人事管理の基礎知識

定着率とは?計算方法から平均の目安・低くなる原因・改善する7つの方法を解説

定着率とは、企業に入社した従業員のうち一定期間後も在籍している者の割合で、採用や人材育成、職場環境を見直すうえで役立つ指標です。

定着率の平均や計算方法を把握することで、自社の状況を客観的に確認し、改善が必要な課題を見つけられます。

本記事では、定着率の意味や計算方法を解説し、あわせて定着率が低くなる原因や、課題を特定するための分析方法、改善につながる7つの方法も紹介します。

目次

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定着率とは

定着率とは、企業に入社した従業員のうち一定期間後も在籍している者の割合を示す指標です。

定着率が高い企業は、採用・育成にかけたコストを長期的に回収しやすく、組織としての安定性も高まります。一方、定着率が低い場合は、職場環境や待遇、育成体制などに課題があるかもしれません。

ここでは、定着率からわかることや離職率との違いを解説します。

組織や職場環境の課題を把握できる

定着率は、組織や職場環境の課題を把握する際の指標として活用できます。全社の数値だけでなく、部署や入社年度、勤続年数などにわけて確認すると、定着率が低い層を見つけられます。

数値が低い場合は、採用後のミスマッチ・人間関係・評価制度・労働環境などに課題がないかの分析が必要です。従業員アンケートや退職者ヒアリングを組み合わせて課題を絞り込み、具体的な改善策につなげましょう。

定着率と離職率の違い

定着率と離職率は、従業員の在籍状況を異なる視点から捉える指標です。

主に、以下のような違いがあります。

定着率離職率
示す内容一定期間に在籍し続けた従業員の割合一定期間に退職した従業員の割合
主な用途人材が組織に定着している状況を把握する人材が組織から離れている状況を把握する

集計期間中に新たに入社した従業員や、休職中の従業員の扱いが算出方法によって異なるため、定着率と離職率を足しても100%になるとは限りません。数値を比較する際は、集計期間や対象者となる従業員の範囲をそろえて算出されているか確認しましょう。

離職率の計算方法や日本企業の平均・業界別離職率、離職率が高くなる原因や防止策については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】
離職率とは?計算方法や日本の現状・離職防止の具体策までわかりやすく解説

定着率の計算方法

定着率の計算方法は、確認したい期間や対象となる従業員に応じて異なります。自社の状況を正しく把握するためには目的に合った方法で算出しましょう。

ここでは、以下の4つの計算方法を解説します。

定着率の計算方法

  • 基本の計算式
  • 1年後定着率の計算方法
  • 3年後定着率の計算方法
  • 新入社員定着率の計算方法

基本の計算式

定着率は、一定期間の開始時に在籍していた従業員のうち、期間終了時にも在籍している従業員の割合から算出します。

基本の計算は、以下の式で求められます。

定着率(%)= 期間終了時の在籍者数 ÷ 期間開始時の在籍者数 × 100

たとえば、対象となる従業員が100人で1年後に90人が在籍している場合は、定着率は90%です。

計算する際は、対象者の範囲・対象期間・集計の基準日を決めておきましょう。条件を統一することで、年度別や部署別でも比較しやすくなります。

1年後定着率の計算方法

1年後定着率は、入社した従業員のうち1年後も在籍している従業員の割合を示します。

以下の式で算出できます。

1年後の定着率(%)= 1年後の在籍者数 ÷ 入社者数 × 100

たとえば、50人採用し1年後に42人が在籍している場合は、定着率は84%です。入社年度ごとに1年後の状況を確認することで、早期離職の傾向を把握できます。オンボーディングや配属後のフォロー体制を見直す際に役立つでしょう。

なお、厚生労働省では、新規学卒者の就職者を基準に1年目・2年目・3年目の離職状況を公表しています。自社の離職がどの時期に多いのかを確認する際は、このようなデータと比較するのもひとつの方法です。

