副業受け入れとは、企業が外部の専門人材を副業・兼業として自社に迎え入れる、または自社社員の副業を社内制度として許可・承認することを指します。人手不足の解消やイノベーション創出の手段として注目されている取り組みですが、同時に契約や労務管理の注意点を押さえることが重要です。
本記事では、副業受け入れのメリットや具体的な手順、注意点までわかりやすく解説します。
目次
- 企業における「副業受け入れ」とは
- 外部の副業・兼業人材を自社に受け入れるパターン
- 自社社員の副業や兼業を解禁・許可するパターン
- 外部から副業人材を受け入れるメリット・デメリット
- 主なメリット
- 主なデメリット・課題
- 外部から副業人材を受け入れる具体的な手順
- 1.切り出す業務と必要なスキルセットの明確化
- 2.契約形態の選定
- 3.適切なマッチングサービス・プラットフォームの選定
- 4.面談・契約締結
- 5.オンボーディング
- 自社社員の副業解禁を行うメリット・デメリット
- 主なメリット
- 主なリスク・懸念点
- 自社社員の副業を許可する際の進め方
- 1.副業受け入れの目的と方針の明確化
- 2.就業規則の改定と届出
- 3.副業申請・承認プロセスの構築
- 4.労働時間・健康管理の体制整備
- 5.全社・社員向けのアナウンスと研修実施
- 副業受け入れで押さえるべき注意点
- 業務委託契約と雇用契約の区分・実態
- 労働時間の通算ルール
- 秘密保持(NDA)・競業避止義務の取り決め
- 知的財産権の帰属
- 労災保険の適用ルール
- 副業受け入れを成功させるポイント
- 業務の成果物や目標を定量的に可視化する
- コミュニケーションツールやタスク管理ツールを導入する
- 受け入れ側の社員・部署の理解促進と体制づくりを行う
- まとめ
- フリーランス・業務委託先への発注を効率化する方法
- よくある質問
企業における「副業受け入れ」とは
近年、働き方改革や慢性的な人手不足を背景に、副業受け入れに取り組む企業が急速に増えています。
副業受け入れには、大きく分けて「外部人材の受け入れ」と「自社社員の副業解禁」の2つのパターンが存在します。まずはこの2つの違いを理解しましょう。
外部の副業・兼業人材を自社に受け入れるパターン
1つ目は、他社で本業を持つ優秀な人材やフリーランスを、副業・兼業という形で自社の業務に受け入れるパターンです。
主に業務委託契約を締結し、ピンポイントの課題解決やプロジェクト単位で協力を仰ぐケースが多く見られます。自社でフルタイム雇用することが難しいハイスペックな人材を、短時間や週数日といった単位で活用できる点が大きな特徴です。
自社社員の副業や兼業を解禁・許可するパターン
2つ目は、自社で雇用している社員が他社で副業すること、または個人事業を行うことを制度として認め、受け入れるパターンです。「社内での副業容認」や「副業制度の導入」とも呼ばれます。
従来は就業規則で副業を全面禁止する企業が一般的でしたが、社員のキャリア自律やスキルアップ、離職防止を目的に、届出制や許可制を導入して受け入れる企業が増えています。
この背景には、政府(厚生労働省)が2018年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、モデル就業規則からも副業禁止の規定を削除したことも挙げられます。さらに2020年・2022年のガイドライン改定により、企業に対して副業を認めているか否か、認めている場合はその条件等の情報開示を推奨するなど、国を挙げた推進体制が強化されています。
企業側にとっても、労働人口の減少に伴う採用難を背景に、従来の正社員雇用にこだわらない柔軟な組織設計が重要視されているといえるでしょう。
外部から副業人材を受け入れるメリット・デメリット
外部の副業人材を活用することは、不足するリソースの補填にとどまらない多くのメリットをもたらします。一方で、雇用契約とは異なる関係性だからこそ生じるデメリットや注意点もあります。
主なメリット
即戦力となるプロフェッショナル人材の確保
採用市場で獲得競争が激しい「DX・ITエンジニア」「Webマーケター」「新規事業開発者」など、高度な専門知識を持つ人材をスピーディーに確保できます。
採用コスト・人件費の最適化
正社員として年収数百万円〜1,000万円以上で採用することが難しくても、月数時間〜数十時間分の業務委託費で活用できるため、人件費や固定費のリスクを大幅に抑えられます。
社内になかった知見やイノベーションの創出
他社や異業界で成果を出しているプロフェッショナル人材が入ることで、既存の社員にはない視点やノウハウが持ち込まれ、業務改善や新施策の立案が加速します。
主なデメリット・課題
社内業務・カルチャーのキャッチアップの難しさ
