運行管理者は、ドライバーの労務管理や安全管理などを担当する責任者です。ドライバーの健康状態や労働時間の把握、安全運転指導などを実施し、ドライバーが目的地まで安全に運転できる環境整備に努めます。
バスやタクシー、トラックなど事業用車両を使って運送業を営む事業者は、法律にもとづき、事業所単位で必要な人数の運行管理者を配置する必要があります。ただし、運行管理者は国家資格の保有が必要なため、誰にでも務まる役割ではありません。
本記事では、運行管理者の主な業務内容や資格取得の方法、試験の合格率などを紹介します。
目次
運行管理者とは
運行管理者とは、ドライバーが乗客や貨物を目的地まで安全に届けられるよう、車両の管理や運行ルートの作成などを行う責任者です。道路運送法および貨物自動車運送事業法にもとづき、事業用車両の安全運行を管理するために重要な存在です。
事業用車両を一定数保有する事業者は、事業所単位で運行管理者を選出します。運行管理者はドライバーと乗客、貨物の安全確保に関する業務をこなしており、とくに運送会社や物流会社にとって不可欠です。
運行管理者制度とは
運行管理者制度とは、事業用車両を保有する事業者に対し、事業所ごとに一定人数以上の運行管理者を選出するように求める制度です。運行管理者の選出人数は以下のように、事業者が保有する車両数に応じて変動します。
運行管理者の選出人数
- 1~29台:1人
- 30~59台:2人
- 60~89台以上:3人
- 90台以上:別途計算式による
また、運行管理者制度では運行管理者が不在の際も業務を遂行できるよう、代理役またはサポート役の選出についても定められています。
出典:長野県トラック協会「運行管理者について」
運行管理者の主な業務内容
運行管理者の役割は、ドライバーが安心して仕事に打ち込める環境を整えることです。
車両が故障していないか、ドライバーは十分に睡眠時間が取れているかなどを把握し、必要に応じてメンテナンス依頼や代替要員の確保を行うことで、交通事故の発生を未然に防ぎます。
以下では、運行管理者の主な業務内容を5つ紹介します。
車両管理
車両管理は、事業所で保有する車両の状態を管理する業務です。車両が故障していないかを定期的に確認し、必要に応じて点検やメンテナンスを依頼します。
仮に故障の兆候を見逃し、ブレーキの不具合やタイヤのパンクなどが発生した場合、大規模な事故や多額の損失につながります。
労務管理
労務管理で運行管理者が担う主な業務は以下のとおりです。
労務管理にまつわる主な業務内容
- 従業員の労働時間や残業時間の把握
- シフト作成
- 休憩所や仮眠室の管理
- アルコールチェック
- 対面での点呼
労務管理としては、従業員の体調や勤怠状況、アルコールの有無などを把握・管理することがあげられます。その目的は、過労運転や飲酒運転を未然に防ぐことです。運行管理者によって安全な運行が難しいと判断された場合は、別のドライバーが交代して業務を行うこともあります。
睡眠不足や疲労困憊の状態でドライバーに運転をさせないよう、運行管理者はシフトの組み方や交換要員の確保を常に気にしなければなりません。業務過多に陥っていると判断した場合は、休暇の取得などを推奨し、休息時間の確保に努めます。
運行管理者が行うべきアルコールチェックについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
安全管理
安全管理は、ドライバーの運転技術や安全意識を高めるために講習・指導を行う業務です。
ドライバーの人手不足が続いていることから、1人のドライバーが多くの荷物を輸送することが求められます。しかし、車両の最大積載量以上の荷物を積んでしまうと、過積載が原因でスピードやブレーキの制御が難しくなり、荷崩れが発生しやすくなります。
一方で、積載量を減らした場合は1人のドライバーが輸送する量が減る分、多くのドライバーを確保しなければなりません。
事故のリスクを抑えつつ多くの荷物を輸送できるよう、運行管理者は荷物の積載方法やロープの締め方、シートの掛け方などを指導します。
出典:国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」
