10億宣言とは、売上高10億円規模への成長を目指す中小企業を後押しするため、国が検討を進めている成長支援の仕組みです。
中小企業庁では、すでに売上高100億円を目指す企業を対象とした「100億宣言」を実施している一方で、売上高10億円規模への成長を目指す企業を支援する仕組みとして「10億宣言」が検討されています。
本記事では、現時点で公表されている情報をもとに、10億宣言の目的や想定される対象企業、支援内容、100億宣言との違いについてわかりやすく解説します。
目次
10億宣言とは
10億宣言とは、売上高10億円規模を目指す成長志向の中小企業について、経営者が成長目標や今後の取り組みを明確にし、その実現を政策面から支援する仕組みとして検討されているものです。
中小企業庁では、すでに「100億宣言」を通じて、売上高100億円を目指す中小企業の成長投資や経営基盤の強化を支援しています。一方で10億宣言は、それよりも小さな売上高10億円規模への成長を目指す企業を支援する仕組みとして検討中です。
現時点では制度の詳細は確定していませんが、売上目標を掲げるだけでなく生産性や収益性を高め、限られた人材でも付加価値を生み出せる経営への転換を促すことが重視されています。
10億宣言の目的
10億宣言の目的は、売上高10億円規模を目指す中小企業の成長を後押しし、生産性や収益力の向上につなげることです。設備投資やデジタル化、新事業への挑戦などを通じて、持続的な成長を目指す企業を支援する仕組みとして検討されています。
その背景には、人手不足や人口減少が進むなかで、中小企業の利益や付加価値を生み出す、いわゆる「稼ぐ力」を高める必要性が増していることがあります。限られた人材でより高い付加価値を生み出せるよう、成長意欲のある企業を投資・金融・人材などの面から後押しすることも10億宣言で重視されている考え方のひとつです。
また企業が将来の成長目標や課題を明確にすることで、必要な投資や資金調達、人材確保などの方針を整理しやすくなることも期待されています。
10億宣言の対象となる企業
10億宣言の正式な対象要件は、2026年9月時点では公表されていません。
検討段階の情報では、売上高1億円以上10億円未満程度の成長志向の中小企業を主な対象とし、売上高10億円規模への成長や収益力の向上を目指す仕組みが想定されています。
ただし、この売上高区分や企業要件が正式制度でそのまま採用されるとは限りません。対象となる企業規模や申請条件、宣言内容などは、制度開始時に公表される正式な資料を確認する必要があります。
出典:中小企業庁「令和9年度 中小企業・小規模事業者関係 概算要求等ポイント」
10億宣言で想定されている支援内容
10億宣言では、売上高10億円規模への成長を目指す企業に対し、成長に必要な経営資源を確保できるよう複数の支援策を組み合わせる方向で検討が進められています。
現時点では正式な制度内容や利用条件は確定していませんが、以下の投資・金融・経営基盤の強化などが論点として挙げられています。
10億宣言で想定されている支援内容
以降で詳しく解説します。
投資支援|設備投資や事業拡大への支援
10億宣言では、企業が成長するために必要な設備投資や事業拡大を後押しする投資支援が検討されています。
売上規模を拡大するには、生産設備の増強や省力化、新事業への進出、販路拡大などまとまった投資が必要になる場合も少なくありません。こうした成長投資を後押しするため、既存の補助金や支援制度の活用によってどのような役割を果たすかについても今後の検討課題として挙げられています。
中小企業庁でも、中小企業の成長に向けた設備投資や新市場への進出、省力化などを支援する各種補助制度を実施しています。 ただし10億宣言とどの補助金が具体的に連動するかは、今後の正式な制度設計も確認が必要です。
金融支援|資金調達や金融機関との連携を支援
成長に向けた設備投資や事業拡大には、継続的な資金調達が欠かせません。そのため10億宣言では、金融機関との連携を通じて企業の成長を後押しする仕組みが検討されています。
中小企業庁の検討会では、「100億宣言」で金融機関の継続的な関与・支援を得る仕組みを設けていることに触れ、10億宣言についても同様のメカニズムを検討する方針が示されています。
企業が成長目標や投資計画を明確にし金融機関と共有することは、必要な資金や返済計画について具体的に協議するうえでも重要です。資金調達だけでなく金融機関と継続的に連携しながら成長を目指すことが、10億円規模への事業拡大を進めるうえでのポイントとなります。
ソフト支援|経営・組織体制の強化の支援
