白色申告の基礎知識

青色申告と白色申告の違いは?メリット・デメリットやおすすめの申告方法をわかりやすく解説

監修 好川寛 プロゴ税理士事務所

青色申告と白色申告の違いをわかりやすく解説!確定申告前に正しく理解しておこう

確定申告の方法には青色申告と白色申告の2種類があります。

青色申告は、帳簿を適切に記録・保存し、その記録に基づいて申告・納税を行う方法です。準備は複雑ですが、正確な帳簿を作成・保存することで、節税につながる税制上の優遇を受けられます。

一方、白色申告は、確定申告時に求められる帳簿作成や提出書類が青色申告に比べて簡易な申告方法です。手間は少ないものの、節税効果はあまり期待できません。

本記事では、青色申告と白色申告の違いやそれぞれのメリット・デメリットを解説します。

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目次

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青色申告と白色申告の違いを項目別に解説

青色申告と白色申告は、提出書類・記帳方法・税制面などにおいて違いがあります。

また、青色申告の中でも65万円・55万円控除と10万円控除では、申告方法・提出書類・保存帳簿が異なります。

それぞれの違いは以下のとおりです。


青色申告
(65万円控除・55万円控除)
青色申告
(10万円控除)
白色申告
①節税効果×
②事前申請必要不要
③提出書類・確定申告書
・青色申告決算書
・貸借対照表と損益計算書
・第三表※1
・第四表※2
・確定申告書
・青色申告決算書
・損益計算書
・第三表※1
・第四表※2
・確定申告書
・収支内訳書
・第三表※1
③保存帳簿・総勘定元帳
・仕訳帳
・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・固定資産台帳など
・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・固定資産台帳
・経費帳など
・法定帳簿
・任意帳簿など
③保存書類決算に関して作成した棚卸表
④記帳方法複式簿記簡易簿記
(単式簿記)
簡易簿記
(単式簿記)
⑤e-Taxの利用必須※3任意任意
⑥不動産所得
係る控除の要件
アパートは10室以上
または
貸家は5棟以上
マンション一室からなし

※1 分離課税用、事業所得に加え譲渡所得がある場合
※2 損失申告用、赤字で青色申告する場合
※3 65万円控除の場合は、e-Taxによる提出または電子帳簿保存が必要


ここからは、青色申告と白色申告の違いを項目別に解説します。

節税効果の違い

青色申告を選択すると、最大65万円の青色申告特別控除を受けることができます。青色申告は特別控除以外にも節税につながる税制上の優遇措置が設けられていますが、白色申告にはそうした措置が設けられていません。

また、青色申告と白色申告では経費として認められる範囲も異なるため、節税効果に大きな差が生じます。


青色申告と白色申告の節税につながる優遇措置の違い

最大65万円の青色申告特別控除を受けるには、一定の要件を満たす必要があります。

事前申請の違い

青色申告をするためには、申告を行う年の3月15日までに青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出しなければなりません。その年の1月16日以降に開業した場合は、業務を開始した日から2ヶ月以内に提出する必要があります。

一方、白色申告をするために必要な申請は特にありません。青色申告承認申請書を出さなければ、自動的に白色申告になります。

提出書類・保存帳簿・保存書類の違い

青色申告は白色申告に比べて提出・保存する書類や帳簿が多く、その分作成に手間がかかります。また、青色申告でも、青色申告特別控除の金額によって提出・保存する書類の種類が異なります。

それぞれの提出・保存帳簿は以下のとおりです。


青色申告
(65万円控除・55万円控除)
青色申告
(10万円控除)
白色申告
提出書類・確定申告書
・青色申告決算書
・貸借対照表と損益計算書
・第三表※1
・第四表※2
・確定申告書
・青色申告決算書
(損益計算書)
・第三表※1
・第四表※2
・確定申告書
・収支内訳書
・第三表※1
保存帳簿・総勘定元帳
・仕訳帳
・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・固定資産台帳 など
・現金出納帳
・売掛帳
・買掛帳
・固定資産台帳
・経費帳 など
・法定帳簿
・任意帳簿 など
保存書類決算に関して作成した棚卸表など
そのほか業務に関して作成または受領した請求書・納品書・送り状・領収書などの書類

