表のデメリット

バーチャート工程表には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。

作業の関連性を表現できない

バーチャート工程表は個々の作業の期間と進捗を棒で示すだけなので、「この作業が終わらないと、次の作業を開始できない」といった依存関係(前後関係)を明示することができません。

たとえば、設計作業が遅れた場合は、その後の資材発注や施工作業に連鎖的に影響を及ぼしますが、バーチャート上ではその関係性が一目でわかりません。そのため、ある作業が遅延した場合、それがプロジェクト全体にどのような影響を及ぼすかを分析するのが難しくなります。

この問題は、プロジェクトのクリティカルパス(プロジェクトを完了させる上で、絶対に遅延させてはならない一連の作業)を特定できないという致命的な欠点にもつながります。複雑なプロジェクトでは、この依存関係を把握することがリスク管理の要となるため、バーチャートだけでは不十分なケースが多いといえるでしょう。

複雑なプロジェクト管理には不向き

作業項目が数百にも及ぶような大規模なプロジェクトでは、バーチャートは非常に縦長になり、印刷したり画面に表示したりすることが困難になります。全体像を把握するためにスクロールを繰り返す必要があり、かえって視認性が低下しかねません。

また、複数のタスクが並行して進行し、複雑に絡み合うような場合、バーチャートの単純な構造では、どの作業がどこまで進んでいるか、どの作業がボトルネックになっているかを正確に把握することも難しくなります。

このような場合、作業間の論理的なつながりを明確にできるガントチャート工程表や、作業の順序をグラフで表現するネットワーク工程表のほうが適しています。

リソース管理には向いていない

バーチャート工程表は、作業の期間と進捗を示すためのものであり、「誰が、どの作業に、どれだけの時間を費やすか」といった人員や資材といったリソースの配分状況を詳細に管理する機能は持ち合わせていません。

たとえば、ある期間に特定のメンバーにタスクが集中してしまい、キャパシティを超過してしまっている状況も、バーチャート工程表を見るだけでは把握できません。

適切なリソース管理を行うためには、別途リソース管理表を作成したり、専用のプロジェクト管理ツールを導入したりする必要があります。バーチャート工程表単体では、スケジュールは把握できても、そのスケジュールを実行するための「人」や「物」が適切に配置されているかを確認することはできないと理解しておきましょう。

バーチャート工程表の書き方

バーチャート工程表は、以下の手順で作成できます。

1.作業の洗い出しと分解(WBS)

まずは、プロジェクトを完了させるために必要なすべての作業を漏れなくリストアップします。大きな作業は、さらに小さなタスクに分解していくWBS(Work Breakdown Structure)という手法を用いると効率的です。

2.作業期間の算出

洗い出した各作業が完了するまでにどれくらいの期間(日数、時間など)がかかるかを予測します。過去の類似プロジェクトのデータを参考にしたり、担当者と相談したりして、現実的な期間を設定しましょう。

3.担当者の割り当て

各作業を担当するメンバーを決定します。担当者を明確にすることで、責任の所在がはっきりし、作業がスムーズに進みます。

4.工程表への入力

エクセルなどの表計算ソフトや専用ツールを使って、作成した工程表に以下の情報を入力していきます。

  • 縦軸に「作業項目」「担当者」
  • 横軸に「時間軸」(例:日付、週)
  • 各作業の開始日と終了日に合わせて、棒グラフを描画する

5.定期的な見直しと更新

プロジェクトが開始したら、進捗状況を定期的にチェックし、工程表を更新します。計画通りに進んでいるか、遅れが出ていないかを確認し、必要に応じてスケジュールを調整します。

バーチャート工程表の作成に役立つツール

バーチャート工程表は、以下のようなツールを用いて作成するのがおすすめです。

表計算ソフト(Excel、Googleスプレッドシートなど)

ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを使ったバーチャート工程表が、もっとも手軽に始められる方法です。

セルを塗りつぶしたり、条件付き書式を使ったりすることで、簡易的なバーチャート工程表を作成できます。さまざまなWebサイトでテンプレートが豊富に公開されているため、すぐに使い始めることができます。

プロジェクト管理ツール

近年、業界に特化したものなど、さまざまなプロジェクト管理ツールが登場しています。

単に工程表を作成するだけでなく、タスク管理や情報共有、リソース管理など、プロジェクト全体を統合的に管理できる機能を備えているツールもあるため、プロジェクトの規模や目的に応じて最適なものを選ぶと良いでしょう。

freee工数管理は、プロジェクトにかかった工数の管理機能を備えたツールです。工数のリアルタイム集計をはじめ、プロジェクト別の原価計算も簡単かつ正確に実現し、精度の高いプロジェクト管理に役立ちます。

まとめ

バーチャート工程表は、プロジェクトの各作業を期間で表現する、シンプルかつ視覚的な管理ツールです。作成や理解が容易なため、関係者間の情報共有を円滑にし、大まかな進捗状況を把握するのに適しています。

一方で、作業間の関連性やリソース配分を詳細に表現できないというデメリットもあります。プロジェクトの規模や複雑性に応じて、ガントチャート工程表やネットワーク工程表と使い分けることが重要です。その特性を理解し、適切に活用することで、プロジェクト管理を効率化し、成功へと導くことができるでしょう。

よくある質問

バーチャート工程表とガントチャート工程表の違いは?

バーチャート工程表とガントチャート工程表は、プロジェクトの各作業を期間や進捗で表現する点は同じですが、作業の関連性を表現できるかどうかに違いがあります。

詳しくは、記事内「ガントチャート工程表との違い」で解説しています。

バーチャート工程表のデメリットは?

プロジェクト管理においてバーチャート工程表を活用する場合、以下のデメリットがあります。


  • 作業の関連性を表現できない
  • 複雑なプロジェクト管理には不向き
  • リソース管理には向いていない

詳しくは、記事内「バーチャート工程表のデメリット」をご覧ください。

案件管理から請求書発行まで「freee販売」ひとつで完結

\無形商材に特化した管理サービス/
freee販売は案件・プロジェクトごとに管理や原価計算が可能!リアルタイムで正確な情報を入力・共有が可能です。

案件管理から請求書発行まで「freee販売」ひとつで完結

freee販売で案件ごとの管理が可能に
freee工数管理で工数可視化の面倒を自動化で解決