運行ルート管理
運行ルート管理は、ドライバーの走行状況を把握したうえで、目的地までのルートを提案する業務です。効率的な運行ルートを選択できれば、走行時間やドライバーへの負担、ガソリン代などを削減することが可能です。
また、走行中に交通事故や渋滞、悪天候が生じた場合、運行管理者はドライバーに状況を説明したうえで、別のルートを選ぶよう指示を出します。道路情報や天候に応じたルート選択で、納期遅延や交通事故のリスクを軽減します。
交通事故発生時の対応
交通事故が発生した際、運行管理者は状況を素早く把握し、ドライバーに今後の対応を的確に指示しなければなりません。自社の従業員が事故を招いた場合、初動対応が遅れてしまうと、社会的信用を失うリスクが高まります。
多額の損失やトラブルの長期化を防ぐため、運行管理者は現状を把握したうえで、ドライバーに以下の内容を指示します。
交通事故発生時の主な指示内容
- 乗客や荷物の安全確保
- 負傷者への救護措置
- 救急車や警察への連絡
ドライバーとのやりとりが終わり次第、納品先などと連絡を取り、今後の対応を協議します。
さらに、事故の原因を分析したうえで、再発防止策の実施と安全管理を徹底し、事故の発生リスク軽減に努めることも大切です。
運行管理者の資格を取得する方法
運行管理者の資格を取得する方法には、試験に合格するか、実務経験と講習受講回数の要件を満たすかといった2つのパターンがあります。
試験を受けて合格する
公益財団法人運行管理者試験センターが実施する運行管理者試験に合格すると、運行管理者の資格を取得できます。受験資格を得るには、以下いずれかの要件を満たす必要があります。
運行管理者試験の受験資格を得るための要件
- 運行管理に関する実務経験が1年以上ある
- 基礎講習の受講が終了している
1の場合は、勤務先での実務期間を証明するため、実務経験証明書や職歴証明書などが必要です。勤務先に発行を依頼しましょう。
2の場合は、受験前に国土交通大臣が認定している講習実施機関で講習を受けなければなりません。基礎講習は全国各地で開催されており、事前に受講方式や会場の予約などを済ませておく必要があります。
実務経験と講習受講回数の要件を満たす
事業用車両の運行管理に関して、要件を満たせば試験を受けなくても運行管理者の資格を取得できます。国が定めている要件は以下のとおりです。
試験を受けない場合の、運行管理者資格取得の要件
- 運行管理の実務経験が5年以上
- 実務期間中に運行管理の講習を5回以上受講
実務経験に関しては、同一企業での経験でなくても認められます。転職経験がある人は、過去に在籍した勤務先での経験も含めて実務経験証明書に記載することが可能です。離職する際、退職証明書や職歴証明書の発行を依頼しておきましょう。
一方、講習受講に関しては以下の注意点を把握しておかなければなりません。
運行管理の講習受講時の注意点
- 最低でも1回は基礎講習の受講が必要になる
- 受講回数は実務経験の開始後にカウントされる
- 同じ年に講習を複数回受講しても1回とカウントされる
実務経験と講習受講回数の要件を満たして運行管理者の資格を取得するパターンは、試験に合格する方法よりも、資格取得までに時間がかかります。資格取得に向けた準備は計画的に進めましょう。
出典:国土交通省「自動車運送事業の運行管理者になるには」
運行管理者の試験合格率
令和7年度第2回運行管理者試験の結果は、以下のとおりです。
| 貨物 | 旅客 | |
|---|---|---|
| 受験者数 | 21,577人 | 6,679人 |
| 合格者数 | 8,397人 | 2,556人 |
| 合格率 | 38.9% | 38.3% |
運行管理者の試験は貨物と旅客の2種類に分けて行われます。どちらも合格率は例年30~40%で推移しています。
運行管理者の資格を取得するメリット3つ
運行管理者の資格取得によるメリットを3つ紹介します。
年収アップが期待できる
運行管理者には責任とストレスがともなうため、一般的な事務職と比べると年収は高めに設定されています。一般事務の平均年収が約350~450万円であるのに対し、運行管理者の平均年収は約400~600万円です。
