IPOの基礎知識

上場廃止とは?理由やメリット・デメリットについて解説

上場廃止とは?理由やメリット・デメリットについて解説

上場廃止とは、金融商品取引所に上場している企業の状況などに鑑みて、当該企業の株式などが金融商品取引所での取引対象から外れることをいいます。

取引所ごとに上場廃止基準が定められており、その基準に抵触した場合に、取引所が上場廃止を決定します。ネガティブな印象のある上場廃止ですが、実は企業へのメリットもあり、上場企業自らが申請を行い上場廃止になるケースもあります。

本記事では、上場廃止の概要や主な理由、メリット・デメリットなどについて解説します。

目次

成長企業の会計管理を柔軟に効率よく

freee会計は、会計をはじめとした全業務を集約化し、業務ツールごとの多重入力がいりません。シンプルで使いやすく業務の自動化が進みます。リアルタイムレポートの活用で、経営判断の高速化が可能に。

上場廃止とは

上場廃止とは、企業が発行する株式などが金融商品取引所での取引対象から外れることです。

企業が自主的に申請を行って市場から撤退する場合と、上場を維持するために満たすべき基準に適合せず、売買取引が強制的に停止される場合があります。

原則として、上場廃止が決まると「整理銘柄」に指定され、一定の整理売買期間が与えられた後で取引終了となります。

上場廃止の主な理由一覧

なぜ上場廃止に至るのか、主な理由は以下のとおりです。

  • 上場廃止基準を満たしたこと
  • 企業が経営戦略として上場廃止を選択したこと

上場廃止基準を満たしたこと

次のような上場廃止基準のいずれかに該当する場合、上場廃止になります。

主な上場廃止基準

  • 上場維持基準を満たしていない場合
  • 有価証券報告書などの提出が遅延した場合
  • 各報告書に虚偽の記載や不適正意見があった場合
  • 特設注意市場銘柄に該当し内部管理体制が改善しない場合
  • 上場契約に違反があった場合

ここで紹介する主要な基準のほかに、破産や銀行取引停止、再生・更生手続や事業活動の停止など、定められた条件に該当した場合も上場廃止となります。


出典:日本取引所グループ「上場廃止基準の概要」

上場維持基準を満たしていない

上場を維持するには、市場が定める基準(上場維持基準)を継続的に満たさなければなりません。上場維持基準を下回ってから1年(満たしていない基準が「売買高」の場合は6ヶ月)は「改善期間」とされ、この期間内に上場維持基準を満たせなかった場合は、上場廃止となります。

上場維持基準は、以下のとおりです。


プライム市場スタンダード市場グロース市場
株主数800人以上400人以上150人以上
流通株式・流通株式数:2万単位以上
・流通株式時価総額:100億円以上
・流通株式比率:35%以上
・流通株式数:2,000単位以上
・流通株式時価総額:10億円以上
・流通株式比率:25%以上
・流通株式数:1,000単位以上
・流通株式時価総額:5億円以上
・流通株式比率:25%以上
売買代金0.2億円以上(1日平均)
売買高10単位以上(月平均)10単位以上(月平均)
時価総額40億円以上(上場10年経過後から適用)
純資産の額正であること正であること正であること

※2030年3月1日より、100億円以上(上場5年経過後から適用)に見直し


出典:日本取引所グループ「上場維持基準の概要」

なお、上場維持基準を満たさない状態になった場合、再び上場維持基準を満たすための取り組みや実施時期を記載した計画を、上場維持基準を満たさなくなった時点(基準日)から3ヶ月以内に提出・開示するルールとなっています。


出典:日本取引所グループ「市場区分の見直しに関するフォローアップ」

有価証券報告書などの提出が遅延した場合

上場企業は、監査報告書もしくは期中レビュー報告書を添付した有価証券報告書または四半期報告書を、期日までに提出しなければなりません。提出期限が経過した後1ヶ月以内にこれらの報告書を提出しなかった場合は上場廃止となります。

また、期限に間に合わない見込みとなって有価証券報告書などの提出期限延長について承認を得た場合でも、延長期間が経過した後8日目(休業日は除く)までに提出しなければ上場廃止となります。

