白色申告の基礎知識

白色申告で利用できる控除の種類と控除額青色申告との違いも解説

監修 安田亮 安田亮公認会計士・税理士事務所

白色申告で利用できる控除の種類と控除額青色申告との違いも解説

白色申告を行うと基礎控除48万円が受けられます。

白色申告は手続きが簡単で、経理作業に不慣れな個人事業主に適していますが、青色申告と比較して控除額が限られています。

本記事では、白色申告と青色申告の違いや控除の種類、事業専従者控除などについて詳しく解説します。また、白色申告で所得税を計算する方法や、確定申告を効率的に終わらせるためのポイントも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

2024年提出(令和5年分)の確定申告アップデート情報

所得税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年3月15日(金)
消費税の確定申告期間:2024年2月16日(金)〜2024年4月1日(月)
※ 贈与税の申告・納税期間:2024年3月15日(金)まで

<2024年(令和5年分)の確定申告のポイント>

  1. 「源泉徴収票・国民年金基金掛金・iDeCo・小規模企業共済掛金」が追加されるなど、マイナポータル連携をすることで自動入力できる対象が増えます。
  2. 国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、消費税の申告書を作成できるようになる予定です。今回、インボイス登録によって課税事業者になり、消費税の納付が必要になった方はチェックしましょう!

詳しくは国税庁ホームページ「令和5年分 確定申告特集」をご参照ください。

目次

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白色申告と納税

個人事業主は、1月1日から12月31日までの所得を計算・申告し、納税する義務があります。この一連の作業を確定申告といいます。

会社員は多くの場合、年末調整によって所得税の精算が完了するため、確定申告が不要です。

しかし、個人事業主は自分で所得および所得税を計算し、税務署に申告しなければなりません。

確定申告の方法には白色申告と青色申告の二種類があります。白色申告は、簡易簿記による記帳が認められている申告方法です。

簡易簿記とは、売上・仕入・経費などの動きをお小遣い帳のように記帳する方法で、単式簿記とも呼ばれます。

ひとつの取引をふたつの側面(原因・結果)から捉え、借方・貸方に分けて記帳する複式簿記とは違い、専門知識がなくても比較的簡単に記帳できるのが特徴です。

3月15日まで(1月16日以後に事業を開始した場合は事業開始日から2ヶ月以内)に青色申告承認申請書の提出を行っていなければ、その年の確定申告は白色申告で行います。


出典:国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」

白色申告と青色申告の違い

白色申告と青色申告の主な違いは、以下の通りです。


項目白色申告青色申告
(10万円控除)
青色申告
(65万円控除)
必要な事前手続きなしその年の3月15日までに「青色申告承認申請書」と「開業届」を所管の税務署に提出(※)
記帳方法簡易(単式)簿記簡易(単式)簿記複式簿記
青色申告特別控除なし10万円65万円
青色事業専従者給与の必要経費の算入なし
(事業専従者控除あり)
ありあり

※)1月16日以後に事業を開始した場合は事業開始日から2ヶ月以内に提出します。

白色申告は青色申告と違い、特別控除が受けられません。青色申告では、複式簿記による記帳に基づいて確定申告を行うと、最高65万円の青色申告特別控除が受けられます。

なお、青色申告特別控除が10万円でよければ、簡易(単式)簿記による記帳も可能です。

また、青色申告者は専従者給与(生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち15歳以上、かつ事業に専ら従事している方に支払った給与)を一定金額の範囲内で必要経費に算入できます。

しかし、白色申告では専従者給与を経費に算入できません。ただし、白色申告者には、事業専従者控除が設けられています。詳しくは後述します。


出典:国税庁「No.2070 青色申告制度」

【関連記事】
青色申告と白色申告の違いは?7項目で比較するメリット・デメリットを徹底解説

個人事業主が白色申告で利用できる控除の種類・控除額

白色申告で利用できる控除には、所得控除・税額控除・事業専従者控除があります。

個人事業主が納める所得税は、年間の売上から経費や控除を差し引いた金額に対して税率をかけた金額が課税されます。言い換えれば、所得税とは「一年間に得た利益(儲け)に対する税金」です。

