ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業の主要な業務プロセスを統合的に管理するためのソフトウェアシステムです。財務・人事・製造・サプライチェーン・サービス、その他の業務プロセスを一元管理し、効率性と意思決定の質を向上させます。
ERPシステムは、ビジネスの透明性を高め、情報の正確性とアクセス性を改善することで、企業の全体的な運営効率を向上させることが可能です。
本記事では、イラストを用いた会話形式で、ERPについての基礎知識や具体的な活用方法などを詳しく解説します。
【登場人物】
倉戸社長
倉戸商会の社長。脱サラして起業5年目、当面の目標にしていた社員数50人を達成。つぎのステージに向けて、ビジネスの仕組みや、働き方について見直す時期だと考え始めている。
コンサルさん
ITコンサルタント。大手のソフトウェア会社で会計システムを作っていたが、中小企業にもITを活用してもらいたいと願って転身し、街中を駆け回る毎日。中小企業の社長たちにかわいがられている。
目次
- そもそもERP(ERPパッケージ)って何?
- ERP=統合基幹業務システム
- ERPに含まれる機能
- なぜERPを使うべきなのか?
- ERPの種類<統合型vsコンポーネント型>
- 統合型ERP
- コンポーネント型ERP
- ERPの導入形態<オンプレミスvsクラウド>
- オンプレミス型(インストール型)ERP
- クラウド型ERP
- ERPのメリットは?
- 非効率な業務やミスを減らす
- 業務の属人化を防止する
- ペーパーレス化を実現
- 業務全体を見える化でき、迅速な経営判断の助けになる
- 企業規模を拡大した場合でもワークフローがスムーズに
- クラウドERPだからこそ、解決できる問題
- 利用場所の制約をなくし、柔軟な働き方へ対応できる
- 部門ごとのP/L・B/Sがリアルタイムに確認できる
- 拡張性による連携
- ERPを導入する7つのステップ
- STEP1:ERP導入目的、解決したい課題を整理する
- STEP2:ERP導入プロジェクト全体の推進者を2〜3名選抜
- STEP3:各部署推進者と目的をすりあわせる
- STEP4:業務の棚卸しを行う
- STEP5:ERPでのカバー範囲を検討し、新しい業務フローを構築
- STEP6:試験運用
- STEP7:本運用
- 自社に合ったERPを選ぶポイント
- 自社のニーズとERPの機能を照らし合わせる
- 導入コストと総所有コスト(TCO)を考慮する
- カスタマイズの柔軟性と拡張性を確認する
- サポートとベンダーの信頼性
- ERPに関するよくある質問
そもそもERP(ERPパッケージ)って何?
最近、社長仲間がERPを導入して業績が上向いたっていうんだ。ウチも、もっと儲けて、もっと拡大したいなぁ。でも効率化は限界だし、人手不足のご時世で採用を増やすのも難しい。もっと働きたくなる職場にしないと。
そのためには……とりあえず私の肩書きをCEOにして、イケてる企業イメージにするか!
社長、落ち着いてください。CEOもいいですけど、きちんとERPの導入を検討してみましょうよ。
でも、ERPがそもそもなんなのか、いまいちよくわからないし、導入コストもかかるでしょ。
ウチみたいな規模の会社には用がなさそうだったから、難しい説明を読む気にならなくて。
たしかに、そういう悩みをもっている中小企業の経営者は少なくないみたいですね。
でも、ERPは決して大手企業だけのものではなくなってきているんですよ。難しく考えず、「会計ソフトの進化版」くらいの気持ちで話を聞いてください。
ERP=統合基幹業務システム
ERPとは、企業活動で必要な経営資源や情報を一元的に管理し、限られた資源を効率的に活用しようとする考え方「Enterprise Resources
Planning(企業資源計画)」の略語です。
そして、ERPの考え方自体を実現し、情報をまとめて管理できるシステムをERPパッケージと呼ぶこともあります。これらは企業の基幹業務に関わる情報であることから「基幹システム」や「基幹系情報システム」とも呼ばれています。
ERPに含まれる機能
ERPに含まれる機能は具体的に以下のとおりです。
ERPに含まれる機能
- 財務・会計管理
- 予算管理
- 販売管理
- 倉庫・在庫管理
- 顧客情報管理
- 営業支援管理
- プロジェクト管理
- 人事管理
- ビジネスインテリジェンス(BI)
なるほど、経理部などバックオフィスで取り扱う情報をまとめているんだな。
それだけじゃありません!ERPの特徴は、営業部なども含めた社内の情報全体を1つにまとめて管理できることにあるんです。
なぜERPを使うべきなのか?
