
初めてフリーランスに仕事を依頼する際、フリーランスの単価相場がどれくらいなのかが分からず悩んでしまう発注担当者の方も多いでしょう。単価相場の目安や決め方、交渉のポイントを知っておくことで、無理のない契約が実現し、フリーランスとの信頼関係も築きやすくなります。
本記事では、フリーランスの単価の決め方や相場、単価交渉のコツについて、初めての発注者にもわかりやすく解説します。
目次
- フリーランスの単価を決める方法
- スキル・経験・実績
- 市場の相場
- 働き方や条件
- フリーランスの単価算出方法
- 時間単価(時給)
- 案件単価(プロジェクト単価)
- 月額単価
- 【職種別】フリーランスの単価の相場
- Webエンジニアに依頼する場合の単価相場
- Webライターに依頼する場合の単価相場
- Webデザイナーに依頼する場合の単価相場
- フリーランスへの単価交渉前に準備すべきこと
- 自社の予算と依頼内容に見合う単価レンジを決める
- 依頼内容と条件を具体的に定義する
- 求めるスキルや経験レベルを明確にする
- フリーランスとの単価交渉を円滑に進めるポイント
- 一方的な値下げ要求はせず、根拠ある交渉を
- 長期的なパートナーシップを視野に入れる
- まとめ
- フリーランス・業務委託先への発注を効率化する方法
- よくある質問
フリーランスの単価を決める方法
フリーランスの報酬単価の相場には、一般的な考え方や基準があります。以下では、スキルや経験、実績といったフリーランス本人の要素から、市場相場や働き方の条件といった外部要因まで、単価を決める主なポイントを整理・確認しておきましょう。
スキル・経験・実績
フリーランスの単価は、基本的に本人の持つ「スキル」「経験」「実績」によって大きく左右されます。それぞれについて詳しく解説します。
スキル
スキルとは習得している技術や専門知識、対応可能な業務範囲などのことをいいます。特定の分野に特化した希少性の高いスキルを持っている場合は、単価も高めになる傾向があります。
経験
依頼するフリーランスがこれまで携わってきたプロジェクトの規模や内容、経験年数なども重要です。特に大規模プロジェクトへの参画やリーダーになった経験があるフリーランスは、単価が高くなる傾向にあります。
実績
過去に手がけた仕事の成果やクライアントからの評価も単価に影響します。具体的な成果物をチェックして、その品質や結果を確認するのが一般的です。実績が豊富で過去の評価の高い人ほど、単価も上がる傾向があります。
市場の相場
フリーランスの単価を決める際には、あらかじめ市場の相場を把握しておくことが大切です。
フリーランス向けのエージェントサイトやクラウドソーシングサイト、業界のコミュニティなどで公開されている案件情報・単価情報が参考になります。依頼予定の業務内容や求めるスキルレベルにおける一般的な相場を事前に調べておけば、フリーランスから提示された金額が適正かどうかを判断しやすくなるでしょう。
働き方や条件
依頼する働き方や契約条件によっても、フリーランスの単価は変動します。以下のポイントに注意しましょう。
稼働時間
フリーランスは依頼する日数や時間によって単価が変わることがあります。例えば、「週5日フルタイム常駐で依頼する場合」と「週2日程度のパートタイム・リモートで依頼する場合」では、時間あたりの単価に差が出ることがあります。
一般的に、稼働日数や時間が少ない依頼ほど、時間単価は割高になる傾向があります。
契約期間
プロジェクトが短期か長期かによっても単価交渉の余地は変わるものです。短期のスポット案件より、長期契約で安定収入が見込めるケースのほうがフリーランス側も単価の調整(値下げ)に応じてくれる可能性が高いといえます。
一方、短期・単発の案件は割高な単価設定になりやすいでしょう。
業務範囲と責任
特定の作業だけを任せる場合と企画や設計、ディレクション、顧客対応まで含めて任せる場合とでは、必要なスキルや工数が大きく異なります。後者の場合は相応に高い単価を提示する必要があるでしょう。
フリーランスの単価算出方法
フリーランスの単価の算出方法は契約形態によって報酬の支払い方が異なり、それぞれに適したケースがあります。主な算出方法として「時間単価(時給)」「案件単価(プロジェクト単価)」「月額単価」の3点を押さえておきましょう。