控除を正しく活用し、税金の負担を軽減しましょう。

所得控除

所得控除とは、税金を計算する際の所得金額から一定額を差し引ける制度です。白色・青色申告にかかわらず、条件を満たせば適用されます。

所得控除は全部で15種類あり、それぞれ控除を受けるための要件や控除額が定められています。控除対象者に当てはまる場合は、控除をしっかりと活用したいところです。

<15種類の所得控除一覧>

控除の種類控除が受けられる場合控除額
雑損控除災害や盗難、横領によって損害を受けたときに適用される控除以下のいずれか多い方

・(差引損失額)-(総所得金額等)×10%
・(差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円
医療費控除一定額以上の医療費を支払った場合。生計を一にする配偶者その他の家族も含まれる。(支払った医療費-保険金などで補填される金額)-10万円
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は所得金額×5%
社会保険料控除健康保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料、国民年金保険料、国民年金基金の掛金、厚生年金保険料などを支払った場合に適用される控除。生計を一にする配偶者その他の家族も含まれる。 支払った保険料の合計
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済の掛金を支払った場合に適用される控除支払った掛金の合計額
生命保険料控除生命保険や介護医療保険、 個人年金保険で支払った保険料がある場合に適用される控除一定の方法で計算した金額
地震保険料控除地震保険料を支払った場合に適用される控除一定の方法で計算した金額
(最高5万円)
寄附金控除ふるさと納税や認定NPO法人等に対して寄附をした場合に適用される控除「寄附金支出合計額」と「総所得金額 ×40%」のいずれか少ない方-2,000円
障害者控除納税者や控除対象配偶者、扶養親族が障害者である場合に適用される控除一人につき、
①障害者27万円
②特別障害者40万円
③同居特別障害者75万円
寡婦(寡夫)控除配偶者と死別または離婚して扶養家族がいる場合に適用される控除
※寡夫控除は、2020年度分より、ひとり親控除に変更
27万円
(一定の要件を満たす場合35万円)
ひとり親控除納税者がひとり親であるときに適用される控除
※ひとり親控除は令和2年分の所得税から適用
35万円
勤労学生控除学校に行きながら働いている場合に適用される控除
※ただし、前年分の合計所得金額が75万円以下
27万円
配偶者控除配偶者の合計所得が48万円以下の場合に適用される控除 ①一般控除対象配偶者:最大38万円
②老人控除対象配偶者:最大48万円
(控除対象配偶者のうち年齢が70歳以上)
配偶者特別控除納税者の合計所得が1,000万円以下で、配偶者の合計所得が48万円以上133万円未満である場合に適用される控除配偶者の所得金額によって最大38万円
扶養控除16歳以上の子どもや両親などを扶養している場合に適用される控除 ①一般の控除対象扶養親族:38万円
②特定扶養親族:63万円
(扶養親族が19歳以上23歳未満の方)
③老人扶養親族:最大58万円
基礎控除すべての人に適用される控除最大48万円(合計所得金額が2,400万円以下の場合)
出典:国税庁『No.1100 所得控除のあらまし』

15種類の所得控除のうち、利用されるケースの多い「基礎控除」と「医療費控除」の概要を以下で詳しく紹介します。

基礎控除

基礎控除は、すべての納税者(合計所得金額が2,500万円超の方を除く)が適用できる所得控除です。合計所得金額に応じて、所得から最大48万円を差し引けます。


合計所得金額控除額
2,400万円以下48万円
2,400万円超2,450万円以下32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円
2,500万円超0円
出典:国税庁「No.1199 基礎控除」