受発注、在庫管理、会計をそれぞれ異なるシステムで管理していると、以下のようなデメリットがあります。
- 各システムに会社の情報を入力し、更新をしなければならない
- システム同士の連携ができないので、在庫と発注を自動連携させた処理ができない
- 「たくさん売れているけど、この商品を売っても利益が少ない」といった情報が把握しにくい
これらのデメリットは1つのシステムで管理することで解消することができるのです。
ERPを利用するメリット
- 企業情報の更新は1回で済む
- データを連携させ、在庫状況に合わせた自動発注ができる
- 経営の全体情報が把握しやすい
ERPの種類<統合型vsコンポーネント型>
確かに便利そうだ。とはいえ、在庫を持たない事業の場合、あまり関係なさそうな気もするけどね。
ERPは、手掛ける業務内容の全てをカバーするタイプと、必要な機能だけを選べるタイプがあります。
自社に合った方を選べばいいんですよ。
統合型ERP
統合型ERPとは、すべての業務をカバーする前提で構成されているタイプです。多機能であることから一般的には高価なものです。
ERPが持つあらゆる機能を必要とする大企業でよく利用されています。
コンポーネント型ERP
コンポーネント型ERPとは、会計・在庫管理といった機能ごとに組み合わせて構成できるタイプです。必要な業務だけを拡張して利用できるため、企業規模にかかわらず利用しやすく、価格も利用する機能によって変動されます。
たしかにコンポーネント型なら導入しやすいかもしれないね。ただ、すでに使っている顧客情報システムもあるし、再導入するのは正直めんどうだなぁ。
ERPの中には、他社の提供するシステムの情報と自動連携ができるものがあるんです。すでに用意されているデータも生かせますよ!
ERPの導入形態<オンプレミスvsクラウド>
ただ実際のところ、ERPを導入してどれくらいの恩恵があるのか、そこがいまいちわからない。大企業ならメリットが大きいのかもしれないけれど。
しかし2000年代後半から、クラウド技術を使った「クラウドERP」が登場し、中小企業でも導入できるほどにコストが下がっているんです!
んん? クラウドのERPとはどういうことなんだ? ちょっとややこしくなってきたな……。
焦らなくても、大丈夫です。
先ほどは機能で分けた2タイプを紹介しましたが、クラウドというのは「ERPの導入方法」の1つなんです。
従来の「インストール型(オンプレミス型)」と、「クラウド型」、それぞれの違いやメリット・デメリットを見ていきましょう!