※1 分離課税用、事業所得に加え譲渡所得がある場合
※2 損失申告用、赤字で青色申告する場合


上記の書類に加えて、確定申告時には各種控除に関する書類やマイナンバーが記載された本人確認書類などを添付する必要があります。

各種控除で必要な書類は青色申告・白色申告どちらでも共通ですが、適用される控除は個人によって異なります。自身が対象となる控除を事前に確認しておきましょう。

【関連記事】
【2025年向け】確定申告の必要書類・添付書類は?準備するものをケース別にわかりやすく解説

記帳方法の違い

青色申告は複式簿記で、白色申告は簡易簿記(単式簿記)での記帳が必要です。ただし、10万円の青色申告特別控除を受ける場合は、青色申告でも簡易簿記が認められます。

青色申告で65万円控除または55万円控除を受ける場合は、主要な帳簿である「仕訳帳」と「総勘定元帳」を必ず複式簿記形式で作成する必要があります。


青色申告
(65万円控除・55万円控除)
青色申告
(10万円控除)
白色申告
複式簿記簡易簿記(単式簿記)

複式簿記は、取引の原因(売上)と結果(資産の増加)という2つの側面から取引を記録する方法です。一方、簡易簿記(単式簿記)は、ひとつの取引について単一の勘定項目に記録する方法です。

例:3万円の商品を現金で売り上げたときの記帳方法

◎複式簿記

日付借方貸方摘要
2025年○○月××日現金 30,000円売上 30,000円〇〇商店への売上

◎簡易簿記(単式簿記)

日付勘定科目金額摘要
2025年○○月××日売上30,000円〇〇商店への売上

e-Tax利用の違い

e-Taxとは、所得税や消費税などの国税の申告・申請・納税に関するオンラインサービスで、正式名称は「国税電子申告・納税システム」です。

青色申告で65万円の特別控除を受けるには、e-Tax(電子申告)を使って確定申告をしなければなりません。ただし、55万円や10万円の特別控除であればe-Taxの利用は任意です。また、白色申告でもe-Taxの利用は任意です。

e-Taxを利用すれば、自宅から24時間いつでも申告できますが、インターネット環境や必要書類の事前準備が必要です。

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e-Tax(電子申告)で確定申告をするやり方とは?スマホでの流れや必要書類を解説

不動産所得に係る控除の違い

不動産所得がある場合、青色申告で65万円または55万円の控除を受けるには、不動産の貸付が事業的規模である必要があります。

具体的には「アパートは10室以上・貸家は5棟以上」の規模です。マンション1室を貸している場合など、少額の不動産所得がある場合は、10万円の控除を受けることができます。

白色申告の場合は、不動産所得の規模要件がなく、10万円の控除が適用されます。


青色申告
(65万円控除・55万円控除)
青色申告
(10万円控除)
白色申告
アパートは10室以上
または貸家は5棟以上
マンション一室からなし

なお、事業所得と不動産所得の両方がある場合、不動産所得が事業的規模である必要はありません。

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青色申告のメリット

青色申告は、事業所得・不動産所得・山林所得のいずれかがある場合に選択できます。

青色申告の主なメリットは、節税効果が高いことです。青色申告によって受けられる節税効果は以下のとおりです。

最大65万円の青色申告特別控除が受けられる

青色申告特別控除は、要件にあわせて控除額が65万円・55万円・10万円と変動します。最大65万円の控除を受けるためには、以下の要件を満たさなければなりません。

  1. 不動産所得または事業所得がある
  2. 不動産所得の場合は事業的規模である
  3. 単式簿記ではなく複式簿記で記帳している
  4. 現金主義ではなく発生主義で記帳している
  5. 申告時に貸借対照表と損益計算書を添付する
  6. 確定申告の法定期限の厳守
  7. e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存

出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」

65万円の控除を受けるための要件のうち7以外を満たしている場合は、55万円控除が適用されます。

適正な金額の青色専従者給与を経費に算入できる

青色申告では、同一生計の配偶者や15歳以上の親族が納税者の事業に従事している場合に「青色事業専従者給与」の適用が認められます。

青色事業専従者給与とは、その配偶者や親族に対して支払った給与を必要経費として計上できる制度です。

事業自体の利益は減少しますが、その分納める税金が少なくなるため、実質的な世帯収入が増える可能性があります。

青色事業専従者として認められる要件は以下のとおりです。

  • 青色申告者と生計を一にする配偶者または親族であること
  • その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  • その年を通じて6ヶ月を超える期間、その青色申告者が営む事業に従事していること