医療費控除

医療費控除は、納税者本人または生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費を支払った場合に、一定の金額を所得から差し引くことができるもので、控除の額は下記の式で計算されます。

実際に支払った医療費 - 保険金等で補填される金額 - 100,000(円) = 医療費控除の額(※)

(※)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%の金額を差し引きます。
(※)控除の額は最高で200万円です。なお、通院のための交通費や入院時の部屋代・食事代も医療費控除の対象となります。
(※)電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除き、タクシー代は控除の対象にはなりません。また、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金も控除の対象外です。

所得控除のより具体的な解説は、下記の記事をご覧ください。

【関連記事】
確定申告の所得控除は15種類! 対象となる条件や控除額、税額控除との違いについて解説

税額控除

税額控除は、算出した税額から一定額を差し引ける制度です。主な税額控除には、配当控除や住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)、外国税額控除などがあります。

主な税額控除概要
配当控除総合課税の配当所得がある場合に、原則として配当所得金額の10%または5%相当額を控除する制度
住宅借入金等特別控除
(住宅ローン控除)
住宅ローンなどの年末残高の合計額をもとに計算される金額を最大13年間にわたって控除する制度
外国税額控除日本の居住者が外国の法令によって所得税に相当する税金を納付する場合に、二重課税を調整するために一定額を控除する制度
出典:国税庁「No.1200 税額控除」
出典:国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」


たとえば、住宅借入金等特別控除で控除できる各年の限度額(控除限度額)は、次の式で計算される金額です(居住の用に供した年が2024年1月1日~2025年12月31日の場合)。

各年の控除限度額 = 年末残高(※)× 0.7%

(※)上限2,000万円

白色申告の事業専従者控除

白色申告の個人事業主固有のものとして「事業専従者控除」があります。

個人事業主が家族に支払う給与は、原則として経費になりません。しかし、以下の要件のすべてに該当する事業専従者(事業を手伝う者)がいる場合は、控除の対象となります。

事業専従者控除の要件

  • 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
  • その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  • 確定申告の期間(1月1日から12月31日まで)で、6ヶ月を超える期間、白色申告者が営む事業に専ら従事していること

事業専従者控除額は、事業主の配偶者であれば最大86万円、それ以外は専従者一人につき最大50万円です。

白色申告での所得税計算

所得税は、所得から所得控除を差し引いた課税所得金額に税率をかけて、さらに税額控除額を差し引いて算出します。

所得税=(所得金額-所得控除)×税率 – 税額控除額

たとえば、「課税される所得金額」が700万円であれば、求める税額は次の通りです。

974,000(円) = 7,000,000(円) × 0.23 – 636,000(円)

<所得税の速算表>

課税される所得金額税率控除額
1,950,000円以下5%0円
1,950,000円を超え
3,300,000円以下
10%97,500円
3,300,000円を超え
6,950,000円以下
20%427,500円
6,950,000円を超え
9,000,000円以下
23%636,000円
9,000,000円を超え
18,000,000円以下
33%1,536,000円
18,000,000円を超え
40,000,000円以下
40%2,796,000円
40,000,000円超45%4,796,000円
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」