稼働時間が限られているため、自社の業界ルールや社内ツール、業務フローに慣れてもらうまでに時間がかかる場合があります。
社外秘・情報漏洩リスク
外部の第三者に自社のデータや顧客情報を取り扱わせるため、情報管理やセキュリティレベルの徹底が欠かせません。
稼働時間や対応範囲の制限
副業人材には本業があるため、平日の日中帯にリアルタイムで連絡が取れないケースや、突発的な緊急対応への拘束が難しいといった制約があります。
外部から副業人材を受け入れる具体的な手順
外部の副業人材をスムーズに受け入れ、最大のパフォーマンスを発揮してもらうためには、計画的なステップに沿って進めることが大切です。
1.切り出す業務と必要なスキルセットの明確化
まずは、どの業務を・どのレベルのスキルを持つ人に・どれくらいの期間・稼働量で任せたいのかを言語化します。
マーケティング全般をお願いしたいといった曖昧な依頼ではなく、「自社オウンドメディアの施策立案と記事構成の作成(月20時間程度)」のように、具体的なタスクと期待する成果(ゴール)を定義することが重要です。
2.契約形態の選定
副業人材との契約は、原則として業務委託契約(準委任契約または請負契約)を結ぶのが一般的です。
時間拘束や指揮命令を行わず成果物や業務遂行に対して対価を支払う場合は業務委託契約、自社の指揮命令下に置いてシフト管理等を行う場合は雇用契約(パート・アルバイト等)を選択します。
実態と契約形態が乖離すると、偽装請負とみなされるリスクがあるため注意しましょう。
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偽装請負とは?判断基準や発覚した場合の罰則などを解説
3.適切なマッチングサービス・プラットフォームの選定
副業人材を募集・探す手法として、近年は副業特化型の求人サイトやマッチングプラットフォーム、あるいはリファラル(社員の紹介)を活用するのが効率的です。
自社が求めるスキル層が多数登録しているプラットフォームを選びましょう。
4.面談・契約締結
応募者との面談では、スキルや過去の実績だけでなく、本業の稼働状況・副業に割ける時間・本業先での副業許可の有無を必ず確認します。
合意に至った場合は、業務委託契約書とともに、情報漏洩を防ぐための秘密保持契約(NDA)を締結しましょう。
5.オンボーディング
受け入れ初期は、社内ツールのアカウント発行や、初期レクチャー(オンボーディング)を丁寧に行います。
また、週1回の定例ミーティングや、テキストチャットでの報連相ルールを定めておくことで、認識のズレを防ぎ業務を円滑に進められます。
自社社員の副業解禁を行うメリット・デメリット
次に、自社社員の副業を認める(解禁する)場合のメリット・リスクについて解説します。社員の働き方の選択肢を広げることは、企業側にも多くの経営的メリットをもたらします。
主なメリット
社員のスキルアップ・成長
他社での実践経験や新しい技術の習得を通じて、自社内だけでは得られないスキルや視点を身につけて帰ってくるため、本業のパフォーマンス向上が期待できます。
優秀な人材の離職防止・エンゲージメント向上
やりたいこと(副業)と安定した本業を両立できる環境を作ることで、キャリア形成を理由とした優秀な社員の退職を防ぐことができます。
採用面でのブランディング強化
副業OK・柔軟な働き方を推進している企業として求職者にアピールできるため、採用市場での魅力的・先進的な企業イメージの確立につながります。
主なリスク・懸念点
過重労働による健康障害や本業への支障
本業の後に副業を行うことで長時間労働となり、睡眠不足や体調不良を引き起こして本業のパフォーマンスが低下する恐れがあります。
競業避止義務・機密情報の流出リスク
ライバル企業での副業や、自社のノウハウ・顧客データが外部に流出してしまうリスクが存在します。
労働時間管理の煩雑化
他社でも雇用契約を結んで副業する場合、自社と副業先の労働時間を合算して管理・計算する必要が生じます。
自社社員の副業を許可する際の進め方
自社社員の副業を安全かつ円滑に解禁するためには、社内ルールの制定と手続きのシステム化が不可欠です。以下の手順で進めていきましょう。
1.副業受け入れの目的と方針の明確化
なぜ自社で副業を解禁するのかという目的を経営層・人事担当者間で固めます。
たとえば「社員の成長支援」「スキル還元」「離職防止」など目的を明確にし、どこまでの副業を認めるか(同業他社はNG、個人事業主ならOKなど)の基本方針を決定します。
2.就業規則の改定と届出
厚生労働省のモデル就業規則を参考に、自社の就業規則を改定します。
