データサイエンティストとは、大量に蓄積されたデータを分析し、新しい商品やサービスの創出や業務プロセスの革新につなげる職種です。
ただし、仕事内容や必要なスキルは求人票の職種名だけでは判断できません。年収や将来性の情報も、どの統計にもとづく数値かによって解釈が異なるためです。
本記事では、データサイエンティストの仕事内容や似た職種との違い、必要なスキル、役立つ資格、年収を解説します。さらに「やめとけ」と言われる理由や、生成AIの普及によって仕事がどう変化しているのかも紹介します。
目次
- データサイエンティストとは?
- データサイエンティストの仕事内容
- 業務の責任者にヒアリングして分析の目標を決める
- データを加工しながらモデリングを行う
- 未知のデータ・新しいデータに対する汎化性能を検証する
- データサイエンティストと似た職種との違い
- データアナリストとの違い
- AIエンジニアとの違い
- データエンジニアとの違い
- データサイエンティストに必要なスキル
- SQLやPythonなどを使ってデータを扱うスキル
- 統計学や機械学習を使って分析するスキル
- ビジネス課題を分析できる問いに変えるスキル
- データサイエンティストに役立つ資格
- DS検定|データサイエンスの基礎知識を幅広く問う
- 統計検定2級|統計学の基礎知識を問う
- G検定|AI・ディープラーニングの基礎知識を問う
- データサイエンティストの年収
- データサイエンティストがやめとけと言われる理由
- 課題設定や関係者との調整も求められる
- 新しい知識を学び続ける負担がある
- 生成AI時代にデータサイエンティストの仕事はなくなるのか
- まとめ
- よくある質問
データサイエンティストとは?
データサイエンティストとは、大量のデータを分析し、新しい商品やサービスの開発、業務改善につなげる職種です。厚生労働省の職業情報提供サイトでも、データを活用して、経験や勘に頼っていた仕事の効率性や競争力を高める役割として説明されています。
分析そのものが目的ではなく、得られた結果を事業の意思決定や施策につなげることが重要です。
さらに近年は、AIの活用まで求められる領域が広がっています。経済産業省とIPAが2026年4月に改訂したデジタルスキル標準では、データサイエンティストに求められるスキルとして、AIの実装・運用やAIガバナンスなどが追加されました。
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストの仕事は、分析の目的を整理したうえで、データを使ってモデルを作成・検証する流れで進みます。
厚生労働省の職業情報提供サイトでは、主な業務として次の工程が挙げられています。
データサイエンティストの仕事内容
業務の責任者にヒアリングして分析の目標を決める
データ分析をはじめる前に、まず業務の責任者へヒアリングし「何を明らかにしたいのか」を整理します。
たとえば売上が伸び悩んでいる場合でも、原因を特定したいのか、今後の売上を予測したいのかによって必要なデータや分析方法は異なります。
そのため、分析を始める前に目的と利用できるデータを整理し、分析結果をどのような判断や施策につなげるのかを明確にすることが重要です。
データを加工しながらモデリングを行う
分析の目的と使うデータが決まったらデータを分析しやすい形に整え、予測や分類などに使うモデルを作成します。このように、データをもとにモデルを構築する作業をモデリングと呼びます。
実際には、データ加工とモデリングを順番に終わらせるわけではありません。データを整えてモデルを試し、結果を見ながら再びデータを調整する作業を繰り返します。
未知のデータ・新しいデータに対する汎化性能を検証する
モデルを作成したら、新しいデータでも正しく予測できるかを検証します。
学習に使ったデータで精度が高くても、実際の業務で同じように使えるとは限りません。そこで、モデルの学習に使っていないデータでも予測が大きく外れないかを確認します。実際の利用に近い条件で検証し、モデルを安定して使えるかを判断する工程です。
検証して実務で使えることを確認したら分析結果やモデルを関係者と共有し、施策や業務改善につなげていきます。
データサイエンティストと似た職種との違い
データサイエンティストと似た職種でも、主に担当する業務は異なります。たとえば、データ分析を中心に行う職種もあれば、AIの開発やデータ基盤の整備を担う職種もあります。
データアナリストとの違い
データアナリストとデータサイエンティストはどちらもデータを扱う職種ですが、担当する業務の範囲に違いがあります。
一般にデータアナリストは、データの集計や可視化、分析を通じて課題の発見や意思決定を支援する役割が中心です。一方でデータサイエンティストは、分析に加えてモデルの構築や検証、サービスへの実装まで担当する場合があります。
ただし、実際の業務範囲は企業によって異なります。求人を見る際は職種名だけで判断せず、集計や分析が中心なのか、モデル構築や実装まで含まれるのかを確認することが大切です。
AIエンジニアとの違い
AIエンジニアは、AIを使ったシステムや機能を開発する職種です。データをAIに学習させ、判定や予測などを行える仕組みを作ります。
データサイエンティストがデータを分析して事業に役立つ知見を導き出すのに対し、AIエンジニアはAIを実際に動かす仕組みの開発を主に担います。
ただし、両者の業務は完全に分かれているわけではありません。一般的な見解では、データサイエンティストをAIエンジニアに含める場合があるとされています。またIPAの『デジタルスキル標準』でも、データサイエンティストの役割にAIシステムの設計・実装・運用が含まれており、担当領域が重なることがあります。
