割印(わりいん)とは、複数の文書にまたがって印影が残るよう押印する方法のことです。契約書などが2部以上ある場合に、それらの文書が同時に作られ、かつ同じ内容であることを示すために用いられます。
本記事では、割印の役割や用いられる場面、法的効力、押印の具体的な方法などを解説します。あわせて、契約書に必要な押印にはどのような種類があるのかについてもまとめているので、契約書を作成・締結する際の参考にしてください。
目次
割印とは
割印(わりいん)とは、複数の文書にまたがって印影が残るよう、印章(はんこ)を押す方法のことです。印影がそれぞれの書類に半分ずつ「割れて」残ることからそう呼ばれています。
契約書を作成する際は、契約をする当事者分の部数を用意するのが一般的です。その際、2部以上の文書が同一の内容であることを示す意味で割印を行い、契約を締結した当事者が1部ずつ保有します。
また、「基本契約書」と「その細則を定めた覚書」など2種類の文書の関連性を示す場合に割印をするケースや、領収書とその控えに割印をするケースもあります。
割印の目的と役割
割印を行う目的は、契約書本体と覚書、申込書、領収書の控えといった複数の文書間の関連性および同一性を証明し、文書の改ざんやコピーといった不正を防止することです。2点以上の独立した文書が「同じタイミングで作成されたもの」であり、かつ「内容が完全に一致していること」を証明するのに有効といえます。
第三者に対する証明力
契約書の原本と控え、あるいは本契約書と覚書を突き合わせる際に印影が一致することで、作成後に片方だけが改ざんされていないことを証明する効力が高まります。
改ざんリスクの低減
仮に一方の文書の内容が改ざんされた場合、割印の印影がもう一方の文書の印影とずれるため、不正の事実を容易に証明できます。
割印を用いる具体的な場面
割印は、主に以下のようなシーンで用いられています。
| 場面 | 目的 | |
|---|---|---|
| 契約書と控え | 契約書の原本と会社控え | 控えの内容が原本と同一であることを証明する |
| 契約書と覚書・変更契約書 | 本契約書と、記載された一部内容を変更するための覚書 | 覚書が本契約書の一部であることを証明する |
| 申込書と控え | 申込書の原本と顧客用控え | 申込書の内容が申込者と企業の間で一致していることを証明する |
| 領収書と控え | 領収書の原本と顧客用控え (控付き領収書) | 発行金額が同一であることを証明する |
なかでも覚書・変更契約書は実務で内容が変わるたびに作成する文書であり、変更が有効であることを証明するために割印が重要な役割を果たします。
契約書に割印がない場合の法的効力
契約書に割印が押されていなかったとしても契約書の法的効力に影響はなく、その契約は成立します。しかし、割印を押すことで「改ざんのない正しい契約書」であることが主張できます。
契約の法的効力の考え方
契約の成立は、「合意(当事者間での契約内容に対する意思の合致)の有無」と「押印の有無」という2つの要素で決まります。押印は原則として契約の成立に必須ではありませんが、実務上は当事者の意思確認の証拠となることから日本においては重視されています。
割印は上記の要件に含まれないため、「割印がない」という理由で契約が無効になることはありません。ただし割印がない場合、将来的に以下のようなリスクが生じる可能性がある点には注意が必要です。
割印を用いない場合に考えられるリスク
- 複数作成した文書のうち、一方だけが悪意を持って改ざんされた場合、改ざんを客観的に証明することが難しくなる
- 「契約書と覚書(変更契約書)が関連していること」や「控えが原本のコピーであること」を、裁判などで立証する際に手間や時間がかかる
- 領収書などの控えが必要な文書の場合、税務調査などで控えと原本の同一性が確認できず処理が煩雑になる恐れがある
割印とほかの押印との違い
割印のほかにも、契約書にはさまざまな押印方法が用いられます。それぞれの役割について見ていきましょう。
契印
契印(けいいん)とは、契約書や申請書などの文書が複数ページにわたる場合に、それぞれのページにまたがって印影が残るように押す印章のことです。契印はページの連続性を示して文書の差し替えや抜き取りを防ぐ目的で用いられます。
契約印
契約印は、契約書の末尾にある当事者の署名の後ろに押す印章のことです。署名にかかるように押しても、やや離れた場所に押しても構いません。名義人の印章で押印してあれば、「当事者の意思に基づいて押印されたもの」「文書が真正に成立したもの」と証明できます。
消印
消印(けしいん)とは、収入印紙を貼付した際に、印紙と契約書にまたがって押す印章のことです。契約書以外に、郵便物と切手にまたがって押す印も「消印」と呼びます。消印は収入印紙や切手が使用済みであることの証明となり、再利用を防ぐ役割があります。
訂正印
訂正印とは、契約書の文面に間違いがあった場合に、その内容を訂正・修正するために押す印章のことです。文書に訂正印を押すことで「契約書作成者本人による訂正」である事実を証明し、改ざんではないと示すことができます。
捨印
捨印(すていん)は、あらかじめ文書の余白部分に押しておき、誤りが見つかったときに訂正印として利用できるようにしておくための印です。捨印の隣に文書内の訂正内容を記すことで、訂正を行った事実を示す役割があります。
割印に適した印章のサイズ
割印をするときに使う印章は、署名(捺印)に使用したものと同じでなくても問題ありません。個人の場合であれば契約印には実印を、割印には認印を使うことも可能です。
一方、法人の場合は割印のための専用の印章を作成することもあります。刻印内容は法人名とするのが一般的で、末尾に「◯◯之割印」などの文言を入れるケースも珍しくありません。