時間単価(時給)
時間単価(時給)はその名の通り、稼働時間に応じて報酬を支払う方法です。業務時間に対して一定の時給を掛け合わせて算出します。
仕様変更が頻繁に発生し得る案件や、継続的な運用・保守業務など、作業時間に比例して工数が増減するようなケースに適しています。
案件単価(プロジェクト単価)
案件単価(プロジェクト単価)は、あらかじめ決めた成果物に対して報酬を支払う形式です。
例えばWebサイト1件の制作、記事1本の執筆といったように、納品物ごとに一定の金額を支払います。Webサイト制作や記事作成など、納品物が明確で範囲が定まっているプロジェクトでよく用いられる契約形式です。
月額単価
月額単価は、1ヶ月単位の稼働に対して定額の報酬を支払う形式です。
「週◯日稼働・◯ヶ月契約」といった形で取り決め、月ごとに報酬を支払います。長期のプロジェクトや顧問契約などが多く、特にエンジニア案件では月額契約が多く見られます。
【職種別】フリーランスの単価の相場
フリーランスの単価の相場は職種によっても異なります。ここでは、発注ニーズの高いWebエンジニア・Webライター・Webデザイナーについて、それぞれの単価相場と単価ごとに期待できるスキルレベルの目安を紹介します。
なお、相場はあくまで一般的な目安であり、実際はフリーランス個人のスキル・経験・実績、案件の難易度や地域、契約条件などによって単価が大きく変動する点には注意が必要です。また、記載している月額単価は「週5日・1日8時間程度のフルタイム稼働」を想定した金額であり、実際の稼働日数・時間に応じて増減します。
Webエンジニアに依頼する場合の単価相場
Webエンジニアの場合、実務経験年数などによっておおよその月額単価相場が存在します。以下は経験レベル別の月額単価の目安です。
経験レベル(Webエンジニア) | 月額単価相場(目安) |
---|---|
実務経験1~3年程度のジュニアレベル | 40万~60万円程度 |
実務経験3~5年程度のミドルレベル | 60万~80万円程度 |
実務経験5年以上のシニアレベル | 80万~100万円以上 (ハイスキルな場合は120万円超も) |
Webエンジニアの場合、経験年数のほかにもスキルや担当する役割、契約の働き方条件などによって単価が上下します。
例えば、言語・技術でいえば、Python(AI・機械学習)やGo、React、Vue.jsなど需要の高いスキルを持つエンジニア、あるいはAWS・GCP・Azureなどクラウドインフラに精通したエンジニアは、相場より単価が高くなる傾向があります。
また、要件定義や基本設計といった上流工程から対応できる人材、あるいはプロジェクトマネジメントやテックリードを任せられる人材は、コーディング作業のみを行うエンジニアに比べて単価が高くなります。
加えて、フルタイム常駐ではなくリモートワークや時短勤務を依頼する場合は、月額単価は稼働時間に応じて調整されます。ただし、一般的には時間あたりの単価換算で見ると常駐フルタイムより割高になるケースが多い点には注意しましょう。
単価別に見るWebエンジニアのスキルレベルと期待できること
単価ごとにWebエンジニアに期待できるスキルレベルはどの程度なのでしょうか。契約金額ごとに分類すると以下のようになります。
月額単価の目安 (エンジニア) | 期待できること (対応可能な業務・役割) | スキル目安 |
---|---|---|
~60万円程度 (ジュニアレベル) | 指示された範囲内でのコーディング・テスト、簡単な修正対応が可能。基本的な開発プロセスを理解しており、先輩エンジニアの指示のもとで着実に業務を遂行できる。 | ひとつ以上のプログラミング言語・フレームワークの基礎知識があり、Gitなどバージョン管理ツールの基本操作ができる。 |
60万~80万円程度 (ミドルレベル) | 詳細設計から実装、テストまでを自走して担当可能。比較的簡単な機能であれば設計段階から任せられる。場合によってはコードレビューや後輩エンジニアへの簡単な指導も期待できる。 | 複数の言語・フレームワークでの開発経験(目安3年以上)がある。データベース設計やAPI設計の基礎知識があり、チーム開発の実務経験を持つ。 |
