外注管理(外部委託管理)とは、企業が外部の企業や個人事業主などに業務を委託する際、発注から請求支払いまでの工程を管理することです。
近年、労働力人口の減少などを背景に、外部委託によって製品・サービスの品質や生産性の向上を目指す企業は少なくありません。
外部委託は、自社で専門的なスキルを持った人材を採用・育成しなくても、十分なスキルや実績のある外部人材に業務を任せられるため、コスト削減や品質担保などのメリットがあります。しかし外部委託のメリットを十分に得るには、外注管理の効率化が不可欠です。
本記事では、外注管理の重要性や具体的な流れ、効率化のポイントについて詳しく解説します。
目次
外注管理とは
外注管理とは、外部から自社に不足している人手や技術などを調達し、発注から納品、請求、支払いまでの一連の流れを管理することを指します。国内の労働力人口が減少するなか、外部からのリソース調達によって製品・サービスの品質や生産性、業務効率を向上させ、より企業としての競争力を高めるための取り組みとして重要です。
外注管理においては、外注先の業務進捗や対応品質はもちろん、発注時の契約締結や納品後の請求といった事務処理についても、ミスや遅延がないように正確に管理する必要があります。
業務を外注するメリット
業務の外注化は、以下のとおり企業にさまざまなメリットをもたらします。
業務外注化のメリット
- コストを削減できる
- 業務の質を担保できる
- 業務効率がアップする
コストを削減できる
新たに従業員を雇用するとなると、従業員に支払う給与や社会保険料、福利厚生費などをはじめ、採用や育成にかかるコストも負担しなければなりません。業務を外部の人材に依頼すれば、これらのコスト削減を実現できます。
【関連記事】
企業側が業務委託を利用するメリットとデメリットとは?依頼する際の注意点も解説
業務の質を担保できる
専門的な技術や知識の必要な業務に関しては、自社の従業員では対応しきれないケースがあるでしょう。一から技術や知識を習得させるにしても、ある程度の時間がかかります。業務実績の豊富な外注先に依頼することができれば、一定の業務品質を担保しやすくなります。
業務効率がアップする
直接的な利益につながらなかったり、従業員の生産性向上を阻んだりするなどの理由で、本来は従業員が行うべきではない業務もあるかもしれません。そうした業務を外部に任せることができれば、従業員は本来注力すべきコア業務に集中して取り組めるようになり、従業員のパフォーマンスの最大化につながるでしょう。企業の組織力や競争力アップも期待できます。
発注者側における外注管理の重要性
前述したメリットを得るために重要なのが、的確で効率的な外注管理です。外注管理がうまく機能しなければ、業務進捗の遅延や想定外のミス・トラブルを招くことになりかねません。
特に外注先が複数ある場合、それぞれの外注先に対して適切なコミュニケーションを図る必要があり、業務進捗を追うだけでも骨が折れます。いかに効率よく外注管理ができるかが問われるでしょう。
外注管理の流れ
外注管理のおおまかな流れは以下のとおりです。
外注管理の流れ
- 外注先と契約を締結する
- 外注先へ発注書を作成する
- 外注先へ発注書を作成する
1.外注先と契約を締結する
外部に委託したい業務にふさわしい外注先を選定し、想定される作業内容や納期、報酬などについて外注先の合意をとりましょう。合意形成後、契約条件をまとめた書面を作成し、契約の締結を行います。
契約書では事前にすり合わせをした条件面を明文化します。後々のトラブルに発展しないように、品質基準や機密保持に関しても要件を細かく記載しておきましょう。
業務委託契約については、別記事「業務委託契約とは?さまざまな契約方法の違い、契約後の流れ」にて解説しています。
2.外注先へ発注書を作成する
契約締結後は、発注書を外注先へ送付します。下請法の対象となる取引の場合、外注先への発注書の交付が義務付けられているため忘れずに対応しましょう。
下請法とは発注側の優越的地位の濫用を防ぎ、受注側の経済的利益を守るための法律です。下請法に違反した場合は発注側に罰則が科せられるため注意してください。
