
工数管理システムとは、プロジェクトや日々の業務にかかる作業時間(工数)の記録・集計や分析、レポーティングなどの機能を備えたシステムのことです。業務効率化やコストの正確な把握、リソースの最適化などに活用できる一方、導入の際は自社の業務内容や業務フローなどに適したシステムを選定する必要があります。
本記事では、工数管理システムでできることや料金体系、相場、選定のポイントなどを詳しく解説します。
目次
- 工数管理システムとは
- 工数管理システムを使うとできること
- 工数入力の効率化・正確性向上
- リアルタイムデータ集計・可視化
- 工数分析
- レポーティング
- 他のシステムとの連携
- 工数管理システムがもたらすメリット
- 管理業務の効率化
- 迅速かつ客観的な意思決定
- 内部統制の強化
- 工数管理システムがもたらすデメリット
- 導入時・運用時の費用発生
- 定着までにかかる工数の増加
- 従業員の心理的抵抗
- 「クラウド型」と「インストール型(オンプレミス型)」の違い
- クラウド型の特徴
- インストール型(オンプレミス型)の特徴
- 工数管理システムの課金体系と費用相場
- 主な課金体系
- 費用相場
- 工数管理システムを選ぶ際のポイント
- 導入の目的を明確化しておく
- 必要な機能を精査する
- 操作性・使いやすさを重視する
- 業務フローとのマッチングを検討する
- サポート体制を確認する
- 他システムと連携できるか確認する
- 無料トライアル・デモを活用する
- まとめ
- よくある質問
工数管理システムとは
工数管理システムとは、プロジェクトや日常の業務にかかった時間や人員数を効率的に把握・管理することを目的としたシステムを指します。
従来の工数管理では、エクセル(Excel)やスプレッドシートなどを用いて手作業で行うケースも多くありました。しかし、人の手で管理する方法には「集計・分析に時間がかかる」「記入漏れやミスが起こりやすい」「リアルタイムでの状況把握が難しい」といった課題が存在します。
こうした課題を解決し、データの収集から分析、改善までのプロセスを効率化・自動化できるのが工数管理システムです。
以前は専用のソフトウェアや基幹システム(ERP)の一部として提供されることが主でしたが、近年ではクラウド技術の発展に伴い、手軽に導入できる専用ツールが登場。勤怠管理システムなど、他のツール・サービスと連携して利用できるものも増えています。
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工数管理システムを使うとできること
工数管理システムの導入によって実現できることには、以下のようなものがあります。
- 工数入力の効率化・正確性向上
- リアルタイムデータ集計・可視化
- 工数分析
- レポーティング
- 他のシステムとの連携
工数入力の効率化・正確性向上
工数管理システムを用いると、工数入力の効率化および精度向上につながります。具体的には、次のような機能があります。
主な機能
- PCやスマートフォンから簡単に入力できるインターフェース
- 実作業時間の自動計測
- カレンダーツールやグループウェアとの連携による実績の自動取り込み
- よく行う作業のテンプレート化
リアルタイムデータ集計・可視化
工数管理システムを用いればリアルタイムでのデータ集計・可視化も可能になるため、日次、週次で状況を把握したいケースにも有効です。担当者は面倒な集計作業から解放され、常に最新の状況を把握できるようになります。
リアルタイムでのデータ集計・可視化につながる主な機能には次のようなものがあります。
主な機能
- 入力された工数データを自動で集計
- プロジェクト別、タスク別、担当者別、部門別などさまざまな切り口での工数状況をダッシュボードで表示
工数分析
集計したデータは分析でき、見積もりの見直しや業務フローの改善などに役立ちます。具体的には、以下のような内容を分析します。
主な分析内容
- 予定工数(見積もり)と実績工数の差異
- 想定以上に工数がかかっているボトルネック工程
- 担当者ごとの作業負荷
- 組織・個人ごとの生産性
レポーティング
工数管理システムの多くは、先に説明した分析結果をもとにしたレポートを自動で生成する機能を備えています。
プロジェクトの進捗報告書、原価計算に必要な工数データ、個人の作業報告書などを必要な形式で出力できるため、会議資料や経営層へ提出する報告資料を作成する手間が削減できます。
他のシステムとの連携
