AI活用の基礎知識

デジタルツインとは?仕組み・種類・メリット・活用分野などをわかりやすく解説

デジタルツインとは、現実の設備や製品、環境から取得したデータを仮想空間上のモデルへ継続的に反映し、監視・分析・予測に活用する技術です。現実世界とデータで連動し続ける点が、3Dモデルや一般的なシミュレーションとの大きな違いです。

近年はIoT・AI・クラウドの進化を背景に、製造業・建設業・物流・都市・防災など幅広い分野で活用が進んでいます。一方で、導入には費用や専門人材、セキュリティ対策なども必要です。

本記事では、デジタルツインの仕組みや種類、類似技術との違い、メリット、主な活用分野、導入時の課題・確認事項をわかりやすく解説します。

目次

デジタルツインとは

デジタルツインとは、現実世界の設備・製品・建物・業務プロセスなどを取得したデータに基づいて仮想空間上に再現し、現実側の変化に合わせて更新する仕組みです。

仮想空間上で対象の状態を把握するだけでなく、シミュレーションや将来予測を通じて、設備の保守や製品開発、業務改善などに役立てられます。

以下では、デジタルツインの仕組みと、それを支える主な技術を解説します。

デジタルツインの仕組み

デジタルツインでは、現実世界から収集したデータを仮想空間上のモデルへ反映し、分析結果を現場の判断や改善に役立てます。

基本的な流れは、以下のとおりです。

デジタルツインの仕組み

  1. 現実世界のデータを収集する:設備や製品などに設置したセンサーや既存システムから、温度・振動・位置・稼働時間などのデータを取得する
  2. データを送信・蓄積する:収集したデータをネットワーク経由でクラウドやデータ基盤へ送信し、分析できる状態に整える
  3. 仮想空間上のモデルを更新する:取得したデータをモデルへ反映し、現実の設備や製品の状態を仮想空間上に再現する
  4. 分析結果を現場の判断に反映する:蓄積したデータを分析し、異常の早期発見や故障予測、条件を変更した場合のシミュレーションなどに役立てる

データの更新頻度は、必ずしもリアルタイムとは限りません。設備の異常検知では短い間隔、都市計画では一定期間ごとなど利用目的に応じて設定されます。

データの収集から送信・蓄積、モデルの更新、分析結果の現場への反映まで、サイクルを繰り返しながら仮想空間上のモデルを更新し続ける点が、デジタルツインの特徴です。

デジタルツインを支える技術

デジタルツインは、IoTや通信ネットワーク、クラウド、シミュレーションなど複数の技術を組み合わせて構築します。主な技術と役割は、以下のとおりです。

技術主な役割
IoT・センサー設備や製品の状態、稼働状況、周辺環境などのデータを収集する
通信ネットワーク収集したデータをクラウドやデータ基盤へ送信する
クラウド・エッジ
コンピューティング
データを蓄積・処理し、仮想空間上のモデルを更新する
モデリング・シミュレーション対象の構造や動きを再現し、条件を変えた場合の変化を検証する
AI・データ分析データの傾向や異常を検出し、故障や将来の稼働状況を予測する
API・システム連携生産管理システムや基幹システムなどとデータを連携させる

すべての技術が使われているとは限らず、場合により使い分けられます。たとえばAIを使わずに設備の状態を可視化する場合や、3Dモデルを用いずに数値データを中心に管理する場合もあります。

導入目的や対象範囲に応じて必要な技術を選び、現実世界のデータを継続的に反映できる仕組みを構築することが重要です。

デジタルツインが注目されている背景

デジタルツインが注目されている背景には、IoTやAIなどの技術進化に加え、企業のDX推進や人手不足への対応があります。さらに製造業や建設業などの企業だけでなく、行政でも都市計画や防災への活用が進んでいます。

