IPOの基礎知識

GAAPとは?日本で適用できる4つの会計基準やIFRSとの違いを解説

GAAPとは?日本で適用できる4つの会計基準やIFRSとの違いを解説

GAAPとは「Generally Accepted Accounting Principles」の略で、一般に公正妥当と認められた会計原則のことです。

会計ルールは国によって異なり、各国のGAAPはJ-GAAP(日本)・US-GAAP(米国)・UK-GAAP(英国)のように国の略号を頭につけて区別されています。本記事では、GAAPの概要や日本で適用できる4つの会計基準の違い、IFRSとの比較、non-GAAPとの使い分けを解説します。

目次

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GAAPとは

GAAPは企業の財務会計で従わなければならないルール・ガイドラインです。日本では民間の企業会計基準委員会(ASBJ)が基準を開発し、金融庁が指定することでGAAPとして成立します。

損益計算書の各利益や貸借対照表の資産・負債情報など、企業の財務状態を示す多くの指標の根拠です。遵守することで投資家・取引先からの信用が高まり株式市場の健全な運営にもつながります。国ごとの管理組織によって整備され、明文化された基準以外に慣習的に行われている会計処理もルールに含まれます。

GAAPの読み方・正式名称

GAAPは「ギャープ」と読みます。正式名称は「Generally Accepted Accounting Principles」で、日本語では「一般に公正妥当と認められた会計原則」と訳されます。

関連用語の読み方は、IFRS(国際財務報告基準):イファース、non-GAAP:ノンギャープ、J-GAAP(日本会計基準):ジェイギャープ、US-GAAP(米国会計基準):ユーエスギャープです。

GAAPに基づく財務指標

代表的な指標は、損益計算書に含まれる各利益(営業利益・経常利益・当期純利益など)、貸借対照表の資産・負債情報、ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)です。

GAAPのルールに従って算出されるため、企業間や期間ごとの比較が可能です。

一般に公正妥当と認められる企業会計の基準

会社法第431条は「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」と定めています。金融商品取引法でも有価証券報告書の財務諸表は公正妥当な会計基準に従って作成することが求められます。

出典:e-Gov法令検索「会社法第431条」

ここでいう「公正妥当な会計基準」がGAAPにあたります。GAAPにはASBJが公表した企業会計基準のほか、企業会計審議会が公表した企業会計原則や各種意見書、長年の実務慣行として定着した会計処理も含まれます。GAAPは法律で明文化された基準だけでなく、会計実務で広く受け入れられている慣行全体を指す概念です。

日本で適用できる4つの会計基準

日本の上場企業が連結財務諸表で適用できる会計基準は日本会計基準(J-GAAP)・米国会計基準(US-GAAP)・国際財務報告基準(IFRS)・修正国際基準(JMIS)の4種類です。事業内容や将来の経営方針に応じて選択します。

日本会計基準(J-GAAP)

J-GAAPはASBJが設定する日本独自の会計基準で、上場企業の大多数が適用し国内で最も広く使われています。

取得原価主義を基本とし、のれんを規則的に償却(最長20年で均等償却)、収益認識基準は「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)に準拠する点が特徴です。日本の企業実務に馴染みが深く導入・運用コストが比較的低いため、国内市場を中心に事業を展開する企業に適しています。

出典:企業会計基準委員会(ASBJ)

米国会計基準(US-GAAP)

US-GAAPは米国で一般的に公正妥当と認められた会計原則で、米国財務会計基準審議会(FASB)が設定しています。IFRSとのコンバージェンス(統合)が進行中で、J-GAAPもUS-GAAPを参考としており類似点が少なくありません。

日本企業でも米国証券取引委員会(SEC)登録企業についてはUS-GAAPでの財務諸表公表が認められており、2023年3月末時点で適用している日本の上場企業は6社にとどまります。

US-GAAPは「細則主義」を採用し、具体的な数値基準や詳細なルールが設定され判断に迷う余地が少ない一方、基準書の数が膨大になる特徴があります。

出典:日本取引所グループ「会計基準の選択に関する基本的な考え方の開示内容の分析」

国際財務報告基準(IFRS)

IFRS(International Financial Reporting Standards)は国際会計基準審議会(IASB)が設定する国際的な会計基準で、世界140カ国以上で採用されグローバル市場の共通会計言語としての役割を果たしています。

「原則主義」を採用し詳細なルールではなく基本原則を示して具体的な適用は企業判断に委ねます。公正価値測定の重視・のれんを償却せず毎期の減損テストで評価・包括利益計算書の表示が求められる点が主な特徴です。

日本では2010年3月期から任意適用が認められ、2025年6月末時点で東証上場企業のうち294社がIFRSを適用済みまたは適用決定しており年々増加傾向にあります。

出典:日本取引所グループ「IFRS適用済・適用決定会社一覧」

修正国際基準(JMIS)

JMIS(Japan's Modified International Standards)はASBJが2015年に公表した会計基準で、IFRSをベースに日本の会計実務に合わせて一部を修正したものです。