割印専用の印章は縦長の物が多く、下記のサイズがよく用いられます。
割印に用いられる印章サイズの一般例
- 12.0mm × 30.0mm
- 13.5mm × 33.0mm
- 15.0mm × 36.0mm
書体に決まりはありませんが、篆書体(てんしょたい)などが一般的に使われています。
契約書に割印をする際のポイント
割印をする際には一定のルールがあります。続いては、割印の方法や失敗した場合の訂正方法について確認しておきましょう。
割印の押し方と位置
割印をするときは、まずそれぞれの文書をずらして重ねます。ずらし方は、文書を上下にずらす、または斜め方向にずらすのが一般的です。2人以上が署名・捺印をしている場合は、全員分の割印が必要となります。複数名が割印をする場合は、最初に押された印影がずれないように注意しましょう。
また、複数ページにまたがる文書の場合はすべてのページに割印が押されていなくてはなりません。縦長の印章なら複数ページにわたり同時に押すことが可能ですが、丸形の印章で長さが足りない場合は2ヵ所に割印を行います。
なお、領収書と控えに割印をする場合は、両者を切り離す場所に割印をします。
割印を失敗した場合の訂正方法
うまく割印を押せなかったときは、別の場所に押し直すのが原則です。文書にまたがるよう、あらためて慎重に割印をします。
失敗した場所に重ねて押印すると印影がずれてしまい、割印の役割が果たせなくなる可能性が高いため避けましょう。なお、失敗した割印に二重線を引くなどの手を加える必要はありません。
割印を行う手間がかからない電子契約
近年では、電子契約サービスを活用して契約書を交わす企業が増えています。電子サインを用いる電子契約では、紙の契約書のように割印をはじめとする押印の必要がありません。
電子サインとは、従来の署名捺印の代わりに本人性を担保し、内容に改ざんがないことを保証する仕組みのことです。電子サインの方法のひとつである電子署名は、「公開鍵暗号」「公開鍵基盤(PKI)」「ハッシュ関数」という3つの技術により厳格に本人性や非改ざん性が担保されています。
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契約にまつわる業務を簡単にする方法
契約書の作成や押印、管理など、契約にまつわる作業は多岐に渡ります。リモートワークが普及した近年、コミュニケーションを取りづらくなってしまい、契約締結までに時間がかかってしまう場合や、押印のためだけに出社しなければいけない...なんてケースも少なくありません。
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文書に応じて電子サイン・電子署名の使い分けが可能!
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重要な契約書や、後に争いが生じる可能性が高い文書には「電子署名」を利用して、より強固な証跡を残し、それ以外の多くの文書には「電子サイン」を利用するといった使い分けができるので、コスト削減につながります。
電子契約で契約書作成にかかる手間・コストを削減
電子契約にすると押印や郵送、契約管理台帳へのデータ入力の必要がなく、契約に関わる手間が大幅に削減されます。さらに、オンライン上での契約締結は印紙税法基本通達第44条の「課税文書の作成」に該当しないため、収入印紙も不要です。
電子契約で完結することで、郵送する切手代や紙代、インク代なども不要となり、コストカットにつながります。
過去の契約書もクラウド上で保存してペーパーレス化
紙ベースで契約書類を作成すると、紛失や破損の恐れがあります。また、管理するための物理的なスペースを確保しなくてはなりません。また、電子帳簿保存法の改正でPDFでの保管にも制約が発生します。
freeeサインでは、過去の契約書もPDF化してタイムスタンプ付きで保存ができるので、今まで紙やPDFで保存していた契約書も一緒にクラウド上で管理することができます。クラウド上で管理することで紛失や破損の恐れも解消され、社内間での共有も楽になります。
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まとめ
紙の契約書によって契約を締結する際には、割印をはじめとする押印作業が必須となるケースが多いでしょう。電子サインや電子署名の仕組みを用いる電子契約であれば、割印はもちろん、紙の契約書で必要とされていた各種押印が不要になります。
さまざまな契約書を電子化することで、作成にかかる手間やコストが削減され、よりスピーディーな契約締結が可能になるでしょう。
よくある質問
割印は何のために押すもの?
割印は、複数の独立した文書が「同じタイミングで作成されたもの」であり、かつ「内容が完全に一致していること」を証明し、文書の改ざんやコピーといった不正を防止する目的で用いられます。
詳しくは記事内の「割印の目的と役割」をご覧ください。
割印はどこに押印すればいい?
割印をする際は、まずそれぞれの文書をずらして重ねます。2人以上が署名・捺印をしている場合は、全員分の割印が欠かせません。複数名が割印をする場合は、最初に押された印影がずれないように注意しましょう。
詳しくは記事内の「割印の押し方と位置」をご覧ください。
割印に失敗した場合はどうすべき?
うまく割印を押せなかった場合は、やり直す必要があります。一度失敗した場所に重ねて押すと印影がずれ、割印の役割が果たせなくなる可能性が高いため、別の場所に押し直しましょう。
詳しくは記事内の「割印を失敗した場合の訂正方法」をご覧ください。