デジタルツインへの関心が高まっている主な背景を3つの視点から見ていきましょう。

デジタルツインが注目されている背景

  • IoT・AI・クラウドの進化によって実用化が進んでいる
  • DX推進や人手不足への対応が求められている
  • 市場の拡大と企業・行政による導入が進んでいる

IoT・AI・クラウドの進化によって実用化が進んでいる

デジタルツインの実用化が進んでいる背景には、次のようなIoT・AI・クラウドなどの技術進化があります。

  • IoTセンサー:設備の温度や振動、稼働状況などを継続的に取得し、現実空間の変化をデジタルデータに変換する
  • AI:蓄積されたデータを分析することで、異常の兆候や将来の状態を予測し、保守時期や運用方法の最適化につなげられる
  • クラウド:そのデータを集約・処理し、仮想空間上の設備や環境を現実の状態に合わせて更新する役割を担う

「IoTで現実の情報を取得し、クラウド上に現実空間を再現し、AIで分析・予測する」仕組みが整ったことで、デジタルツインを実際の設備管理や業務改善に導入しやすくなっています。

従来は人が経験と勘で判断していた領域を、データに基づいて自動化・精度向上できる点が大きな変化です。

3つの技術がそれぞれ進化しながら連携できる環境が整ったことで、コストや技術面のハードルが下がり、デジタルツインを活用しやすくなっています。

DX推進や人手不足への対応が求められている

少子高齢化に伴う労働人口の減少により、製造業や建設業などでは現場を支える人材や熟練者の確保が難しくなっています。そのため限られた人員で設備の監視や点検などに対応するため、DXの推進や人手不足への対策が必要です。

デジタルツインを導入すれば、以下のようなことが可能になり、人手不足解消の効果も期待できます。

デジタルツインでできること人手不足解消に期待できる効果
設備の稼働状況を離れた場所から確認する(遠隔監視)現地での巡回を減らし、必要な場所へ人員を配置できる
稼働データや故障履歴から異常の兆候を把握する(保守判断)点検や部品交換の優先順位を判断しやすくなる
熟練者の判断基準をデータとして共有する(技術継承)経験の浅い担当者でも過去の事例に基づいて対応できる

このように、デジタルツインは設備管理の効率化や業務の標準化を支える技術として注目されています。

デジタルツインは、企業の業務や意思決定の変革を支える手段のひとつです。DXの基本的な考え方や具体例、推進される背景・課題については、以下の記事を参考にしてください。

企業・行政による導入が進んでいる

デジタルツインの導入が広がっている背景には、活用できるデータ基盤や導入事例の蓄積があります。

以前は、現実空間を再現するためのデータやシステムを個別に整備する必要がありました。しかし現在は、オープンデータや既存のサービスを利用できる場面が増え、過去の事例を基に導入効果を検討しやすくなっています。

企業では、主に次の分野で導入が進められています。

  • 製造業:生産設備の監視や故障予測
  • 建設業:施工計画の検討や進捗管理
  • 物流・不動産業:倉庫内の作業改善や建物管理

また行政分野の代表例が、国土交通省の「Project PLATEAU」です。全国の3D都市モデルを整備しオープンデータとして提供することで、都市計画や防災などへの利用を促しています。

デジタルツインと類似技術の違い

デジタルツインの最大の特徴は「現実データとリアルタイムで連携し続ける点」です。デジタルツインと類似技術の主な違いは、現実世界のデータとの連携方法や利用目的にあります。

混同されやすい各技術との違いについて、それぞれ詳しく解説します。

類似技術・概念主な利用目的現実データとの継続的な連携
デジタルツイン現実の状態把握・分析・予測あり(頻度は用途による)
シミュレーション条件変更による結果の予測・検証必須ではない
3Dモデル形状・空間の可視化必須ではない
バーチャルツイン製品・環境の再現・最適化あり(運用データなどを取り込み、現実の状態をリアルタイムで反映)
メタバース交流・共同作業・仮想体験必須ではない