各報告書に虚偽の記載や不適正意見があった場合

有価証券報告書などに虚偽の記載がある場合や、監査法人による意見がない場合、財務諸表に重大な誤りがあるとして不適正であることが表明された場合は上場廃止となります。また、監査報告書または期中レビュー報告書に、不適切な事項が発見された旨の記載があった場合も同様です。

そのような企業は、すぐに上場廃止をしなければ市場の秩序を維持できないと判断されることになります。

特設注意市場銘柄に該当し内部管理体制が改善しない場合

特設注意市場銘柄とは、上場廃止にするほどではないものの、企業の内部管理体制を改善する必要性が高いと判断した場合に指定する銘柄です。特設注意市場銘柄に指定されると、通常の取引銘柄とは区別して取引が行われます。

このような特設注意市場銘柄に指定されたにもかかわらず、「内部管理体制について改善の見込みがない」「改善の見込みがなくなった」と認められた場合、指定から所定の期間が経過した時点で行われる審査までに「適切な体制整備・運用が行われている」と認められない場合などは、上場廃止となります。

上場契約に違反があった場合

企業が上場するにあたって取引所との間で結んだ「上場契約」に重大な違反があった場合や、新規上場申請などの宣誓事項に重大な違反があった場合、上場契約の当事者でなくなった場合は上場廃止になります。

また「新規上場の申請に係る宣誓書」の事項に違反があり、新規上場の基準を満たしていないと取引所が認め、1年以内に新規上場基準を満たしているかの審査に通らなかった場合も同様です。

企業が経営戦略として上場廃止を選択したこと

上場廃止基準に該当して強制的に金融商品取引所での取引が停止となる場合のほかに、企業が経営戦略として上場廃止を選択することもあります。

たとえば、企業の実質的な支配権を握ることを目的として株式などを買い集める「敵対的買収」を防ぐために上場廃止を選択する(株式などを非公開にする)場合などです。

上場廃止を選択するメリットについては、記事内「上場廃止のメリット」で詳述します。

上場廃止までの流れ

上場廃止されるまでの流れを、「上場廃止基準に該当した場合」と「企業が自主的に上場廃止を選択する場合」のそれぞれについて解説します。

証券取引所によって上場廃止されるまでの流れ

上場廃止基準に該当し証券取引所によって上場廃止されるまでの具体的な流れは、以下のとおりです。

  1. 株式が「監理銘柄」に指定される
  2. 株式が「整理銘柄」に指定される
  3. 上場廃止

上場廃止基準に該当する恐れが生じると、このことを投資家に周知するため、証券取引所から「監理銘柄」に指定されます。

その後、一定期間にわたる審査によって上場廃止基準に抵触していると認定された場合は「整理銘柄」に指定され、原則として1ヶ月の整理売買期間が設けられた後に上場廃止となります。

企業が自主的に上場廃止するまでの流れ

企業が経営戦略として自主的な上場廃止を選択する場合の流れは、以下のとおりです。

  1. 臨時株主総会を開催し、上場廃止を決定する
  2. 株式が「整理銘柄」に指定される
  3. 上場廃止

上場廃止を企業自らの経営判断で行う場合、まずは臨時株主総会で上場廃止を検討し、株主の承認を得ます。その後、証券取引所によって「整理銘柄」に指定され、原則として1ヶ月の整理売買期間が設けられた後に上場廃止となります。

上場廃止になると社員・株式はどうなる?

上場廃止になると社員や株式はどうなるのか、その影響について解説します。

社員への影響

上場廃止はあくまで株式などが金融商品取引所での取引対象から外れることであり、事業活動自体が継続できなくなるわけではありません。そのため、上場廃止が必ずしも直接社員の雇用に影響を及ぼすとは限らない、と言えます。

ただし、業績不振から上場廃止に至ったケースなどでは、上場廃止後の経営方針・戦略や財務状況に応じて人員整理や配置転換などが行われる可能性があります。

また、雇用やポジションが維持される場合でも、給与やボーナスなどの待遇が悪化したり、個人の住宅ローンなどの審査において評価が下がったりといった影響が及ぶこともあります。

株式の取り扱い

上場廃止が決定してから原則1ヶ月間、「整理銘柄」として売買取引が可能な期間が設けられた上で、上場廃止(株式非公開化)となります。決定後すぐに取引が停止されないのは、投資家に売買の機会を与え、不利益が生じるのを防ぐためです。

