人事管理の基礎知識

コンプライアンス研修とは?目的やテーマ8選、実施方法・流れを解説

監修 涌井 好文 社会保険労務士

コンプライアンス研修とは?目的やテーマ8選、実施方法・流れを解説

コンプライアンス研修とは、従業員が法令や社内ルール、企業倫理などを理解し、違反や不正を防ぐために行う研修です。

研修で扱う内容は、ハラスメント防止や情報セキュリティ、SNS利用、知的財産など多岐にわたります。自社で実施する際は、従業員の理解度や自社の課題を把握したうえでテーマと実施方法を決め、研修後の結果を次回の内容に反映することがポイントです。

本記事では、コンプライアンス研修の目的や必要性、主なテーマ、テーマの探し方、実施方法、研修を進める流れを解説します。

目次

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コンプライアンス研修とは

コンプライアンス研修とは、従業員が法令や社内ルール、企業倫理・社会規範を理解し、業務で適切に判断・行動するための研修です。

コンプライアンスは、法律を守ることだけを指すものではありません。企業として守るべき社内規程や、社会から求められる倫理・責任も含まれます。そのため、研修では法令の知識だけでなく、職場での行動や情報の取り扱い、問題に気づいた際の相談・報告方法まで幅広く扱います。

コンプライアンスの意味や違反事例、企業への影響については、以下の記事で解説しています。

【関連記事】
コンプライアンスとは?意味や違反事例、影響と対策をわかりやすく解説 | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識

コンプライアンス研修を実施する目的

コンプライアンス研修には、主に以下の目的があります。

コンプライアンス研修を実施する目的

  • 法令・社内ルールを理解する
  • 業務で迷ったときの判断基準を身につける
  • コンプライアンス違反を予防し、早期発見・報告につなげる
  • 企業の信用やブランド価値を守る

企業には、法令に加えて就業規則や情報管理規程など、独自のルールがあります。研修では、ルールを知識として覚えるだけでなく、日常業務のどの場面で適用されるのかまで理解を促すことが重要です。

あわせて、違反が起きた際の影響や相談・報告ルートも共有しておくと、従業員が問題に気づいた際に適切な行動を取りやすくなります。こうした研修を重ねることで、違反の予防や早期対応だけでなく、企業の信用低下を防ぐことにもつながります。

コンプライアンス研修が必要な理由

コンプライアンス研修が必要なのは、法令や社内ルールを定めるだけでは、従業員が実際の業務で適切に判断できるとは限らないためです。ルールの意味や違反につながる行動を具体的な事例とともに学ぶことで、判断に迷いやすい場面でも対応しやすくなります。

法律や社会的なルールは変化するため、研修を通じてコンプライアンスに関する知識を適宜更新しなければなりません。

コンプライアンス研修の主な内容・テーマ8選

コンプライアンス研修では、自社の業種や職種、過去のトラブル、法改正の影響などを踏まえてテーマを選びます。代表的なテーマは、以下の8つです。

コンプライアンス研修の主な内容・テーマ8選

  • ハラスメント防止
  • 個人情報保護・情報セキュリティ
  • SNS利用のルール
  • 著作権・商標権などの知的財産
  • 景品表示法
  • 社内不正・横領防止
  • 取適法(旧:下請法)
  • 内部通報制度

それぞれのテーマで、研修時に押さえておきたい内容を紹介します。

ハラスメント防止

ハラスメント防止の研修では、職場で起こり得るハラスメントの種類や判断の考え方、相談を受けた際の対応を扱います。従業員の立場や経験によって認識に差が出やすいため、具体的な言動を例に「何が問題になるのか」を共有することがポイントです。

労働施策総合推進法では、職場におけるパワーハラスメントを防止するため、事業主に雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられています。

職場で発生する主なハラスメントの例概要
パワーハラスメント(パワハラ)職場での優位な関係を利用して行うハラスメント
セクシュアルハラスメント(セクハラ)性的な言動によって相手に被害を与えるハラスメント
マタニティハラスメント(マタハラ)妊娠・出産・育児をめぐって女性社員に不適切な言動をするハラスメント
パタニティハラスメント(パタハラ)男性社員の育児をめぐって不適切な言動をするハラスメント