データエンジニアとの違い
データエンジニアは、分析に使うデータを集めて整え、使いやすい状態に保つ職種です。データベースやデータ基盤の構築・運用を主に担当します。
データサイエンティストがデータを分析して知見を導き出すのに対し、データエンジニアは、その分析に必要なデータを収集・整理・管理する役割を担います。
データサイエンティストに必要なスキル
データサイエンティストには、データを扱う技術だけでなく、分析力やビジネス課題を整理する力も必要です。
データサイエンティストに必要なスキルは以下のとおりです。
データサイエンティストに必要なスキル
SQLやPythonなどを使ってデータを扱うスキル
データサイエンティストには、必要なデータを取り出し、分析しやすい形に整えるスキルが必要です。
その際に代表的に使われるのがSQLやPythonです。SQLはデータベースから必要な情報を抽出する際に、Pythonはデータの加工や分析、モデルの構築などに活用されます。
データサイエンティスト協会のスキルチェックリストver.6でも、見習いレベルの項目として、SQLの記述・実行や、Python・Rのコードを開発環境上で実行できることが挙げられています。
実務では、必要なデータが最初から分析しやすい状態で用意されているとは限りません。そのため、目的に応じて必要なデータを取得・加工し、分析できる状態に整える力が重要です。
統計学や機械学習を使って分析するスキル
データサイエンティストには、データの傾向を読み取り、目的に応じて予測や分類を行うスキルが必要です。
統計学は、データの傾向や関係性を読み解くための基礎です。一方で機械学習は、大量のデータからパターンを学習し、予測や分類に活用する技術を指します。
実際の分析では、目的に合った手法を選び、得られた結果が信頼できるかを確かめることも重要です。たとえば、予測精度が高く見えても特定のデータに偏った結果であれば、実際の業務ではうまく機能しない可能性があります。
そのため統計学や機械学習の手法を知っているだけでなく、分析の目的やデータの特徴に応じて適切な手法を選び、結果を正しく評価する力が求められます。
ビジネス課題を分析できる問いに変えるスキル
データサイエンティストには、現場の課題をデータで分析できる形に整理するスキルも必要です。
たとえば、売上を伸ばしたいという要望だけでは何を分析すべきかは決まりません。どの商品を対象にするのか、どの顧客層の売上を伸ばしたいのかなど、データを使って検証できる問いに置き換える必要があります。
データを分析する技術だけでなく、何を明らかにするべきかを整理する力も、データサイエンティストに欠かせないスキルです。
データサイエンティストに役立つ資格
データサイエンティストになるために、必須の資格はありません。
ただし資格の勉強を通じて、データ分析や統計、AIに関する基礎知識を体系的に学べます。学習範囲や理解度を確認する目安としても役立つでしょう。
代表的な資格は、次の3つです。
データサイエンティストに役立つ資格
DS検定|データサイエンスの基礎知識を幅広く問う
DS検定は、データサイエンスに必要な基礎知識を幅広く確認できる資格です。正式名称は「データサイエンティスト検定™ リテラシーレベル」で、一般社団法人データサイエンティスト協会が実施しています。
対象は見習いレベルで、受験資格に制限はありません。試験は全国の会場でパソコンを使って受験するCBT方式です。
出題範囲は、基盤、データサイエンス、データエンジニアリング、価値創造の4カテゴリです。協会のスキルチェックリストver.6に沿っており、データサイエンティストに必要な知識を体系的に学べます。
これから学習をはじめる人が、必要な分野を広く把握するのに役立つ資格です。
出典:データサイエンティスト協会「DS検定® ★とは」
統計検定2級|統計学の基礎知識を問う
統計検定2級は、統計学の基礎知識を体系的に確認できる検定です。一般財団法人統計質保証推進協会が実施し、日本統計学会が公式に認定しています。
出題範囲は大学基礎課程レベルで、データの記述・確率と確率分布・推定・仮説検定・線形モデルなどが含まれます。
試験は会場のパソコンで受験するCBT方式で、100点満点中60点以上が合格基準です。
統計学の基礎を幅広く学べるため、データ分析に必要な考え方や判断の土台を身につけたい人に役立ちます。
出典:統計質保証推進協会「統計検定2級」
G検定|AI・ディープラーニングの基礎知識を問う
G検定は、AIやディープラーニングに関する基礎知識を幅広く確認できる検定です。一般社団法人日本ディープラーニング協会が実施しており、受験資格に制限はありません。
出題範囲には、人工知能の基礎や機械学習、ディープラーニングに加えて、AIに関する法律や倫理、ガバナンスも含まれます。試験は多肢選択式です。
そのためAIや機械学習の仕組みだけでなく、活用するうえで必要なルールや注意点まで学べます。機械学習を扱うデータサイエンティストにとって、AI分野の全体像を理解するのに役立つ資格です。
出典:日本ディープラーニング協会「G検定とは」
データサイエンティストの年収
公的統計では、データサイエンティストだけを対象にした平均年収は公表されていません。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」には、賃金(年収)として611.9万円が掲載されています。ただし、これはデータサイエンティストだけの年収ではなく、データサイエンティストが分類される主な職業分類の統計をもとにした数値です。
