
収支管理とは、「収入」と「支出」を正確に把握し、計画的に管理する活動全般のことです。正しく収入と支出が把握できていないと、売上は作れているのに資金繰りに問題が生じて起きる「黒字倒産」のリスクがあります。
健全な企業活動を継続するためには、正確な収支管理が欠かせません。担当者を設けるなどしてPDCAサイクルを回し、常に企業の正確な収支状況が把握できる状態を作りましょう。
本記事では、収支管理が大切な理由やメリット、効果的に行うコツなどを解説します。
目次
収支管理とは
収支管理とは、「収入」と「支出」を正確に把握し、計画的に管理する活動全般を指しています。収支管理の主な目的は、財務の健全性を保ちながら効率的な資金運用を行い、最終的に利益を最大化することです。
収支管理は企業全体で実施されるのはもちろん、個別のプロジェクトや部署単位でも行われることが一般的です。これにより、組織のあらゆる階層で財務状況を適切にコントロールできるようになります。
具体的に、収支管理は主に「売上管理」「予算管理」「原価管理」で構成されています。
収支管理を構成する要素
- 売上管理:収入面に焦点を当て、売上予測や実績分析を通じて収益の最適化を図る
- 予算管理:将来の収支計画を策定し、実績との差異を分析して必要に応じて計画を修正する
- 原価管理:製品やサービス提供にかかるコストを詳細に把握し、無駄な支出を削減する
これら3つの要素が連携することで、企業は安定した経営基盤を築き、持続可能な成長の実現が可能です。
収支管理が大切な理由
収支管理は、企業の存続と持続的な成長を実現するために欠かせない重要な取り組みです。収支バランスを正確に把握することで、企業は安定した経営基盤を築き、将来への投資や事業拡大に向けた戦略的な判断ができます。
とくに注意すべきなのが、利益が出ていても資金繰りが悪化して生じる「黒字倒産」です。売上は順調でも、入金のタイミングと支払いのタイミングがずれることで、手元の現金が不足し、最悪の場合は事業継続が困難になってしまいます。
また、過剰な設備投資や人件費の増大など、支出が収入を上回る状況が続けば、企業は赤字経営に陥る危険性があります。このような状況を避けるためにも、日頃からの収支管理が欠かせません。
収支管理を行うメリット
収支管理を適切に実施すれば、企業はあらゆる恩恵を受けることが可能です。ここでは、2つのメリットについて解説していきます。
利益の増加につながる
収支管理を徹底することで、無駄な支出を的確に特定し、効果的なコスト削減と利益の増加を実現できます。売上と原価の関係を明確に把握することにより、利益率の高い商品やサービスに経営資源を集中させられるでしょう。
また、損益分岐点を正確に把握できるため、価格設定や販売戦略の最適化が図られます。これにより、市場競争力を維持しながら収益性を向上させる戦略的な判断が下せるようになります。
さらに、赤字プロジェクトなどの問題を早期に発見し、迅速な対策を講じられることも収支管理の重要な効果です。原価高騰などの外部環境の変化が生じた場合でも、企業の収益性を維持できるようになるでしょう。
お金に関する具体的な現状を把握できる
収支管理によって関係者全員が同じ数字を共有することで、目標や課題に対する共通認識が生まれます。その結果、組織全体で一貫した方向性を持って課題解決に取り組むことが可能になるでしょう。
数値に基づいた客観的な財務状況の把握ができると、感覚や勘に頼らない論理的な経営判断を下すことができます。「何にどれくらいお金がかかっているか」を具体的に特定できるため、削減すべきコストが明確になります。
また、改善点について具体的な数値目標を設定できるため、進捗管理がしやすくなります。これにより、継続的な改善サイクルが構築され、成果につながりやすくなるでしょう。
収支管理の進め方

収支管理を効果的に実施するためには、PDCAサイクルを回しながら継続的に取り組むことがおすすめです。計画の策定から実行、検証、改善まで、体系的なアプローチで進めることで、より精度の高い収支管理を実現できるでしょう。
収支計画を作成する(PLAN)
まずは、明確な売上や利益目標を設定します。最終目標だけでなく、中間目標もあわせて設定することで、進捗状況をより正確に把握できるでしょう。
プロジェクトの遂行に必要な人員・費用・設備といった支出の計画を詳細に立て、週ごとや月ごとに発生する売上の計画を策定していきます。この際、前年度の売上実績などの内的要因と、景気サイクルや季節といった外的要因を総合的に考慮して現実的な予測を行うことが重要です。
また、収支管理を行う担当者や管理の頻度・タイミングなどのルールを事前に明確化しておくことで、スムーズな運用が可能となります。
収支計画を実行する(DO)
計画時に立てたルールに従い、実際に収支計画を実行します。売上や予算、原価の実績を正確に記録していくことが、後の分析において重要になるでしょう。
そのためにも請求書や領収書、銀行取引明細などの情報を漏れなく収集し、適切なカテゴリーに分けて記録していきます。定期的に当初の計画が想定通りに進行しているかを確認し、必要に応じて軌道修正を行うことで、計画の実現性が高まっていきます。