デジタルツインとシミュレーションの違い

デジタルツインとシミュレーションの主な違いは、現実データとの継続的な連携が前提となるかどうかです。シミュレーションは現実データとの連携がなくても実行できますが、デジタルツインは現実の状態に合わせてモデルを更新します。

シミュレーションは、設定した条件に基づいて結果を予測・検証する手法です。たとえば生産ラインの速度や人員配置を変更した場合に、生産量がどのように変化するかを仮想的に確認できます。

一方デジタルツインは、現実の設備や環境から取得したデータを仮想空間上のモデルへ継続的に反映し、状態の把握や分析、予測に利用する仕組みです。

つまり設定した条件から結果を検証するのがシミュレーション、現実の状態を反映したモデルで分析・予測するのがデジタルツインです。

デジタルツインと3Dモデルの違い

デジタルツインと3Dモデルの主な違いは、現実データとの継続的な連携があるかどうかです。

3Dモデルは、設備や製品、建物などの形状・構造・位置関係を立体的に表現したデータです。対象物の外観や空間を把握しやすくなりますが、3Dモデル単体には、現実の状態を継続的に反映する仕組みはありません。

一方デジタルツインでは、3Dモデル上に設備の温度や稼働状況などを表示し、現実の状態を視覚的に確認できます。ただし、数式やデータベースなどで対象を表現することもできるため、3D表示は必須ではありません。

デジタルツインとバーチャルツインの違い

デジタルツインとバーチャルツインは、名称が異なるだけで同じ概念を指す場合と、異なる概念として区別される場合があります。用語を使用する団体や、企業によって位置づけが異なるためです。

デジタルツインの普及や相互運用性の向上を推進する業界団体「Digital Twin Consortium」ではバーチャルツインではなくデジタルツインを使うよう示しています。この場合、両者に機能上の違いはなく、名称が異なるだけです。

一方3D設計やシミュレーションのソフトウェアを提供する「Dassault Systèmes」では、バーチャルツインをデジタルツインより広範な概念として位置づけています。

デジタルツインとメタバースの違い

デジタルツインとメタバースは、いずれも仮想空間を活用する技術ですが、目的が異なります。

メタバースは、利用者が仮想空間へ参加し交流・共同作業・買い物・娯楽などを体験するための環境です。現実世界を再現する場合もありますが、現実のデータとの継続的な連携は必須ではありません。

一方デジタルツインは、現実の設備や環境の状態を把握・分析し、保守や業務改善などの判断に役立てることを目的としています。現実との継続的なデータ連携が前提となる点が、メタバースとの最大の違いです。

なお両者は組み合わせることもでき、メタバース上に現実の工場や都市を再現する際にデジタルツインの技術を活用することで、より精度の高いシミュレーションが可能になります。

デジタルツインの主な種類

デジタルツインの分類方法には複数の考え方があります。ここでは、デジタルツインが再現する対象や範囲に着目し、以下の3種類に分けて解説します。

デジタルツインの主な種類

  • 製品デジタルツイン:製品や部品の状態・性能を再現し、設計や保守に利用する
  • プロセスデジタルツイン:一連の工程や業務の流れを再現し、改善点を把握する
  • システムデジタルツイン:複数の設備やプロセスの関係を再現し、全体を最適化する

製品デジタルツイン

製品デジタルツインとは、特定の製品や部品を仮想空間上に再現する仕組みです。設計情報や製品に搭載したセンサーから得られる稼働データなどをモデルへ反映し、製品の状態や性能を把握します。

開発段階では、設計や使用条件を変更した場合の影響を仮想空間上で検証できるため、実物を製造する前に問題を発見しやすくなります。稼働後は、温度や振動などの変化から劣化の傾向を分析し、故障が起きる前に点検・部品交換の時期を検討することも可能です。