売上高10億円規模を目指すには、設備や資金だけでなく経営管理や人材、組織体制の整備も欠かせません。そのため10億宣言では、経営管理や組織体制などソフト面の支援にあたる論点も挙げられています。
具体的には、経営計画の策定や人材の確保・育成、組織体制の見直し、経営管理の高度化などが重要です。事業規模が拡大すると、経営者個人の判断や対応に依存する体制では限界が生じやすくなります。役割分担や管理体制を整え、組織として事業を運営できる状態へ移行することが成長の土台になります。
中小企業庁の検討でも経営力や組織力を高める支援の必要性が示されているように、10億円規模への成長を目指す企業にとっては、資金面とあわせて継続的に事業を拡大できる経営体制を整えることが重要です。
10億宣言と100億宣言の違い
10億宣言と100億宣言はいずれも中小企業の成長を後押しする取り組みですが、対象となる企業の成長段階や目標とする売上規模などに違いがあります。
| 項目 | 10億宣言 | 100億宣言 |
|---|---|---|
| 制度の状況 | 検討段階 | すでに運用中 |
| 目指す売上規模 | 売上高10億円規模 | 売上高100億円 |
| 対象企業 | 売上高10億円規模への成長を目指す中小企業を想定 | 原則として売上高10億円以上100億円未満の中小企業 |
| 主な位置づけ | 比較的早い成長段階にある企業を後押しする仕組み | すでに一定規模まで成長した企業のさらなる飛躍を後押しする制度 |
| 支援の方向性 | 投資・金融・経営基盤の強化などを検討 | 設備投資や経営者ネットワークなどの支援策と連携 |
100億宣言はすでに制度化されている一方、10億宣言は2026年9月時点で検討段階です。そのため、10億宣言の対象要件や具体的な支援内容については今後変更される可能性があります。
10億宣言を活用するメリット
10億宣言が制度化されれば、企業が売上高10億円規模への成長を目指すうえで必要な投資や経営基盤の整備を進めるきっかけになります。
とくに設備投資や資金調達、組織体制の整備などは、事業規模を拡大する過程で重要になるポイントです。10億宣言を通じて成長目標や具体的な取り組みを整理することで、自社に必要な経営資源を明確にしやすくなります。
以降では、10億宣言を活用するメリットについて以下の3つを紹介します。
10億宣言を活用するメリット
成長に必要な投資を進めやすくなる
売上高10億円規模への成長を目指すには、生産設備の増強や省力化、デジタル化、新事業への進出などへの投資が必要です。10億宣言では、こうした成長投資を後押しする支援策との連携が検討されています。
制度化されれば、企業は自社の成長計画に沿って、補助金や各種支援制度を活用しながら投資を進められる可能性があります。
また宣言に向けて投資の目的や必要額、実施時期などを整理することは、経営判断の精度を高めるうえでも有効です。限られた経営資源をどこに配分するかを明確にし、成長につながる投資を計画的に進めやすくなるでしょう。
経営基盤の強化につながる
企業が成長するためには、売上を伸ばすだけでなく事業規模の拡大に対応できる経営体制を整えることが重要です。従業員数や取引先が増えると、これまで経営者個人の判断で対応できていた業務でも役割分担や管理体制の整備が求められます。
10億宣言に向けて成長目標や経営課題を整理することで、人材配置や業務分担、収益構造、組織体制などを見直す機会になります。自社の強みだけでなく成長を妨げている課題も把握しやすくなるため、優先的に改善すべきポイントを明確にできるでしょう。
こうした見直しを重ねることで、特定の経営者や担当者に業務が集中する状態から、組織として継続的に事業を運営できる体制への移行を進めやすくなります。売上規模の拡大とあわせて、安定した経営基盤を構築できる点もメリットです。
金融機関などから支援を受けやすくなる
設備投資や新規事業への進出には、自己資金だけでなく金融機関からの融資など外部資金を活用する場面もあります。その際、金融機関に対して将来の事業計画や資金の使い道、返済の見通しなどを具体的に説明できることが重要です。
10億宣言に向けて成長目標や投資計画を整理しておけば、自社が今後どのように事業を拡大していくのかを金融機関と共有しやすくなります。
また金融機関との関係は、一度の融資で終わるものではありません。事業の進捗や経営状況を継続的に共有することで、今後の投資や資金需要について相談できる関係を築きやすくなります。成長過程で必要となる資金や支援について、早い段階から連携できることもメリットになります。
10億宣言に向けて企業が準備しておきたいこと
10億宣言の正式な要件や手続きはまだ確定していませんが、売上高10億円規模への成長を目指すのであれば、自社の目標や経営課題をあらかじめ整理しておくことが重要です。