出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」

制度を利用するには、その年の3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を管轄の税務署に提出しなければなりません。その年の1月16日以降に専従者給与が発生した場合は、専従者が追加されてから2ヶ月以内に提出する必要があります。

そのほか、青色事業専従者給与として認められるためには、届出書に記載された方法・金額の範囲内で給与が支払われており、かつ労働の対価として相当と認められる金額であることなどが要件として定められています。

なお、制度を利用できるか不安な場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。

赤字の繰越しや繰戻しができる

青色申告の場合、事業で生じた赤字分を最大3年間にわたり、翌年以降の所得金額から控除することができます。


赤字の繰り越しによる節税効果

また、前年に青色申告をしている場合は、その損失額を前年分の所得金額に繰戻して控除でき、所得税の還付を受けられる可能性があります。

減価償却資産(30万円未満)を一括経費にできる

減価償却とは、固定資産の取得価額をその資産の使用期間にわたって分割し、各年の費用として計上する会計処理の方法です。通常、事業に関する固定資産を購入した場合、一括で経費として計上できるのは10万円未満のものに限られます。

ただし、青色申告では、2026年3月31日までに購入した30万円未満の資産については、経費として一括で計上できる特例が適用されます。

そのため、利益の多い年に設備投資を行うと、経費計上した分の利益を圧縮でき、節税効果が期待できます。


出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」

【関連記事】
減価償却とは?仕組みや対象資産、計算方法をわかりやすく解説

貸倒引当金を一括評価で計上できる

貸倒引当金とは、将来的に売掛金や貸付金などが回収不能となるリスクに備え、あらかじめ損失額を見積もって計上する会計上の準備金のことです。

青色申告では、期末時点の債権全体に対し、一括評価による一定額を貸倒引当金として経費に計上できる特例が設けられています。

計上できる金額は、年末時点の売掛金・貸付金などの合計額の5.5%以下(金融業の場合は3.3%以下)です。

なお、白色申告でも貸倒引当金の計上は可能ですが、個別評価金銭債権(不良債権)でのみ認められています。

【関連記事】
貸倒引当金とは?計算方法や勘定科目の種類・仕訳について解説

青色申告のデメリット

節税効果の高い青色申告ですが、以下のようなデメリットもあります。

確定申告前に申請手続きを行う必要がある

青色申告をするためには、その年の3月15日までに青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出しなければなりません。その年の1月16日以降に開業した場合は、開業から2ヶ月以内の提出が必要です。

青色申告承認申請書を提出しない場合は、自動的に白色申告となります。なお、1年目から青色申告で確定申告をする場合は、これに合わせて開業届を提出するようにしましょう。

【関連記事】
開業届とは?書き方や提出に必要なもの、提出のメリット・注意点を解説

記帳方法が複雑(複式簿記)になる

青色申告で65万円または55万円の特別控除を受ける場合、複式簿記で記帳しなければなりません。複式簿記は、簡易簿記(単式簿記)に比べて複雑であるため、一定の会計知識が必要です。

青色申告の特別控除は記帳方法によって控除額が異なります。簡易簿記で記帳する場合の控除額は10万円です。複式簿記で正確な帳簿を備えた場合に限り、65万円または55万円の控除を受けることができます。

白色申告のメリット

白色申告は、節税上のメリットが少ないものの、帳簿作成や手続きの面で以下のようなメリットがあります。

記帳が簡単で申告手続きがシンプル

白色申告では、原則として個別の取引ごとではなく、日々の売上・仕入れ・経費などの合計金額をまとめて記帳する簡易簿記(単式簿記)による記帳が認められています。

そのため、複式簿記よりも記入項目数が少なく、会計知識がなくても記帳しやすい点がメリットです。

確定申告時に用意する収支内訳書なども、青色申告に比べて簡易な書類で足りるため、確定申告にかかる手間を最小限に抑えることができます。

事前手続きがいらない

青色申告の場合、所定の期日までに青色申告承認申請書の提出が必要です。しかし、白色申告は事前の手続きが不要なため、青色申告のように申請書を作成・提出する必要がありません。

