J-SOXとは、上場企業の財務報告の信頼性確保を目的とした内部統制報告制度です。米国のSOX法を手本として成立したため、日本版SOX法という意味で「J-SOX」と呼ばれています。
本記事では、成り立ち・独自の特徴・企業に求められる対応・2024年改訂のポイントを解説します。
目次
J-SOX法(内部統制報告制度)とは
J-SOX法とは、上場企業の財務報告の信頼性確保を目的とした内部統制報告制度で、米国SOX法を手本に導入されました。
SOX法は2002年7月に成立した米国の企業改革法で、会計不祥事の規制による投資家保護と企業の会計・財務報告の信頼性確保を目的とし、独立した公認会計士や社外取締役の選任、経営者による内部統制と外部監査を義務付けています。
日本では相次ぐ会計不祥事を受け、2006年6月に金融商品取引法が成立し、上場企業とその子会社・関連企業を対象とする内部統制ルールとしてJ-SOXが規定され、2008年4月1日以後に開始する事業年度から導入されました。
J-SOX法の特徴
米国SOX法の運用を手本としつつ、企業の過大な負担を避けるため負担軽減策が図られています。
トップダウン型のリスク・アプローチを採用
まず全社的な内部統制が正しく機能しているかを評価し、その結果を踏まえて財務報告の虚偽記載につながるリスクに着眼し、必要な業務プロセスを絞り込んで評価します。
評価対象を財務報告の信頼性への影響の重要性の観点から必要な範囲に限定できます。
内部統制の不備区分を簡素化
米国SOX法では不備を重要な欠陥・不備・軽微な不備の3つに区分しますが、J-SOX法では「重要な欠陥」と「不備」の2つに簡素化しています。
ダイレクトレポーティングの不採用
米国SOX法では経営者と外部監査人の双方が内部統制を評価しますが、J-SOX法では経営者による評価結果の適正性を外部監査人が監査するのみとし、二重評価を回避して効率化を図っています。
内部統制監査と財務諸表監査の一体的な実施
業務記述書やフローチャートの作成・提出は義務ではなく、企業が業務上使用している記録を利用し必要に応じて補足すればよく、磁気媒体での保存も可能です。
外部監査人と社内の監査役・内部監査人を併せた「三様監査」の連携が認められ、外部監査人の調査負担軽減・監査の効率化・不正や不祥事の抑制が期待できます。
J-SOX法において求められる対応
企業に求められる対応は3点です。経営者による内部統制の整備・評価、監査人による内部統制の監査、内部統制報告書の提出です。
経営者による内部統制の整備・評価
経営者は内部統制を整備・評価する責任者として、社内ルール等を適切に設計し継続的に機能する状態を構築し、事業年度末日における有効性を評価しなければなりません。
全社的な評価結果を踏まえ、財務報告の重要な虚偽表示につながるリスクに着眼し、必要な範囲で業務プロセスにかかる内部統制を評価します。
内部統制に必要な3点セット
不備が見つかった場合は事業年度末までに修正し、修正できなかった部分は状況を考慮して開示します。
内部統制に必要な3点セット
- 業務記述書:業務内容・手順・業務遂行者を明文化した書類で、業務概要・管理方針・職務分掌の把握に用います。
- フローチャート:業務プロセスを図式化し、取引と会計処理の流れを整理してリスク識別に役立てます。
- リスク・コントロール・マトリックス(RCM):業務上のリスクとコントロール方法の対応表で、リスク低減方法を明文化します。
監査人による内部統制の監査
監査人は経営者がまとめた内部統制報告書を独立の立場から監査し、結果を内部統制監査報告書にまとめて表明します。
監査対象は報告書の記載に虚偽がないかであり、内部統制の有効性自体は監査しません。重要な不備があってもその旨の記載があれば適正な監査と見なされますが、重要な不備があるにもかかわらず有効としていた場合は不適正な監査となります。
内部統制報告書の提出
上場企業は各事業年度末に、有価証券報告書に添付するかたちで「内部統制報告書」と監査法人による「監査証明」の提出が義務付けられています。
新規上場企業も報告書の提出は義務ですが、監査証明は上場後3年間免除されます(社会的・経済的影響力の大きい企業は対象外)。
J-SOX法の2024年改訂