主に準備しておきたいことは、次の3つです。
10億宣言に向けて企業が準備しておきたいこと
これらを整理しておくことで自社の現状と今後必要な取り組みが明確になり、制度内容が公表された際にも対応しやすくなります。以下では、それぞれのポイントを詳しく解説します。
自社の成長目標や事業計画を整理する
まずは、売上高10億円規模に向けて、どのように事業を成長させるのかを整理することが重要です。単に売上目標を設定するだけでなく、どの商品・サービスを伸ばすのか、新たな市場へ進出するのか、既存事業を拡大するのかなど、成長の道筋を具体化します。
あわせて目標達成までの期間や必要な投資、人材、資金についても整理しておくと、事業計画の実現性を確認しやすくなります。
また現在の事業にどのような課題があるのかを把握することも必要です。成長を妨げている要因を明確にし優先順位をつけて取り組むことで、限られた経営資源を効果的に配分できます。
収益性や生産性を把握する
売上高を拡大するだけでは安定した成長にはつながりません。売上の増加に伴ってコストも大きく増えれば、利益が十分に残らない可能性があるためです。
そのため売上高や利益率、人件費、原価などの数値を確認し、自社がどの事業や商品から利益を生み出しているのかを把握しておくことが重要です。部門別や商品別に収益性を確認すれば、今後重点的に投資すべき分野も判断しやすくなります。
あわせて従業員一人あたりの売上高や付加価値、業務にかかる時間などを確認し、生産性の改善余地を探ることも有効です。売上拡大と収益性・生産性の向上を両立できる経営体制を整えることが、持続的な成長につながります。
金融機関との連携体制を整える
事業規模の拡大には、設備投資や新規事業、人材採用などでまとまった資金が必要になる場合があります。そのため成長を目指す段階から金融機関との関係を築いておくことも重要です。
自社の経営状況や成長目標、今後の投資計画を定期的に共有しておけば、資金が必要になった際にも具体的な相談を進めやすくなります。融資を申し込む直前だけではなく、日頃から事業の状況を説明しておくことがポイントです。
また必要となる資金額や調達時期、返済の見通しをあらかじめ整理しておけば、無理のない資金計画を立てやすくなります。成長投資を継続していくためにも、金融機関を資金調達先としてだけではなく事業計画を共有するパートナーとして連携できる体制を整えておきましょう。
まとめ
10億宣言は、売上高10億円規模への成長を目指す中小企業を後押しする仕組みとして、中小企業庁が検討を進めている取り組みです。
成長に必要な設備投資や資金調達、経営・組織体制の強化などを支援する方向で検討されており、企業にとっては、自社の成長目標や課題を整理するきっかけにもなります。
一方で2026年9月時点では、対象要件や開始時期、具体的な支援策などは正式に確定していません。売上高10億円規模への成長を目指す企業は、事業計画や収益性、生産性、資金計画などを整理しながら、今後の中小企業庁の発表を確認しておくことが重要です。
よくある質問
10億宣言はいつから始まりますか?
2026年9月時点では、10億宣言の正式な開始時期は公表されていません。中小企業庁では「10億宣言」の仕組みについて検討を進めていますが、申請受付の開始時期や具体的な手続きはまだ明らかになっていない状況です。
今後、制度の詳細が決まり次第中小企業庁などから案内されると考えられるため、最新の公表資料を確認しましょう。
10億宣言の対象となる売上高はいくらですか?
10億宣言の正式な売上高要件は、2026年9月時点では公表されていません。
中小企業庁の検討資料では、企業の売上規模を「1億円〜10億円」などの区分で整理しており、売上高10億円規模への成長を目指す企業を支援する方向性が示されています。
ただし「売上高1億円以上10億円未満」がそのまま10億宣言の正式な対象要件になると決まったわけではないため、売上高の下限や企業規模などは今後公表される制度要件を確認する必要があります。
10億宣言ではどのような補助金を利用できますか?
2026年9月時点では、10億宣言を要件とする補助金や宣言企業専用の補助制度は正式に公表されていません。
中小企業向けには、新事業進出や設備投資、省力化、デジタル化・AI導入などを支援する既存の補助制度があります。中小企業庁の資料でも売上規模や企業の課題に応じた複数の補助制度が整理されています。
ただし、これらの補助金が10億宣言と直接連動するかどうかは現時点では確定していません。利用を検討する際は、10億宣言の正式な制度内容と各補助金の公募要領をあわせて確認することが重要です。