設計から製造・使用・保守までの情報をつなぐことで、品質向上や保守業務の効率化につながります。

こうした特徴から、自動車や航空機、産業機械など故障が安全性や稼働停止による損失に直結しやすい製品で利用されています。

プロセスデジタルツイン

プロセスデジタルツインとは、生産ラインや物流、業務手順など一連の作業の流れを仮想空間上に再現する仕組みです。

工程ごとの稼働状況や作業時間、設備・人員の配置などのデータを反映し、プロセス全体の動きをリアルタイムに可視化します。作業が滞っている工程を特定できるほか、特定の工程に人員を増やした場合や設備の稼働時間を延ばした場合に、生産量や待ち時間がどのように変化するかを検証できます。

実際の生産ラインや業務を止めずに改善策を事前検証できるため、現場で試行錯誤するコストや時間を削減可能です。

システムデジタルツイン

システムデジタルツインとは、複数の製品や設備、プロセスが連携するシステム全体を仮想空間上に再現し、状態の把握・分析・シミュレーションを行う仕組みです。

工場全体や物流ネットワーク、エネルギー供給網など複数の要素が相互に影響する仕組みに活用されます。たとえば一部の設備や工程を変更した場合に、システム全体の生産量や稼働状況へどのような影響が生じるかを検証可能です。

実際に変更する前に影響範囲を確認できるため、稼働停止や生産量の低下といったリスクを抑えられます。個別の製品や工程だけでは把握しづらい課題を発見し、運用改善や投資判断の精度を高める手段として活用されています。

デジタルツインを導入するメリット

デジタルツインを導入すると、現実のデータを反映したモデルを使って、設備や製品の状態を把握したり、条件変更による影響を事前に検証したりできます。

主に、以下のようなメリットが期待できます。

デジタルツインを導入するメリット

  • 製品開発や検証の期間・コストを削減できる
  • 設備の監視や故障予測ができる
  • 製品の品質や業務プロセスを改善できる
  • 事故やトラブルのリスクを抑えられる

製品開発や検証の期間・コストを削減できる

デジタルツインを活用すると、製品開発や検証にかかる期間とコストの削減が期待できます。

従来の製品開発では、試作品の製作と検証、設計変更を繰り返すため、材料費・加工費・検証費用・人件費がかかります。デジタルツインなら、設計や素材、使用条件を変えた場合の影響を仮想空間上で比較し、試作品を製作する前に問題点の洗い出しが可能です。

これにより設計の手戻りや試作回数を減らし、開発作業のスピードアップとコスト削減が期待できます。実物による検証が必要な場合も事前に設計案を絞り込めるため、材料費や検証費用を抑えながら、市場投入までの期間を短縮できます。

設備の監視や故障予測ができる

デジタルツインを導入すると、離れた場所から設備の状態を継続的に監視し、データに基づいて保守の必要性を判断できます。

設備に設置したセンサーから温度や振動、稼働時間などのデータをリアルタイムに収集し、仮想空間上のモデルへ反映します。また、収集したデータを正常時の数値や過去の傾向と比較することで、異常を早期に検知可能です。

検知結果に基づいて設備が停止する前に点検や部品交換を実施すれば、突発的な故障や長時間の稼働停止を防ぎやすくなります。緊急修理にかかる費用を抑え、生産停止による機会損失の削減にもつながります。

製品の品質や業務プロセスを改善できる

デジタルツインは、製品の品質向上や業務プロセスの改善にも役立ちます。

製品や設備のデータを継続的に分析することで、不具合が発生しやすい条件や作業が滞っている工程を特定しやすくなります。たとえば設備の稼働条件や人員配置を変更した場合の影響を仮想空間上で検証し、効果が見込める改善策を現場へ反映可能です。

製品の使用状況を設計の見直しに反映し、工程ごとの作業時間を生産計画の改善に役立てることも可能です。改善策を仮想空間上で事前に検証することで、現場での試行錯誤や変更後の手戻りを抑えられます。その結果、不良品や再作業、材料の廃棄を減らし、品質向上にかかるコストと時間の削減につながります。