ちなみに、青色申告と白色申告、それぞれの予定納税額が知りたい場合や、副業でどれくらいの納税になりそうなのか知りたい場合は、以下の診断ページがおすすめです。

青色申告の税額診断 | 最短1分で個人事業主の税額を算出』では、所得税、住民税、社会保険料、個人事業税がどれくらいかかるのかが自動で算出されます。

青色申告だけではなく、白色申告の納税額も算出されるため、青色と白色どちらがお得か比べることができます。

副業の税額診断 | 1分で所得税・住民税・社会保険料を算出』は会社員で確定申告をする方向けの診断ページです。こちらも所得税・住民税・社会保険料が算出されます。

これらの診断結果をそのまま確定申告で提出することはできませんが、どれくらいの納税予定になりそうなのか目安のひとつになるでしょう。

また、これまで白色申告の控除や所得税計算についてご説明してきましたが、ご自身で計算するよりも会計ソフトを活用して確定申告する方法がおすすめです。

まとめ

確定申告には、白色申告と青色申告があります。白色申告は比較的帳簿付けが簡単ですが、青色申告特別控除を受けることができません。

ただし、所得控除や税額控除は、要件を満たせば白色申告・青色申告にかかわらず適用されます。

また、白色申告では事業専従者控除の特例が設けられており、事業専従者がいる場合に最大86万円を控除できます。

白色申告と青色申告の違いや白色申告で利用できる控除に関する正しい知識を身につけましょう。

白色申告を簡単に終わらせる方法

確定申告は個人事業主・フリーランスの人だけでなく、副業で収入を得た会社員の方など、多くの人に関わりが深い一大イベントです。

確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、対象者は期限までに書類を作成し納税をすることが義務づけられています。青色申告するには事前に税務署への届出が必要になるため、その手続きをしていない場合は自動的に白色申告となります。

青色申告に比べると簡単と言われる白色申告ですが、書類作成に不安をお持ちの方は少なくありません。はじめての確定申告で不安な人にはfreee会計がおすすめです。

freee会計は、〇✕形式の質問に答えることで簡単に白色申告に必要な書類を作成できます。

ここからはfreee会計を使って書類完成までの3ステップを紹介します。

STEP1: 基本情報を入力する

自身の情報や仕事(事業)の内容について入力し、青色申告・白色申告のいずれかを選択します。各項目の横には「?」マークがついており、カーソルを当てると詳しい説明を見ることもできます。


freee会計 基本情報入力画面

自身の仕事(事業)内容などの基本情報を入力!

STEP2: 申告書作成に必要な情報を◯✕形式で回答

次に、白色申告書を作成する際に必要な情報を入力していきます。1年間の収支に関して画面の指示に沿って○✕形式で15の質問に答えていきます。


freee会計 書類作成画面「申告書に必要な情報を丸バツ形式で回答」

月額980円(※年払いで契約した場合)から利用できる有料プランでは、チャットサポートがついているので、わからないことがあったらすぐに質問ができます。

STEP3: 白色申告に必要な書類が完成!

上記の2ステップで白色申告に必要な確定申告書が自動で作成されます。有料プランでは、プリントアウトも可能なので、印刷して税務署に郵送すれば確定申告が完了です。※無料プランでは申告書作成まで可能。

また、マイナンバーカードとカードリーダがあれば自宅からでもすぐに提出が完了するので、税務署に行ったり郵送したりする手間も削減されます。

税務署に行かずに確定申告を終わらせるなら、e-tax(電子申告)がおすすめです。e-tax(電子申告)を検討している人はこちらをご覧ください。


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STEP2で入力した内容を元に確定申告書が完成!

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余裕をもって確定申告を迎えるためにも、ぜひfreee会計の活用をご検討ください。

よくある質問

白色申告で最大65万円の特別控除は受けられる?

白色申告には特別控除がありません。一方、青色申告で申告すると最大65万円の青色申告特別控除が適用されます。

白色申告と青色申告の控除の違いを詳しく知りたい方は、「白色申告と青色申告の違い」をご覧ください。

白色申告で利用できる最大86万円の事業専従者控除とは?

事業専従者控除とは、事業に従事している配偶者や親族がいる場合に、所得金額などに応じて計算される金額を必要経費とみなせる特例です。

白色申告では、専従者給与を必要経費に計上できない代わりに事業専従者控除の特例が設けられています。控除額は事業主の配偶者であれば最大86万円、それ以外は専従者一人につき最大50万円です。

事業専従者控除の概要を詳しく知りたい方は「白色申告の事業専従者控除」をご覧ください。

監修 安田 亮(やすだ りょう)

1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応などを経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

監修者 安田亮

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