80万円~ (シニアレベル) | 要件定義からシステム設計、開発、運用まで一貫して担当可能。技術選定やアーキテクチャ設計、チームマネジメントなど、プロジェクト全体をリードする役割を担える。複雑な問題解決や新しい技術の導入にも対応できる。 | 幅広い開発言語・フレームワークの深い知識と豊富な実務経験(目安5年以上)があり、大規模なシステム開発やPjM、テックリードの経験がある。クラウドサービス、セキュリティ、パフォーマンス最適化など、専門的な知識も持つ。 |
要件定義や技術選定、アーキテクチャ設計など上流工程からプロジェクトに貢献可能。プロジェクト全体をリードし、技術的な難題の解決やチーム全体の生産性向上に寄与できる。
豊富な開発経験(目安5年以上)とリーダー経験がある。クラウドインフラの設計・構築経験があり、高い問題解決能力と技術提案力を備える。
Webライターに依頼する場合の単価相場
Webライターの場合、成果物や契約形態によってさまざまな報酬形態があります。主な単価相場の目安は以下のとおりです。
契約・報酬形式 | 単価相場(目安) |
---|---|
文字単価 (記事の文字数あたり) | 1円~5円以上(専門性が高い、実績豊富なライターの場合は10円超も) |
記事単価 (1記事あたり) | 数千円~数万円以上(例:一般的な3,000文字の記事で5,000円~3万円程度が目安。高度な専門記事や取材記事の場合はさらに高額) |
時給単価 | 1,500円~5,000円以上 |
月額契約 (メディア専属ライターなど) | 20万円~50万円以上 |
Webライターへの発注は上記のように記事ごとの案件単価が基本ですが、文字単価・時給単価・月額契約など多様な形態が存在します。
価格も依頼内容の専門性やライター自身の実績によって大きく異なります。例えば、SEOライティングやセールスライティングに長けたライター、あるいは医療・金融・ITなど特定分野に強いライターは高単価になりやすい傾向があります。
また、執筆だけでなく構成案の作成、画像選定、CMSへの入稿といった周辺業務も合わせて依頼すると、その分の費用も上乗せされる場合が多いでしょう。
「有名メディアでの執筆経験がある」「執筆記事でPV数増加やCVR向上など具体的な成果を出した実績がある」というライターは、より高い単価設定になる傾向があります。
単価別に見るWebライターのスキルレベルと期待できること
文字単価を基準に、ライターのスキルレベルとできる業務の目安を紹介します。単価別にライターに期待できることや持っているスキルを分類すると以下のとおりになります。
文字単価の目安 (ライター) | 期待できること | スキル目安 |
---|---|---|
1円~2円程度 | 指示された構成案やキーワードに沿って、誤字脱字の少ない文章を作成できる。マニュアルやガイドラインに従った一定レベルの文章制作が可能。 | 基本的な文章作成能力とPCスキルを有し、納期を守って執筆・納品できる。 |
2円~4円程度 | SEOの基本を理解し、検索意図を考慮した記事作成ができる。インターネットリサーチや構成案の作成にも対応し、自分でCMSに投稿するなど一連の作業を任せられる。 | SEOに関する基礎知識、構成作成スキル、情報収集・リサーチ力を備え、特定ジャンルでの執筆経験がある。 |
4円以上 | 高度なSEO知識に基づき質の高い記事を執筆できる。必要に応じて専門家への取材やインタビューも行い、専門分野に関する深い知見を持ったコンテンツやセールスライティングが可能。コンテンツの企画段階から提案し、戦略的な文章作成も担える。 | 高度なSEOスキル、取材力や専門分野の知識、コピーライティング力を有する。コンテンツ企画の提案力や編集・ディレクション能力も備えている。 |
Webデザイナーに依頼する場合の単価相場
Webデザイナーの場合は、依頼内容や担当範囲によって報酬に大きな幅があります。単価相場の目安を確認しておきましょう。
契約・依頼形式 | 単価相場(目安) |
---|---|
時給単価 | 2,000円~6,000円以上 |