事故やトラブルのリスクを抑えられる

デジタルツインを活用すると、設備の変更や危険を伴う作業を仮想空間上で検証し、事故やトラブルにつながる要因を事前に確認できます。

たとえば設備の配置や稼働条件を変更した場合の影響、災害や機器故障が発生した場合の対応などをシミュレーション可能です。現実の設備や作業員に影響を与えずに複数の条件を検証できるため、リスクの洗い出しと対策の検討を安全に進められます。

また設備データをリアルタイムに監視することで異常を早期に検知し、重大なトラブルが発生する前に対応できます。現場での点検・安全対策と組み合わせることで、より安全な運用が可能です。

デジタルツインの主な活用分野

デジタルツインは、設備や製品だけでなく生産工程や物流網、都市なども再現の対象にできるため、さまざまな分野で活用されています。

主な活用分野と用途は、以下のとおりです。

活用分野主な用途
製造業設備の監視・故障予測、生産工程の改善
建設業施工計画の検討、進捗状況の可視化
物流倉庫作業・在庫の可視化、配送計画の改善
建築・不動産建物・土地データの連携、維持管理やまちづくり
都市・防災3D都市モデルによる被害予測、都市計画の検討

製造業|生産設備の監視・効率化と故障予防

製造業では、主に設備の異常を予測する「予知保全」と、生産条件を見直す「工程改善」の2つの場面でデジタルツインが利用されています。

設備に取り付けたセンサーから温度や振動、稼働時間などのデータを収集し、仮想空間上のモデルへ反映することで、設備の状態や変化を遠隔からリアルタイムに把握可能です。故障の兆候を事前に把握できれば、計画的な点検や部品交換が可能になり、突発的な設備停止によるライン停止や損失を防ぎやすくなります。

また生産条件や工程を仮想空間上でシミュレーションすることで、現場へ影響を与えることなく改善策を検討・検証できます。設備停止による損失を抑えつつ、生産性や保守業務の効率を高められる点がメリットです。

出典:産業技術総合研究所「デジタルツインとは?」

建設業|施工計画の検討と施工管理の効率化

建設業では、施工計画の検討や施工状況の可視化、遠隔での施工管理などにデジタルツインが活用されています。

施工前に設計情報や測量データを3Dモデルへ反映すれば、施工手順や建設機械の配置・動線を仮想空間上で検証できます。作業同士の干渉や実行が難しい工程を事前に発見できるため、着工後の計画変更や手戻りを防ぎやすくなる点がメリットです。

施工中は現場から収集したデータをモデルへ反映し、実際の進捗と計画を比較できます。遅れや差異を早期に把握し人員・機械の配置や工程を見直すことで、工期の遅延や追加コストの発生を抑えられるのも魅力です。

施工計画の精度向上と遠隔管理を組み合わせることで、手戻りを防ぎながら、現地確認にかかる移動や人員の負担を軽減できます。

出典:国土交通省「省人化・省力化技術の利活用」

建設業で、デジタル技術を導入するメリットやDXが進みづらい理由、具体的な進め方については、以下の記事を参考にしてください。

物流|倉庫・配送業務の可視化と効率化

物流分野では、倉庫や配送業務の可視化と効率化にデジタルツインの活用が期待されています。主な用途は以下のとおりです。

  • 倉庫内の状況を可視化する:設備や在庫、作業状況などのデータから、作業の偏りや荷物の滞留が発生している場所を把握できる
  • 倉庫のレイアウトを改善する:保管場所や作業動線を変更した場合の影響を事前に検証し、移動距離や待ち時間を抑えられる配置を検討できる
  • 配送計画を見直す:車両の位置や配送状況などのデータを分析し、配送ルートや配車計画の変更、遅延原因の特定に役立つ

