コーポレートガバナンスとは、企業の不正や不祥事を防ぎ、公正な判断や健全な経営が行えるよう監視・統制する仕組みで、日本語では「企業統治」と訳されます。近年は東京証券取引所と金融庁が策定したコーポレートガバナンス・コードの適用により、上場企業を中心に体制整備が加速しています。
本記事では目的・5つの基本原則・3つの機関設計・強化方法・企業事例を解説します。
目次
コーポレートガバナンスとは
企業の健全な経営のため不正や不祥事を未然に防ぎ、公正な判断や運営が行えるよう監視・統制する仕組みです。
株主・ステークホルダーの利益を守り企業価値を長期的に向上させるため、社外取締役・社外監査役・委員会などの社外管理者を設置します。主要な原則を取りまとめた指針が「コーポレートガバナンスコード」です。
重要視される背景
背景には2つの理由があります。
1つ目は1990年代のバブル崩壊以降の不正や不祥事増加で、会計処理や品質チェックの不正、過度な時間外労働を防ぐ仕組みとして注目されました。2つ目は外国人投資家の持株比率の高まりで、資金調達のグローバル化と国際的な競争力強化のため公正で透明性のある情報開示が求められています。
日本と海外の違い
日本のコーポレートガバナンスはステークホルダー全体の権利保護や競争力強化を重視します。
一方アメリカ・イギリスでは株主価値の向上に重点を置き、ヨーロッパでは法律で定められステークホルダーそれぞれの役割も明記されています。日本は特にヨーロッパと異なり法令化されておらず強制力が低いのが特徴です。
内部統制との違い
内部統制とは、企業が経営目標・事業目標達成のため必要なルールや仕組みを整備し正しく運用することです。
コーポレートガバナンスは「第三者が経営者や企業の不正や不祥事を防ぐ取り組み」、内部統制は「社内で経営者や従業員の不正や不祥事を防ぐ取り組み」で、内部統制はコーポレートガバナンスを保つ一手段です。
コンプライアンスとの違い
コンプライアンスとは法令・社内規則・社会的規範の遵守を指し、日本語では「法令遵守」と訳されます。
コーポレートガバナンスが「経営を監視・統制する仕組み全体」であるのに対し、コンプライアンスは「ルールを守る行為そのもの」で、ガバナンスを機能させる前提条件です。
<コーポレートガバナンス・内部統制・コンプライアンスの比較>
| 項目 | コーポレートガバナンス | 内部統制 | コンプライアンス |
|---|---|---|---|
| 意味 | 経営の監視・統制の仕組み | 業務の適正を確保する社内体制 | 法令・規則・規範の遵守 |
| 主な対象 | 経営者・取締役会 | 経営者・従業員 | 全役職員 |
| 視点 | 社外からの監視 | 社内の管理 | 行動の基準 |
| 手段 | 社外取締役・監査役の設置等 | 規程整備・業務プロセス構築 | 教育研修・内部通報制度等 |
コーポレートガバナンスの目的と効果
主な目的と効果は、経営の透明性確保による不正・リスク防止、ステークホルダーの権利尊重と利益還元、中長期的な企業価値向上、一部経営陣による不正防止、サステナビリティへの取り組みと社会的地位向上の5つです。
投資家から不正リスクの低い企業と評価されると、新たな出資や融資を受けやすくなります。2021年6月の改訂で「サステナビリティを巡る課題への取り組み」が含まれ、プライム市場上場企業にはTCFDまたは同等の枠組みに基づく気候変動リスク開示が求められます。
ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を経営戦略に統合し情報を積極開示する企業は投資家評価が高まる傾向にあります。
コーポレートガバナンス・コードとは
東京証券取引所が金融庁と共同で策定し2015年6月から適用された、上場企業が守るべきガバナンス原則の指針です。
特徴は「プリンシプルベース・アプローチ」で、細かなルールで縛らず基本原則を示し各企業が自社の状況に応じて実践方法を判断します。原則を実施しない場合は理由説明の義務があり「コンプライ・オア・エクスプレイン」といいます。
法的強制力はないものの合理的な理由開示が必要で、実質的にガバナンス改善を促す仕組みとして機能しています。
5つの基本原則
<コーポレートガバナンス・コードの5つの基本原則>
| 基本原則 | 内容 |
|---|---|
| 基本原則1:株主の権利・平等性の確保 | 株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行い、株主が権利を適切に行使できる環境を整備 |
| 基本原則2:株主以外のステークホルダーとの適切な協働 | 従業員・顧客・取引先・地域社会等との適切な協働により持続的成長を図る |
| 基本原則3:適切な情報開示と透明性の確保 | 財務情報に加え、経営戦略・リスク・ガバナンスに関する非財務情報も法令に基づき適切に開示 |
| 基本原則4:取締役会等の責務 | 取締役会は経営の方向性を示し、独立した客観的立場から経営陣を監督 |
| 基本原則5:株主との対話 | 株主総会以外でも株主との建設的対話のための体制整備に努める |
5原則は相互に関連しており、たとえば原則3の情報開示が適切に行われることで原則5の株主との対話が実質的なものになります。
コード改訂の経緯
<コーポレートガバナンス・コードの改訂経緯>
| 時期 | 主な変更内容 |
|---|---|
| 2015年6月 | 策定・適用開始。5基本原則・30原則・38補充原則で構成 |
| 2018年6月 | 政策保有株式の縮減、CEO選解任手続きの透明化、取締役会の多様性確保 |
| 2021年6月 | プライム市場向け上乗せ基準を新設。サステナビリティ開示の強化、スキルマトリクスの開示を要請 |
2021年改訂は東京証券取引所の市場区分再編と連動し、プライム市場上場企業には独立社外取締役の3分の1以上の選任やサステナビリティ情報開示など高い水準が求められます。
コーポレートガバナンスの機関設計