バナー制作(案件単価) | 数千円~3万円程度 |
LPデザイン(案件単価) | 5万円~50万円以上 (内容やコーディング有無で変動) |
Webサイトデザイン(小~中規模) | 10万円~80万円以上 (ページ数や機能、コーディング有無で変動) |
Webサイトデザイン(大規模) | 80万円~ (規模により数百万円となる場合も) |
月額契約(顧問・継続的な改善) | 20万円~60万円以上 |
Webデザイナーへの発注では、時給契約もしくはバナー・LP・サイトといった制作物単位の案件単価で依頼するケースが一般的です。短時間で完結するバナー作成から、数百万円規模になる大規模サイトのデザインまで、案件の規模や難易度に応じて単価は大きく異なります。
また、デザインのみならずHTML、CSS、JavaScriptによるコーディングやWordPressなどのCMS構築、UI/UX設計、ブランディング、イラスト制作など幅広いスキルを持つデザイナーは高単価になりやすいです。
デザインカンプ(デザインの完成見本)の作成のみ依頼する場合と、コーディングまで含めて依頼する場合、さらにディレクション(制作進行管理)まで任せる場合とでは必要工数が異なるため、当然ながら費用も大きく変わってきます。
デザイナーのスキルやセンスはポートフォリオに表れます。発注前に必ず過去の制作物を確認し、そのクオリティに見合った単価かどうか判断することが重要です。
単価別に見るWebデザイナーのスキルレベルと期待できること
Webデザイナーについて単価帯ごとのスキルレベル・対応可能業務の目安を紹介します。単価別にWebデザイナーに期待できることや持っているスキルを分類すると以下のとおりになります。
単価別の目安 (デザイナー) | 期待できること | スキル目安 |
---|---|---|
低単価 (例: 時給2,000円台・LPデザイン10万円前後) | 指示に基づいたバナー作成や既存デザインの簡単な修正、簡易的なパーツデザインが可能。提示された要件に沿って基本的なデザイン業務をこなせる。 | PhotoshopやIllustratorなどの基本的なデザインツールを一通り扱える。 |
中単価 (例: 時給3,000円~5,000円・LPデザイン20万円~40万円) | Webサイト全体のデザインを任せられる。簡単な情報設計を含むHTML/CSSによる基本的なコーディングやレスポンシブデザインにも対応可能で、WordPressなどのCMSへの実装もできる。UI/UXを意識したデザイン提案が行える。 | Webデザインの原則を理解し、HTML/CSSコーディングのスキルとCMS構築の知識を持つ。UIデザインの基礎を習得しており、実務で活用した経験がある。 |
高単価 (例: 時給5,000円以上・LPデザイン40万円以上) | UXリサーチの知見に基づいた設計や高度なUI/UXデザインが可能。ブランディング戦略に沿った提案や、複雑なインタラクションの実装、アートディレクションまで一貫して対応できる。デザインを通じてクライアントのビジネス課題を解決に導くことが期待できる。 | 卓越したデザインスキルと豊富な実績を持ち、UXデザイン手法を実プロジェクトで活用した経験がある。ブランディングに関する知識やアートディレクション能力も備え、マーケティング視点でデザイン提案ができる。 |
フリーランスへの単価交渉前に準備すべきこと
フリーランスとの単価交渉前に、発注担当者がしっかり準備しておくべきことがあります。事前準備を怠らなければ、交渉をスムーズに進めることができ、互いに納得感のある条件で契約を結びやすくなるでしょう。
自社の予算と依頼内容に見合う単価レンジを決める
交渉に入る前に、自社の予算や依頼する業務内容に見合った単価のレンジ(幅)を決めておきましょう。明確な予算と単価レンジを持っておくことで、交渉の軸がぶれにくくなります。
以下の手順で単価レンジの設定をするとよいでしょう。
- 予算の確保
- 依頼業務の価値算定
- 市場相場の調査
- 単価レンジの設定
予算の確保
まずは社内で承認された予算額を確認し、その範囲内で支払える上限金額を把握します。報酬以外にも必要に応じてツールの利用料など関連コストが発生する場合は、それらも含めて予算内に収まるか検討しておきます。