運行管理者の資格を取得することで資格手当が得られるため、安定した収入につながりやすくなります。実務経験の長さや企業規模によっては、800万円以上の年収を得られる可能性もあります。
長くキャリアを築ける
運行管理者は内勤で働けるため、年齢を重ねても仕事を続けやすい点がメリットのひとつです。
ドライバーは天候や交通状況に気を配りつつ、決められた時間までに貨物や乗客を目的地に運ばなければなりません。精神的に疲弊するだけでなく、場合によっては貨物の積み下ろしでケガをするリスクも生じます。
一方、運行管理者は事業所内で仕事が完結するため、ドライバーと比べて体への負担を抑えられます。体力や体調面に不安を感じ、ドライバーからの転職を目指している方にとっても有効な選択肢です。
転職時に有利になる
運行管理者の資格をもっていると、転職活動の際に他の候補者と差別化を図れます。例年、運行管理者試験の合格率は30~40%です。また試験を受けない場合は、最低でも5年以上実務経験を積まなければなりません。
運行管理者は簡単に取得できる資格ではないため、自身の実績や経歴もアピールできれば、転職活動でキャリアアップを実現できる可能性が高まります。
運行管理者になる際の注意点3つ
運行管理者になって後悔しないために、注意点についても把握しておきましょう。
勤務時間が不規則になることがある
勤務先の事業内容によっては勤務時間が不規則になり、生活リズムが乱れる可能性が高まります。夜間の業務がある場合、運行管理者も車両の運行に合わせて出勤しなければなりません。
結果として勤務時間が不規則になりやすく、疲労やストレスの蓄積で体調不良を招くことも考えられます。夜間・深夜勤務のある運行管理者には、自身の体調管理を徹底する姿勢が求められます。
重い責任が伴う
運行管理者の業務には責任とプレッシャーがともなうため、精神的な強さが求められます。
運行管理者は、ドライバーが睡眠時間を十分確保しているか、安全に運行可能な健康状態かどうか、常に確認しなければなりません。
仮にドライバーが体調不良の状態で業務を行って事故が発生した場合は、運行管理者の責任も問われます。警察や取引先への説明対応に追われるだけでなく、事故の規模によっては運行管理者に「運行供用者責任」が問われ損害賠償責任が生じることもあります。
人間関係で難しさを感じやすい
運行管理者はドライバーと経営層、取引先の板挟みに陥りやすく、人間関係の難しさに悩まされる傾向があります。経営層が求める効率と現場の安全確保のバランスを汲んで、育成やマネジメントに努めなければなりません。
ときには、取引先からの急な納入依頼や運賃削減などの要求に対応することも求められます。社内外からの要求に対して臨機応変な対応が求められるため、高いコミュニケーション能力が必要です。
まとめ
運行管理者は、ドライバーの労務管理や安全管理などを担当する責任者です。運送会社やタクシー会社など事業用車両を扱う事業者には、事業所ごとに運行管理者の配置が義務付けられています。
運行管理者は国家資格の保有が必要であり、誰もがこなせる役割ではありません。運行管理の実務経験と知識を兼ね備えた人材は貴重なため、資格を取得すると、年収アップや長期目線でのキャリア形成を実現しやすくなります。
一方で、不規則な勤務時間や人間関係によるストレスを感じやすいのも事実です。運行管理者として長く活躍するには、自身の体調にも十分に配慮することが求められます。
よくある質問
運行管理者の資格を取るにはどうすればいいですか?
運行管理者の資格を取るには、試験に合格するか、実務経験と講習受講回数の要件を満たすか、どちらかの方法を選択します。
詳細は「運行管理者の資格を取得する方法」をご覧ください。
運行管理者の試験は難しいですか?
運行管理者試験は決して簡単な試験ではありません。合格率は例年30~40%の間で推移しています。
詳細は「運行管理者の試験合格率」をご覧ください。
参考文献
▶︎ e-Gov法令検索「道路運送法」
▶︎ e-Gov法令検索「貨物自動車運送事業法」
