白色申告をするにあたって、「これは経費になるのか、ならないのか?」ということに悩む事業者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、青色申告との比較も交えながら、白色申告における経費の申告方法について確認していきます。また、個人事業主の経費の考え方の基本や、迷いがちなガソリン代の仕訳についても解説します。
目次
経費かどうかの判断ポイントは「商売に関係があるか否か」
経費になるかどうかを判断する際に、大前提として覚えておくべきことは、「経費とは、商売に関係する支出である」点です。下記で具体例を挙げて、判断のポイントについて解説していきます。
経費の該当性が認められるかどうか
経費になるかを判断するポイントとして、経費としての該当性が認められるかという点が挙げられます。
例えば、ある個人事業主がビールを購入したとします。もし、その方の生業が建設業であれば、ビールの代金は経費にはならない場合が多いでしょう。なぜなら、一般的な建設業の仕事をするために、ビールは必要ない物だと判断されるからです。
それでは、もしこの方が飲食店を経営している場合は、どうでしょうか。お店の商品として提供するために購入した物であれば、当然に経費として計上できます。その一方で、自宅で個人的に飲むために購入したのであれば、経費にはなりません。
同様に、建設業の方であっても「取引先に対する手土産やお歳暮としてビールを購入した」のであれば、それは経費の該当性が認められることになります。
個人事業主の場合、プライベートの支出も事業の支出も同じ財布から出してしまうことがあるかもしれません。しかし、どこからどこまでが経費なのか、その線引きをしっかり意識しておく必要があります。
経費判断のポイントは上記のとおり、「商売のために支出したもの」として説明できるかどうかです。事業に関係のある書籍の購入、営業活動の移動のために使う自動車に関するメンテナンス費用、商品や備品の仕入れに関する運搬費など、商売に関係しているものであれば経費の該当性が認められることになります。
ただし、あまりにも過度な支出(先の例でいえば、取引先に対する過剰な接待交際費など)の場合は、問題視される可能性がありますので注意しましょう。
事業でどれくらいの割合を経費として使っているか
プライベートと事業の両方で使っている費用は、事業でどれくらいの割合を経費として使っているかが判断基準となります。例えば、自宅の一部を事業に使っている場合、その家賃や水道光熱費、通信費などが該当します。また、自家用車を事業でも使っている場合の、ガソリン代や自動車保険料なども同様です。
このような支出についても、基本的に「事業で使った分は経費、プライベートで使った分は経費ではない」という原則が適用されるのです。支払った金額のうち、何割が事業で何割がプライベートに関係する支出なのかを明確にし、経費に該当する部分を申告します。
なお、中には事業に関係のある支出でも経費にならないものもあります。例えば、交通違反による罰金や、各種税金の延滞税などです。これらはペナルティとして支払ったり納めたりするものですから、経費に計上することはできません。また、個人の所得税や住民税の納付、健康保険料の支払いなども経費にはなりません。
白色申告と青色申告の帳簿と提出書類の違い
個人事業主の場合、確定申告は、白色申告か青色申告のどちらかで行います。それぞれの帳簿と提出書類にはどのような違いがあるのでしょうか。
収支を管理する帳簿の形式が異なる
白色申告と青色申告では、収支を管理する帳簿の形式が異なります。
白色申告の場合、収入金額や必要経費などを管理する帳簿は、単式簿記(簡易簿記)で行うことが認められています。一方、青色申告の場合は、単式簿記または、貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)に則った形式のどちらかを選択することが可能です。
なお、青色申告をするにあたって、単式簿記で記帳した場合は最高10万円、複式簿記の場合は最高55万円(e-Taxを使用して青色申告した場合、最高65万円)の青色申告特別控除が適用されます。
単式簿記と複式簿記の違いは、単式簿記は、1回の取引につき1つの勘定科目で管理するのに対し、複式簿記は複数の勘定科目で管理する点です。複式簿記の帳簿は、お金の収支と財産の増減をいっしょに把握できる仕組みとなっていますが、単式簿記の帳簿と比べると、その作成は複雑です。
確定申告時に提出する書類が異なる
確定申告時に提出する書類も、白色申告と青色申告では異なります。
確定申告の際には、収入や売上原価、経費の内訳などを記入する用紙として、白色申告は帳簿をもとに簡単に作成できる「収支内訳書」を、青色申告は「青色申告決算書」を提出します。
このような違いから、白色申告は、経理業務への苦手意識が強い方や、そもそも売上が少なく青色申告特別控除などの特典を利用するメリットが少ない方などに適した申告方法だといえるでしょう。
経費の証拠となる書類の保存期間が異なる
白色申告と青色申告では、経費の証拠となる書類の保存期間も異なります。
個人事業主が経費を計上する際には、「領収書」や「レシート」など、支出の内訳を証明する物が必要です。税務署への提出は不要ですが、これらの関係書類は、白色申告の場合は5年間、青色申告の場合は7年間の保管義務があります。なお、帳簿はどちらの申告形式でも、7年間の保管義務がありますので、きちんと会計期間別に保管しておきましょう。
家族に支払った給与は経費にできる?