依頼業務の価値算定
予算を確保できたら依頼する業務から得られる成果や価値を見積もり、それに見合った報酬水準を考えます。
その業務を自社の社員が行った場合の人件費と比較したり、フリーランスに依頼することで得られるメリット(専門知識の活用による高品質、対応スピード向上、自社リソースの節約など)を考慮したりして、適正な金額感を掴みましょう。
市場相場の調査
前述の単価相場の情報も参考に、依頼しようとしている内容・スキルレベルに対する一般的な市場相場を調べます。
業界平均を知らずに金額提示してしまうと、フリーランス側にとって的外れな提案となる恐れがあります。特に相場とかけ離れて低すぎる予算しか用意できない場合、優秀な人材ほど集まりにくくなる点には注意が必要です。
単価レンジの設定
予算、業務価値や相場情報を踏まえて「この範囲内であれば支払可能」という単価レンジ(下限および上限)をあらかじめ決めておきます。交渉時に自社の許容レンジが定まっていれば、相手から提示された金額に対して柔軟に検討できます。
依頼内容と条件を具体的に定義する
フリーランスに何かを依頼する際は、依頼内容と条件をできるだけ具体的に定義しておくことが重要です。
何をどこまで、いつまでにやってもらうのかが明確になっていれば、適正な単価設定がしやすく、後々の認識齟齬も防げます。曖昧なまま依頼してしまうと、フリーランス側も正確な見積もりが出せず、結果的に追加費用の発生やトラブルの原因になりかねません。以下の項目について、事前に整理しておきましょう。
- 具体的なタスク
- 成果物の明確化
- 除外項目の明示
- コミュニケーション方法
- 支払い条件
- 契約形態の確認
具体的なタスク
「何を」「どこまで」「いつまでに」行ってもらいたいか、具体的な作業内容をリストアップします。
例えば「〇〇機能の開発」「〇〇に関する記事執筆(構成案作成含む)」「〇〇向けLPのデザインおよびコーディング」といった具合に、可能な限り詳細に業務範囲を言語化しましょう。
成果物の明確化
依頼の結果として、どんな成果物を納品してもらうかを決めておきます。
設計書、ソースコード、記事データ(テキスト)、デザインデータ(PSDなど)、完成したWebサイトのURLなど、期待する納品物を具体的に定義し、共有できる準備をします。
除外項目の明示
依頼範囲に含まれない作業も明確にしておくと親切です。
例えば「サーバー設定は含まない」「写真素材の購入費用は別途負担」など、あらかじめやらないことまで伝えておくことで、後から「そこまで含まれていると思わなかった」という食い違いを防げます。
コミュニケーション方法
業務進行中の連絡手段やミーティング頻度などの取り決めも大切です。定例ミーティングを週何回行うのか、使用するツール(Slack、Chatwork、メールなど)は何か、進捗報告はどの程度の頻度で行うか、これらを事前に決めてフリーランスに共有しましょう。
支払い条件
支払いサイト(月末締め翌月末払いなど)や支払い方法(銀行振込など)も事前に社内で確認し、条件を明確化しておきます。お金に関する取り決めはトラブルになりやすい部分でもあるため、契約前に曖昧な点を残さないことが大切です。
契約形態の確認
業務委託契約の場合、請負契約にするか準委任契約にするか、といった契約形態も確認しておきます。また、必要に応じて秘密保持契約(NDA)を結ぶか、自社の標準の契約書類を用意するかなど、契約関連の準備も整えておきましょう。
求めるスキルや経験レベルを明確にする
依頼したい業務に合わせて、フリーランスに求めるスキルや経験のレベルを具体的に定義しておくことも重要です。スキルや経験のレベルを明確にしておけば、適切な人材を見極めやすくなり、ミスマッチを防いで結果的に適正な単価での契約につながります。
例えば「Reactでの開発経験3年以上は必須、AWSの知識があればなお可」といった具合です。ライターなら「○○分野の専門知識は必須、インタビュー取材経験があればなお可」、デザイナーなら「Figmaでのデザイン経験必須、イラスト制作ができればなお可」など、職種に応じて条件を整理しましょう。
