受発注の基礎知識

再委託とは?禁止されるケースや注意点について解説

監修 寺林 智栄 NTS総合弁護士法人札幌事務所

再委託とは?禁止されるケースや注意点について解説

業務委託契約を締結する際によく利用されるのが、再委託です。再委託は委託元にも委託先にもメリットがある一方で、デメリットもあります。場合によっては委託元と委託先でトラブルが起こってしまう可能性もあるため、再委託については慎重に検討する必要があるでしょう。

本記事では、再委託が認められるケースと禁止されるケース、再委託を認める際の契約書の書き方や注意点などについて解説します。

目次

業務委託先との契約・発注・請求・支払をまるごと管理

freee業務委託管理は、業務委託先との契約・発注・請求・支払を一元管理するクラウドのサービスです。下請法、フリーランス保護新法、インボイス制度、電子帳簿保存法など法令に対応した安全な取引を実現できます。

再委託とは

再委託とは、業務委託契約において発注者から委託された業務を、第三者に再度委託することです。下図のように、A社がB社へ委託した業務を、B社がC社へ委託するケースが該当します。A社から業務を委託されたB社が、品質やコストなどの面でC社へ業務を再委託したほうがメリットが大きいと判断した場合に行われるのが一般的です。

業務委託契約の流れ


なお、業務委託契約は、企業の業務の一部を外部の企業や個人に委託するときに結ぶ契約を意味します。雇用契約のように、労働力を提供し事業主の指揮命令下に入るのではなく、委託者と受託者が対等な立場で業務を行うことに特徴があります。

【関連記事】
業務委託契約とは?契約の種類や締結の流れを分かりやすく解説

再委託が禁止されるのはどのような場合か

業務委託には「請負契約」と「委任契約(準委任契約)」の2つがあります。

このうち請負契約は、請負人が注文者に対して、ある仕事を納期までに完成させることを約束する契約です。

出典:e-Gov法令検索「民法第六百三十二条」

一方、委任契約(準委任契約)は、一方が他方に対して法律行為やその他の事務を相手方に委託し、相手方がこれに応じることによって成立する契約です。委任契約の代表的な例として、弁護士への事件の依頼や、税理士への確定申告の依頼が挙げられます。

出典:e-Gov法令検索「民法第六百四十三条、第六百五十六条」

請負契約においては、あくまで「成果物の完成」が契約の目的であるため、請負人が請け負った仕事を第三者に委託しても問題はなく、原則として再委託(請負契約においては、これを「下請(したうけ)」という)は禁止されません。

これに対し委任契約(準委任契約)は、受任者の技量が重視されるため、原則的に再委託(委任契約においては、これを「復委任」という)は禁止されます。

出典:e-Gov法令検索「民法第六百四十四条の二」

ただし請負契約の場合でも、品質担保やセキュリティ面の安全性において懸念が生じる場合があるため、実際には、契約において再委託を禁じたり制限したりすることもあります。一方で委任契約では、受任者が人手不足にある場合や、再委託先の技量に問題がない場合は、再委託を認めることもあります。

【関連記事】
業務委託とフリーランスの違いは?求人方法や発注プロセスも解説
請負契約とは?委託契約や準委任契約との違いや印紙・郵送不要で契約書の作成方法も解説

再委託に関する契約書の書き方

前述のとおり、業務委託契約においては、請負契約・委任契約を問わず、当事者の実情に応じて再委託が認められる場合や禁じられる場合があります。

実際に契約書において再委託を認める場合あるいは禁止する場合に、どのような文言で条項を作成すればよいのか、以下で解説します。

再委託を認める場合

再委託を認める場合、契約書の中に、再委託に関する条項を一切入れないケースもあり得ます。

契約書の中に条項がない場合は法律の定めに準じるため、請負の場合には再委託(下請)が無条件で可能です。また委任(準委任)の場合には、事前に委任者の許諾を得た場合ややむを得ない場合には再委託(復委任)が可能となり、それ以外の場合は禁じられます。

しかし、請負の場合は注文者側でのコントロールがまったく効きません。委任の場合も、たとえば「やむを得ない場合」の解釈について委任者と受任者の見解が合わず、後日トラブルが生じる懸念などがあるでしょう。

再委託を認めるか認めないか、認める場合にどのような条件で認めるかは、契約書に記載しておくべきといえます。

再委託を認める場合には、契約書に以下のような条項を設けます。

<全面的に再委託を認める場合>
乙は、自己の判断で、本件業務を第三者に再委託できる。

<条件付きで再委託を認める場合①>
乙は、事前に甲の許諾を得れば、本件業務を第三者に再委託できる。

<条件付きで再委託を認める場合②>
乙が本件業務を第三者に再委託する場合には、第○条に定める乙の義務と同等の義務を当該第三者に負わせるものとする。

<条件付きで再委託を認める場合③>
乙が本件業務を第三者に再委託する場合には、再委託費用は○○円以上とする。

再委託先に委託者の目が行き届くようにしたり、業務の丸投げを防いだりするためには、委託先や委託範囲を限定することもひとつの手段です。

このような場合の条項は、以下のとおりとなります。

<委託先を限定する場合>
乙が本件業務を第三者に再委託する場合、再委託先は甲所在地と同一県内に所在する事業者とする。

<委託範囲を限定する場合>
乙が第三者に再委託できるのは、本件業務のうち、以下に限定する。
イ ……
ロ ……

再委託先が甲に損害を生じさせた場合、委託先に責任を負わせるようにして、再委託先をコントロールする方法もあります。その際の条項は以下のとおりです。

<再委託先が生じさせた損害の責任を委託先に負わせる場合>
再委託先の故意または過失により甲に損害が生じた場合には、乙がその損害の賠償責任を負う。ただし、乙が再委託先を適切に監督していた場合はその限りでない。