個人で事業を行う中で、配偶者や子供などに事業を手伝ってもらうこともあるでしょう。このような場合、白色申告では、一定の金額を「事業専従者控除」として控除対象とすることができます。
ただし、これは「経費」ではなく、確定申告のときに利用できる「控除」です。白色申告では、事業を手伝ってくれた家族に給与を支払ったとしても、経費として計上はできません。
控除できる金額は下記の2つのうち、低いほうの金額となります。
<事業専従者控除の金額>
・配偶者は86万円、配偶者以外は50万円
・控除を利用する前の事業所得と山林所得、不動産所得の合計額を、専従者の数に1を加えた数で割った金額
一方、青色申告の場合は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出することで、家族に支払った給与を経費にすることができます。
なお、どちらの場合も、対象となるのは15歳以上の生計を一にしている配偶者や親族で、1年のうち6ヵ月以上、主に申告者の事業に従事している必要があります。
青色事業専従者給与について詳しく知りたい方は、別記事「青色申告の専従者給与 家族への給与支払いで節税効果を高める方法」で解説していますので、ご家族に支払う給与がある方は参考にしてください。
【迷いがちな経費の仕訳】ガソリン代の勘定科目は?
個人事業主が迷いがちな経費の仕訳のひとつに、ガソリン代があります。
白色申告では、青色申告のように複式簿記などで帳簿をつける必要はありませんが、「収支内訳書」に科目別の支出金額を記載しなければいけません。ここでは、ガソリン代の勘定科目の分類方法についてご説明します。
ガソリン代の計上に使われる勘定科目の種類
ガソリン代の仕訳に使われる勘定科目は、主に下記のとおりです。
車両費
車両費は、保険料、車検、税金といった車にかかる費用全般についての科目です。ガソリン代を車両費にまとめることで、車にかかった費用が合計でいくらになるのかがわかりやすくなります。
旅費交通費
旅費交通費は、移動などにかかる費用をまとめて計上できる勘定科目です。車の使用頻度が高い場合は、ガソリン代を旅費交通費にし、車にかかるそのほかの経費と区別できます。
消耗品費
消耗品費は、帳簿、文房具、用紙、包装紙、ガソリンなどの消耗品購入費、または使用可能期間が1年未満、取得価額が10万円未満の什器備品の購入費と定義されています。車をあまり使用せず、ガソリン代がそれほど発生しないという場合は、消耗品費として計上するといいでしょう。
燃料費
燃料費は、燃料に関する科目です。灯油やガソリンなどの燃料を、単独の勘定科目で分類して把握したい場合に使います。
売上原価
売上原価は、商品やサービスの仕入れや製造にかかる経費のことです。そのため、個人タクシーを営んでいる方や、個人で運送業を営んでいる方の場合、ガソリン代は売上代金に直結する「商品の原価」と考えることができます。その場合の勘定科目は、売上原価を使います。
ガソリン代の勘定科目を決める判断基準
ガソリン代を計上できる勘定科目には、さまざまな種類があります。その中のどれを使うのかは、「収支内訳書を見たときに、事業の実態がわかりやすいかどうか」という観点から検討するのがおすすめです。
たとえどの勘定科目を選んだとしても、仕訳の仕方によって税金が変わってしまうことはありませんので、自分が内訳を把握しやすい勘定科目を選ぶといいでしょう。ただし、節税のために年末に大量にガソリンを買い込んだ場合などは、未使用分を「貯蔵品」として計上することもあります。
なお、消費税課税事業者である個人事業主が軽油を購入した場合は、注意が必要です。軽油には1Lあたり32.1円の「軽油引取税」と2.8円の「石油税」が課せられています。このうち、軽油引取税は消費税が非課税になり、石油税は課税されるため、経費として計上する際には勘定科目を分ける必要があるのです。
計上する際には、軽油を別の勘定科目で計上するか、非課税部分に該当する軽油引取税単独の科目を作って計上するといった対策をとりましょう。
一度決めた勘定科目を変えてはいけない
勘定科目は、実態に即してさえいれば、ある程度自由に選択することができるものです。しかし、同じ事業主が「先月のガソリン代は旅費交通費にしたけれど、今月は消耗品費にしよう」といった仕訳をするのは問題があります。これでは、実際にかかった経費の内訳を正しく把握することができなくなってしまうからです。
一度「ガソリン代は◯◯費にしよう」と決めたのであれば、その後も同じ勘定科目で計上するようにします。これは、ガソリン代以外の経費にも共通するルールです。