倉庫と配送の状況を一体的に把握することで、保管・荷役・配送の各工程にある無駄を発見し、物流全体の効率化につなげられます。

出典:国土交通省「物流分野のデジタル化施策」

建築・不動産|建物管理と都市開発の高度化

建築・不動産分野では、建物・土地・都市の情報をデジタル空間上で統合し、管理や開発に活用するデジタルツインの導入が進んでいます。

具体的には、建物の形状・材質・施工方法などを記録するBIM(建物情報モデリング)と、都市空間における建物や道路などを三次元で表現する3D都市モデルを、不動産IDを通じて連携させる取り組みが進められています。

これにより、設計・施工・維持管理に加え、建物の老朽化シミュレーションや災害リスクの可視化、不動産価値の評価など個別の建物を超えた都市単位での活用が可能です。

個別の建物だけでなく、土地や周辺環境を含めてデータを連携できる点が、建築・不動産分野における活用の特徴です。

出典:国土交通省『「建築・都市のDX」とは』

都市・防災|国土交通省のProject PLATEAU

都市計画や防災の分野では、国土交通省が推進する「Project PLATEAU」を通じて、3D都市モデルを活用した取り組みが進められています。

Project PLATEAUでは、建物や道路、地形などの都市データに災害情報を組み合わせることで、洪水による浸水範囲や被害の可能性を仮想空間上で可視化することが可能です。こうした分析結果は、防災計画・避難ルートの設計・公共施設の配置・都市開発の検討など行政の意思決定の材料として活用されます。

また3D都市モデルの構築には従来、航空測量やLiDARによる現地測量が必要でしたが、衛星画像とオープンデータをAIで解析する手法の検証も進んでいます。測量インフラが未整備な新興国においても低コストで都市デジタルツインを構築できる可能性があり、日本発の技術の国際展開が実現するかもしれません。

出典:国土交通省「衛星データによる都市デジタルツインの構築調査業務」

デジタルツインを導入する際の課題・確認事項

デジタルツインは、導入すること自体が目的ではなく設備や業務の課題解決につなげることが重要です。十分な効果を得るには、技術面だけでなく費用や人材、運用体制なども含めて検討しましょう。

導入前に確認しておきたい主な項目は、以下のとおりです。

デジタルツインを導入する際の課題・確認事項

  • 導入目的と期待する効果を明確にする
  • 費用対効果を検討する
  • 必要なデータとシステム連携を確認する
  • 現場での判断や実物による検証を組み合わせる
  • 専門人材と運用体制を確保する
  • セキュリティとデータ管理の対策を講じる
  • 小規模なPoCで効果を検証する
  • 導入後の効果測定の指標を設定する

導入目的と期待する効果を明確にする

デジタルツインを導入する際は、解決したい業務課題と期待する効果を明確にしましょう。目的が曖昧なままモデルを構築しても、実際の業務改善につながらず、投資対効果が得られないリスクがあります。

具体的には、以下のような形で目的を具体的な数値とともに言語化します。

  • 設備の突発的な停止件数を1年間で20%減らす
  • 生産ラインの稼働率を6ヶ月以内に85%から90%へ高める
  • 1台あたりの保守点検時間を60分から40分へ短縮する

数値はあくまで設定例です。自社の現状を基準に目標値と達成期限を定めることで、導入範囲や必要な機能を絞り込み、導入後の効果も測定しやすくなります。

費用対効果を検討する

デジタルツインの導入前には、必要な投資と期待できる効果を整理し、自社の投資基準を満たすか検討しましょう。主な項目は以下のとおりです。

項目主な内容
初期費用・センサー・通信環境の整備
・仮想モデルの構築
・既存システムとの連携
年間運用費・クラウド利用料
保守費
・セキュリティ対策費
・人件費
金銭的効果・設備停止による損失
・保守費
・不良品・廃棄材料
・人件費の削減
非金銭的効果・事故リスクの低減
・従業員の負担軽減
・判断の迅速化

効果を金額や時間に置き換える目的は、投資回収期間を算出し、導入の可否や対象範囲を判断するためです。投資回収期間は、簡易的に次の式で求められます。

投資回収期間 = 初期費用 ÷(年間の金銭的効果 - 年間運用費)