再委託を禁止する場合

再委託により生じうるリスクを全面的に排除したい場合には、再委託を全面的に禁止したほうがよいでしょう。

その場合の契約書上の条項は、以下のようになります。

<再委託を全面的に禁止する場合>
乙は、いかなる場合も本件業務を第三者に再委託することができない。

再委託のメリット

再委託を認めるかどうかの判断にあたっては、再委託により得られるメリットを理解すべきでしょう。

再委託には、一般的に以下のようなメリットがあります。

不足しているスキルを補える

委託先の技術が足りない場合は、再委託によって技術力のある人員に業務を遂行してもらえることがメリットのひとつです。その結果、委託先は自社が得意とする領域のみに注力できるとともに、委託元も品質の優れた成果物を得られることになります。

不足している技術やスキルを補えるものとして、再委託は委託元と委託先の双方にメリットがあるといえるでしょう。

業務効率を向上できる

再委託をすると単純に作業人員が増えるため、委託先だけでは対応しきれない業務を効率的に進められるようになります。

委託元にとっては、納期を早めたり、より多くの業務を委託できたりするため、スピードや生産性の面でメリットが大きいといえます。

コスト削減が期待できる

再委託は、委託先に不足している技術を補うだけでなく、委託先が自社で業務を行う場合よりもコストを削減できるケースもあります。

再委託のデメリット

再委託にはメリットがある一方で、デメリットもあります。

実際に再委託を認めるかどうかを検討するにあたっては、デメリットをしっかりと理解したうえで検討することも必要です。

情報漏えいリスクがある

再委託を行う場合、委託元から提供された情報を再委託先にも提供しなければなりません。

情報を提供する先が増えれば増えるほど、関係のない外部へ漏えいするリスクは高まります。機密性が高い個人情報や未公表データを取り扱う委託元にとっては、こうしたリスクを踏まえて再委託を認めるか検討することが重要です。

管理が行き届きづらい

委託元は再委託先と直接の契約関係がないため、委託元による管理が行き届かず、「業務の進捗状況がわからない」「品質管理がしにくい」といった問題があります。

委託元にとっては、業務進行の遅れや品質悪化のリスクを抱えることになるため、委託先との連携を含めて、問題なく業務が遂行できそうか確認しましょう。

責任問題が生じやすい

再委託によって、ひとつの業務に関わる担当者が増えていくほど、責任の所在がどこにあるのかが不明確になるリスクがあります。「この業務に関する責任は委託元にあるのではないか」「この業務を引き受けているのであれば、責任の所在は委託先にあるだろう」と、責任の擦り付けあいが起きる恐れもあるでしょう。

再委託を行う際には、責任を負う範囲や監督責任の所在などを明らかにすることが必要です。

再委託をする場合の注意点

業務上再委託が必要な場合に、前述のようなデメリットを回避するためには、以下の対策を講じておきましょう。

セキュリティ対策

再委託を行ううえで不安なのが、機密情報の漏えいです。情報漏えいを防ぐには、セキュリティ対策を万全にしておくことが重要です。

具体的な対策のひとつは、委託元がセキュリティ評価基準を策定し、その基準を満たしている事業者に限定して再委託できるようにすることです。また、委託元においてセキュリティに関する注意事項や要求を明文化し、委託先から再委託先に共有する方法も考えられます。

契約書による条項化

委託元と委託先との間で再委託に関するトラブルが生じないようにするためには、再委託に関するルールや、トラブルが生じた責任の範囲を契約書で明確にしておくことが重要です。

具体的には、納期や品質基準、損害賠償責任を負う範囲などを定めておくべきでしょう。

業務管理体制の構築

管理が行き届かず、業務の遅延や品質の悪化が発生しやすいという問題に対しては、再委託先が業務を適正に遂行できるような業務管理体制を構築しなければなりません。具体的には、委託元が委託先に対する定期的な業務評価や品質検査が必要です。

また、再委託先の事業者が業務を問題なく遂行できる能力やスキルを保持しているか、ヒアリングを行うなどして慎重に行うことも求められます。業務管理を円滑に進めるには、再委託先と円滑に意思疎通をとるための体制作りも重要です。

まとめ

業務委託契約において再委託は、活用すべき場面が多いものです。ただ、情報漏えいなどのリスクもあり、委託元と委託先の間でトラブルが生じないようにするためには、セキュリティ対策を施すなどの備えをしておくことが重要だといえます。