オンプレミス型(インストール型)ERP
サーバーなどのハードウェアを自社で用意し、システムをインストール・メンテナンスまで自社で行うタイプのERPです。
歴史が長く、比較的規模の大きな企業で導入されてきました。ありとあらゆるシステムをERPにまとめることを前提としており、多機能な「統合型ERP」が中心です。
インストール型(オンプレミス型)ERPのメリット
- 必要な業務だけを拡張して利用できるため、企業規模にかかわらず利用しやすい
- 価格は利用する機能によって変動する
インストール型(オンプレミス型)ERPのデメリット
- 新しい機能を追加するためには手間がかかり、利用できないケースも
- メンテナンスやセキュリティ対策を継続的に実施する必要がある
- 必要なハードウェアの性能を見積もり、機器を調達しセットアップする必要があるため、導入まで時間がかかる
- 機器やERP全体を購入するため、初期費用の負担が重い
クラウド型ERP
ERPの機能をクラウド上で実現したサービスで、ネット環境があればソフトウェアのインストールもERP用のハードウェアは不要です。
「コンポーネント型」ERPでよく利用される形態ですが、「統合型ERP」でもクラウド対応している製品が増えています。料金は、利用者一人あたりの月額課金や従量課金制が中心です。
クラウド型ERPのメリット
- ネット環境とパソコンがあれば、すぐ使い始められる
- セキュリティ対策やバージョンアップ、機器の老朽化への対応など、必要なメンテナンスはすべてサービス事業者が行うため、メンテナンスの手間がない
- 他のクラウドサービスと接続させることで、機能拡張やデータの自動連携が容易にできる
- 機能や構成によりますが、一般にインストール型よりもトータルでのコストを低減できると言われている
クラウド型ERPのデメリット
- クラウド環境で利用するため、ハードウェアに関する設定のカスタマイズがしづらい
- 重要な情報や業務をクラウドで扱うことを不安視されていたが、現在は大企業もクラウドへ移行するケースもある
ERPのメリットは?
なんとなく全貌が分かってきたけど、ERPの導入によって具体的にどんなメリットがあるのか、なかなか見えてこないんだよね……。
ERPは、急速に変わるビジネスシーンにおいて、さまざまな経営課題の解決ができます。具体的に、よくある問題を見てみましょう。
非効率な業務やミスを減らす
ERPシステムは、企業の業務プロセスを効率化し、非効率な業務を減らすことが可能です。またデータの一元管理により、手作業や煩雑な作業を自動化できるため、データ入力のミスや重複を防ぐことにも繋がります。
これにより、業務の効率化はもちろんのこと、正確性が向上し経営資源をより有効に活用することができます。
業務の属人化を防止する
ERPを活用すれば、業務の属人化を防ぎ、組織全体での情報共有と透明性を高められます。
データを元に意思決定が行えるので、個々の社員が持つ情報やスキルに依存することなく、組織全体で情報を共有し、業務を円滑に進めることが可能です。
またERPを導入すれば誰でも使えるよう作業の標準化・自動化が行えるため、業務の習得自体が容易になり、社員も休みをとりやすくなるでしょう。
ペーパーレス化を実現
ERPシステムの導入により、紙ベースのドキュメントをデジタル化し、ペーパーレス化を促進できます。
これにより、文書管理の効率アップや、コスト削減が可能です。にも寄与します。紙の文書による管理からデジタル化への移行は、情報の共有が容易になるだけでなく、環境にも配慮した企業運営が可能になります。
また2024年から対応必須となった電子帳簿保存法は、原則としてすべての企業や個人事業主が対象です。そのため、紙での業務が残っている事業者は要件を満たした対応が必要となってきます。
電子帳簿保存法の詳細は、下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
【関連記事】
電子帳簿保存法(電帳法)とは?2022年12月発表の最新の改正内容を解説
業務全体を見える化でき、迅速な経営判断の助けになる
ERPシステムは、企業のあらゆる業務データを一元管理することで、業務全体の透明性を高めます。経営者はリアルタイムでのデータ分析に基づいて、迅速かつ的確な経営判断を下せるでしょう。