そのため、611.9万円はデータサイエンティストの平均年収としてではなく、関連する職業分類の参考値として捉える必要があります。実際の給与は、経験やスキル、担当する業務、企業によって異なるため、個別の求人条件を確認しましょう。
データサイエンティストがやめとけと言われる理由
データサイエンティストが「やめとけ」と言われる背景には、分析以外の業務が多いことや、幅広い知識を学び続ける必要があることが挙げられます。実際の仕事では、データを分析するだけでなく、課題の整理や関係者との調整も必要です。
ここでは、データサイエンティストがやめとけと言われる理由を具体的に見ていきます。
データサイエンティストがやめとけと言われる理由
課題設定や関係者との調整も求められる
データサイエンティストがやめとけと言われる理由のひとつは、分析以外の業務にも多くの時間を使うためです。
たとえば仕事をすすめるうえで、何を分析すべきか、どのデータを使えるのか、分析結果を事業にどのように活かすのかについて関係者とすり合わせる必要があります。答えが決まっていない課題を整理する場面も少なくありません。
そのため、データ分析だけに集中できる仕事を想定していると、実際の業務とのギャップから負担を感じやすくなります。こうした業務範囲の広さが、やめとけと言われる背景のひとつです。
新しい知識を学び続ける負担がある
データサイエンティストがやめとけと言われるのは、新しい知識を継続的に学ぶ負担が大きいことも要因です。
データサイエンティスト協会が2025年11月に発表したスキルチェックリストver.6では、項目数が650から845へ増えました。また、同協会が2026年に実施した会員調査では、生成AIの普及によって業務内容や役割が変化し、求められるスキルや期待される領域が広がっていると報告されています。
そのため、実務をこなしながら新しい技術や知識を学び続ける必要があります。こうした継続的な学習を負担に感じる人にとっては、働き続けるハードルが高くなりやすいでしょう。
生成AIを扱う人材に求められるスキルは、以下の記事で解説しています。
生成AI時代にデータサイエンティストの仕事はなくなるのか
生成AIが普及しても、データサイエンティストという職種そのものがすぐになくなるとは考えにくいでしょう。一方で、生成AIの活用によって仕事内容や求められるスキルは変化していくと考えられます。
国際労働機関(ILO)は、生成AIの影響を受ける職業は多いものの、人による関与が引き続き必要なため、多くの仕事では消失よりも仕事内容の変化が起こる可能性が高いと報告しています。
データサイエンティストについても、米国労働統計局(BLS)は2025年から2035年にかけて雇用が35%増加すると予測しました。その理由のひとつとして、企業がAIを業務に組み込むなかで、AIやデータを活用し、業務改善や意思決定、新しい商品・サービスの開発を支援する人材が必要になることを挙げています。
ただし、これらの情報は、日本におけるデータサイエンティストの将来像を直接示すものではありません。生成AIによって職種そのものがなくなるというより、AIを活用しながら課題設定や分析、業務改善を進める役割へ変化していく可能性があるといえるでしょう。
生成AIの仕組みや種類、業務での使い方については以下の記事で解説しています。
出典:Bureau of Labor Statistics「Data Scientists : Occupational Outlook Handbook」
出典:International Labour Organization「Generative AI and jobs: A 2025 update」
まとめ
データサイエンティストは、データを分析するだけでなく、課題設定からモデルの構築・検証、実装まで幅広く担う職種です。
仕事では、SQLやPythonなどのプログラミング言語を使ってデータを扱う力に加え、統計学や機械学習の知識、ビジネス課題を分析できる形に整理する力が求められます。必須の資格はありませんが、DS検定・統計検定2級・G検定などは基礎知識を体系的に学ぶ手段として役立ちます。
生成AIの普及によって仕事内容は変化していますが、職種そのものがすぐになくなるとは考えづらく、今後はAIを活用しながら分析や業務改善を進める力も重要になるでしょう。
よくある質問
未経験からデータサイエンティストを目指せますか?
データサイエンティストは未経験からでも目指せます。
ただし、関連職種で経験を積んでから転職するケースが一般的です。厚生労働省の職業情報提供サイトでは、情報処理技術者やマーケティングリサーチャー、データエンジニア、AIエンジニアなどからの転職例が挙げられています。
必須の学歴や資格はありませんが、未経験の場合は、まずデータ分析やプログラミングの経験を積むとよいでしょう。
文系でもデータサイエンティストを目指せますか?
文系出身でもデータサイエンティストは目指せます。
ただし、業務では統計学やプログラミングなどの知識が必要です。出身分野にかかわらず、必要な技術を学ぶことが重要です。
参考文献
厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「データサイエンティスト」
IPA「DX推進スキル標準 データサイエンティスト編 ver.2.0」
IPA「デジタルスキル標準ver.2.0を公開」
データサイエンティスト協会「データサイエンティスト スキルチェックリスト ver.6」