収支計画と実際の収支の差を確認する(CHECK)
計画値と実績値のズレをしっかりと把握し、目標に対する進捗や達成度を客観的に評価します。「どれくらい差異があるのか」「支出に対して十分な売上が確保できているのか」といった観点から、詳細な分析を実施することが大切です。
定期的に収支状況を確認し、収支のトレンドやパターンを分析することで、将来の予測精度向上や早期の課題発見につながるでしょう。
問題を特定して改善する(ACTION)
分析結果をもとに、収益を最大化し、コストを削減するための具体的な改善策を検討します。乖離が大きい場合は、その原因分析を徹底的に行い、効果的な対策を立案することが重要です。
たとえば、原価が超過している場合は、原材料価格の高騰や人員増加、製造プロセスなどの要因を詳細に把握します。さまざまな観点から計画の見直しを行い、収支改善のための実効性の高い施策を立案していきましょう。
収支管理を効果的に行うコツ
収支管理を成功させるためには、重要なポイントを押さえることが必要です。ここでは、収支管理に効果的な3つのコツについて解説していきます。
正しい情報で収支を管理する
収支管理において重要なのは、正確な情報に基づいて管理を行うことです。誤った情報は間違った経営判断を招き、企業に損失をもたらす可能性があります。
仕入・売上・人件費などは日々変動するため、実情と合致しているかを定期的に確認することが欠かせません。仕入れ値や人件費、現場の状況から売上達成に必要な経費を細かく把握し、常に最新の状況を反映させる必要があるでしょう。
情報の正確性を確保するためには、適切なチェック体制を整えることが大切です。複数の担当者による確認作業などによって、データの信頼性を高めることができます。
収支管理の担当者を置く
収支管理を確実に実行するためには、誰が運用するのかを明確にすることが重要です。特に大規模なプロジェクトでは、売上や予算の管理が複雑になり、責任の所在が曖昧になりがちです。
収支管理のシートやツールをいつ・誰が・どのタイミングで更新するのかを具体的に定め、全関係者に周知することなどが必要でしょう。また、単なるデータ入力だけでなく、収支管理の分析結果をどのように施策に活かしていくのかまで検討することで、より実効性の高い収支管理を実現できます。
収支管理システムやツールを導入する
収支管理は毎日もしくは週単位で細かく情報を入力する必要があるため、効率的な管理方法の確立が大切です。ExcelやGoogleスプレッドシートでの管理も可能ですが、多くの情報をミスなく入力するには相当な工数や労力がかかってしまいます。
収支管理ツールを利用することで、Excelなどよりも効率的な管理が可能になるでしょう。収支管理の分析・集計機能を活用すれば、収支管理状況の自動集計や可視化などが簡単に実現できます。
高機能なツールでは、仕入れや作業工数を入力するだけで、目標売上に対する達成値や人件費・原価が適切かを自動的に判断できる機能を備えているものもあります。ツールの導入により従業員の負担も大幅に軽減され、より正確で継続的な収支管理が実現できるでしょう。
収支管理を行う際の注意点
収支管理を実施する際には、PDCAサイクルのP(計画)において想定を大幅に上回る工数がかかるケースがあります。
たとえば、営業担当が管理している売上数字と経理が管理している売上数字にズレが生じるケースが挙げられます。このような状況が発生すると、数字の整合性を取るためのやり取りに大量の工数が必要となるでしょう。
また、IPO直前の企業や決算早期化が求められている状況では、経理部門が通常業務に加えて収支管理の精度向上を求められるため、大きな負荷を抱えることになります。このような状況を避けるためにも、部門間での情報共有ルールの統一や、データ管理システムの整備を事前に行うことが重要です。
収支管理の計画を策定する際は、予想外の問題や修正作業が発生することを想定し、スケジュールに十分な余裕を持って取り組むことをおすすめします。
まとめ
健全な企業活動を継続するには、正確な情報に基づいた収支管理が欠かせません。そのためにも計画段階から丁寧に準備を行い、PDCAサイクルを回していきましょう。
収支管理はExcelなどで行うことも可能ですが、より効率的に進めるには専用のシステムを導入するのもおすすめです。会社全体の数字を管理するうえでは経理担当者だけでなく、営業など他部署との協力も必要です。
黒字倒産などの事態を避けるためにも、正確かつ効率的な方法で収支管理を行っていきましょう。
よくある質問
収支管理とは何ですか?
収支管理とは、「収入」と「支出」を正確に把握し、計画的に管理する活動全般を指しています。収支管理の主な目的は、財務の健全性を保ちながら効率的な資金運用を行い、最終的に利益を最大化することです。
詳しくは記事内「収支管理とは」をご覧ください。
収支管理のやり方は?
収支管理を効果的に実施するためには、PDCAサイクルを回しながら継続的に取り組むことがおすすめです。計画の策定から実行、検証、改善まで、体系的なアプローチで進めることで、より精度の高い収支管理を実現できます。
詳しくは記事内「収支管理の進め方」をご覧ください。