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現場の声を確実にスピーディーに生かす 「クラウド申告freee」のマネジメント体制の強み

「クラウド申告freee」について、前編では主にユーザビリティの観点から話し合っていただいたが、後編では品質を担保する取り組みにアプローチする。プロダクトマネジメントチームには公認会計士、税理士資格を持つメンバーもおり、サポート体制も強化の一途だ。不断の取り組みで品質向上を目指す3名にお集まりいただいた。

逆境からの始動。リカバリーは100本ノックから

――プロダクトマネジメントチームの高木さん、小野寺さんは、それぞれ監査法人・税理士法人からfreeeに加わっていますが、どんな気概を持って参画されたのでしょうか。

高木悟(以下 高木) 会計ソフトだけではなく、業務全体を効率化するという発想のプロダクト作りに共感し、freeeに入社しました。それはまさに、自分が税理士・会計士として感じていた課題へのソリューションになると思ったからです。

小野寺 知佳(以下 小野寺) 私もバックオフィス業務の効率化をうたったfreeeに共鳴し、入社したという経緯があります。前職では申告書の作成を手掛けていましたが、もっと効率的にできないだろうか? という思いを抱えていたんです。税理士業界はまだ紙の文化ですから、入力のしやすさ、効率化に注力するアプローチは斬新に映りました。

――申告freeeのチームでも、会計、税務の現場が抱える課題をプロダクト、サービスに落とし込もうという思いがある、と。

高木 そうですね。前編では「#freeeに願いを」への言及がありましたが、申告freeeに限らず、freeeという会社が好きでサービスをご利用いただいているユーザーが多いと感じています。お客様との距離は近く、いいところ、悪いところを含めてどんどんフィードバックし、共有いただくという文化があるんです。まず、「安定品質を確保したい」という僕たちの原体験からお話しましょう。

申告freeeがリリースされたばかり、2017年のことです。税務に関する不具合が発生して、それが少々ネガティブなかたちで拡散してしまったことがあったんです。プロダクトの始まりで社外の方々の厳しい指摘をいただき、社内のモチベーションにも影響がありました。

PMだった僕はいたく落ち込み、コアには絶対的な安心・安全を置かなければ――そう強く意識するようになりました。申告freeeの当初の機能「法人税」のスタートがそのような苦いものだったので、2018年度版リリースの「所得税」は、絶対に失敗できない挑戦になりました。

freee高木悟

――苦い経験が品質向上への思いの根底にあるわけですね。どうリカバリーし、どのような学びとしてつなげていったのでしょう。

高木 2017年のリリース直後に不具合が発覚して、僕が取り組んだのが実務テストの"100本ノック"です。会計事務所のユーザーさんにお願いして、freeeに来ていただき、実際に申告freeeを使って申告書を作ってもらいました。作成を目の前で見ながら、出てきた不具合をすべて洗い出し、修正していくという作業です。

エンジニアチームが行うユーザーテストはユーザビリティ向上に主眼を置くシステム面のテストです。僕たちが泥臭く行うべきは実際の業務を想定した実務テスト。実際の会計業務では複数の帳票、書類を横断して申告書が作成されています。このように横断的に行う実務テストをとことんやらなければ、不具合を洗い出すことはできません。この欄にこの値が入力されると、この帳票はこうなっていく......申告書を上からなめるようなテストを網羅的に行った数か月は、申告freeeのPMチームの原点になっていますね。

あらゆるパターンを想定 泥臭い実務テストが品質を支える

――エンジニアチームがユーザーテストでユーザビリティを向上させる一方、PMの観点では実務テストで品質を向上させていきます。2018年度版リリース「所得税」においては、どのような体制でテストを行ったのでしょうか。

小野寺 一口に「所得」といっても事業で得た所得や給与で得た所得、不動産所得など10種に及びますし、「控除」にも扶養控除や医療費控除など何種類もあります。この組み合わせが所得税の申告なので、いろんなパターンの申告が想定されます。実務テストは、このパターンをいかに網羅するかがポイントになりました。

まずは給与所得+医療費控除など、ユースケースが多そうなパターンを抽出してから、freeeユーザーの税理士の皆さんにお伺いしました。

実際の申告ケースにそって入力してテストし、パターン通りに申告書が作成されるかどうかをテストしていったんです。相当数のパターンを用意し、複数回にわたってテストしていきました。ユーザーの皆さんにご協力をいただいての地道な作業でした......。

freee小野寺

――複数の実務テストを行って、見えてきたものは?

