飲食店を開業するには、保健所への飲食店営業許可の申請が必要です。申請にあたっては食品衛生責任者の設置や施設基準を満たした店舗設備の整備が求められるほか、深夜に酒類を提供する場合や収容人数が30名以上の店舗では追加の手続きも必要になります。
本記事では、飲食店営業許可証の取得に必要な手続きと資格・申請に必要な書類・申請から開業までの流れ・取得にかかる費用と期間について、詳しく解説します。
目次
- 飲食店営業許可証とは
- 無許可営業の罰則
- 飲食店営業許可証の有効期限と更新
- 飲食店の開業に必要な手続き
- 飲食店営業許可の取得
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届の申請
- 飲食店の開業に必要な資格
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
- 飲食店営業許可証の申請に必要な書類
- 営業許可申請書
- 施設構造と設備を示す図面
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの
- 水質検査成績書
- 登記事項証明書(法人のみ)
- 飲食店営業許可証の申請から開業までの流れ
- 1. 保健所に事前相談する
- 2. 飲食店営業許可の申請を行う
- 3. 保健所による立入検査を受ける
- 4. 飲食店営業許可証を受け取る
- 5. 消防署に防火管理者を届け出る
- 6. 飲食店の営業を開始する
- 飲食店営業許可証の取得にかかる費用と期間
- 費用
- 期間
- まとめ
- 飲食店営業許可の申請に必要な書類を簡単に作成する方法
- よくある質問
飲食店営業許可証とは
飲食店営業許可証とは、飲食店を開業するにあたって保健所から交付される許可証のことです。
食品衛生法第55条に基づき定められており、一般的な食堂・レストラン・カフェ・居酒屋など、食品を調理して顧客に提供する飲食店はすべて取得が必要です。営業許可証は「場所」や「設備」に対して交付されるものであるため、経営者が交代した場合は届出を行うことで許可を引き継ぐことができます。また、複数店舗を開業する場合は店舗ごとに申請が必要です。
なお、2021年6月の食品衛生法改正により、これまで別に設けられていた「喫茶店営業許可」が飲食店営業許可に統合されました。居抜き物件で開業する場合は、改正後の基準を満たしているかどうかを保健所に確認しておきましょう。
出典:e-Gov法令検索「食品衛生法|第55条」
出典:厚生労働省「営業届出制度の創設と営業許可制度の見直し」
無許可営業の罰則
飲食店営業許可を取得せずに営業した場合、食品衛生法違反として2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます。
深夜に酒類を提供する場合に必要な深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出せずに営業すると、風俗営業法違反として50万円以下の罰金となります。
出典:e-Gov法令検索「食品衛生法|第82条」
飲食店営業許可証の有効期限と更新
飲食店営業許可証には有効期限があり、許可の種類や自治体によって異なりますが、一般的に5年〜8年です。
有効期限が切れると営業できなくなるため、満了日の約2週間前までを目安に管轄の保健所へ更新申請を行う必要があります。更新の際も、新規申請と同様に手数料が必要です。
出典:e-Gov法令検索「食品衛生法|第55条第3項」
飲食店の開業に必要な手続き
飲食店の営業業態によって、開業のために必要な手続きは異なります。自身が開業する飲食店では「どのようなもの」を「どうやって」「何時まで」提供するのかを踏まえて、以下のうち必要な手続きを行います。
飲食店営業許可の取得
飲食店営業許可の取得は、一般的な飲食店を開業するうえで必要な手続きです。保健所から飲食店営業許可証を取得することで、店舗で調理した料理や、午前0時までの酒類の提供が可能になります。別の場所に複数店舗を開業する場合は、それぞれ店舗ごとの申請が必要です。
飲食店営業許可は「場所」や「設備」についての許可であり、経営者が交代した場合も、届出を行えば許可を引き継ぐことができます。