上場廃止後は、株式などの市場での売買ができなくなりますが、株主の持つ議決権や配当を受け取る権利はそのまま残ります。整理売買の期間を過ぎた後でも、市場を通さず自ら売却相手を見つけて売ることは可能ですが、株の価値が下がり売却相手を探すのは困難といえるでしょう。

上場廃止のデメリット

上場廃止になることで、企業がどのようなデメリットを被るのか説明します。

  • 資金調達の手段が限られる
  • 既存株主が不利益を被るリスクがある
  • 会社のブランドや信用度を下げるリスクがある

資金調達の手段が限られる

上場廃止になった企業は、証券取引所を介して一般投資家から資金を調達することができなくなります。資金調達の手段が限定されることで、事業継続のための資金調達の目処をつけるのが難しくなる可能性があります。

既存株主が不利益を被るリスクがある

上場廃止になれば、既存の株主は高い確率で不利益を被ります。保有する株式を市場で売却する機会を失ったり、売却できたとしても、上場廃止の決定によって株価が下がったために利益が減少したりし得るためです。

もしも上場廃止になる場合は、その理由や手法などを株主に十分に説明し理解してもらったうえで、上場廃止後も既存株主が不利益を被らないように配慮しなければなりません。

既存株主の理解を得られずに企業のイメージを大きく下げてしまった場合、思わぬデメリットが発生する場合もあります。上場廃止によるメリットを期待していても、想定通りにいかない可能性もあるでしょう。

会社のブランドや信用度を下げるリスクがある

上場廃止になると、既存株主にはもちろん、一般消費者や取引先にもネガティブな印象を与えてしまう可能性があり、ブランドイメージや信用度の低下が直接売上に影響するケースも十分に考えられるでしょう。

また、企業の信用度が下がるということは、金融機関からの借り入れが困難になることにもつながり得ます。投資家からの資金調達が難しくなった状況で、金融機関からの信用を失うことは致命傷になりかねません。

上場廃止となる場合には、取引先や金融機関、顧客・一般消費者などに対して上場廃止の理由や背景を十分に説明する必要があります。

上場廃止のメリット

上場廃止にはデメリットがある一方で、少なからずメリットも存在します。どのようなメリットがあるのか、それぞれ見ていきましょう。

  • 経営の自由度が高まる
  • 上場継続にかかるコストを削減できる

経営の自由度が高まる

上場廃止の最大のメリットは、経営の自由度を高められることです。

上場企業には、経営を行うにあたって株主の意向を汲んだり、株価や株主からの評価を高めるために短期的な利益を追ったりすることが求められます。また、株主の承認が得られず経営改革が叶わないケースや、経営状況が悪化して株主から過度な非難を受けるケースもあります。

上場廃止をすることで、そうした株主の意見や短期的な利益への配慮による制約がなくなり、より柔軟で迅速な経営判断ができるようになります。

上場継続にかかるコストを削減できる

上場を維持するためには年間上場料をはじめ、TDnet(東京証券取引所が運営する適時開示情報伝達システム)の使用料などのさまざまなコストが発生します。

また、財務状況の公開など法律で義務付けられている事項が多いため、事務作業の手間がかかることもコストといえるでしょう。

上場廃止によって、このような上場維持にかかる費用や事務作業の手間を減らし、コスト削減や業務効率化を図れる可能性がある点も大きなメリットです。

上場廃止した企業が再上場するには

一度上場廃止を行った企業も、審査基準を満たせば再び上場できます。過去に大王製紙やソフトバンクなどが再上場を承認された事例があり、2022年12月にはスカイマークが東証グロース市場に再上場を果たしました。

また、MBO(Management Buyout)というM&Aの一手段によって、経営者が自社の株式を買い取り、株式を非公開化した後、再上場をするケースなども考えられます。