ハラスメントの定義や種類、職場での対応方法については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
ハラスメントとは?職場での適切な対応方法をわかりやすく解説 | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee

個人情報保護・情報セキュリティ

個人情報保護・情報セキュリティの研修では、取引先や顧客の個人情報を安全に扱うための知識を学ぶことが主な内容です。個人情報が社外に漏れると重大な情報漏えい事故につながるおそれがあるため、安全な管理方法まで確認します。

SNS利用のルール

SNS利用の研修では、企業の公式アカウントや社員個人の投稿で注意すべき点を学びます。不適切な投稿は企業の信用を損なうおそれがあり、一度拡散された情報は削除が難しく、ほかのメディアに転載される可能性もあります。

こうしたSNSの特性を踏まえ、業務上の発信だけでなく、プライベートで利用する際にも適切な情報発信を意識しましょう。

著作権・商標権などの知的財産

知的財産を扱う研修の主な内容は、著作権・意匠権・商標権など、企業活動に関わる権利の基本です。自社の製品やコンテンツを守る視点と、他社の権利を侵害しない視点の両方を押さえます。

たとえば、他社の著作物を無断で使用すると、著作権を侵害する可能性があります。他人の著作物を利用する際は、著作権法上許諾が不要な場合を除き、原則として権利者の許諾が必要です。

知的財産の取引に関するルールや注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】
知的取引ガイドラインとは?規定内容や2024年の改正点を解説 | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee

景品表示法

景品表示法を扱う研修では、広告や販促で消費者に誤解を与えないための表示ルールと、景品類を提供する際の規制を確認します。商品・サービスを実際より著しく優良に見せる優良誤認や、価格などの取引条件を実際より著しく有利に見せる有利誤認は規制対象です。

研修では、商品の品質や原産地に関する表示、効果・性能を示す広告など、自社で扱う表現を題材にすると実務へ落とし込みやすくなります。

景品表示法で規制される表示や景品の範囲、具体的な事例については、以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】
景品表示法とは?不当表示規制・景品規制の対象や事例をわかりやすく解説 | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee

社内不正・横領防止

社内不正・横領防止の研修では、どのような行為が不正にあたるのかと、発覚した際に企業へ及ぶ影響を学びます。社内不正や横領は、企業の信用低下に加え、経済的な損失や法的責任を招くおそれがあります。

たとえば、不正会計、通勤手当の不正受給、備品の私的流用なども研修で扱う事例です。身近な行為も不正にあたることを具体的に理解し、日々の業務で適切に判断するための知識を身につけます。

取適法(旧:下請法)

取適法(旧:下請法)は、発注側と受注側の事業者間で適正な取引が行われるよう、対象となる取引や発注事業者の義務、禁止行為などを定めた法律です。旧・下請法の改正により名称が変更され、2026年1月1日に施行されました。

研修では、自社の取引が対象になるかを確認したうえで、発注内容の明示、代金の支払期日、禁止される行為などを取り上げます。研修を通じて、委託事業者の義務や禁止行為を理解しておくことが大切です。

取適法の対象となる取引や改正内容、企業が押さえておきたいポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

【関連記事】
取適法とは?2026年1月施行の下請法改正についてわかりやすく解説 | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee

内部通報制度

内部通報制度に関する研修では、社内の不正や違法行為に気づいた際に利用できる制度の存在と、その活用方法を学びます。とくに新入社員などは、不正会計や不正受給を目にしても対処方法がわからなかったり、制度自体を知らなかったりする場合があります。

そのため、研修で制度の存在と利用方法を周知し、必要な場面で活用できる状態を整えましょう。

内部通報制度の仕組みや導入手順、運用時のポイントについては、以下の記事をあわせてご覧ください。

【関連記事】
内部通報制度とは?メリットや導入の手順、ポイントを解説 | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee

コンプライアンス研修のテーマ・ネタの探し方

コンプライアンス研修のテーマ・ネタは、社内の事例だけでなく、社外で公表されている事例や最新の話題からも探せます。主な探し方は、以下の4つです。

コンプライアンス研修のテーマ・ネタの探し方

  • 社内で起きた過去の事例から探す
  • 国・自治体・業界団体の違反事例から探す
  • 同業他社や大手企業の不祥事から探す
  • ニュースやSNSから最新の話題を探す