白色申告のデメリット

白色申告は青色申告に比べると申告にかかる手間が少ないですが、節税効果が期待できない点が大きなデメリットです。

特別控除などが受けられず節税効果が期待できない

白色申告には、青色申告のような特別控除がありません。白色申告にも「事業専従者控除」の制度がありますが、控除額には上限が設けられています。

  • 配偶者へ支払った分は86万円まで
  • その他の親族へ支払った分は50万円まで

出典:国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」

たとえば、配偶者に毎月20万円の給与を支払った場合、1年間で240万円となります。青色申告では、この全額を「青色事業専従者給与」として経費計上できますが、白色申告では86万円までしか控除できません。

つまり、差額の154万円は経費とならず、課税所得に含まれてしまいます。

このように、白色申告では、配偶者や親族に支払った給与のうち、あらかじめ定められた金額を超える部分は経費として計上できません。そのため、青色申告と比べると節税効果は限定的です。

赤字の繰越控除ができない

事業で生じた赤字の繰越しが認められているのは、青色申告のみです。白色申告では、赤字を翌年以降に繰越控除することはできません。

そのため、赤字が続いた後に黒字に転じた場合などは、青色申告に比べて税負担が重くなります。

節税効果を高めたい人は青色申告がおすすめ

個人事業主の場合、事業で生じた利益は事業所得です。所得税は累進課税制度が採用されているため、個人事業主にとって節税対策は重要です。

青色申告は白色申告に比べて提出書類が多く、記帳方法も複雑ですが、その分節税効果が高くなります。そのため、節税して手元にお金を残したいと考えている個人事業主は、青色申告による確定申告を検討しましょう。


青色申告と白色申告の節税効果の違い

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まとめ

確定申告の方法は青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告と白色申告は、提出書類・記帳方法・税法上の優遇措置が大きく異なります。

青色申告をする場合は、その年の3月15日までに青色申告承認申請書を税務署へ提出しなければなりません。事前申請がないとその年の確定申告は自動的に白色申告になります。

青色申告は最大65万円の特別控除や赤字の繰越し、専従者給与の計上など節税メリットが豊富ですが、記帳や書類作成が複雑です。

一方、白色申告は申請不要で手続きが簡単なため初心者に適していますが、節税効果は限定的です。自身の事業規模や節税ニーズに応じて選択しましょう。

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よくある質問

白色申告と青色申告どちらがお得?

青色申告は、青色申告特別控除をはじめとするさまざまな税制上の優遇措置があり、節税効果が期待できます。

一方、白色申告は提出書類が少なく、簡易簿記(単式簿記)での記帳が認められているため、青色申告に比べて確定申告にかかる手間が少なく済みます。

節税効果を高めたい人は、青色申告の選択を検討しましょう。

詳しくは、記事内「青色申告と白色申告の違いを項目別に解説」をご覧ください。

青色申告はどんな人がやる?

確定申告で青色申告を選択できるのは、事業所得・不動産所得・山林所得のある場合に限られます。また、青色申告をする場合は、原則としてその年の3月15日までに開業届と青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出しなければなりません。

青色申告承認申請書を提出していない場合は自動的に白色申告となります。

青色申告について詳しく知りたい人は、別記事「青色申告とは?個人事業主で向いている人や確定申告のやり方をわかりやすく解説」をご覧ください。

白色申告に向いている人は?

確定申告の対象となる所得額が少ない場合は、青色申告による税制上の優遇措置を十分に活用できず、節税効果が限定的になる場合があります。

そのため、経理作業に多くの時間を割けない人や、複雑な帳簿管理が負担となる人には、手間の少ない白色申告が向いているといえます。

詳しくは、記事内「白色申告のメリット」をご覧ください。

参考文献

監修 好川寛(よしかわひろし)

プロゴ税理士事務所代表。20年以上のキャリアをもつ国税OB税理士。税務調査や複雑な税務判断に精通し、幅広い税務相談に対応。クライアントの事業を深く理解し、長期的な視点で最適な税務戦略を支援しています。

監修者 好川寛

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