なお、テイクアウト専門店を新規開業する場合も飲食店営業許可の取得が必要です。すでに許可を取得している飲食店が既存メニューをテイクアウト販売する場合は原則として追加の許可は不要ですが、取り扱うメニューによっては別途許可が必要な場合もあります。
居抜き物件で開業する場合は、2021年6月の食品衛生法改正後の基準を満たしているかどうかを保健所に確認しておきましょう。
出典:厚生労働省「営業届出制度の創設と営業許可制度の見直し」
出典:厚生労働省「営業許可制度の見直し及び営業届出制度の創設に関するQ&A(令和3年8月26日)」
深夜酒類提供飲食店営業開始届の申請
午前0~6時に営業する、また居酒屋やバーなど主に酒類を提供する飲食店の場合は、飲食店営業許可に加えて、「深夜酒類提供飲食店営業開始届」を管轄の警察署へ提出・申請する必要があります。
ただしファミリーレストランなど、主食とみなされる食事をメインに提供する飲食店であれは、深夜酒類提供飲食店営業開始届を申請しなくても夜間にお酒を提供できます。たとえば居酒屋などで提供される〆のお茶漬けなどは主食とはみなされません。判断に迷う場合は、警察署へ相談してみましょう。
出典:e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律|第33条」
出典:鳥取県警「深夜酒類飲食店営業とは」
飲食店の開業に必要な資格
飲食店を開業するには以下の資格を取得する、もしくは資格取得者を置く必要があります。
食品衛生責任者
飲食店の開業にあたっては自主的な衛生管理が必須であるため、店舗に食品衛生責任者を1名置くことが義務づけられています。店舗が複数あれば店舗ごとに設置が必要で、兼任はできません。
食品衛生責任者は、以下のいずれかを満たしている必要があります。
食品衛生責任者の必須要件
- 栄養士、調理師、製菓衛生師、食品衛生管理者などの資格保有者
- 食品衛生責任者養成講習会の受講者
- その他、知事などが適正と認めた講習会の受講者
出典:厚生労働省「食品衛生責任者の取扱いについて(薬生食監発0117第1号・令和2年1月17日)」
資格を保有していなくても、各都道府県の食品衛生協会が開催する食品衛生責任者養成講習会(1日程度・受講料1万円前後)を受講すれば、食品衛生責任者の資格を取得可能です。受講は店舗を営業する都道府県以外でも問題ありません。ただし都市部では講習会の予約が埋まりやすく、受講まで1ヶ月以上かかる場合もあるため、早めに予約しておきましょう。
出典:e-Gov法令検索「食品衛生法|第51条」
防火管理者
収容人数が30名以上の規模の飲食店を開業する場合のみ、防火管理者の設置が必要です。席数でなく、従業員も含めた収容人数が30名以上であれば防火管理者を設置しなければなりません。
店舗面積によって、以下のように取得すべき資格、講習会の時間と受講料が異なります。
| 店舗面積 | 取得すべき資格 | 講習会の時間 | 講習会の受講料 |
|---|---|---|---|
| 延べ面積が300㎡以上 | 甲種防火管理者 | 2日間で約10時間 | 8,000円 |
| 延べ面積が300㎡未満 | 乙種防火管理者 | 1日約5時間 | 7,000円 |
出典:一般財団法人日本防火・防災協会「防火・防災管理講習」
飲食店営業許可証の申請に必要な書類
飲食店営業許可証の申請書類は、管轄の保健所に提出します。書類の提出は窓口持参のほか、郵送やオンライン(食品衛生申請等システム)でも受け付けている自治体もあります。
必要書類の種類や様式は自治体によって異なる場合があるため、事前に確認してください。下表は東京都の例です。
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 営業許可申請書 | 申請書の様式は管轄保健所の窓口や各自治体のウェブサイトから入手 |
| 店舗の平面図 | 調理台・客席・トイレ・更衣室など全設備を大きさも含めて記載したもの。着工前に施工業者から取り寄せる |
| 食品衛生責任者の資格証明書 | 資格証の原本提示または写しの添付 |
| 水質検査成績書 | 水道水以外(貯水槽・井戸水など)を使用する場合のみ必要。申請日の直近1年以内に発行されたもの |
| 登記事項証明書 | 法人の場合のみ必要。定款の目的に飲食店経営に関する記載が求められる |