多くの工数管理システムは、他の業務システム・基幹システムと連携できます。
たとえば、勤怠管理システムと連携して勤務時間と作業時間を一元管理することも可能。給与計算システムや会計システムと連携して人件費計算や原価計算を自動化したり、プロジェクト管理ツールやコミュニケーションツールと連携して情報を集約したりすることもできます。
工数管理システムがもたらすメリット
工数管理システムの導入によって得られるメリットは、主に3つあります。以下の効果を求めたい企業・組織にとっては有効な選択肢となるでしょう。
- 管理業務の効率化
- 迅速かつ客観的な意思決定
- 内部統制の強化
管理業務の効率化
工数管理システムを使えば、工数の入力、集計、確認、レポート作成、といった一連の作業にかかる時間や手間の大幅な削減が可能です。
管理者は分析やその後の改善活動といった、付加価値の高くよりコアな業務に時間を割けるようになるでしょう。また、ボトルネックの発見と解消、業務プロセスの標準化、ナレッジの蓄積などが可能になり、組織全体の生産性向上にも貢献します。
迅速かつ客観的な意思決定
プロジェクトごとの作業実績や工数の偏りが、リアルタイムで可視化されます。これにより、業務の正確な負荷状況を把握しながら、柔軟かつ迅速な人員の配置や変更が可能。プロジェクトの採算性も客観的に把握・分析できるため、無駄なコストの発生を防ぐことにもつながります。
主観や経験則に頼るのではなく、工数管理データにもとづいた客観的かつ的確な意思決定を実現できます。
内部統制の強化
工数管理システムを導入することで、「誰が」「いつ」「どの業務を行ったか」という実績が正確に記録されるようになります。これまで属人化・ブラックボックス化していた業務内容・業務フローの透明性が向上すれば、内部統制の強化につながります。
内部統制が機能している状態を維持することは、法令遵守やIPO準備などの観点において重要です。
工数管理システムがもたらすデメリット
工数管理システムの導入には、メリットだけでなくデメリットもあります。発生する費用や想定通りの効果が得られないケースなどを例に、工数管理解システムのデメリットを見ていきましょう。
- 導入時・運用時の費用発生
- 定着までにかかる工数の増加
- 従業員の心理的抵抗
導入時・運用時の費用発生
工数管理システムの導入には、初期費用や運用コストがかかります。初期費用として発生する可能性があるのは、要件定義費用やサーバー構築費用など。運用コストには、システムのライセンス費用やクラウドサービスの月額利用料などがあります。これらを負担に感じるケースもあるでしょう。
定着までにかかる工数の増加
システムの選定、導入準備、初期設定、従業員への説明やトレーニング、既存業務フローの見直しなど、組織全体に利用を定着させるまでには相応の時間と労力がかかります。従業員が慣れるまでに時間がかかり、その間は工数が増加する可能性もあります。
一括で工数を登録したり、直感的に確認したりできるツールを使用すれば、定着までのステップを効率化しやすくなります。
従業員の心理的抵抗
従来の方法に慣れている従業員が、新しいシステムの導入に抵抗感を持つケースもあります。また、工数管理システムの導入によって作業時間を細かく管理されることに対し、「監視されているような感覚」を抱く従業員がいるかもしれません。事前に導入目的やメリットを丁寧に説明し、理解を得ることが肝要です。
また、適切なユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)も心理的な抵抗感の解消につながります。たとえばスマートフォンで工数を登録・確認できるなど、普段使い慣れている方法、あるいはやりやすい方法で取り組める工数管理システムがおすすめです。
「クラウド型」と「インストール型(オンプレミス型)」の違い
工数管理システムをはじめとする各種業務システム・基幹システムの多くは、「クラウド型」と「インストール型(オンプレミス型)」に分けられます。それぞれの特徴と違いを把握しておきましょう。
クラウド型の特徴
仕様
クラウド型は、インターネットを介して利用するシステムです。インターネット環境があれば、パソコンやスマートフォン、タブレットなど、さまざまなデバイスからアクセスして使用できます。ソフトウェア本体やデータは、サービス提供事業者のサーバーで管理するのが一般的です。
メリット