日本の株式会社は会社法に基づき監査役会設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の3つから選択できます。
監査役会設置会社
日本で最も多く採用されている設計で、取締役会と独立した監査役会が取締役の職務執行を監査します。
監査役会は3名以上の監査役で構成し半数以上を社外監査役とする必要があります。監査役は取締役会で意見を述べる権限を持ちますが議決権はありません。業務執行の是正を直接命じる権限がない点が課題です。
監査等委員会設置会社
2015年施行の改正会社法で導入され、取締役会内に監査等委員会を設置し監査・監督機能を取締役会に統合します。
監査等委員である取締役は取締役会で議決権を持つ点が監査役との大きな違いで、監督機能がより実効的に働きます。IPO準備企業にとっても上場審査で求められる水準を効率的に満たせる選択肢として注目されています。
指名委員会等設置会社
取締役会のもとに指名委員会・報酬委員会・監査委員会の3つを必ず設置します。各委員会は3名以上の取締役で構成し過半数を社外取締役とする必要があります。
最大の特徴は経営の監督と業務執行の完全分離で、業務執行は執行役が担い取締役会は監督に専念します。海外投資家からの評価が高い一方、人材確保の負担が大きく採用企業数は限定的です。
コーポレートガバナンスの課題や問題
社外監査による意思決定スピード低下、社内体制構築コスト、株主・ステークホルダーへの依存、社外取締役・社外監査役の人材不足、グループ会社へのガバナンス整備の必要性が主な課題です。
M&A活発化に伴い、子会社などからガバナンス問題が発生することも考えられ「グループガバナンス」への再整備が必要とされています。
コーポレートガバナンスを強化する方法
強化方法は、内部統制の構築・強化、社外取締役・社外監査役・委員会の設置、執行役員制度の導入、コーポレートガバナンスの浸透化の4つです。
内部統制を強化することで信頼性のある財務状況をステークホルダーに報告でき「透明性の高い情報開示」につながります。経営陣の不祥事を防ぐには第三者の視点が大切で、監査委員会・報酬委員会・指名委員会の設置が一般的です。
社外取締役の選任にはスキルマトリクスの活用が有効で、取締役が備えるべき知識・経験・能力を一覧化し全体として必要なスキルが網羅されているかを可視化できます。2021年のコード改訂でも開示が求められています。
執行役員制度の導入により取締役と業務執行を分離した存在が生まれ管理体制強化につながります。構築しただけでは意味がなく、従業員に判断基準を明示する必要があります。形骸化防止には取締役会の実効性評価も欠かせず、PDCAサイクルで質を継続的に高められます。
コーポレートガバナンスの企業事例
コーポレートガバナンスの実際の運用は、成功事例と不祥事の両面から学べます。代表的なケースを取り上げて解説します。
ガバナンス強化の成功事例
オムロンは取締役会の過半数を社外取締役で構成し、社外取締役が議長を務める指名委員会・報酬委員会を設置してCEO選解任や報酬決定の透明性を確保しました。
味の素は取締役会直下にサステナビリティ諮問会議を設置しESG目標を経営計画に組み込み、役員報酬にもESG指標を連動させています。両社に共通するのは、取締役会が形式的な承認機関ではなく経営の方向性を議論する場として機能している点です。
不祥事から学ぶ教訓
2018年、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が有価証券報告書に報酬を過少記載した疑いで逮捕されました。背景には特定の経営トップへの権限集中と、取締役会による監督が実質的に機能していなかった構造があります。
日産は事件後、指名委員会等設置会社へ移行し取締役12名中9名を社外取締役とする体制に刷新、3委員会すべてで社外取締役が委員長を務めます。社外取締役の独立性確保・経営トップ選解任プロセスの透明化・内部通報制度の実効性担保が再発防止の要です。
まとめ
コーポレートガバナンスは第三者が監視・統制する仕組みで、株主・ステークホルダーの利益確保と企業の社会的地位向上につながります。
不正防止という「守り」だけでなく、経営の質を高め企業価値を向上させる「攻め」の側面も持ち、自社の規模に適した体制構築が中長期的な競争力の源泉となります。
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内部統制対応機能
- 不正防止(アクセスコントロール)のための、特定IPアドレスのみのアクセス制限
- 整合性担保(インプットコントロール)のための、稟議、見積・請求書発行、支払依頼などのワークフローを用意
- 発見的措置(モニタリング)のための、仕訳変更・承認履歴、ユーザー情報更新・権限変更履歴などアクセス記録
- 国際保証業務基準3402(ISAE3402)に準拠した「SOC1 Type2 報告書」を受領
詳しい情報は、内部統制機能のページをご確認ください。
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よくある質問
コーポレートガバナンスとは簡単にいうと何ですか?
企業の不正や不祥事を防ぎ、公正で健全な経営が行われるよう外部から監視・統制する仕組みです。
詳しくは「コーポレートガバナンスとは」をご覧ください。
コーポレートガバナンスと内部統制の違いは?
コーポレートガバナンスは社外取締役や監査役など第三者が経営を監視する仕組みであり、内部統制は企業が社内でルールや業務プロセスを整備して不正を防ぐ仕組みです。内部統制はコーポレートガバナンスを支える手段の一つに位置づけられます。
詳しくは「コーポレートガバナンスとは」をご覧ください。
コーポレートガバナンス・コードとは?
東京証券取引所が金融庁と共同で策定した、上場企業が守るべきガバナンスの原則をまとめた指針で、株主の権利確保や適切な情報開示など5つの基本原則で構成されています。
詳しくは「コーポレートガバナンス・コードとは」をご覧ください。