それぞれ、以下で詳しく解説します。
営業許可申請書
申請者の氏名・住所、店舗の所在地、名称、食品衛生責任者の氏名などを記入する書類です。申請書の様式は管轄する保健所の窓口や、各自治体のホームページから入手できます。
施設構造と設備を示す図面
調理台や客席、トイレ、従業員の更衣室など、店舗に配置するすべての設備を大きさに至るまで細かく記載した図面を、着工前に施工業者から取り寄せ提出します。
食品衛生責任者の資格を証明するもの
各資格を証明する免許証や、講習会受講後に交付される食品衛生責任者手帳(確認証)など、資格を証明するものの原本または写しを提出します。
水質検査成績書
水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合は、水質検査成績書の提出が求められます。該当するのは貯水槽の水や、井戸水などを使用するケースです。水質検査成績書は建物の管理者や不動産業者から取り寄せるか、専門の検査機関に依頼して取得します。
提出日の直近1年以内に発行されたものでなければならないため、場合によっては検査を新たにする必要があります。
登記事項証明書(法人のみ)
法人が申請する場合は、登記事項証明書の原本または写しを提出します。
定款の目的の部分に、飲食店経営やレストラン経営、カフェ経営といった飲食店の経営に関するワードが記載されているかチェックしましょう。
法人は定款の目的に定められた行為しかできないため、もし定款の目的に飲食店経営にあたる文言が見当たらなければ、目的変更登記が必要です。どのような文言であれば問題ないか、変更登記前に保健所に問い合わせておくと書類の準備がスムーズに行えます。
飲食店営業許可証の申請から開業までの流れ
飲食店を開業するまでの流れは以下のとおりです。
飲食店営業許可証の申請から開業までの流れ
- 保健所に事前相談する
- 飲食店営業許可の申請を行う
- 保健所による立入検査を受ける
- 飲食店営業許可証を受け取る
- 消防署に防火管理者を届け出る
- 飲食店の営業を開始する
1. 保健所に事前相談する
着工前の段階で、施工業者から上がってきた店舗の平面図を持参し保健所に事前相談を行います。着工後の設計変更は手間や追加費用がかかるため、早めに確認しておきましょう。事前にチェックやアドバイスを受けておくことで、その後の申請や検査がスムーズに進みます。
営業許可申請の際には食品衛生責任者の資格が必須です。申請前に取得が済んでいない場合は、この段階から資格取得の準備を並行して進めておきましょう。
2. 飲食店営業許可の申請を行う
事前相談によって問題なく進められる目途が立ったら、必要書類を揃えて保健所に提出します。書類の提出は工事完成予定日の7〜10日前までを目安に行いましょう。
必要書類について詳しくは、前述の「飲食店営業許可証の申請に必要な書類」をご覧ください。
3. 保健所による立入検査を受ける
営業許可申請後に、保健所の担当者が施設の立入検査を行います。検査当日は営業者または責任者の立ち会いが必要です。万が一不備があったときには改善後に再検査となるため、検査までに規定通りの設備を整えておきましょう。
特に重視されるポイントは以下のとおりです。
保健所による立入検査で重視されるポイント
- 屋外や建物内の住居などとは隙間のない構造(壁、ガラス戸、天井など)で遮断する
- 調理室は壁やカウンターなどで客席とわけて、出入り口には扉を設ける
- 床面や内壁、天井は清掃しやすい材質・構造にする
- 調理室には使用しやすい場所に石けんやペーパータオル、消毒剤などを配置する
- 衛生的な手洗いができる十分な大きさを確保する
- 水栓は肘で止水できるレバーや足踏みペダルなど洗浄後の手指の再汚染を防ぐ構造にする
- 食品などを洗浄するため、使用目的に応じた大きさ・数のシンクがある
- 冷蔵または冷凍設備があり、見やすい位置に温度計を備える
- 従業員のトイレは調理室に直接出入りできない場所に設置し、専用の流水式手洗い設備を備える
出典:厚生労働省「施設基準の解説」
4. 飲食店営業許可証を受け取る
立入検査で問題がなければ、保健所から営業許可証が交付されます。許可証は店舗の見える場所に掲示しましょう。
交付方法は保健所窓口での受け取りまたは郵送で、自治体によって異なります。交付までには検査後から数日〜1週間程度かかるため、オープン日のスケジュールには余裕をもっておきましょう。