データ分析とレポート機能を活用することで、経営上の問題点や機会を素早く特定し、対応することも可能になります。
企業規模を拡大した場合でもワークフローがスムーズに
ワークフロー機能を備えたERPであれば、決裁を電子化でき、支社をまたいだ決裁も容易になります。
また、社員の口座情報や業績評価、顧客情報といったプライバシーに関する情報へのアクセス権限も、役職や役割に合わせて厳密に設定できるので、コンプライアンス強化への貢献も可能です。
今後事業の拡大を目指しているのであれば、ERPの活用は有効な手段といえるでしょう。
なるほど。ERPだからできる効率化があって、さらに働き方改革にもつながるわけか。
さらに、「クラウドERP」だからこそ解決できる課題もあるんですよ。
クラウドERPだからこそ、解決できる問題
利用場所の制約をなくし、柔軟な働き方へ対応できる
インターネットがつながる場所であれば、どこからでも利用できるクラウドERP。交通費や出張旅費をスマートフォンで移動中に申請できるようにしておけば、わざわざ経費精算のためにオフィスに戻る手間や時間がなくなります。
また、オフィスでしかできなかった業務が家でもできるようになり、リモートワークなど柔軟な働き方にもつながります。
部門ごとのP/L・B/Sがリアルタイムに確認できる
ERPは企業全体の情報をリアルタイムに把握できるシステムです。しかし、経費精算や売上を「オフィス内」でなければ登録できないと、つい月末ぎりぎりになってしまうこともあるでしょう。
こうなると、管理者は最新の状況を把握できません。しかし、クラウドERPならどこからでも情報の入力ができる分、よりリアルタイム性の高いデータを保てます。
拡張性による連携
クラウドERPのなかには、システムとシステムをつなぐ“API”を公開しているものもあります。他のサービスと連携させれば、より柔軟かつ幅広い業務へ対応できるように。
例えば、顧客取引状況を管理するCRMや、営業状況を管理するSFA。代表的なサービスとの連携例としては、営業担当者がSalesforceやkintoneから売り上げ確定を登録すると、数クリックで請求書を発行し、会計業務へ連動できるようなクラウドERPもあります。
ERPを導入する7つのステップ
「みんなが使う」「多くの部署に関係する」ということは、それだけ導入が大変な気がするな。
さすが視点が社長ですね。ERPは使う組織や人のことを考えないと、役に立たないばかりか業務に支障をきたす可能性もあります。導入までの流れを整理してみましょう。
STEP1:ERP導入目的、解決したい課題を整理する
そもそもERPで何を実現したいのか、目的や解決したい課題をしっかりと整理しましょう。ここを疎かにすると必要な機能が漏れてしまう可能性があります。
STEP2:ERP導入プロジェクト全体の推進者を2〜3名選抜
ERP導入プロジェクト全体の推進者は、ERPで解決したい課題に深く理解し、部署の枠を超えて発言でき、会社全体の変化を促せる経営層に近い役職者が適任です。そして、推進者は必ず2名以上にしましょう。
社内のほぼすべての業務に関係し、社員の大多数が使うことになるERP。それぞれの部署で伝統的に行われてきた業務のやり方を刷新することになった場合、そういう変化を嫌がる人は一定数います。1名だと周りからの理解が得づらかったり、そのメンバーが抜ける場合にゼロもしくはマイナスからのやり直しになったりするリスクもあります。
1名だと周りからの理解が得づらかったり、そのメンバーが抜ける場合にゼロもしくはマイナスからのやり直しになったりするリスクもあります。
STEP3:各部署推進者と目的をすりあわせる
全体の推進者だけではなく、関係する各部署から現場の業務に詳しい担当者を選出します。
彼らを導入プロジェクトに巻き込むことで現場業務をより深く理解でき、スムーズなERP導入につながります。そして、導入の目的を共有しつつ各部署の協力を得ながら、プロジェクトを引っ張っていってください。
STEP4:業務の棚卸しを行う
経理部や人事部など、ERP導入の目的に関わる業務がどんなプロセスで行われているのか、現在はどんなツールを使って行われているのか、まずは現状の棚卸しをします。