小野寺 高木の説明にもあった通り、申告書は単体で見るときちんとできているように見えても、いろんな帳票が連携しているので、組み合わせによってはバグが発生する可能性もあります。数値にも優先順位や依存関係があって、Aを修正しなければBが修正できない、時にはB→Aの順番で修正しなければ......という箇所もあります。相当数のパターンのテストを行ったのは、エンジニアと修正のすり合わせをして、繰り返すことで不具合の可能性をつぶしていったからなんです。

高木 2018年度版のリリースに向け、2018年の11~12月は怒涛の実務テストでした。開発チームはUI、UXの改修を同時並行で行っていますから、PMも開発ミーティングに参加し、連携しながら開発サイクルを回していきましたね。

――そして、1月に2018年度版のリリースを迎えました。今回は、ユーザーからはどんな声が届きましたか。

高木 あるユーザーは会計事務所を立ち上げたばかりでしたが、お子さんもまだ小さく、育児をしながら確定申告シーズンを迎えたそうです。従来使っていた仕組みではまさに息つく暇もなく、ろくろく寝ずに締め切りを迎えることも多かったとか。

だけど、freeeに乗り換えたら、クラウドだから隙間時間を活用して効率的に申告書作成が進められた。お子さんとの時間も持てて、「確定申告のシーズンなのに、シルク・ドゥ・ソレイユを一緒に観に行けたよ!」と喜びの声を寄せてくれました。

ある事務所では、freeeを活用して申告したスタッフと使わずに従来の仕組みで申告したスタッフがいたそうですが、freeeを使ったスタッフの方が多く顧問先を抱えていたのに、確定申告期間中に有給休暇が取れたそうです。効率化、時短だけではなく、確かなQOLの向上につながっている。現場の忙殺ぶりを痛感しているだけに、これはうれしい声でしたね。

小野寺 私も、実務テストをお願いした会計事務所で現場の反応を体感できました。「これだとサクサク進められる」「時間が節約できる」などなど......SNSの反応もうれしいですが、リアルな声としてお聞かせいただくのも、チームのモチベーション向上につながりましたね。

品質とともにプレゼンスを増すサポート&ヘルプ

――ここからは申告freeeとユーザーを繋ぐカスタマーサポートについてお話を伺っていきたいと思います。

高木 会計・申告ソフトはサポートが命だと考えています。freeeではユーザーからの問い合わせは主にチャットサポートで対応してきました。僕も入社直後はユーザーサポートに携わっていたんですが、確定申告前のピークシーズンには、1日の問い合わせが1000件を超えることもありました。何かあっても問い合わせができる、つながるというのはユーザーにとっては安心感につながりますし、社内の僕たちからしても頼もしい存在です。

小澤 知恵(以下 小澤) freeeのサポートグループをマネジメントしています。ユーザーチャットサポートはエンドユーザー向けのチームですが、freeeでは会計事務所を「アドバイザー」と定義して、別途アドバイザーサポートを提供しています。

アドバイザーサポートはメールでも対応していますが、やはり電話対応がメインになります。会計freee、人事労務freeeは30分単位の予約制ですが、申告freeeは問い合わせに逐次対応するという体制になっていますね。

――会計、人事労務と比べて、申告freeeが特にクイックに対応するのはなぜなんでしょうか。

小澤 申告は明確な期限があるものですし、税額などでミスが発生するとアドバイザーだけではなく、その先の顧問先のお客様にもご迷惑をおかけしてしまいます。

以前は総合受付窓口でサポート対応していましたが、申告freeeのリリースにあたって専属チームを立ち上げました。現在は常時2名体制。まずはサポート実績が豊富なスタッフが1次受けとして対応して、プロダクトの問題なのか、それとも会計税務に関する使い方の問題なのかを切り分け、対応を検討。専門的な知識が必要だと判断したら、会計士事務所出身のスタッフが即応する仕組みになっています。