2024年4月1日以後に開始する事業年度から、改訂後の内部統制基準・実施基準が適用されています。
2008年の制度開始以来となる実質的な改訂で、評価範囲の見直しやIT統制の強化など実務に直結する変更が含まれます。
改訂の背景
2008年の制度導入以降、実質的な見直しは行われていませんでした。
一方、国際的な枠組みであるCOSOフレームワークは2013年に改訂されており、日本基準とのギャップが生じていました。不正会計事案も発生し評価作業の形式化が指摘されたことから、企業会計審議会が改訂作業を進め、2023年4月に改訂意見書を公表しました。
主な改訂内容
<改訂前後の主な変更点>
| 項目 | 改訂前 | 改訂後 |
|---|---|---|
| 内部統制の目的 | 財務報告の信頼性 | 報告の信頼性(非財務情報を含む) |
| 評価範囲の決定 | 売上高等の概ね2/3を定量基準として適用 | リスクの程度に応じた柔軟な判断 |
| 不正リスクへの対応 | 明示的な規定なし | 経営者の無効化リスクを含め明確化 |
| IT統制 | 基本的なIT全般統制 | サイバーリスク・委託先管理を追加 |
評価範囲の決定は、従来の機械的な定量基準のみでなく、不正リスクの高い勘定科目や事業拠点など質的な重要性も考慮した実態に即した範囲設定が求められます。
内部統制の目的は「報告の信頼性」へ拡大され、サステナビリティ情報など非財務情報の開示拡大に対応します。IT統制では、クラウド利用拡大やサイバーセキュリティリスクを受け、委託先の管理体制やセキュリティ対策が評価対象に明記されました。
J-SOX法に違反した場合の罰則
内部統制報告書を提出しなかった場合、または重要事項について虚偽の記載をした場合は、5年以下の懲役もしくは5億円以下の罰金が科されます。
資本金5億円以上または負債額200億円以上の大会社も、会社法第362条で内部統制の整備が義務化されており、違反で損害が発生した場合は損害賠償責任を負う可能性があります。
評価の結果有効でないと判断しても、その旨を報告書に記載していれば刑事罰は適用されません。重要なのは虚偽の記載なく提出することです。
まとめ
J-SOX法では内部統制報告書の提出が義務付けられ、未提出や虚偽記載には罰金が科されます。重要なのは正しく内部統制を評価・監査することです。
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- 発見的措置(モニタリング)のための、仕訳変更・承認履歴、ユーザー情報更新・権限変更履歴などアクセス記録
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よくある質問
SOX法とは何の略称?
SOX法は「Sarbanes-Oxley Act(サーベンス・オクスリー法)」の略称です。米国上院議員ポール・サーベンスと下院議員マイケル・オクスリーが法案を提出したことから両者の名前を取って命名されました。
詳しくは「J-SOX法(内部統制報告制度)とは」をご覧ください。
SOX法の正式名称は?
SOX法の正式名称は「Public Company Accounting Reform and Investor Protection Act of 2002(2002年上場企業会計改革および投資家保護法)」です。
詳しくは「J-SOX法(内部統制報告制度)とは」をご覧ください。
内部監査とJ-SOXの違いは何ですか?
内部監査は企業内部の独立した部門が業務全般の適正性や効率性を自主的にチェックする活動です。対してJ-SOXは金融商品取引法に基づき上場企業に義務付けられた制度で、財務報告の信頼性に特化した内部統制の評価・報告の仕組みです。
<内部監査とJ-SOXの比較>
| 項目 | 内部監査 | J-SOX |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 任意(大企業は会社法で求められる場合あり) | 金融商品取引法 |
| 対象範囲 | 業務全般 | 財務報告に係る内部統制 |
| 対象企業 | 制限なし | 上場企業とその子会社・関連会社 |
| 外部監査 | 不要 | 監査法人による監査証明が必要 |
詳しくは「J-SOX法の特徴」をご覧ください。