自家用車を事業でも使う場合のガソリン代の計上方法
個人事業主の場合、事業専用の車を用意せず、自家用車を事業にも使うというケースもあるでしょう。このような場合のガソリン代は、どのように経費計上すればいいのかご説明します。
事業でもプライベートでも使う車の経費(家事関連費)
1台の車を、事業でもプライベートでも使うケースもあるでしょう。このような支出を、「家事関連費」と呼びます。家事関連費のうち、「事業に使っている部分」については、経費として計上することが可能です。
経費にできるのはあくまでも事業に関連する部分だけで、プライベートで使った分は経費にできません。しかし、給油したガソリンを「事業用」と「プライベート用」に分けることは難しいでしょう。
そこで、このようなときは「ガソリンのうち、何割を事業で使って、何割をプライベートで使ったのか」という割合に応じて経費計上することになります。
例えば、ガソリン代3,000円のうち半分を事業、半分をプライベートで使ったという場合は、1,500円を経費として計上することができます。このように、ある一定の基準の割合で事業用とプライベート用の費用を分けることを、「家事按分」といいます。
ガソリン代の按分計算の方法
ガソリン代を事業とプライベートに分けるときは、下記2つのどちらかの方法をとります。「なんとなく」の印象で決めてしまわずに、正しく計上しましょう。
走行距離で計算する
走行距離からガソリン代を算出する場合は、1Lあたり何km走行できるかをもとに、事業の走行距離から使ったガソリンの量を計算して計上します。
使った日数で計算する
使った日数からガソリン代を算出する方法もあります。1週間のうち、平日5日は事業で車を使い、休日の2日はプライベートで車を使っているという方の場合は、ガソリン代の7分の5が事業、7分の2がプライベートと考えることができるでしょう。厳密な数字ではありませんが、手軽に計上することができます。
ガソリン以外でも家事関連費の考え方は同じ
家事関連費は、事業とプライベートの両方が混在する支出のことです。
事業用とプライベート用を分けていない場合のスマートフォンの通信費や車の購入代金のほか、自宅で仕事をしている方の家賃や水道光熱費なども、家事関連費に該当します。経費計上するときはガソリン代と同じように、「何にどのくらい使ったか」という点から、経費に該当する金額を算出しましょう。
家賃であれば、事務所として使っている部屋の面積や使っている時間、水道光熱費であれば家で仕事をしている時間などによって割合を決めます。
なお、ガソリン代を距離で考える場合は、都度計算をすることになりますが、家賃や水道光熱費などについては、一度割合を決めたら毎月同じ比率で事業用とプライベート用を按分し、事業用の分を経費計上していくことになります。
確定申告をかんたんに終わらせる方法
確定申告の期間は1ヶ月です。それまでに正確な内容の書類を作成し、申告・納税しなければいけません。
ほかにも、青色申告の場合に受けられる特別控除で、最大65万円を適用するためにはe-Taxの利用が必須条件であり、はじめての人には難しい場面が増えることが予想されます。
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よくある質問
Q1.白色申告で経費にできるものとは?
白色申告でも青色申告でも、経費にできるものは「事業に必要な支出」です。たとえ同じボールペンを買ったとしても、事業で買う物は経費になりますが、プライベートで使用する物は経費になりません。また、罰金や延滞金のようなペナルティの支出も経費にできません。
Q2.白色申告と青色申告の違いは何?
白色申告と青色申告では、経費や収入の記帳の方法が異なります。白色申告の帳簿は簡単な単式簿記が認められており、青色申告は、単式簿記または複式簿記を使った帳簿の選択ができます。
確定申告の際には、白色申告は「収支内訳書」、青色申告は「青色申告決算書」などの提出が必要です。青色申告は、必要書類の作成方法が難しい反面、「青色申告特別控除」を受けられたり、「青色事業専従者給与」を経費にできたりするメリットがあります。
Q3.ガソリン代や家賃など、私生活と事業両方で使うものはどうすればいい?
プライベートと事業の両方で同じ車を使っている場合のガソリン代や、家で仕事をしている場合の家賃・水道光熱費などは、実際の使用日数などの割合に応じて按分し、事業に使った分だけを経費計上します。