当然ながら、申告期限に合わせて問い合わせも増えていきます。その時に電話で対応できなかったり、回答が遅くなったりするのはサポートチームとして絶対に避けたいことです。

freee小澤

――申告freeeが普及するにつれ、問い合わせも増えていきそうですが、スタッフの拡充や教育の仕組みはいかがですか。

小澤 申告freeeのサポートチームとしては、フロントで対応する2名のほか、バックアップメンバーも2名が控えています。さらに、教育の仕組みも体系化し、育成用のプログラムとして標準化を進めているところなんです。それが「項目マップを活用した研修」「テスト実施」の2施策です。

エンジニアチーム、PMチームの話にも何度か出てきたように、申告書の作成では「入力した数字が帳票のどこに反映されるのかが分からない」というケースが多く発生します。そこで存在感を発揮するのが項目マップ。たとえば、この数字は青色申告決算書から来たもの、というように、数字と帳票の関係性がビジュアルとして分かりやすくなっています。これは申告freeeならではの教育と言えるでしょう。テストは法人税・電子申告・年末調整・各種申請書・確定申告の5タイプを整えていて、満点を取るまで復習することでサポート対応に必須の知識を身につけてもらえます。

教育体制を整えたことで、2週間程度の期間があればアドバイザーサポートの現場にメンバーが加わってもらえるようになりました。ニーズに応じた増員にもスピーディーに対応できます。

――freeeはヘルプページのカジュアルさ、分かりやすさが評価されていますが、サポートチームとして意識していることは?

小澤 freeeのヘルプページは専門チームで作成してますが、申告のヘルプページのみ、申告サポートを担当している事務所出身メンバーに依頼してます。いずれもプロダクトとお客様の声に精通したメンバーが作成してます。新機能はリリース前にタッチして、客観的な目線でコンテンツをまとめます。サポートに寄せられた問い合わせを参照して、「ここを分かりやすく書いたほうがいいかな?」と思うポイントにフォーカスして、使いやすいようなコンテンツの作成を心がけています。安心してアクセスしていただきたいですね。

高木 使い方をもっと知りたいという方に向けたWebセミナーも用意しています。2018年までは年1回ペースでしたが、「申告まで業務フローにそって説明してもらえたので、申告書作成までの具体的なイメージが湧いた」といったレスポンスを多くいただきました。

年末調整、確定申告のシーズンに向けて、今後はより頻度を増やしていきたいですね。一方的な伝達ではなく、双方向で意見交換をしながら進めることで、ご納得いただけるセミナーを目指していければと思います。

PM、サポートとして、今できることを見つめ続ける。

――開発陣のサイクルと同様に、リリースまでの品質担保、その後のユーザーサポートにも充実したサイクルが伺えました。PM、サポートチームとして今後目指していきたいことをお聞かせください。

小野寺 会計事務所の業務効率化に寄与することが第一です。申告書の作成は複雑ですが、初心者でも、税務の知識がないスタッフでも分かりやすくできる工夫、試みはまだまだあるはずです。今までになかった新しい申告ソフトを目指していければと思います。

高木 そうですね。会計・人事労務は新たなプレイヤーが参入し、使いやすいサービスがどんどん出てきています。一方、申告ソフトはというと、20~30年前から止まっているように思います。そんな市場を一変させたい! という意気込みで取り組んでいます。安全と安心、そして業務の効率化を目指します。会計・税務の現場でぜひご活用いただきたいです。

小澤 プロダクトが浸透するにつれ、問い合わせは税務面に傾斜していくと思いますが、機能が拡張したら、新しい使い方の問い合わせもまた増えていくでしょう。どちらのニーズにもお応えできるよう、サポート人員の増強、教育に力を入れていければ。プロダクトはどんどん進化していく中、サポートにできることは何かを考え続けていきます。

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freee小野寺、高木、小澤

前編:クラウド上で会計業務から申告業務まで一気通貫 「クラウド申告freee」が実践する新しいUXの力

(取材・執筆:佐々木正孝  編集:阿部綾奈/ノオト)