3年後定着率の計算方法

3年後定着率は、入社した従業員のうち3年後も在籍している従業員の割合を指します。数年単位で、従業員が定着しているかを確認する際に活用できます。

計算方法は、以下のとおりです。

3年後定着率(%)= 3年後の在籍者数 ÷ 入社者数 × 100

たとえば、3年前に100人が入社し現在78人が在籍している場合、3年後定着率は78%です。1年後定着率とあわせて確認すると「入社後早い段階での離職が多いのか、その後も離職が続いているのか」を見極められます。

早期に離職が多い場合はオンボーディングや配属後のフォロー、その後も離職が続く場合はキャリア支援や評価制度の見直しなど、課題に応じた施策の検討につなげましょう。

新入社員定着率の計算方法

新入社員定着率は、新たに入社した従業員が一定期間後にどの程度在籍しているかを示す指標です。新卒・中途採用者の定着状況を確認することで、採用時のミスマッチや入社後の受け入れ体制に課題がないかを把握できます。

計算方法は、以下のとおりです。

新入社員定着率(%)= 一定期間後の新入社員の在籍者数 ÷ 入社時の新入社員数 × 100

集計期間に一律の決まりはありません。たとえば、入社直後の定着状況を確認する場合は6ヶ月後や1年後、中期的な定着状況まで確認する際は3年後を基準にします。継続的に推移を比較するためには、対象期間や基準日を統一することが大切です。

また、新卒のみを対象とするのか、中途採用者も含めるのか明確にしましょう。採用経路や職種ごとにわけて確認すると、採用時のミスマッチや入社後の受け入れ体制など、改善すべき事象を把握しやすくなります。

定着率を正確に算出・管理するには、入社日・部門・職種などの従業員情報を一元管理できる仕組みが役立ちます。freee人事労務なら、従業員情報の管理から入退社手続きまで対応できるため、定着率の集計や分析をスムーズに進めることが可能です。

定着率の目安

業界や企業規模が近い企業の水準と比較すると、自社の定着率が相対的に高いか低いかを判断できます。ただし、適切な水準は業界や雇用形態などによって異なるため、数値だけで判断しないことが大切です。

ここでは、理想的な定着率の目安と、ホワイト企業とされる基準を確認しておきましょう。

理想的な定着率の目安

定着率には、すべての企業に共通する理想的な基準はありません。業界・職種・雇用形態によって人材の流動性が異なるため、自社と近い条件のデータを基準に判断する必要があります。

厚生労働省の「令和7年雇用動向調査結果の概況」によると、2025年の常用労働者全体の離職率は13.7%でした。単純に100%から離職率を差し引くと86.3%となり、定着状況を考える際の参考値のひとつになります。

ただし、離職率は産業によって差があります。一般労働者の離職率を見ると、宿泊業・飲食サービス業は21.5%、サービス業(他に分類されないもの)は20.3%です。

そのため、自社の定着率は全産業の数値だけでなく同じ業界の水準とも比較しましょう。業界内での位置づけを確認したうえで自社が下回っている場合は、離職が多い部署・勤続年数・退職理由などを分析し、改善すべき課題を特定します。

ホワイト企業の定着率の目安

ホワイト企業の定着率に明確な基準はありませんが、「3年後の定着率70%以上」がひとつの目安として挙げられます。

厚生労働省によると令和4年3月卒の新規大卒就職者の3年以内離職率は33.8%で、逆算すると3年後の定着率は66.2%です。そのため、70%は新規大卒者全体の水準をやや上回る数値として定着状況を見る際の参考になります。

ただし、70%以上であれば一律に定着率が高いとは判断できません。業界によって人材の流動性が異なり、同じ70%でも業界平均が60%の場合と90%の場合では位置づけが変わります。