同じテーマを毎年扱う場合でも、事例や社内の課題が変われば、研修で重点を置く内容も変わります。

社内で起きた過去の事例から探す

自社で過去に起きたコンプライアンス違反は、業務に即した研修テーマを考える参考になります。実際の事例を使うことで、自社の実情に合った内容を検討しやすいためです。

研修に取り入れる際は、違反が起きた原因や当時の対応、今後の対策という観点で整理します。あわせて、事例に関係するルールや法令も確認しましょう。

国・自治体・業界団体の違反事例から探す

国・自治体・業界団体が公表する違反事例や法令の最新情報も、研修テーマの検討に役立ちます。自社の業界や事業に関係する情報は、優先して扱う課題を整理する手掛かりです。

得られた情報は、研修内容の検討に加え、社内のコンプライアンス規程や方針を見直す際にも活用できます。

同業他社や大手企業の不祥事から探す

同業他社や大手企業で起きた不祥事は、自社で起こり得るリスクを検討する際の参考です。同業他社の事例からは業界特有の問題を把握しやすく、大手企業の事例では違反が起きた経緯やその後の対応、再発防止策まで確認できます。

こうした事例は、自社で同様の事態を防ぐための対応を考える際にも役立ちます。

ニュースやSNSから最新の話題を探す

ニュースやSNSは、社会で注目されているコンプライアンス上の問題を把握する手掛かりです。直近の出来事を題材にすることで、研修内容を現在の状況にあわせて検討できます。

一方、SNS上の情報には信憑性の低いものも含まれます。研修に取り入れる際は、内容の慎重な見極めが必要です。

コンプライアンス研修の主な実施方法

コンプライアンス研修の主な実施方法は、以下の4つです。

コンプライアンス研修の主な実施方法

  • 集合研修
  • 外部セミナー・公開講座
  • オンライン研修
  • eラーニング

それぞれ実施の形式が異なるため、特徴を理解しておきましょう。

集合研修

集合研修は、講師と受講者が同じ会場に集まって行う対面型の研修です。ディスカッションやグループワークを取り入れやすく、その場で質疑応答ができるため、受講者の理解度を確かめながら進められます。座学にロールプレイングを組み合わせる方法もあります。

たとえば、管理職向け研修で、コンプライアンス違反が起きた場面を想定して謝罪会見を練習するケースです。

外部セミナー・公開講座

外部セミナー・公開講座は、社外の専門家や公開講座を活用する方法です。専門家による研修では具体的な知識を学べるほか、公開講座では社外の参加者とともに受講できます。自社とは異なる考え方や視点に触れられる点も、公開講座の特徴です。

オンライン研修

オンライン研修は、Web会議ツールを使って離れた場所から受講する方法です。社員がそれぞれの勤務地から参加できるため、勤務地が分散している企業でも実施しやすい点が特徴です。

場所の制約を受けにくい一方、実施時間はあらかじめ決まっています。社員数が多い企業では、参加者の日程調整の負担も大きくなります。

eラーニング

eラーニングは、動画やスライドなどの教材をオンラインで受講する研修方法です。時間や場所の制約を受けにくいため、社員が各自の予定にあわせて学びやすい点が特徴です。システムによっては、受講履歴やテスト結果の管理にも対応しています。

ただし、講師へその場で質問しにくく、教材を再生するだけの受講になりやすい点は課題です。確認テストやケース問題を組み合わせれば、受講の有無だけでなく、内容の理解度を確認する材料にもなります。

eラーニングの仕組みやメリット・デメリット、導入時の注意点については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
eラーニングとは?普及の背景やメリット・デメリット、トレンド、導入の注意点などを解説 | 経営者から担当者にまで役立つバックオフィス基礎知識 | クラウド会計ソフト freee

コンプライアンス研修を実施する流れ

コンプライアンス研修は、自社の課題を把握したうえで対象者や研修内容を決め、カリキュラムに沿って実施し、研修後の結果を次回に反映する流れで進めます。

具体的な手順は、以下の5つです。

コンプライアンス研修を実施する流れ

  1. 従業員の理解度や自社の課題を把握する
  2. 対象者と研修テーマ・内容を決める
  3. 実施方法や教材を決めて研修を行う
  4. テストやアンケートで研修効果を確認する
  5. 結果を次回の研修内容に反映する