ただし再上場の際には、新規上場よりも審査基準が厳しくなる点には留意しなければなりません。上場廃止した企業が再上場するための基準は、以下のとおりです。


上場審査基準プライムスタンダードグロース
株主数800人以上400人以上150人以上
流通株式数20,000単位以上2,000単位以上1,000以上
流通株式時価総額100億円以上10億円以上5億円以上
流通株式比率35%以上25%以上25%以上
財政状態連結純資産50億円以上で、かつ単体純資産の額が負でないこと連結純資産が正であること-
利益の額(連結)最近2年間の利益の額が25億円以上であること または 最近1年間における売上高が100億円以上で、かつ時価総額が1,000億円以上となる見込みのあること最近1年間における利益の額が1億円以上であること-

まとめ

上場廃止とは、企業が発行する株式などが金融商品取引所での取引対象から外れることです。

上場維持基準に適合せず売買取引が強制的に停止される場合と、企業が自主的に市場から撤退する場合があり、あくまで経営戦略の一環として上場廃止を選択する後者のケースも多く見られます。

上場を維持する場合と上場廃止をする場合のメリット・デメリットを比較し、どちらが会社経営に有利なのか、よく検討することが重要です。

freeeで内部統制の整備をスムーズに

IPOは、スモールビジネスが『世界の主役』になっていくためのスタート地点だと考えています。
IPOに向けた準備を進めていくにあたり、必要になってくる内部統制。自社において以下のうち1つでも該当する場合は改善が必要です。

  • バックオフィス系の全てのシステムにアクセス権限設定を実施していない
  • 承認なく営業が単独で受注・請求処理を行うことができる
  • 仕入計上の根拠となる書類が明確になっていない
 

freee会計のエンタープライズプランは内部統制に対応した機能が揃っており、効率的に内部統制の整備が進められます。

内部統制対応機能

  • 不正防止(アクセスコントロール)のための、特定IPアドレスのみのアクセス制限
  • 整合性担保(インプットコントロール)のための、稟議、見積・請求書発行、支払依頼などのワークフローを用意
  • 発見的措置(モニタリング)のための、仕訳変更・承認履歴、ユーザー情報更新・権限変更履歴などアクセス記録
  • 国際保証業務基準3402(ISAE3402)に準拠した「SOC1 Type2 報告書」を受領

詳しい情報は、内部統制機能のページをご確認ください。

導入実績と専門性の高い支援

2020年上半期、freeeを利用したマザーズ上場企業は32.1%。freeeは多くの上場企業・IPO準備企業・成長企業に導入されています。

 

また、freeeではIPOを支援すべく、内部統制に関する各種ツールやIPO支援機関との連携を進めています。

内部統制を支援するツール・連携機能

  • クラウド監査アシスタント「kansapo」とのAPI連携により、事業会社・監査法人・会計事務所等の目的に応じた適切な情報へのアクセスを実現
  • 宝印刷と会計データAPI連携で、IPO準備企業や上場企業における開示業務で必要とされる開示書類を自動作成
  • クラウド連結会計ソフト「結/YUI」とのAPI連携で、作業を自動化し、連結業務が可能に

IPOに向けた準備をお考えの際は、freeeの活用をご検討ください。

よくある質問

上場廃止の主な理由は何ですか?

上場廃止の主な理由としては、上場廃止基準を満たしたことや、経営戦略として上場廃止が有効であると判断されたことが挙げられます。

上場廃止の理由について詳しくは、記事内「上場廃止の主な理由一覧」で解説しています。

上場廃止されるとどうなる?

上場廃止が決まると、整理売買のための期間が原則として1ヶ月設けられた上で、株式が非公開となり取引が終了します。

上場廃止決定後の動きについて詳しくは、記事内「上場廃止までの流れ」で解説しています。

上場すると社員にとって何が変わる?

上場廃止が直接、事業活動や社員の雇用などに影響を及ぼすとは限りません。ただし、上場廃止の理由やその後の経営方針などによっては、社員の雇用や働き方、待遇などに変化が生じる可能性もあります。

上場廃止が社員に与える影響について詳しくは、記事内「社員への影響」をご覧ください。

成長企業の会計管理を柔軟に効率よく

freee会計は、会計をはじめとした全業務を集約化し、業務ツールごとの多重入力がいりません。シンプルで使いやすく業務の自動化が進みます。リアルタイムレポートの活用で、経営判断の高速化が可能に。

上場審査から逆算して考える!上場準備のポイント

今なら30日間無料でお試し可能
登録はメールアドレスのみ