自社でサーバー構築などを行う必要がないため、契約後にすぐ利用できるという導入ハードルの低さが大きなメリットです。また、クラウド型は初期費用が安い傾向にあります。サーバー購入やソフトウェアライセンスの一括購入が不要なため、初期投資を抑えたいケースに向いています。
運用・保守をサービス提供事業者が担うため、サーバー管理、ソフトウェアのアップデート、セキュリティ対策などの手間がかからない点も嬉しいポイントです。システムに拡張性があり、ユーザー数の増減やプラン変更に柔軟に対応しやすいというメリットもあります。
デメリット
クラウド型は月額・年額などのランニングコストが発生するケースが一般的で、継続的にコストがかかる点はデメリットといえるでしょう。また、オンプレミス型に比べると独自の細かいカスタマイズが難しいケースもあります。
加えて、セキュリティ面に課題がある点も注意が必要です。データを外部サーバーに置くことになるため、自社のセキュリティポリシーとの整合性を確認しなければなりません。クラウド型には、オフライン環境で利用できないという制限もあります。
インストール型(オンプレミス型)の特徴
仕様
インストール型(オンプレミス型)は、文字どおり自社のサーバーにソフトウェアをインストールし、自社のネットワーク内で利用するタイプのシステムです。多くの場合、システムやデータの管理も自社で行います。
メリット
インストール型はカスタマイズ性が高く、自社の業務に合わせて柔軟にシステムを改修・構築しやすい点がメリットです。そのため、既存システムとの連携もしやすいといえます。
加えて、高度なセキュリティ管理に対応しやすい点も特徴です。自社のセキュリティポリシーに準拠した、「閉じたネットワーク環境」での運用が可能になります。また、インストール型は買い切り型のライセンスであることが多く、その場合は月額費用などのランニングコストを抑えられる可能性があります(ただし保守費用は別)。
デメリット
インストール型は、初期費用が高い傾向にあります。ソフトウェアライセンス費用に加え、サーバーの購入・構築費用などが必要になるためです。また、サーバー構築やインストール、設定などに時間を要することから導入まで時間がかかります。
さらに、クラウド型と比較して運用・保守の負荷が高い点もデメリットといえるでしょう。サーバー管理、OSやソフトウェアのアップデート、バックアップ、セキュリティ対策などを自社で行う必要があり、専門知識を持つ担当者が不可欠です。
インストール型は社内で使用する目的で構築されていることも多く、社外からアクセスするには別途VPNなどの環境構築が必要になる場合もあります。
工数管理システムの課金体系と費用相場
工数管理システムは、サービスによって費用相場や費用発生の仕方が異なります。主な課金体系や相場を解説します。
主な課金体系
工数管理システムの主な課金体系は、「初期費用 + 月額(または年額)利用料」「ライセンス買い切り型 + 保守費用」の2種類です。
「初期費用 + 月額(または年額)利用料」は、クラウド型サービスの多くで採用されている料金体系です。初期費用は無料または数万円程度、月額・年額利用料はユーザー数や機能プランに応じて変動するケースが基本といえます。「1ユーザーあたり月額〇〇円」といったように、利用人数に応じて費用が決まる従量課金制のサービスが一般的です。
「ライセンス買い切り型 + 保守費用」は、インストール型(オンプレミス型)で多い料金体系です。はじめにソフトウェアライセンスを購入し、その後は任意または必須で年間の保守サポート費用が発生します。機能に応じたプランが複数あり、基本機能のみの相対的に安価なプランから多機能な上位プランまで、範囲に応じて料金が変わるのが一般的です。
費用相場
クラウド型・インストール型(オンプレミス型)それぞれのシステムの費用相場について紹介します。以下の金額があくまでも目安である点には注意が必要です。
クラウド型の費用相場
プラン | 内容 |
---|---|
無料プラン | ・機能やユーザー数に制限がある場合も多い |
有料プラン | ・1ユーザーあたり月額数百円から数千円程度 |
規模が大きい場合はボリュームディスカウントが適用されたり、年間契約によって割引を受けられたりするケースもあります。また、高機能なサービスやERP連携可能なものは、さらに高額になることもあり得ます。
インストール型(オンプレミス型)の費用相場
費用 | 内容 |
---|---|
初期費用 | ・ライセンスやサーバー費用を含め、数十万円から数百万円程度 |
保守費用 | ・年間でライセンス費用の10%から20%程度が目安 |