原則として副業を容認しつつも、例外的に禁止・制限できる事由(例:本業に支障が出る場合、自社の秘密情報が漏洩する恐れがある場合、自社の信用を傷つける場合、競業にあたる場合など)を明記します。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、労働基準監督署への届出も必要です。
3.副業申請・承認プロセスの構築
社員が副業を始める際の手続きとして、事前許可制もしくは届出制かを定めます。
申請書には「副業先の名称」「業務内容」「契約形態(雇用または業務委託)」「予定される稼働時間・曜日」などを記載させ、内容に問題がないかを評価・承認するワークフローを構築しましょう。
4.労働時間・健康管理の体制整備
副業によって過重労働にならないよう、定期的な面談やストレスチェックの対象とするなど、健康配慮義務を果たす体制を整えます。とくに雇用契約による副業の場合は、労働時間の把握方法を定めておきます。
5.全社・社員向けのアナウンスと研修実施
制定した副業ルールや申請手続きについて、社内周知を行います。必要に応じて、情報漏洩、確定申告の手続き、体調管理といった副業を行う際のリスクに関する社員向け研修を実施するとより効果的です。
副業受け入れで押さえるべき注意点
副業受け入れを運用するにあたり、もっとも注意すべきなのが法務・労務上のコンプライアンスリスクです。主要なポイントを解説します。
業務委託契約と雇用契約の区分・実態
外部の副業人材を「業務委託契約」で受け入れる際、実際の働き方が企業の指揮命令下にあると、実質的に「労働者(雇用関係)」とみなされるリスクがあります。いわゆる偽装請負問題です。
業務委託の場合は、成果物や業務内容を提示した上で、実施方法や時間配分は原則として本人の裁量に委ねる必要があります。
労働時間の通算ルール
自社社員が他社で雇用契約(パート・アルバイト等)を結んで副業する場合、労働基準法第38条に基づき、自社と他社の労働時間が合算(通算)されます。
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える時間については、後から契約を結んだ企業または合意内容に応じた企業が割増賃金(残業代)を支払う必要があります。
ただし、副業先が業務委託契約や個人事業主である場合は、労働基準法の労働時間通算ルールの対象外となります。
なお、労働時間の通算管理が複雑になることを防ぐため、厚生労働省のガイドラインでは「管理モデル」という枠組みが導入されています。これは、あらかじめ自社での労働時間と副業先での労働時間の上限(例:本業8時間+副業2時間など)を設定しておき、その範囲内であれば実労働時間の通算管理を簡略化できる仕組みです。
秘密保持(NDA)・競業避止義務の取り決め
機密情報の漏洩を防ぐため、受け入れ時または副業許可時に誓約書や秘密保持契約(NDA)を交わします。
また、競合他社での副業や、自社の顧客データを活用した類似サービスの提供などを禁止する競業避止規定を正しく設定しておくことが重要です。
知的財産権の帰属
外部の副業人材が作成した成果物の著作権や知的財産権が、どちらに帰属するのかを契約書上で明確に定義します。
原則として「納品および対価の支払完了をもって、著作権(著作権法第27条および第28条の権利を含む)を自社に譲渡する」旨を記載しておきましょう。
労災保険の適用ルール
2020年9月の労災保険法改正により、副業・兼業をしている労働者の労災認定ルールが整備されました。
現在では、本業と副業の双方の負荷・労働時間を合算して労災認定の判断が行われます。また、給付額の計算も両方の賃金を合算した額を基礎として算出されるため、万が一の事故の際にも労働者が保護されやすくなっています。
副業受け入れを成功させるポイント
制度や契約を整えるだけでなく、現場で副業人材がスムーズに機能するための運用ノウハウをご紹介します。
業務の成果物や目標を定量的に可視化する
副業人材は稼働時間が限られているため、何をどこまでやれば成功なのかという期待値を数値(KPIや成果物の定義)で明確に定めることが重要です。目標が曖昧だと、双方の満足度が低下する原因になりかねません。
コミュニケーションツールやタスク管理ツールを導入する
メールのみのやり取りでは、スピード感の欠如や認識の不一致が起こりがちです。チャットツールやタスク管理・ナレッジ共有ツールを導入し、十分な非同期コミュニケーション環境を整えましょう。
受け入れ側の社員・部署の理解促進と体制づくりを行う
現場の社員が、「外部から来た副業の人にどう接すればいいかわからない」「自分たちの仕事が奪われるのでは」と不安を感じてしまうと、受け入れはうまくいきません。
事前に受け入れの目的や役割分担を社内に共有し、既存社員と副業人材が相互に協力し合える体制づくりに努めましょう。
まとめ