ホワイト企業の定着率を確認する際は70%を絶対的な基準とするのではなく、同じ業界や企業規模の平均と比較しながら判断しましょう。

業界・規模・条件別の定着率の平均

定着率の平均は、対象とする従業員や業界、企業規模によって異なります。自社の状況を適切に判断するためには、これらの条件が近いデータとの比較が必要です。

日本企業や新卒社員の平均をはじめ、業界・企業規模別の傾向を確認しておきましょう。

日本企業の平均

厚生労働省の調査によると2025年の常用労働者の離職率は13.7%でした。この数値をもとに単純計算すると、日本企業における年間の定着率は86.3%となります。

ただし、全体の数値には一般労働者やパートタイム労働者などが含まれています。日本企業の大まかな水準として捉え、自社と比較する際は、業界・企業規模・雇用形態など条件の近いデータもあわせて確認しましょう。

新卒社員3年後の平均

厚生労働省の調査によると、2022年3月卒の新規学卒就職者における3年以内の離職率とそこから算出した定着率は、以下のようになっています。

学歴3年以内の離職率(%)3年後の定着率(%)
大学卒33.866.2
高校卒37.962.1

平均値と自社の定着率を比較すると、新卒社員の定着状況を把握する際の参考になります。

また、入社年度ごとの数値も継続して確認することで、採用や育成施策の実施前後で定着状況がどのように変化したか把握できます。

業界別の平均

業界によって労働環境や勤務形態が異なるため、自社の定着率を評価する際は、全産業平均だけでなく同業界の水準とも比較しましょう。

厚生労働省発表の2025年の一般労働者の離職率をもとに算出すると、業界別の定着率は以下のようになります。

業界離職率(%)定着率(%)
建設業7.992.1
製造業9.290.8
情報通信業10.090.0
卸売業・小売業8.591.5
宿泊業・飲食サービス業21.578.5
医療・福祉13.686.4
サービス業(他に分類されないもの)20.379.7

製造業・建設業・情報通信業は定着率が高い一方、宿泊業・飲食サービス業やサービス業は相対的に低い傾向があります。

※定着率は「100% - 離職率」で算出した参考値です。厚生労働省が定着率として公表している数値ではありません。

企業規模別の傾向

定着率は、企業規模によって大きく異なります。2022年3月卒の新規大卒者について、3年以内離職率から算出した企業規模別の定着率は、以下のとおりです。

事業所規模3年後定着率(%)
5人未満42.5
5~29人48.0
30~99人58.1
100~499人66.1
500~999人68.5
1,000人以上73.0

1,000人以上の大企業では73.0%である一方、5人未満の小規模事業所では42.5%と、30ポイント以上の差があります。規模が大きいほど定着率が高い傾向がある背景には、福利厚生・教育研修制度の充実度・給与水準・キャリアパスの見えやすさなどの違いが挙げられます。

中小企業が自社の定着率を評価する際は、大企業の水準と単純比較せずに、同規模の企業水準を基準にするのが現実的です。同規模の企業と比べて定着率が低い場合は、職場環境や待遇、育成体制に改善の余地がある可能性があります。

定着率が高い企業に共通する特徴

定着率が高い企業には、従業員が働きやすい環境づくりにつながる共通点があります。主な4つの特徴を見てみましょう。

定着率が高い企業に共通する特徴

  • 企業理念が社内に浸透している
  • 従業員の意見を制度に反映している
  • 求める人材像が明確になっている
  • 柔軟な働き方を選択できる

企業理念が社内に浸透している

企業理念が社内に浸透している企業では、従業員が企業の目指す方向や自分の仕事の役割を理解しやすくなります。日々の業務に納得感をもって取り組めるようになり、企業への帰属意識も高まるでしょう。

企業理念は採用時に伝えるだけでなく、日常のコミュニケーションや人事評価にも反映させることが重要です。理念に沿った行動を評価する仕組みを整え、従業員が日々の業務で理念を意識できる環境をつくると、社内への浸透を促せます。