経験年数は一つの目安になりますが、同じ「5年」でも小規模案件のみと大規模プロジェクト参画経験がある場合とではスキルレベルが異なります。何年携わったかだけでなく、「どんな規模・内容のプロジェクトにどんな役割で関わってきたか」を確認できると望ましいでしょう。
また、候補となるフリーランスのポートフォリオや過去の制作物、具体的な成果などを確認する方法を考えておくことも重要です。過去実績を見れば、その人のスキルレベルや成果物のクオリティを客観的に評価しやすくなります。加えて、コミュニケーション能力や問題解決能力、自ら考えて動く自走力、チーム内で協調できるチームワークなどのソフトスキルについても求めるレベルを考えておきましょう。
そしてプロジェクトを円滑に進めるには、人柄や仕事への姿勢も重要です。「報連相がしっかりできる方」「レスポンスが速い方が望ましい」などイメージを固めておくと、交渉や面談の際にそうした点も確認できます。
フリーランスとの単価交渉を円滑に進めるポイント
最後に、実際にフリーランスと単価交渉を行う際に交渉を円滑に進めるポイントを紹介します。互いに納得のいく契約条件とするために、発注側として以下の点に気を付けて交渉に臨みましょう。
一方的な値下げ要求はせず、根拠ある交渉を
根拠のない一方的な値下げ要求をすることは避けましょう。
例えば「予算がないのでとにかく◯◯円にまけてほしい」といった要求は、フリーランスのモチベーションを大きく低下させてしまいます。その結果、期待する品質の成果物が得られなかったり、最悪の場合プロジェクトが途中でストップしてしまったりするリスクも高まります。
コスト面に固執すると、優秀な人材ほど「割に合わない」と感じて受注を敬遠しがちです。スキルや経験を正当に評価し、その価値に見合った報酬を支払うことが、巡り巡って質の高いアウトプットを得る近道となります。
まずはフリーランス側が提示してきた単価の根拠や背景を丁寧に尋ね、その金額に至る理由を理解するよう努めましょう。また、自社の予算についても可能な範囲で正直に開示することで、「そこは譲れない」というラインや落としどころを双方で探りやすくなります。
どうしても予算オーバーで折り合わない場合は、単価そのものを下げてもらう代わりに納期を延ばす、あるいは契約期間を長くすることで安定性を担保し単価調整できないか検討してもらう、といった代替案を提案してみるのも有効です。
フリーランスは、対等なビジネスパートナーです。一方的な要求ではなくあくまで「相談」というスタンスで、互いにとって最善の着地を模索する姿勢が大切です。
長期的なパートナーシップを視野に入れる
フリーランスとの交渉では、目先の案件を単発で考えるのではなく長期的なパートナーシップの視野を持つことも重要です。信頼できる人であれば、今後も継続して協力関係を築くことで、毎回新しい人材を探す手間やコストを削減できます。互いの仕事の進め方を理解している分、慣れによってコミュニケーションコストも下がっていくでしょう。
発注側だけでなく、フリーランス側にもメリットのある関係を目指す姿勢も大切です。フリーランスにとってやりがいのある仕事を任せてもらえたり、スキルアップにつながったり、ある程度の安定収入が見込めたりすることは、長く付き合っていく上で大きな動機付けになります。ともに信頼とメリットを感じられる関係性を築ければ、単価交渉も円満に進みやすくなるでしょう。
日頃から感謝の気持ちを伝えたり、納品物に対して適切なフィードバックを行ったりすることも良好な関係維持につながります。成果に対してきちんと評価し、感謝の言葉を伝えることで、フリーランス側も「このクライアントのために頑張ろう」という意欲を保ちやすくなります。
また、相手に急な事情(病気や家庭の都合など)が生じて一時的に稼働が難しくなる場合にも、可能な範囲で柔軟に理解を示す姿勢が欠かせません。
逆にこちらから追加の依頼をする際には、これまでの実績や貢献度を正当に評価し、必要に応じて報酬アップを提案するといった公平な対応を検討するのも良いでしょう。長期的視点でパートナーシップを育むつもりで接すれば、単価交渉も対立する場ではなく「今後も協力していくための話し合い」という前向きな場になります。
まとめ