たとえば、初期費用が1,200万円で年間の金銭的効果が600万円、年間運用費が200万円の場合、投資回収期間は3年です。自社の投資基準より長い場合は、対象設備や機能を絞り段階的な導入を検討します。

必要なデータとシステム連携を確認する

デジタルツインの構築前には、データの取得方法や品質、管理状況を確認しましょう。不備があると、追加費用や導入の遅れ、分析精度の低下を招く可能性があります。

主な確認項目は以下のとおりです。

  • 必要なデータを既存設備から取得できるか
  • 欠損や重複などをデータクレンジングで修正できるか
  • 部門ごとに分散したデータを一元管理できるか
  • データの形式や更新頻度が既存システムと合っているか

不足するデータがある場合は、センサーの追加や設備改修が必要です。データ品質やサイロ化の問題も含めて事前に確認することで、構築後の追加対応やシステム連携のトラブルを防ぎやすくなります。

現場での判断や実物による検証を組み合わせる

デジタルツインを導入しても、現場での判断や実物を用いた検証を完全に代替できるわけではありません。

仮想モデルへ反映できるのは、センサーで取得したデータや事前に設定した条件の範囲に限られます。突発的な環境変化や作業員の行動、センサーでは把握できない設備の状態などすべての要因を再現することは困難です。

製品の安全性や設備の異常に関する重要な判断では、現場担当者による確認や実物を用いた試験も組み合わせましょう。デジタルツインは、現場の判断を置き換えるものではなく判断を支援する手段として位置づける必要があります。

専門人材と運用体制を確保する

デジタルツインを継続的に運用するには、データ分析やモデル構築、システム管理を担う専門人材と、部門を越えた協力体制が不可欠です。

技術部門に加えて、設備や業務に詳しい現場部門、既存システムを管理する情報システム部門などが協力して運用します。データの確認やモデルの更新、異常発生時の対応、システムの保守について、担当部門と責任範囲をあらかじめ決めておきましょう。

社内で専門的な知識やスキルをもつ人材をそろえられない場合は、構築や運用の一部を外部企業へ委託する方法もあります。現場担当者への教育も実施し、日常業務で無理なく利用を続けられる仕組みを整えましょう。

セキュリティとデータ管理の対策を講じる

デジタルツインは設備や業務に関するデータをネットワーク経由で収集・共有するため、導入時のセキュリティ対策が必須です。

不正アクセスや情報漏えいを防ぐため、主に次の対策を実施しましょう。

  • 利用者ごとにアクセス権限を設定する
  • 通信や保存データを暗号化する
  • 操作ログを保存・監視する
  • データを定期的にバックアップする

設備の制御システムと接続する場合は、サイバー攻撃が設備の停止や誤作動を招くリスクも考慮します。

収集したデータについては保存期間・利用範囲・管理責任者・削除方法などのルールを定めておきましょう。機密性の高いデータを扱う場合は、情報システム部門やセキュリティ担当部門との連携も検討してください。

小規模なPoCで効果を検証する

本格導入の前に対象を限定したPoC(概念実証)を実施し、実現可能性や効果を検証しましょう。

PoCで確認する主な項目は、以下のとおりです。

  • 必要なデータを取得できるか
  • 期待する精度の分析結果を得られるか
  • 現場で無理なく運用を続けられるか
  • 想定した費用に見合う効果が得られるか