従業員の意見を制度に反映している

従業員の意見を制度や施策に反映する企業では、自分の声が組織運営に活かされていると実感でき、企業への信頼や働き続ける意欲につながります。

従業員サーベイや1on1などを活用し、職場への要望や課題を定期的に把握することが大切です。集めた意見をもとに制度や職場環境を見直し、改善内容を社内へ共有する仕組みまで整えると、従業員の納得感も高まります。

求める人材像が明確になっている

求める人材像を明確にすることで採用時のミスマッチを防ぎやすく、入社後の定着率向上につながります。従業員は、仕事内容や企業文化を事前に理解したうえで入社できるため、期待とのギャップが生まれづらいでしょう。

人材像は募集要項や面接のほかに、入社後の評価基準や育成方針とも一致させることが必要です。採用から育成まで一貫した基準を設けることで入社前後の認識のズレが減り、早期退職の予防にもなります。

柔軟な働き方を選択できる

柔軟な働き方を選べる企業では、従業員がライフスタイルや家庭の事情に合わせて仕事を続けやすく、定着率の向上につながります。テレワークやフレックスタイム制などを導入すると、育児や介護との両立もしやすくなるでしょう。

ただし制度を設けても、利用しにくい雰囲気があれば十分に活用されない可能性があります。上司や同僚の理解を促し、必要なときに制度を利用できる職場環境を作ることも大切です。

定着率が低くなる主な原因

定着率が低くなる背景には複数の要因があります。原因を正しく把握できると、自社が優先して取り組むべき課題を明確にできます。

定着率が低くなる主な原因

  • 採用時にミスマッチが生じている
  • 人事評価に不満がある
  • 職場の人間関係に問題がある
  • 職場の労働環境に問題がある
  • キャリアの見通しがもてない
  • 入社後のフォローが不足している

採用時にミスマッチが生じている

採用時のミスマッチは、入社前に想定していた仕事内容や働き方と、入社後の実態に差があることで生じます。

たとえば、採用活動では自社の魅力を伝えることが優先され、業務の大変な部分や職場の実情まで十分に伝えられない場合、実際に働き出すと落差を感じることがあります。また、面接時に応募者が希望や懸念を伝えきれなかったり、採用後に想定とは異なる部署へ配属されたりすることもミスマッチの要因です。

このような認識のズレが入社後に明らかになると、仕事への納得感が薄れ、早期退職につながります。

人事評価に不満がある

人事評価への不満は、定着率を下げる要因です。評価基準が曖昧だったり、努力や成果が適切に反映されなかったりすると、従業員は企業への信頼を失いやすくなります。

評価への不信感が続くと、成果を上げても待遇や昇進に反映されないと感じ、仕事への意欲や企業への信頼が低下するでしょう。その結果、より納得できる評価や待遇を求めて転職を検討するきっかけになります。

職場の人間関係に問題がある

職場の人間関係に関する問題は、業務上の数値などでは把握しづらく、本人が周囲へ相談しなければ表面化しないことがあります。上司との関係や同僚とのトラブルを抱えていても、今後の関係悪化を懸念して相談できず、ひとりで抱え込むケースも考えられます。

このような状態が続くと、業務上のコミュニケーションにも支障が生じ、仕事への心理的な負担が増加するでしょう。問題が改善されないまま蓄積することで、職場を離れることが解決手段となり、離職につながる可能性があります。

職場の労働環境に問題がある

職場の労働環境に問題があると、家庭や趣味との両立が難しく健康的な生活ができないと判断され、離職を考えるきっかけになります。

たとえば、定着率を下げる要因として以下のようなものが考えられます。このような問題が続くと、十分な休息を確保できないだけでなく、安心して働き続けることも難しくなります。