具体的なプロセスは会社ごとに異なるため、原則的には自分たちで整理する必要がありますが、どのように棚卸しをしていけばいいのか迷ったら、ERPの提供会社にサポートを依頼してみましょう。
STEP5:ERPでのカバー範囲を検討し、新しい業務フローを構築
具体的にERPツールを使ってできること・できないことを洗い出します。
その上で、棚卸しした業務内容をチェックしながら、従来のツールを引き続き使うべきか否かを検討し、導入するERPのカバー範囲を決めていきます。どんなシステムと連携できるか、新しい業務フローをどう構築していくかは、ERPの提供会社に確認・相談してみましょう。
STEP6:試験運用
関係部署にERPを使った業務フローを伝え、無理がないかを確認していきます。少し大変ですが、この時期はデータの漏れがないよう従来のシステムと併用します。
ERPでカバーする範囲や内容によるので一概には言えませんが、一般的な試験運用期間は1〜2カ月程度が目安。大企業での大規模なERP導入では、2年以上かけて試験運用するケースもあります。
STEP7:本運用
いよいよ、本格的な利用開始です!マニュアルを用意し、導入プロジェクトに関わっていない社内全体へ使い方をフローします。
困る部署がないように講習会や使い方のサポートする時間を設けましょう。その後も、社内の利用状況に応じて、機能などを調整していくことも利用率を上げるためには肝心です。
自社に合ったERPを選ぶポイント
ERPシステムは、企業の基幹業務を一元管理し、効率化を図る重要なツールです。しかし、多種多様なERPシステムの中から、自社に最適なものを選ぶことは容易ではありません。
ここでは、自社に合ったERPを選ぶための重要なポイントを詳しく解説します。
- 自社のニーズとERPの機能を照らし合わせる
- 導入コストと総所有コスト(TCO)を考慮する
- カスタマイズの柔軟性と拡張性を確認する
- サポートとベンダーの信頼性
自社のニーズとERPの機能を照らし合わせる
ERPを選ぶ最初のステップは、自社のニーズとERPの機能を照らし合わせることです。
自社の業務プロセス・経営戦略・IT環境などを詳細に分析し、それに合ったERPシステムを選択する必要があります。例えば、生産管理が重要な製造業では、製品の生産プロセスを効率的に管理できるERPを、一方で販売・流通業では、在庫管理や販売管理の機能が充実したERPが求められます。
<自社のニーズとERPの機能を照らし合わせる>
- 自社の業務プロセスと経営戦略を詳細に分析
- IT環境との整合性を確認
- 業種に応じたERPの機能選定を行う
導入コストと総所有コスト(TCO)を考慮する
ERP導入には初期投資だけでなく、運用や保守に関わるコストも考慮する必要があります。
多くの場合、導入コストは高額になりがちですが、長期的な視点で総所有コスト(Total Cost of Ownership: TCO)を評価することが重要です。クラウド型ERPの場合、オンプレミス型より初期投資が低減される可能性はありますが、その分ランニングコストを検討する必要があります。
<導入コストと総所有コスト(TCO)を考慮する>
- 初期投資だけでなく、運用・保守コストも総合的に評価
- 長期的な視点でTCOを考慮
- クラウドベースERPのランニングコストを検討
カスタマイズの柔軟性と拡張性を確認する
自社の特定のニーズに合わせて、ERPをカスタマイズすることが必要な場合があります。
そのため、ERPのカスタマイズの容易さや、将来のビジネスの成長に伴う拡張性なども重要な選定基準です。柔軟性が高く、将来的にも拡張が可能なシステムを選ぶことで、長期的なビジネスのニーズに対応できるようになります。
<カスタマイズの柔軟性と拡張性を確認する>
- 自社特有のニーズに合わせたカスタマイズの容易さ
- 将来のビジネス成長に対応する拡張性
- 長期的なビジネスニーズに合致するシステム選び
サポートとベンダーの信頼性
ERPシステムの導入は、単にソフトウェアをインストールするだけでなく、組織の業務プロセスや文化に大きな変化をもたらすため、導入後のサポートが非常に重要です。
継続的なサポート・トレーニング・カスタマイズサービスを行ってくれるかどうか、ERPを提供している企業の評判も参考にしましょう。また、他社の導入事例やベンダーの評判も参考にして選択すると良いでしょう。