のれんの定期償却を維持(IFRSでは非償却)、その他の包括利益(OCI)のリサイクリング処理を維持の2点で日本独自の修正を加えています。実際の適用企業は極めて少数で広く普及しているとはいえません。

J-GAAP・US-GAAP・IFRSの主な違い

<J-GAAP・US-GAAP・IFRSの比較表>

比較項目J-GAAPUS-GAAPIFRS
策定主体ASBJFASBIASB
策定アプローチ細則主義寄り細則主義原則主義
のれんの処理規則償却(最長20年)非償却(減損テスト)非償却(減損テスト)
収益認識企業会計基準第29号(IFRS第15号とほぼ同等)ASC 606(IFRS第15号とほぼ同等)IFRS第15号
包括利益の表示任意必須必須
リース会計オペレーティングリースのオフバランス可(※改正予定)原則オンバランス(ASC 842)原則オンバランス(IFRS第16号)

J-GAAPとUS-GAAPの間でもかつて大きな差異がありましたが、コンバージェンスにより縮小しています。

ただしのれんの償却方法は依然として大きな違いとして残ります。J-GAAPでは毎期の償却費用計上で営業利益が圧縮される一方、IFRSやUS-GAAPでは減損が発生しない限り利益への影響がありません。

企業比較ではどの基準を採用しているかを確認する必要があります。

自社に適した会計基準の選び方

会計基準の選択は事業領域・資金調達方針・将来の経営計画を踏まえて判断します。国内事業が中心で海外展開予定がない企業はJ-GAAPが適しており、導入・運用コストが低く国内の投資家や取引先とのコミュニケーションにも向いています。

海外投資家からの資金調達やグローバル展開を目指す企業はIFRSが有効で、140カ国以上で採用されているため比較可能性が高まります。米国市場への上場やSECへの報告が必要な企業はUS-GAAPの適用が求められます。

IFRSの国際比較可能性を確保しつつのれん償却など日本基準の要素も維持したい企業はJMISが選択肢になりますが、適用企業は極めて少数です。

IPO準備中の企業は上場後の投資家層や海外事業の展開計画を考慮し、早い段階から適用基準を検討することが重要です。会計基準の変更(GAAPコンバージョン)には相応の時間と費用がかかるため、事業計画と合わせた判断が求められます。

non-GAAPとは

non-GAAPとは、会計ルールに基づかない財務情報で「ノンギャープ」と読みます。GAAPに基づく財務指標は汎用性が高いため、事業の特性を的確にとらえることに限界があります。

投資家の理解を深めるため、自社の事業実態をわかりやすく伝えるnon-GAAP情報を決算説明会などで開示するケースが増えています。

non-GAAP指標の代表例

代表例は、EBITDA(Earnings Before Interest、 Taxes、 Depreciation、 and Amortization:利払い前・税引き前・減価償却前利益。

設備投資規模や資本構成の違いを除いた事業の収益力を示す)、調整後営業利益(一時的な費用や収益を除外した営業利益)、Non-GAAP営業利益(GAAPベースの営業利益から企業が定める特定の調整項目を除外した利益指標)です。

日本企業では日立製作所が「調整後営業利益」、武田薬品工業が「Core Operating Profit」、JTが「調整後営業利益」を開示しています。

GAAPとnon-GAAPの使い分け

GAAPに基づく情報は法定開示として監査対象ですが、non-GAAP情報は監査対象外です。

算出基準は企業ごとに異なるため企業間で単純比較はできません。投資家がnon-GAAP情報を利用する際は、GAAPベースの数値と比較しながらどのような調整項目を除外しているかを確認することが重要です。

non-GAAP情報はGAAP情報を補完する位置づけで、両方を合わせて読むことで企業の実態をより正確に把握できます。

まとめ

GAAPは企業の財務会計の基盤で、日本ではJ-GAAP・US-GAAP・IFRS・JMISの4つを適用できます。

各基準にはのれんの処理方法や策定アプローチに違いがあり、自社の事業内容や経営方針に合った基準を選択することが重要です。近年は国際的な評価を得るためIFRSを採用する日本企業が増加しており、IPO準備や海外展開を見据えた早期の検討が求められます。

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よくある質問

GAAPは何と読むのか?

GAAPは「ギャープ」と読みます。

詳しくは「GAAPとは」をご覧ください。

日本で適用できる会計基準は何種類あるか?

日本の上場企業が連結財務諸表で適用できる会計基準は4種類で、日本会計基準(J-GAAP)・米国会計基準(US-GAAP)・国際財務報告基準(IFRS)・修正国際基準(JMIS)です。

詳しくは「日本で適用できる4つの会計基準」をご覧ください。

IFRSとGAAPの違いは?

IFRSは国際会計基準審議会(IASB)が設定する国際的な基準で原則主義を採用しています。一方、J-GAAPはASBJ、US-GAAPはFASBが設定し、いずれも細則主義寄りです。のれんの処理はJ-GAAPでは規則償却、IFRSやUS-GAAPでは減損テストで評価します。

詳しくは「J-GAAP・US-GAAP・IFRSの主な違い」をご覧ください。

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