下請法の対象となる取引については、別記事「下請法の対象取引は?親事業者・下請事業者の定義や禁止事項を解説」にて解説しています。
3.業務進捗を管理する
前述のとおり、業務を外部に委託する場合、進捗状況がブラックボックス化しがちです。気付いたら大幅に進行が遅延していたということにならないよう、スケジュールどおりに進行しているか、何らかのミスが起きていないかは定期的に外注先へ確認するようにしましょう。
4.外注先から請求書を受領して支払いを対応する
外注先から成果物が納品されたら、品質基準を満たしているかを確認します。もし確認時に何らかの不備が見つかった場合は、必要に応じて修正や改善を依頼します。発注した内容と照らし合わせて不備などがないことを確認したら検収とし、外注先に報酬の請求書を発行してもらいましょう。
請求書の金額などが発注書どおりになっていることを確認したら受領し、指定された期日までに支払いを行います。万が一支払いが遅れてしまうと外注先からの信用を失いかねないため、支払い期日は厳守してください。事務処理のヒューマンエラーを防ぐには、支払い業務を自動的に管理するシステムやツールを活用すると安心です。
外注管理の課題
外注管理においてよくある課題は以下のとおりです。
業務進捗がわかりづらい
外部に業務を委託する場合、基本的には成果物の完成を目指して稼働してもらうことになります。そのため、成果物の完成までの過程で進捗や稼働状況を把握しづらいケースもあるでしょう。
過度な進捗確認は業務効率上おすすめしませんが、定期的に外注先からの報告タイミングを設けるなど、双方でコミュニケーションがとりやすい体制を整えておくことが大切です。
外注先とコミュニケーションを取りにくい
自社の従業員とは異なり、外注先とは基本的に遠隔でコミュニケーションをとることになるため、場合によっては情報共有や意思疎通がうまくいかないケースがあります。双方の認識にズレが生じてしまうと、業務上のミスや遅延につながりかねません。
外注先とのやり取りには一般的にメールやチャット、電話、オンライン会議システムなどを使用しますが、もっとも連絡がとりやすい手段を選択し、こまめにコミュニケーションがとれるように対策しておく必要があるでしょう。
外注管理を効率化させるポイント
先に紹介した外注管理の課題を解消し、効率化させるためのポイントを説明します。
外注したい業務に適した外注先を選ぶ
外注先の選定は、外注管理の効率化にとって重要なポイントです。外注先によって業務対応の品質は異なるため、従業員の負担軽減や処理スピードの向上につながるかどうかは外注先次第といえます。
業務を外注する際には、外注先の実績や強みを確認し、自社が求める品質やスケジュールに問題なく対応できるかどうかをよく検討しましょう。
外注のルールを取り決める
外注を検討する際は、事前に外注先との間で成果物の品質基準や進め方、注意点などのルールを明文化することが大切です。外注先との間で認識のズレが起きていると、業務上のミスが発生したり納期が遅延したりするリスクがあります。
ルールが明文化されていれば、両者間での細かい問い合わせや確認などのコミュニケーションコストも減らせるため、業務を効率的に進めることが可能です。こうしたルールは基本的なマニュアルやレギュレーションとして整理しておくと、複数の外注先に対して同様の業務を依頼する際にも役立ちます。
詳細なスケジュールを設定する
外注管理の際には、あらかじめ業務タスクを細分化してスケジュールの設定を行い、スケジュールどおりに進行しているかどうかを定期的にチェックすることが重要です。
外注管理における業務進捗確認を効率よく行うには、プロジェクトマネジメントツールの活用が欠かせません。タスクごとの進捗状況が可視化され、誰が今どの作業を行っているのか、どの工程で問題が起きているのかなどを把握しやすくなります。
一般的によく使われるプロジェクトマネジメントツールには、以下のような種類があります。
ガントチャート