実施前に検証期間や評価基準を定めておくことで、本格導入の可否を客観的に判断できます。

PoCで判明した技術面・運用面の課題を修正してから対象範囲を段階的に広げれば、本格導入後のトラブルや追加費用のリスクを抑えられます。

導入後の効果測定の指標を設定する

デジタルツインの効果を客観的に判断するには、導入目的に対応した評価指標を事前に設定する必要があります。たとえば、以下のような評価指標が挙げられます。

  • 設備の稼働率
  • 停止時間
  • 故障件数
  • 保守点検にかかる時間
  • 不良品率
  • 生産リードタイム

導入前の数値を記録しておき、導入後の結果と比較できる状態にしておきましょう。

効果測定では、設備の稼働率などの非財務指標だけでなく保守費用の削減額や売上変化などの財務指標もあわせて確認することが重要です。財務・非財務の両面から評価することで、経営層への説明材料としても活用できます。

「freee経営管理」では、freee会計の実績値を同期して予算と実績を分析でき、プランによっては非財務指標を組み合わせた分析も可能です。

デジタルツイン導入前後の費用や業績の変化を継続的に確認することで、運用方法の見直しや追加投資、対象範囲の拡大・縮小を判断しやすくなります。

まとめ

デジタルツインは、現実世界から取得したデータを仮想空間へ継続的に反映し、設備の監視や将来予測、業務改善などに役立てる技術です。

製造業や建設業・物流・防災などで活用が広がっており、開発期間・コストの削減や故障の予兆検知、安全性の向上などが期待できます。一方、導入には初期・運用費用のほか、データやモデルの品質・専門人材・既存システムとの連携・セキュリティ対策などの課題があります。

導入目的と効果測定の指標を明確にし、まずは対象を絞ったPoCで費用対効果を検証したうえで段階的に活用範囲を広げるのが成功の近道です。

よくある質問

デジタルツインとは簡単にいうと何ですか?

デジタルツインとは、現実の設備や製品、状態を仮想空間上のモデルにリアルタイムで再現する技術です。

センサーなどで取得したデータを仮想空間へ継続的に反映することで、設備の稼働状況を遠隔から確認したり、将来の変化を予測したりできます。単に外観を再現するのではなく、現実世界の状態を仮想空間と連動させ続ける点が特徴です。

デジタルツインの基本的な仕組みについては、記事内「デジタルツインとは」でもわかりやすく解説しています。

デジタルツインとシミュレーション・3Dモデルの違いは何ですか?

デジタルツインとシミュレーション・3Dモデルの違いは、現実世界のデータと継続的に連携しているかどうかです。

  • シミュレーション:設定した条件に基づいて結果を予測する手法
  • 3Dモデル:対象物の形状や外観を立体的に表現したデータ

どちらも、現実のデータと常に連携しているとは限りません。

一方デジタルツインは、現実から取得したデータを仮想空間へ継続的に反映し、リアルタイムでの現状把握や将来予測に活用します。設備の異常検知や生産ラインの最適化など、現実と仮想を常に同期させる用途に強みがあります。

詳しくは、記事内「デジタルツインと類似技術の違い」を参考にしてください。

デジタルツインはどのような業界で活用されていますか?

デジタルツインは、製造業・建設業・物流・建築・不動産・都市計画・防災など幅広い分野において、たとえば以下のような用途で活用されています。

  • 製造業:設備の監視や故障の予兆検知
  • 建設業:施工計画の検討や進捗管理
  • 物流業:倉庫内の作業や配送ルートの効率化

業界ごとの用途については、記事内「デジタルツインの主な活用分野」で詳しく紹介しています。

デジタルツインの欠点は何ですか?

デジタルツインの主な欠点は、以下のとおりです。

  • 精度がデータ品質に依存:収集データが不正確・不完全だと、分析や予測の精度が下がる
  • 導入・運用コスト:センサーやシステム構築、専門人材の確保に相応の費用がかかる
  • 既存システムとの連携:レガシーシステムとの統合に、技術的な障壁が生じるケースがある
  • セキュリティリスク:大量のデータを扱うため、不正アクセスや情報漏えい対策が欠かせない

欠点を踏まえたうえで、自社の課題と導入目的を明確にしてから検討を進めることが重要です。

導入前に確認したい課題については、記事内「デジタルツインを導入する際の課題・確認事項」で詳しく解説しています。

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