フリーランスとの契約が初めての場合でも、ポイントを押さえて適切に単価設定と交渉を行えば、双方にとって納得感のある契約を結ぶことができます。
大切なのは、相手のスキルや経験を正当に評価し、事前準備をしっかり行った上で誠実にコミュニケーションを取ることです。適切な単価で信頼関係のあるパートナーを見つけ、プロジェクトを成功させましょう。
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フリーランス・業務委託先への発注を効率化する方法
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契約書はそのままクラウド上に保管されるため、契約情報をもとに発注内容を確認したり、契約更新時のアラート通知を受け取ったりすることもできます。
発注対応や業務進捗を可視化
発注書の作成・送付は、フォーマットに業務内容や報酬、納期などを入力するだけで完了します。
また、発注業務をメールや口頭でのやり取りで行っていると、管理上の手間がかかるのはもちろん、発注内容や業務進捗などを把握しづらいこともあるでしょう。freee業務委託管理は発注内容が可視化され、プロジェクトの業務進捗や残予算をリアルタイムに把握するうえでも役立ちます。
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支払明細書の発行も可能
確定申告の際に必要な支払明細書(支払調書)も、フリーランスや業務委託先ごとに発行できます。発行した支払明細書(支払調書)はPDFでダウンロードしたり、メールで送付したりすることも可能です。
法令への対策が万全
近年、発注側の企業がフリーランスや業務委託先に対して優越的地位を濫用するリスクを防ぐため、下請法やフリーランス保護新法(2024年11月1日施行予定)にもとづく適切な発注対応が求められています。また、インボイス制度や電子帳簿保存法の要件を満たす書類の発行・保存も不可欠です。
こうした法令に反する対応を意図せず行ってしまった場合も、発注側の企業に罰則が科される可能性があるため、取引の安全性を確保する必要があります。freee業務委託管理なら既存の法令はもちろん、法改正や新たな法令の施行にも自動で対応しているため、安心して取引を行うことができます。
カスタマイズ開発やツール連携で運用しやすく
業務委託管理システムを導入する際は、発注業務の担当者が使いやすい環境を整えることも欠かせません。freee業務委託管理は、ご希望に応じて、オンプレミスとの連携や新たな機能の開発などのカスタマイズも可能です。また、LINE・Slack・Chatwork・freee・CloudSign・Salesforceなど、各種ツールとの連携もできます。
より詳しくサービスについて知りたい方は、無料ダウンロード資料「1分で分かるfreee業務委託管理」をぜひご覧ください。
よくある質問
フリーランスの単価を決める方法は?
フリーランスの単価を決める際は、フリーランス本人のスキル・経験・実績と、市場の相場や依頼内容の難易度を総合的に考慮します。依頼前に自社の予算内で支払える上限を定め、仕事内容に見合った適正価格のレンジを検討しておきましょう。
詳しくは本記事内の「フリーランスの単価を決める方法」で解説しています。
フリーランスの単価算出方法は?
フリーランスの報酬単価には時給、案件単価、月額単価など複数の算出方法があります。業務内容や契約形態によって適した形式が異なります。例えば、仕様変更が多い業務なら時間単価、納品物が明確なら案件単価、長期稼働なら月額契約が一般的です。
詳しくは本記事内の「フリーランスの単価算出方法」をご参照ください。
フリーランスとの単価交渉を円滑に進めるポイントは?
一方的に値下げを迫らず、根拠を示して提案することが重要です。スキルや経験に見合う適正価格を心がけ、相手の提示金額の背景を確認しつつ、自社の予算も開示して歩み寄りましょう。難しい場合は納期や契約期間など別条件で調整案を出すのも有効です。また、長期的な協力関係を視野に入れて信頼構築に努めると、交渉がスムーズになります。
詳しくは本記事の「フリーランスとの単価交渉を円滑に進めるポイント」をご覧ください。