ガントチャートは、プロジェクトを管理するうえでスケジュールや業務の進捗状況を可視化するツールです。プロジェクトに携わる全員が、目に見える形で状況を確認できます。
WBS
WBS(Work Breakdown Structure)もプロジェクトの計画やスケジュール管理に役立つツールです。
必要な工程やタスクを細かく分解して対応日数を設定できるため、各担当者がどの期間に何を行えばいいのかが明確になります。また、工程やタスクごとに進捗率を追いやすく、進捗が芳しくない工程に対しては早期に対処できます。
タイムライン
タイムラインとは、プロジェクトの進捗状況やタスク同士の関係を、リアルタイムな時系列順に一覧化できるツールです。
携わる関係者の多いプロジェクトでは、どんなに綿密にスケジュールを計画したとしても、予期せぬトラブルなどによって調整が必要になる場面があるでしょう。タイムラインを活用すると、万が一遅れが発生した場合、それによって影響のあるタスクを明らかにし、すぐに調整することができます。関係者間で柔軟にサポートしながら効率よくプロジェクトを進めやすくなります。
PERT
PERT(Program Evaluation and Review Technique)は、プロジェクト全体の関係性を図解として示すツールです。別名でアローダイヤグラムとも呼ばれています。
各タスクと対応日数を視覚的に把握できるため、タスクに着手すべきタイミングを把握できます。それによって担当者がスケジュールを確保しやすくなり、無駄なくスムーズな進行が可能になります。
定期的にコミュニケーションを取る
外注先とは定期的にコミュニケーションを取り、プロジェクトチームとして連携を深めるように努めましょう。メールやチャット、電話など、お互いに使いやすいツールでこまめな情報共有を行うことが大切です。
同時に週に1回や月に1回は、オンラインもしくはオフラインで顔を合わせて話せる機会を設けておくと、よりコミュニケーションがスムーズになり、業務を進めやすくなります。問題が発生した場合も、早い段階で軌道修正できるでしょう。
コミュニケーションの効率化には、手段の使い分けが有効です。たとえば簡単な業務連絡や確認はメールやチャットで行い、相談や議論が必要な場面ではオンラインやオフラインのミーティングを開くなど、柔軟なコミュニケーションを図ることをおすすめします。
外注管理システムを使う
外注管理システムとは、外注先の基本情報や受発注履歴などの記録をはじめ、発注書の発行から納品、検収、請求対応までを一元管理できるシステムのことを指します。
複数の外注先を抱えている場合、それらを適切に管理する事務作業は煩雑になりがちです。外注管理システムを導入すれば、発注書や請求書などの書類のやり取りにかかる手間や時間を短縮し、正しいフローで効率的に処理できるようになります。
また外注先のデータベースとしても活用できるため、過去に発注実績のある外注先の中から新たな業務を委託する候補を探す際にも役立つでしょう。
まとめ
外注先の活用は、自社のスキル・人手不足を補う手段として得られるメリットが大きい一方で、うまく外注先を管理できなければ、かえって従業員の負担を増やし、非効率になってしまう可能性があります。
外注管理を効率化するには、業務のルール化やコミュニケーションの工夫、進捗状況の把握を徹底するほか、発注業務を一元管理する外注管理システムの活用も有効です。従業員が業務の品質向上に集中できるように、外注に関する事務作業の手間を減らす方法を検討してみてください。
フリーランス・業務委託先への発注を効率化する方法
フリーランスや業務委託先との取引が多い企業にとって、手間がかかるのが発注業務です。
一口に発注業務といっても、契約や発注、請求など対応すべき作業は多岐にわたり、管理が行き届かないケースがあります。たとえば、法令にもとづく適切な発注ができていなかったり、請求書の提出期日が守られなかったり、請求書の不備で差し戻しが発生したりなどの課題が挙げられるでしょう。
このような課題を抱えている発注担当者におすすめしたいのが、業務委託管理システム「freee業務委託管理」です。