自社の業務フローに合わせて大幅なカスタマイズを想定している場合は、開発にかかる費用が初期費用の金額を大きく押し上げる要因となるので注意が必要です。
工数管理システムを選ぶ際のポイント
工数管理システムの導入において失敗を避けるには、自社に適したものを選定する必要があります。選定の際は、以下のポイントを押さえるようにしましょう。
導入の目的を明確化しておく
導入の目的を明確にすることで、必要な機能を特定しやすくなります。目的が曖昧なまま選定を進めてしまうと、自社に何が必要かという基準もぶれてしまいます。たとえば、原価計算の精度向上、プロジェクトの進捗遅延防止、残業時間の削減など、工数管理システムの導入によって実現したいことをはっきりさせておくのが重要です。
必要な機能を精査する
導入の目的に基づき、「絶対に必要(Must-have)な機能」と「あれば嬉しい(Nice-to-have)機能」をリストアップしてください。システムは必ずしも多機能ならよいというわけではありません。使用しない機能のせいで無駄なコストが発生してしまう恐れもあります。自社に必要な機能を過不足なく備えているか、しっかり確認しましょう。
操作性・使いやすさを重視する
入力インターフェースが複雑だったり操作がわかりにくかったりすると、入力ミスや入力漏れが起こりやすく、従業員が慣れるまでに時間がかかってしまいます。「誰でも直感的かつ簡単に入力・操作できるか」という視点は、重要な選定ポイントです。
業務フローとのマッチングを検討する
自社の業種や業態、業務内容によって、求められる工数管理の粒度や管理項目は異なります。そのため、自社の業務フローにスムーズに組み込めるか、必要な管理項目に対応しているかを確認することが重要です。
サポート体制を確認する
導入時の設定支援や操作方法に関するトレーニング、導入後の問い合わせ対応など、サービス提供元のサポート体制が十分か確認しておきましょう。特に、初めて業務システムを導入する場合は重視したいポイントです。
他システムと連携できるか確認する
工数管理システムと他のシステムを連携することで、大幅な業務効率化につながる可能性があります。勤怠管理システム、給与計算システム、会計システム、プロジェクト管理ツールなど、既存のシステムと連携できるか、連携によってどのようなメリットがあるかをチェックしておきましょう。
無料トライアル・デモを活用する
多くのシステムでは、無料トライアル期間を設けていたりデモンストレーションを提供していたりします。無料トライアルやデモンストレーションで操作感を試したり、自社に本当に合っているかを見極めることでシステム選定の失敗を防ぎやすくなるので、不安がある場合は活用してみましょう。
まとめ
工数入力の効率化やリアルデータの集計・可視化などを実現でき、分析やレポーティング、システム連携などの機能を有する工数管理システム。業務効率化やコストの正確な把握、リソースの最適化など、改善活動などに活かせることから導入する企業も増えています。
工数管理システムにはさまざまなメリット・デメリットがあり、「クラウド型」か「インストール型(オンプレミス型)」かによって特徴や費用の相場も変わってきます。導入の目的や必要な機能をあらかじめ明確にしておき、自社に適したシステムを選定しましょう。
よくある質問
工数管理システムを使うことで何が実現できる?
工数管理システムの導入によって、以下のようなことを実現できます。
- 工数入力の効率化・正確性向上
- リアルタイムデータ集計・可視化
- 工数分析
- レポーティング
- 他のシステムとの連携
詳しくは記事内の「工数管理システムを使うとできること」をご覧ください。
工数管理システムの課金体系の特徴は?
工数管理システムの主な課金体系には「初期費用 + 月額(または年額)利用料」もしくは「ライセンス買い切り型 + 保守費用」の2種類があり、前者はインストール型(オンプレミス型)、後者はクラウド型で採用されることが多いといえます。
詳しくは記事内の「工数管理システムの課金体系と費用相場」をご覧ください。
工数管理システムを選ぶ際のポイントは?
工数管理システムを選定する際は次のポイントを押さえましょう。
- 導入目的を明確化しておく
- 必要な機能を洗い出す
- 操作性・使いやすさを重視する
- 自社の業種・業務フローとのマッチングを検討する
- サポート体制を確認する
- 他システムと連携できるか確認する
- 無料トライアル・デモを活用する
詳しくは記事内の「工数管理システムを選ぶ際のポイント」をご覧ください。