再委託を認めるべきかどうか悩んでいる委託元の事業者や再委託を実施したい事業者は、業務契約締結にあたり、本記事を参考にして契約締結の方針を検討してみてください。

フリーランス・業務委託先への発注を効率化する方法

フリーランスや業務委託先との取引が多い企業にとって、手間がかかるのが発注業務です。

一口に発注業務といっても、契約や発注、請求など対応すべき作業は多岐にわたり、管理が行き届かないケースがあります。たとえば、法令にもとづく適切な発注ができていなかったり、請求書の提出期日が守られなかったり、請求書の不備で差し戻しが発生したりなどの課題が挙げられるでしょう。

このような課題を抱えている発注担当者におすすめしたいのが、業務委託管理システム「freee業務委託管理」です。

freee業務委託管理を活用すると、フリーランスや業務委託先への発注に関する手続きや取引情報のすべてを一元管理できるようになります。契約締結から発注、業務期間のやり取り、納品、検収、請求、支払いまで、一連の対応をクラウド上で完結できるため、管理コスト削減や業務効率化、取引に関するトラブルのリスク低減などのメリットをもたらします。

また、フリーランスや業務委託先との過去の取引履歴や現在の取引状況の管理も可能です。発注実績や評価を社内共有しやすく、業務委託の活用による従業員のパフォーマンス向上が期待できます。

freee業務委託管理の主な活用メリットは以下のとおりです。

発注に関わる手続きや取引情報を一元管理

クラウド上で契約完了

初めて取引を行うフリーランスや業務委託先と契約を締結する際、freee業務委託管理を使えば、クラウド上でのスムーズなやり取りが可能です。

契約書はそのままクラウド上に保管されるため、契約情報をもとに発注内容を確認したり、契約更新時のアラート通知を受け取ったりすることもできます。

発注対応や業務進捗を可視化

発注書の作成・送付は、フォーマットに業務内容や報酬、納期などを入力するだけで完了します。

また、発注業務をメールや口頭でのやり取りで行っていると、管理上の手間がかかるのはもちろん、発注内容や業務進捗などを把握しづらいこともあるでしょう。freee業務委託管理は発注内容が可視化され、プロジェクトの業務進捗や残予算をリアルタイムに把握するうえでも役立ちます。

正確な請求管理を実現

発注業務でもっとも忘れてはならないのが、請求管理です。報酬の支払い漏れや遅延は企業の信用に関わるため、情報の一元管理によって正しく効率的に行う必要があります。freee業務委託管理ならフリーランスや業務委託先が請求書を発行する際も、ワンクリックで発注書に連動した請求書を作成可能。請求書の回収状況が一覧で確認できるほか、請求処理に関する上長や経理担当者の承認作業もクラウド上で行えます。

支払明細書の発行も可能

確定申告の際に必要な支払明細書(支払調書)も、フリーランスや業務委託先ごとに発行できます。発行した支払明細書(支払調書)はPDFでダウンロードしたり、メールで送付したりすることも可能です。

法令への対策が万全

近年、発注側の企業がフリーランスや業務委託先に対して優越的地位を濫用するリスクを防ぐため、下請法やフリーランス保護新法(2024年10月施行予定)にもとづく適切な発注対応が求められています。また、インボイス制度や電子帳簿保存法の要件を満たす書類の発行・保存も不可欠です。

こうした法令に反する対応を意図せず行ってしまった場合も、発注側の企業に罰則が科される可能性があるため、取引の安全性を確保する必要があります。freee業務委託管理なら既存の法令はもちろん、法改正や新たな法令の施行にも自動で対応しているため、安心して取引を行うことができます。

カスタマイズ開発やツール連携で運用しやすく

業務委託管理システムを導入する際は、発注業務の担当者が使いやすい環境を整えることも欠かせません。freee業務委託管理は、ご希望に応じて、オンプレミスとの連携や新たな機能の開発などのカスタマイズも可能です。また、LINE・Slack・Chatwork・freee・CloudSign・Salesforceなど、各種ツールとの連携もできます。

より詳しくサービスについて知りたい方は、無料ダウンロード資料「1分で分かるfreee業務委託管理」をぜひご覧ください。

よくある質問

再委託とは?

再委託とは、業務委託契約において発注者から委託された業務を、第三者に再度委託することです。

詳しくは記事内の「再委託とは」をご覧ください。

再委託のデメリットは?

再委託には、以下のようなデメリットがあります。


  1. 1.情報漏えいのリスクがある
  2. 2.管理が行き届きづらい
  3. 3.責任問題が生じやすい

詳しくは記事内の「再委託のデメリット」をご覧ください。


監修 寺林 智栄(てらばやし ともえ)

2007年弁護士登録。2013年頃より、数々のWebサイトで法律記事を作成。ヤフートピックス1位獲得複数回。離婚をはじめとする家族問題、労務問題が得意。

寺林 智栄

業務委託先との契約・発注・請求・支払をまるごと管理

freee業務委託管理は、業務委託先との契約・発注・請求・支払を一元管理するクラウドのサービスです。下請法、フリーランス保護新法、インボイス制度、電子帳簿保存法など法令に対応した安全な取引を実現できます。