研修の準備から実施後の振り返りまで、各手順で行う内容を解説します。

1. 従業員の理解度や自社の課題を把握する

研修前に、従業員がコンプライアンスをどの程度理解しているかを確認します。アンケートやオンラインテストなどで把握した現状が、重点的に扱う内容を決める基準です。

また、管理職の理解状況を確認することも欠かせません。上司がコンプライアンスを理解していれば、メンバーへの指導やサポートを進めやすくなります。

2. 対象者と研修テーマ・内容を決める

次に、研修の対象者を定め、テーマと到達目標を決めます。全社員に共通して必要な内容と、職種・役職ごとに必要な内容を分けることが、対象者に合った研修を設計する際のポイントです。

たとえば、新入社員にはコンプライアンスの基本や社内ルール、管理職にはハラスメントへの対処、広報・マーケティング担当には景品表示法など、対象者に応じて内容を調整します。

3. 実施方法や教材を決めて研修を行う

対象者や実施時期、研修の方向性を踏まえ、テーマに優先順位をつけてカリキュラムを作成します。優先度が高いのは、違反が起きた場合の影響が大きいテーマや、自社で問題が表れ始めているテーマです。

たとえば、公式SNSで炎上した経験がある場合は情報セキュリティ、パワーハラスメントに関する相談がある場合は、ハラスメント防止を優先します。そのうえで、作成したカリキュラムに沿って研修を実施します。

4. テストやアンケートで研修効果を確認する

研修後は、理解度テストやアンケートを行い、受講者の理解度や研修の成果を確認します。アンケートや面談では受講者の反応や意見を把握し、研修内容の改善点を整理します。

5. 結果を次回の研修内容に反映する

研修後の評価結果をもとに、次回以降のカリキュラムや重点的に扱う課題を見直します。理解が不足している分野については、追加研修やフォローアップを行います。

こうした改善の継続は、コンプライアンス違反の防止や健全な組織文化の維持につながる取り組みです。

まとめ

コンプライアンス研修は、従業員が法令や社内ルール、企業倫理を理解し、違反や不正を防ぐための研修です。実施する際は、自社の課題や従業員の理解度を把握したうえで、対象者の業務に合ったテーマと実施方法を選ぶ必要があります。

研修後はテストやアンケートで理解度を確認し、その結果を次回のテーマや教材に反映しましょう。企画・実施・振り返りを一連の流れとして設計すると、自社の課題にあわせて研修内容を更新する際の判断材料を得やすくなります。

また、経理業務の効率化を検討している場合は、「freee会計」の活用も選択肢のひとつです。

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よくある質問

コンプライアンス研修では何をするのでしょうか?

コンプライアンス研修では、従業員が法令や社内ルールなどを理解し、業務で適切に行動するための知識を学びます。

主なテーマは、ハラスメント防止や個人情報保護・情報セキュリティ、SNS利用などです。実施方法としては、集合研修やオンライン研修、eラーニングなどが挙げられます。

詳しくは、記事内「コンプライアンス研修の主な内容・テーマ8選」と「コンプライアンス研修の主な実施方法」をご覧ください。

コンプライアンス研修でおすすめのテーマ・ネタは?

コンプライアンス研修のテーマは、自社の課題や実情を踏まえて選ぶことが重要です。

テーマ・ネタを探す際は、社内で過去に起きた事例のほか、国・自治体・業界団体が公表する違反事例、同業他社や大手企業の不祥事、ニュースやSNSなどを参考にできます。自社や業界に関係する事例を確認すると、研修で優先して扱う課題を検討しやすくなります。

詳しくは、記事内「コンプライアンス研修のテーマ・ネタの探し方」をご覧ください。

コンプライアンス研修はどのような流れで実施しますか?

コンプライアンス研修は、従業員の理解度や自社の課題を把握したうえで、対象者と研修テーマ・内容を決め、研修を実施する流れで進めます。研修後は、テストやアンケートで学習状況や研修目的の達成度を確認し、その結果を次回以降の研修内容に反映します。

詳しくは、記事内「コンプライアンス研修を実施する流れ」をご覧ください。

監修 涌井 好文(わくい よしふみ) 社会保険労務士

平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。また、近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っている。

監修者 涌井好文
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