  • 長時間労働
  • 休日出勤の常態化
  • ハラスメント
  • 特定の従業員への業務の偏り
  • 休暇を取得しにくい職場風土 など

また、人員不足によってひとりあたりの業務量が増えると、残業や休日出勤がさらに増え、複数の問題が連鎖するかもしれません。負担が一時的なものではなく常態化すれば、現在の職場で働き続けることへの不安が強まります。

キャリアの見通しがもてない

将来のキャリアを描けないことも、定着率の低下につながります。

とくに、現在の業務で一定の経験を積み、次に目指す役割や専門性を考える段階にある従業員は、昇進・異動・職種転換などの選択肢が見えなければ今の企業で働き続けるメリットを見いだしづらくなります。

さらに、必要な経験やスキル、昇進の基準が明確でないと、自分が数年後にどのような仕事をしているのかをイメージしづらいでしょう。社内で希望するキャリアを実現できないと判断した場合、成長機会を求めて転職を検討する可能性があります。

入社後のフォローが不足している

入社後のフォローが不足すると、新しい環境で生じた不安や疑問を解消できず、早期離職につながりやすくなります。具体的には、業務内容や社内ルールの説明・配属先での業務指導・上司や人事との面談・職場内の人間関係を築くための支援などの不足が挙げられます。

とくに、入社直後から独り立ちするまでの時期は、仕事内容や職場のルール、人間関係など、上司・先輩に確認すべきことが多いでしょう。十分な支援を受けられない状態が続くと、職場に馴染めないという感覚や孤立感につながり、早期離職の一因になります。

社員の定着率を上げるには?効果的な7つの方法

従業員の定着率を上げるためには、採用から入社後の育成・評価・働き方まで、入社から定着に至るまでのフローを幅広く見直す必要があります。

7つの効果的な方法を解説します。

定着率向上に効果的な7つの方法

  • 採用時のミスマッチを減らす
  • オンボーディングを充実させる
  • 1on1でコミュニケーションを増やす
  • 人事評価制度を見直す
  • 適性に応じた人材育成を行う
  • キャリア形成を支援する
  • 働きやすい職場環境を整える

1. 採用時のミスマッチを減らす

採用時のミスマッチを防ぐためには、求める人材像・仕事内容・働き方を具体的に伝える必要があります。

候補者が採用段階で得た情報と入社後の実態に差があると、期待とのギャップが生じ早期離職につながりやすくなります。

そのため募集要項や面接では、残業時間・評価制度の仕組み・チームの雰囲気・業務の裁量範囲など、入社後の働き方に関わる情報も積極的に共有することが大切です。職場見学や現場の従業員と話す機会を設けることも役立つでしょう。

企業側と応募者の認識を事前にすり合わせることで、入社後のミスマッチを抑えられます。

2. オンボーディングを充実させる

オンボーディングを充実させると、新入社員が職場や業務に慣れるまでの不安を軽減でき、早期離職の防止につながります。

具体的には、以下のような取り組みが有効です。

  • 研修:業務内容や社内ルールへの理解を深める
  • 定期面談:業務上の悩みや職場への適応状況を確認する
  • メンター制度:上司には相談しにくい疑問や不安を相談できる機会を設ける
  • 部署内の交流:周囲との関係を築き、職場での孤立を防ぐ

オンボーディングは入社時だけで終わらせず、新入社員がひとりで業務を進められるようになるまで継続しましょう。

フォロー期間は、自社の研修期間や業務を習得するまでの期間をもとに設定します。たとえば、研修完了まで3ヶ月程度を想定している場合はその期間に面談や研修を集中させ、その後も必要に応じて状況を確認しましょう。

3. 1on1でコミュニケーションを増やす

1on1でコミュニケーションを増やして、悩みや不安を相談しやすい関係性を築きましょう。

従業員が業務や人間関係、評価などへの不満を抱えていても、自ら上司へ相談するとは限りません。不満や悩みを把握できない状態が続けば、企業側が問題に気づかないまま離職に至る可能性があります。