<サポートとベンダーの信頼性>
- 導入後のサポートと継続的なトレーニングの提供
- 信頼できるベンダー選定の重要性
- 他社の導入事例やベンダー評判の参考にする
ERPに関するよくある質問
Q. ERPと会計ソフトは何が違うの?
カバーしている領域が違います。会計ソフトは財務諸表作成や会計処理などの経理業務に特化しており、ERPは経費精算や勤怠管理なども含めた業務効率化を行えるツールです。
会計ソフトのベンダーが、より高機能なツールとしてERPを提供しているケースもあります。経理だけではなくより幅広いデータを連動させたい時や機能、規模が拡大して会計ソフトの機能だけでは物足りなさを感じた時、ERPへの乗り換えは選択肢の1つになります。
Q. 情報流出のニュースを聞くと、何となく不安。クラウドERPにセキュリティの問題はないの?
自社のセキュリティ方針やレベルに合致しているか検討しましょう。
情報漏えいの原因はさまざまですが、パスワードの使い回しや人的なミス、社員による故意の持ち出しによるものなど、システム以外の理由も少なくありません。不安視する声に応えるため、クラウドサービスはセキュリティへの投資に積極的です。金融機関で求められるレベルのセキュリティ認証を取得しているなど、高い水準をクリアしているサービスも登場しています。
また、クラウドERPは24時間365日の監視態勢が一般的で、脆弱性にもいち早く対応します。こうした対応を中小企業が自社でまかなうのは現実的ではなく、むしろクラウドサービスのほうが安全に運用できるでしょう。
Q. 業務に直結する重要なシステムがクラウドで動作に問題はないの?
どのサービスも利用ができなくなるリスク回避の対策をしており、極めて100%に近い稼働率を達成しています。同時に、データが消失しないようにバックアップ体制も整えています。
ただし、事業者によって違いがありますので、自社の要件を満たしているか確認しましょう。動作スピードに関しては、各サービスやネットワークよって異なりますので、実際の業務に照らして不都合がないか、よく確かめるようにします。
Q. すでに使っている他のサービスとスムーズに連携できる?
クラウドERPならば、APIを介して連携が可能です。
例えば、「クラウド会計ソフトfreee」ならば、Salesforceやkintoneなど約60種類のサービスと自動連携できます。これまで使っていたサービスに登録された営業活動の記録を同期し、請求書発行や入金管理機能をリンクできるため、導入コストを抑えながらスムーズに移行します。
Q. BI、CRM、SFAと、ERPの違いは?
コア機能ではありませんが、BIやCRM、SFAの機能も含んだERPがあります。それぞれの機能は下記のように整理できます。
BI(Business Intelligence)
組織のあらゆるデータを収集・蓄積・分析・報告し、経営の重要な意思決定に役立てる手法や技術。また、それを実現するツール。
CRM(Customer Relation Management)
営業担当と顧客の関係を記録し、関係づくりを効率化するツール。顧客関係管理が目的。
SFA(Sales Force Automation)
顧客の情報を活用して、既存顧客へのアップセルやクロスセル、見込み客へのアプローチを促すツール。営業支援が目的。
ただし、これらの機能をより深く高度に活用したいならば、BI、CRM、SFAを使ったほうがいいでしょう。コンポーネント型のERPならば、ほかのツールで収集したデータもERPに取り込み、活用できます。
Q. RPAとERPの違いは?
RPA(Robotic Process Automation)は、パソコンで行う提携作業などの自動化プログラムを作り、業務効率化を目指すツールです。
ERPとは別の目的のツールですが、ERPとRPAをうまく組み合わせれば、ERPで実行する作業の自動化が実現できます。
ERPなんてウチには関係ないと思っていたけど、クラウドERPなら業務の効率化はもちろん、働き方を変えたり将来の成長に備えた組織づくりに取り組んだりできるそうだね。「攻めの経営」に使える気がしてきたよ。
会社自体を進化させられるのがクラウドERPの真骨頂なんです。これを機に、ぜひクラウドERPの本格導入を検討してみてください!
(執筆:加藤学宏 編集:鬼頭佳代/ノオト)