freee業務委託管理を活用すると、フリーランスや業務委託先への発注に関する手続きや取引情報のすべてを一元管理できるようになります。契約締結から発注、業務期間のやり取り、納品、検収、請求、支払いまで、一連の対応をクラウド上で完結できるため、管理コスト削減や業務効率化、取引に関するトラブルのリスク低減などのメリットをもたらします。
また、フリーランスや業務委託先との過去の取引履歴や現在の取引状況の管理も可能です。発注実績や評価を社内共有しやすく、業務委託の活用による従業員のパフォーマンス向上が期待できます。
freee業務委託管理の主な活用メリットは以下のとおりです。
発注に関わる手続きや取引情報を一元管理
クラウド上で契約完了
初めて取引を行うフリーランスや業務委託先と契約を締結する際、freee業務委託管理を使えば、クラウド上でのスムーズなやり取りが可能です。
契約書はそのままクラウド上に保管されるため、契約情報をもとに発注内容を確認したり、契約更新時のアラート通知を受け取ったりすることもできます。
発注対応や業務進捗を可視化
発注書の作成・送付は、フォーマットに業務内容や報酬、納期などを入力するだけで完了します。
また、発注業務をメールや口頭でのやり取りで行っていると、管理上の手間がかかるのはもちろん、発注内容や業務進捗などを把握しづらいこともあるでしょう。freee業務委託管理は発注内容が可視化され、プロジェクトの業務進捗や残予算をリアルタイムに把握するうえでも役立ちます。
正確な請求管理を実現
発注業務でもっとも忘れてはならないのが、請求管理です。報酬の支払い漏れや遅延は企業の信用に関わるため、情報の一元管理によって正しく効率的に行う必要があります。freee業務委託管理ならフリーランスや業務委託先が請求書を発行する際も、ワンクリックで発注書に連動した請求書を作成可能。請求書の回収状況が一覧で確認できるほか、請求処理に関する上長や経理担当者の承認作業もクラウド上で行えます。
支払明細書の発行も可能
確定申告の際に必要な支払明細書(支払調書)も、フリーランスや業務委託先ごとに発行できます。発行した支払明細書(支払調書)はPDFでダウンロードしたり、メールで送付したりすることも可能です。
法令への対策が万全
近年、発注側の企業がフリーランスや業務委託先に対して優越的地位を濫用するリスクを防ぐため、下請法やフリーランス保護新法(2024年11月1日施行予定)にもとづく適切な発注対応が求められています。また、インボイス制度や電子帳簿保存法の要件を満たす書類の発行・保存も不可欠です。
こうした法令に反する対応を意図せず行ってしまった場合も、発注側の企業に罰則が科される可能性があるため、取引の安全性を確保する必要があります。freee業務委託管理なら既存の法令はもちろん、法改正や新たな法令の施行にも自動で対応しているため、安心して取引を行うことができます。
カスタマイズ開発やツール連携で運用しやすく
業務委託管理システムを導入する際は、発注業務の担当者が使いやすい環境を整えることも欠かせません。freee業務委託管理は、ご希望に応じて、オンプレミスとの連携や新たな機能の開発などのカスタマイズも可能です。また、LINE・Slack・Chatwork・freee・CloudSign・Salesforceなど、各種ツールとの連携もできます。
より詳しくサービスについて知りたい方は、無料ダウンロード資料「1分で分かるfreee業務委託管理」をぜひご覧ください。
よくある質問
外注管理とはどのような内容?
外注管理とは、外部から自社に不足している人手や技術などを調達し、発注から納品、請求、支払いまでの一連の流れを管理することを指します。
外注管理のメリットや重要性は、記事内「外注管理とは」にて解説しています。
外注管理の課題とは?
外注管理においては、業務進捗がわかりづらかったり、外注先とのコミュニケーションが取りづらかったりといった課題が生じやすいといえます。
詳しくは、記事内「外注管理の課題」をご覧ください。