1on1を定期的に実施すると、上司が従業員の悩みや不安を把握でき、問題が深刻になる前に対応できます。業務の進捗確認だけで終わらせず、仕事で困っていること・今後のキャリア・働き方への希望なども確認することが大切です。

従業員の意見をもとに業務分担や育成方針を見直すことで、不満を放置せずに改善できるでしょう。

4. 人事評価制度を見直す

人事評価制度への不満は、従業員の働く意欲を低下させ、定着率に影響します。成果や取り組みが適切に評価されていないと感じると「頑張っても報われない」という不信感が生まれ、離職につながりやすくなります。

評価制度を見直す際は、以下の観点を確認しましょう。

  • 評価基準を明文化する:何を評価されるのかがわかることで、評価結果への納得感を得やすくなる
  • 評価理由を本人へ伝える:結果だけでなく理由や今後期待する役割を共有することで、次に取り組むべき課題を理解しやすくなる
  • 評価者の判断基準をそろえる:上司によって評価が変わる状態を抑え、公平性への不信感を防ぎやすくなる

従業員が評価結果に納得できる運用になっているかまで確認することが大切です。

人事評価制度の見直しで大事な評価手法や導入時の注意点については、以下の記事で解説しています。

【関連記事】
人事評価制度とは?代表的な手法や導入の目的、注意点などをわかりやすく解説

5. 適性に応じた人材育成を行う

従業員の適性に応じた人材育成を行うと、自分の強みを活かしたり必要な能力を伸ばしたりする機会をつくれます。成長を実感できる環境は、自社で働き続ける意欲を保つことにもつながります。

ただし、全員に同じ研修や業務を割り当てるだけでは、個々の強みを十分に伸ばせません。面談やスキル評価を通じて、本人の得意分野や課題、今後の希望を把握しましょう。そのうえで必要なスキルを学べる研修を用意したり、強みを活かせる業務へ配置したりするのが有効です。

さらに、育成計画を本人と共有し、定期的に進捗や希望の変化を確認することも大切です。

従業員ごとに育成方針を考えることで「会社に育ててもらえている」と実感しやすくなり、成長意欲を保ちながら働ける環境を整えられます。

6. キャリア形成を支援する

従業員が自社でのキャリアを描けるように支援すると、将来への不安を減らし長く働く意欲を育てられます。今後どのような経験を積み、どの役職や職種を目指せるのかが不透明だと、従業員が転職を考えるきっかけになりかねません。

具体的には、下記のような手段が有効です。

  • 具体的なキャリアパスを示す
  • 具体的なモデルロールを用意する
  • 本人の希望に沿って、必要な経験やスキルを共有する
  • 社内公募制度や異動制度など、希望する仕事に挑戦できる機会を設ける

従業員が自分の意思でキャリアを選択できる仕組みがあると、社内で新たな役割へ挑戦する選択肢をもてます。自社で将来のキャリアを考えられる環境を整えることが、定着につながります。

7. 働きやすい職場環境を整える

従業員が、ムリなく働ける職場環境を整えましょう。

長時間労働や休日出勤が続いたり業務量が一部の従業員に偏ったりすると、心身の負担が増えて離職につながり得ます。勤怠管理システムを使い、部署ごとの残業時間を月次で確認しましょう。

具体的には、下記のような施策が働きやすい職場環境の構築につながります。

  • 業務量が偏る部署には、繁忙期前に応援体制を組む
  • フレックスタイム制を導入する
  • 週1~2日のテレワークを選択制で認める
  • 有給休暇の取得を推奨する
  • 管理職向けのハラスメント研修を実施する
  • 休憩スペースを整備する

物理的な環境面での支援や心理的安全性を高める取り組みが、安心して働き続けられる環境づくりには欠かせません。

従業員ごとの状況や課題を把握し、適切な人材配置や育成につなげたい場合は「freee人事労務のタレントマネジメント」をご活用ください。

定着率を改善するための分析方法

同じように定着率が低下していても、原因が給与への不満にあるのか、職場環境や育成体制にあるのかによって必要な対策は異なります。施策を決める前に数値と従業員の声の両面から原因を特定しましょう。