5. 消防署に防火管理者を届け出る
収容人数が30名以上の飲食店であれば、営業開始日までに管轄の消防署へ防火管理者の届出書を提出します。届出書の様式は、消防署のホームページからダウンロード可能です。
提出時には、同じ内容の届出書を「消防署保管用」と「事業所保管用」の2部用意し、防火・防災管理講習の修了証(手帳)の原本もあわせて提出します。窓口持参のほか、郵送で受け付けている消防署もあります。
6. 飲食店の営業を開始する
営業許可証を受領し、防火管理者の届出が完了したら、飲食店としての営業が開始できます。営業を開始するにあたっては、食品衛生責任者の氏名を店舗に掲示しなければなりません。
飲食店営業許可証の取得にかかる費用と期間
飲食店営業許可証を取得するうえでかかる費用と時間の目安は、以下のとおりです。
費用
飲食店営業許可証の申請にかかる手数料は、自治体や営業の種類によって異なります。東京都新宿区の場合、飲食店営業許可の申請手数料は18,300円です。
一度納付した申請手数料は、申請を取り下げても原則として返金されません。申請前に保健所で事前確認を行い、書類や施設の不備がない状態で申請しましょう。
出典:新宿区「営業許可業種と申請手数料一覧」
期間
申請から営業許可証の交付までの期間は、2~3週間を想定しておきましょう。目安となる日数は以下のとおりです。
| ステップ | 期間の目安 |
|---|---|
| 事前相談〜申請書類の提出 | 工事完成予定日の7〜10日前までに提出 |
| 書類提出〜立入検査 | 数日〜1週間程度 |
| 立入検査〜許可証の交付 | 数日〜1週間程度 |
申請のタイミングが遅れると開業日がずれ込む可能性があります。オープン日から逆算して、余裕をもったスケジュールで準備を進めましょう。
まとめ
飲食店を開業するには、保健所への飲食店営業許可の申請をはじめ、食品衛生責任者の設置、収容人数によっては防火管理者の届出など、複数の手続きが必要です。深夜に酒類を提供する場合は、飲食店営業許可に加えて深夜酒類提供飲食店営業開始届の申請も必要になります。
申請から営業許可証の交付までは約2〜3週間かかります。また、施設が基準を満たしていない場合は再検査となり、開業が遅れる可能性があります。着工前の保健所への事前相談を行い、余裕をもったスケジュールで準備を進めましょう。
飲食店営業許可の申請に必要な書類を簡単に作成する方法
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よくある質問
飲食店の営業許可証はどこで取れますか?
店舗の所在地を管轄する保健所に申請します。申請書類を提出し、保健所による立入検査に合格することで営業許可証が交付されます。申請書類の様式や手数料は自治体によって異なるため、事前に管轄の保健所に確認してください。
詳しくは、記事内「飲食店営業許可証の申請から開業までの流れ」をご覧ください。
飲食店の営業許可証の有効期限はどのくらいですか?
食品衛生法第55条第3項により有効期間は5年以上と定められており、自治体によって異なります。有効期限が切れると営業できなくなるため、満了日の約2週間前までを目安に管轄の保健所へ更新申請を行う必要があります。
詳しくは、記事内「飲食店営業許可証とは」をご覧ください。
飲食店を無許可で営業するとどうなりますか?
食品衛生法違反として、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます。また、深夜に酒類を提供する場合に必要な深夜酒類提供飲食店営業開始届を提出せずに営業した場合は、風俗営業法違反として50万円以下の罰金となります。
詳しくは、記事内「飲食店営業許可証とは」をご覧ください。
テイクアウトのみでも飲食店営業許可は必要ですか?
テイクアウト専門店を新規開業するのであれば、飲食店営業許可の取得が必要です。一方、すでに飲食店営業許可を取得している店舗が既存メニューをテイクアウト販売するときには、原則として追加の許可は不要です。ただし取り扱うメニューの種類によっては別途許可が必要な場合もあるため、管轄の保健所に確認してください。
詳しくは、記事内「飲食店の開業に必要な手続き」をご覧ください。