副業受け入れは、人手不足に悩む企業にとって即戦力人材を獲得する有効な手段であり、自社社員の成長やエンゲージメントを高める施策です。
しかし、契約トラブルや情報漏洩、過重労働といったリスクを回避するためには、明確なルール設定や適切な契約書の締結、労働時間・健康管理の体制構築が欠かせません。
自社の課題や目的に合わせて、まずは切り出しやすい業務の整理や、就業規則の見直しから取り組んでみてはいかがでしょうか。
フリーランス・業務委託先への発注を効率化する方法
フリーランスや業務委託先との取引が多い企業にとって、手間がかかるのが発注業務です。
一口に発注業務といっても、契約や発注、請求など対応すべき作業は多岐にわたり、管理が行き届かないケースがあります。たとえば、法令にもとづく適切な発注ができていなかったり、請求書の提出期日が守られなかったり、請求書の不備で差し戻しが発生したりなどの課題が挙げられるでしょう。
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発注に関わる手続きや取引情報を一元管理
クラウド上で契約完了
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発注対応や業務進捗を可視化
発注書の作成・送付は、フォーマットに業務内容や報酬、納期などを入力するだけで完了します。
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正確な請求管理を実現
発注業務でもっとも忘れてはならないのが、請求管理です。報酬の支払い漏れや遅延は企業の信用に関わるため、情報の一元管理によって正しく効率的に行う必要があります。freee業務委託管理ならフリーランスや業務委託先が請求書を発行する際も、ワンクリックで発注書に連動した請求書を作成可能。請求書の回収状況が一覧で確認できるほか、請求処理に関する上長や経理担当者の承認作業もクラウド上で行えます。
支払明細書の発行も可能
確定申告に関連して、フリーランスや業務委託先ごとに取引内容を確認できる支払明細書を発行できます。また、必要に応じて税務署提出用の支払調書をPDFでダウンロードしたり、メールで送付したりすることも可能です。
法令への対策が万全
近年、発注側の企業がフリーランスや業務委託先に対して優越的地位を濫用するリスクを防ぐため、下請法やフリーランス保護新法(2024年11月1日施行予定)にもとづく適切な発注対応が求められています。また、インボイス制度や電子帳簿保存法の要件を満たす書類の発行・保存も不可欠です。
こうした法令に反する対応を意図せず行ってしまった場合も、発注側の企業に罰則が科される可能性があるため、取引の安全性を確保する必要があります。freee業務委託管理なら既存の法令はもちろん、法改正や新たな法令の施行にも自動で対応しているため、安心して取引を行うことができます。
カスタマイズ開発やツール連携で運用しやすく
業務委託管理システムを導入する際は、発注業務の担当者が使いやすい環境を整えることも欠かせません。freee業務委託管理は、ご希望に応じて、オンプレミスとの連携や新たな機能の開発などのカスタマイズも可能です。また、LINE・Slack・Chatwork・freee・CloudSign・Salesforceなど、各種ツールとの連携もできます。
より詳しくサービスについて知りたい方は、無料ダウンロード資料「1分で分かるfreee業務委託管理」をぜひご覧ください。
よくある質問
副業の受け入れとは?
副業の受け入れとは、企業が外部の専門スキルを持つ人材を副業・兼業として自社に迎え入れること、または自社の社員が他社で副業することを制度として認め、許可・管理することです。人材不足の解消や自社社員のキャリア開発、イノベーション創出の手段として注目されています。
詳しくは、記事内「企業における『副業受け入れ』とは」で解説しています。
外部の副業人材を受け入れるメリットは?
外部の副業人材を受け入れるメリットは、採用市場で希少なハイスペック人材を迅速に獲得できる点です。正社員雇用と比べて採用費や人件費などの固定費を大幅に抑えつつ、他社で培った高度な専門知見やノウハウを自社の業務に取り入れられるメリットがあります。
詳しくは、記事内「外部から副業人材を受け入れるメリット・デメリット」をご覧ください。
自社社員の副業解禁を行うメリットは?
自社社員の副業解禁を行うメリットは、社員が他社で新たなスキルや視点を習得し、本業のパフォーマンス向上につながる点です。また、柔軟な働き方を認めることで優秀な人材の離職を防ぎ、社員の成長を支援する企業として採用ブランディングの強化にもつながります。
詳しくは、記事内「自社社員の副業解禁を行うメリット・デメリット」をご覧ください。