部署別の分析から施策実施後の検証まで、定着率の改善につなげる方法を解説します。

定着率を改善するための分析方法

  • 部署別に課題を特定する
  • 退職理由から原因を分析する
  • 改善施策の優先順位を決める
  • 施策の実施前後で定着率を比較する

部署別に課題を特定する

全社の定着率だけでは、特定の部署に集中している問題を見落とす可能性があります。まずは、部署ごとに定着率を算出し、全社平均やほかの部署と比較して数値が低い部署を確認しましょう。

対象部署では、上司や従業員の双方へ以下のような内容をヒアリングします。

対象確認内容
上司・業務量に偏りがないか
・人員配置に問題がないか
・退職や異動の相談が増えていないか
従業員・業務量に負担を感じていないか
・上司や同僚へ相談できるか
・評価や働き方に不満がないか

あわせて定着率の推移を複数年にわたり継続的に確認して、一時的な変化なのか継続的な問題なのかを見極めたうえで、優先して対応すべき課題を絞り込みましょう。

退職理由から原因を分析する

退職理由を分析すると定着率の低下につながっている具体的な原因を把握できます。退職者へのヒアリングやアンケートを実施し、人間関係・人事評価・給与・労働時間・キャリアなどにわけて整理しましょう。

ただし、退職後の関係や周囲への配慮から、退職者が本音をすべて話すとは限りません。そのため、退職者の回答だけで原因を判断せず、在籍中の従業員へのサーベイや1on1で得た情報と照らし合わせることが重要です。

複数の情報から原因を絞り込むと該当する制度や職場環境の見直しにつなげられます。

改善施策の優先順位を決める

定着率を改善するための課題が複数見つかった場合は、優先順位を決めて取り組みましょう。すべてを同時に進めると人員や予算が分散し、十分な対応ができなくなるリスクがあります。

優先順位を決める際は、以下2つの軸で課題を整理すると判断しやすくなります。

  • 影響の大きさ:離職者数が多い部署・層に関わる課題ほど優先度が高い
  • 着手のしやすさ:コストや期間が少なくて済む施策から始めると、早期に効果を確認できる

たとえば面談機会の不足といった「比較的短期間で対応でき影響する従業員が多い課題」は、早めに着手すべき候補といえます。一方、人事評価制度や人員配置の全面的な見直しなど「影響は大きくても制度設計や調整に時間がかかる課題」は、中長期の計画を立てて進める方法が有効です。

課題の深刻度や対象となる従業員数・実施に必要な期間・コストを比較し、優先度の高いものから順番に進めることで、限られたリソースでも効果的に改善できます。

施策の実施前後で定着率を比較する

同じ条件で算出した施策実施前と実施後の定着率を比較して、施策の効果を確認しましょう。

たとえばオンボーディングを見直した場合は、改善前後の新入社員の定着率を比較します。数値に変化が見られないときは、次の観点から施策を見直しましょう。

  • 内容:研修の難易度や情報量が対象者にあっているのか
  • 対象者:実際に課題を抱えている部署や従業員へ施策が届いているか
  • 実施時期:支援が必要なタイミングで実施できているか
  • 実施方法:参加しにくい方法や頻度になっていないか

定着率の変化だけでは、施策が機能しなかった理由までは判断できません。数値と定性的な情報を組み合わせることで、改善すべきことが特定しやすくなります。

定着率を見るときの注意点

定着率は高ければよいとは限らず、従業員が長く在籍していても仕事への満足度が低かったり、組織内に必要な人材の入れ替わりが生じていなかったりする場合があります。

定着率を確認するときに注意したい、2つのポイントを解説します。

定着率100%を目標にしすぎない

定着率が高ければよいとは限らず、100%を目標にする必要はありません。

転職や独立、キャリアアップなど本人の意思による退職など、必ずしも組織にとってマイナスな離職ばかりではないからです。新しい人材の採用によって、組織に新たな知識や考え方が入ることで、停滞を防ぐ効果もあります。

重要なのは数値の高低よりも、従業員が納得したうえで働き続けているかどうかです。定期的な従業員アンケートや1on1で在籍者の満足度を把握しつつ退職者の退職理由も分析することで、定着率の実態をより正確に評価しましょう。

定着率だけで組織の状態を判断しない

定着率だけでは組織の状態を判断できないため、数値アップだけを目標にせず複数の指標を組み合わせることが大切です。定着率とあわせて確認したい主な指標は、以下のとおりです。

  • 従業員満足度:仕事内容・待遇・職場環境などへの満足度を確認できる
  • エンゲージメント:企業や仕事に対する従業員の関わり方や意欲を確認できる
  • 部署別の離職率:特定の部署に退職者が集中していないかを把握できる
  • 勤続年数別の離職状況:入社直後や中堅層など、離職が生じやすい時期を確認できる

たとえば、全社の定着率は高いものの特定部署の離職率が高ければ、その部署に固有の課題が生じているかもしれません。複数の指標を組み合わせると定着率だけでは見つけづらい課題を把握できます。

こうした従業員データを一元管理し、人材配置や育成に活かすには、タレントマネジメントツールの活用が効果的です。「freee人事労務のタレントマネジメント」は、従業員の状況を可視化し、データに基づいた人材配置や育成を支援します。

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まとめ

定着率は、採用や人材育成、職場環境などの課題を把握するために役立つ指標です。自社の数値を分析する際は、部署・入社年度・業界・企業規模など条件をそろえて比較する必要があります。

定着率を改善するには、採用時のミスマッチを減らし、オンボーディング・人事評価・人材育成・働き方などを自社の課題に応じて見直すことが大切です。

部署・職種・勤続年数などにわけて定着状況を継続的に分析するには、従業員情報を一元管理できる環境が必要です。従業員情報の管理から人事労務業務までまとめて行いたい場合は、「freee人事労務」をご活用ください。

よくある質問

定着率が低いとどのような問題がありますか?

定着率が低い状態が続くと、採用や教育を繰り返す必要があり、人材の確保・育成にかかるコストが増えます。また経験を積んだ従業員が退職すると、業務の引き継ぎや残った従業員への負担が生じます。

定着率の計算方法は?

定着率は、一定期間の開始時に在籍していた従業員のうち、期間終了時にも在籍している従業員の割合から算出します。基本の計算式は、以下のとおりです。

定着率(%)= 期間終了時の在籍者数 ÷ 期間開始時の在籍者数 × 100

たとえば、100人入社して1年後に90人が在籍している場合、定着率は90%です。確認したい対象(1年後・3年後・新入社員など)に応じて、期間と対象者を設定して計算します。

詳しくは、記事内「定着率の計算方法」をご覧ください。

定着率を上げる方法はありますか?

定着率を上げるには、まず従業員が定着しづらい原因を把握し、課題に合った施策を進めましょう。主な施策は以下のとおりです。


  • オンボーディング・1on1の実施:入社後の不安や悩みを把握し、早期離職につながる問題に対応する
  • 人事評価制度の見直し:評価基準を明確にし、従業員の成果や取り組みを適切に評価する
  • キャリア形成の支援:キャリアパスを示し、従業員が将来の働き方を考えられる環境を整える
  • 職場環境の見直し:労働時間や業務量を確認し、従業員が働き続けやすい環境を整える

一度にすべてを実施するのではなく優先順位を決め、施策の前後で定着率を比較しながら改善していきましょう。

詳しくは、記事内「社員の定着率を上げるには?効果的な7つの方法」をご覧ください。

参考文献

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